イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「FIELDS」。 RARE BIRD を脱退したグレアム・フィールドが結成したキーボード・トリオ。 作品は一枚。 品のよいブリティッシュ・ロック。
Graham Field | piano, electric piano, organ |
Alan Barry | vocals, classical & electric guitar, bass, mellotron |
Andy McCulloch | drums, timpani, talking drum |
guest: | |
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Dafne Downs | clarinet on 8 |
71 年発表の唯一作「Fields」。
内容は、英国流のセンスと渋い陰影のあるキーボード・オリエンティッド・ロック。
いわば RARE BIRD と GREENSLADE をつなぐ「ミッシング・リング」である。
サウンドは、グレアム・フィールドによるクラシカルなオルガン、エレクトリック・ピアノのプレイをフィーチュアし、アラン・バリーのギターとヴォーカルがデリケートな表情をつけるもの。
どの作品もクラシカルな基調にポップな一筆を加味していて、矛盾しそうなピースフルなおだやかさとスワンプ風のメランコリックな響きが一つになっている。
つまり、その捻じれた色合いが、陳腐な表現だが、まさにブリティッシュ・ロックなのである。
コンパクトな楽曲にドラマを埋め込む手腕冴えている。
ギターとオルガンの軽やかな疾走感あるインタープレイを支えるのは、安定感もキレもみごとなアンディ・マクローチのドラミング。
それにしてもアラン・バリーは華のあるヴォーカル、ギター・プレイ、作曲と何をとっても超一流の逸材だ。
ANDWELLA のデイヴ・ルイス、デヴィッド・ボウイを思わせるところもある。
EL&P のような派手でけれんのあるハードロック調のサウンドを期待すると肩透かしを食らうが、優れた英国ロックを味わいたい向きにはお薦め。
いろいろな曲が入っており一種ブリティッシュ・ロック総覧的な面もある。
「A Friend Of Mine」(4:27)RARE BIRD を思わせるオルガン・ロック。
バロック調のクラシカルなテーマが加熱してゆく様子は PROCOL HARUM も真っ青の英国ロックの風格あり。
バリーの甘めのヴォーカルが重厚なサウンドに華やいだ彩をつける。
「While The Sun Still Shines」(3:15)バリーのヴォーカル、ギターがリードするアップテンポの R&B チューン。
パーカッションの効いたクランチなオルガン、ハードなギターなどなかなかヘヴィなサウンドなのだが流れるように軽やかだ。
「Not So Good」(3:08)スワンプ風バラードの名曲。
ピアノ伴奏のヴォーカル・パートと教会風のオルガンのオブリガートは PROCOL HARUM を思わせる。
ただし、ヴォーカルはこちらの方がぐっと繊細でなまめかしい。
この柳の下には何匹ドジョウがいるのだろう。
「Three Minstrels」(4:27)トーキング・ドラムスとエキゾティックなメロディが印象的な作品。
JADE WARRIOR 風のエスニック・ロックに華やぎを加えるのはやはりヴォーカルの色気。
オルガンとギターによるハイドン風のクラシカルなアンサンブルによる終章が愛らしい。
「Slow Susan」(3:44)リリカルなオルガンとギターが紡ぐ静かなファンタジー。
ほろ酔い気分、そして淡く冷え冷えとした幻想。童謡風。インストゥルメンタル。
「Over And Over Again」(5:54)ワイルドなオルガンが轟き、芯のとおったベースが吠えるハード・チューン。
ドラムスの多彩な表現にも注目。
クラシカルななかにハードロックのプレイを挑戦的に交えたインストゥルメンタルと天高く伸びやかなヴォーカルの絶妙のコンビネーション。
微妙にジャジーに変化するなどベテランらしい多彩な音楽性の懐を見せつつもキャッチーな楽曲へと鮮やかにまとめている。
終盤は爆発的なオルガンのアドリヴ。
スタイリッシュかつプログレッシヴな力作だ。
「Feeling Free」(3:13)ピアノ、オルガンの伴奏でバリーのヴォーカルが冴える PROCOL HARUM、THE BAND 風のスワンプ・ナンバー。「Shine On Brightly」かな。落ちつき切らないグラムっぽいヒネリもあり。
これも名曲だ。
「Fair-Haired Lady」(3:02)アコースティック・ギターの弾き語り。
みごとなまでに SSW 風のデリケートで物憂い雰囲気が出ている。
渋くくすみ過ぎないのはバリーのヴォーカルのジェントルな優男風のタッチのおかげ。
McDonald & Gilles 的といってもいいかもしれない。
白々と空ろな感じがいい。
クラリネットが静かに歌に寄り添って白昼夢を彩る。
「A Place To Lay My Head」(3:37)ヘヴィなオルガンが吠えるドラマチックな R&B チューン。
ピアノ、オルガン、ヴォーカルは黒っぽくソウルフル。
ギターのオブリガートに痺れる。
エピローグのリズム・チェンジが面白い。
「The Eagle」(5:23)ギターの快速アルペジオとオルガン、ピアノのインタープレイを中心に凝ったアレンジで迫るクラシカル・チューン。
序盤のオルガンとギターのアンサンブルはパッヘルベルのカノンを素材としている。
ギターもクラシカルな速弾きソロを見せる。(快速アルペジオはスティーヴ・ハウの芸風に通じる)
ジャズの和声を大胆に放り込むピアノのプレイもおもしろい。
ロマンティックで摩訶不思議な余韻が残る。
インストゥルメンタル。
(CBS 69009 / ESCA 5423)