オランダのプログレッシヴ・ロック・プロジェクト「CODA」。 エリク・デ・フォローメンの個人プロジェクトから発展。作品は二枚。
Jacky Van Tongeren | fretless bass, backing vocals |
Mark Eshuis | drums, timpani, xylophone |
Jack Witjez | guitars, lead & backing vocals |
Erik De Vroomen | piano, synthesizers, Hammond organ, pipe organ, Novatron, clavinet, emulator, bass pedal, effects, percussion, backing vocals |
guest: | |
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Pip Van Steen | flute, piccolo, recorder |
Auke De Haan | alto sax |
86 年発表のアルバム「Sound Of Passion」。
内容は、キーボードを中心としたクラシカルかつスペイシーな、白昼夢的、瞑想的シンフォニック・ロック。
全体に愛に満ちた優美で品のいい音楽である。
つまり、「ロック」という用語はほぼエレキギターとドラムスがいることのみを意味しており、ロック固有の「不良っぽさ」や衝動性はほぼない。
あるのは、軽めのブルーズ・フィーリングに伴う「反骨」や「ここではない何処か、への憧憬」であり、そういった精神性は 60 年代のサイケデリック・ロックに通じるようだ。
おそらくは、中心人物であるフォローメンが抱き続けたプライベートなヴィジョン(あるいは、プログレというスタイルへの固執?)を有能なミュージシャンとの協業で音楽として成立させたのだろう。
結果として、「シンフォニック・ロック」という言葉そのものの典型、もしくは体現というべき作品となった。
シンセサイザーやオルガンによるきらびやかで未来的なイメージ、パイプ・オルガンとコラールによる宗教的な厳粛さ、ピアノやアコースティック・ギターによるロマンチシズム、ギターとサックスによるしなやかな運動性、モノローグや効果音によるドラマ仕立て、といったさまざまな要素を巧みに、なおかつ嫌味なく織り合わせた、アレンジ力の賜物である。
音量やテンポ、ムードの変化に極端なところがなく、すべてにおいて慎ましくモデレートであり、耳に優しいところも特徴だろう。
個人的には、凄腕の片鱗を見せながらもあくまで控えめなアコースティック・ピアノのプレイが気に入っている。
また、プログレはフルートの使い方でセンスが分かるという意見があるが(笑)、第四楽章を聴くかぎり、ほぼ百点ではないだろうか。
英国ロック・オーケストラの代表格 THE ENID からクセを取り除いたような作風であり、ここでも英国ロックのアクの強さをまろやかでポップに変換することで確立したダッチ・ロックの伝統手法が活かされている。
6 曲目のマイナーのテーマや最終曲のサビのように KAYAK にも通じるキャッチーなメロディ・センスがある。
70 年代ロックよりも垢抜けたヌケのいいシンプルな音、つまり 80 年代らしい音を使っているがプログレの心意気はしっかり受け継いでおり、まさに、SOLARIS、SAGRADO とともにプログレ受難時代を支えた代表的な作品といえるだろう。
ジャケット写真は 91 年の再発 CD のもの。
ブックレットにはフォローメンが感銘を受けたギュンター・シュワブなる毀誉褒貶喧しいチェコの作家の作品からの引用がある。(何故か、オランダのグループにはレイシズム関連のキナ臭さが漂うことがしばしばある)
ヴォーカルは英語。
作曲、プロデュースはエリク・デ・フォローメン。
「Sounds Of Passion」(29:06)
「a) Prologue」(2:16)
「b) 1st Movement」(7:10)
「c) 2nd Movement」(4:05)
「d) 3rd Movement」(5:35)
「e) 4th Movement - "Finale"」(10:00)
「Crazy Fool And Dreamer」(4:25)
「Defended」(6:43)
(BLP 2860481 / SIMPly NINE)
Erik De Vroomen | grand piano, harpsichord, Hammond B3 organ, church organ, Kurzweil K2000, synthesizer, Moog taurus bass pedal, special effect, vocals |
Jack Witjez | guitars, vocals |
Jacky Van Tongeren | bass |
Wolfram Dettki Bludeau | drums, timpani, concert bass-drum, gongs, bells, percussion |
96 年発表のアルバム「What A Symphony」。
内容は、THE ENID ばりのロック・バンド管弦楽曲。
キーボード・オーケストレーションを軸にして、ゲストによる管弦ソロやコラール、SE をふんだんに取り入れて、クラシックの表現でロマンチシズムを彫り深く、スケール大きく描いた作品である。
純クラシックからメロディックなアリーナ・ロック、トラッド調のフォークソングまで曲調は多彩だが、冒頭のアドルフ・ヒトラーの演説の録音からも分かるように「反戦と人権擁護」という一つの大きなテーマが貫いているようだ。
フュージョンやロックのスタイルに依拠した演奏ではタイトでスリリングなバンドとしてのグルーヴや攻撃性を打ち出せているので、シンセサイザーがボーっと鳴るだけののっぺりしたシンフォニック・ミュージックが苦手なプログレッシヴ・ロック・ファンも対応可能である。
もちろん、逆に、バンド・ノリよりもクラシカルな演奏が好みのファンも、厳粛なピアノ・ソロやオペラ、交響楽やチェンバー・アンサンブルを楽しめるはず。
ちなみに、近年ではフランスの XII ALFONSO が同様な作風の路線でコンスタントに活動している。
タイトル曲三部作の第一楽章は、女性ヴォーカルを立てた CAMEL のような叙情派シンフォニック・ロック。(ギターは気を許すと HR/HM 側にいきそうなほどテクニカル)
79 年ぐらいの作品といって違和感はなく、結果、ネオ・プログレ王道の作風となっている。
ヴォーカルは英語。
作曲、プロデュースはエリク・デ・フォローメン。
CD 二枚組の盤では、タイトル組曲は一枚目に収録され、二枚目はマキシ・シングル「Love Peom」を収録。
日本盤にはボーナス・トラック二曲つき。
(97335-6)