イギリスのギタリスト、作曲家「 Fred Frith」。 70年代、HENRY COW における前衛音楽とロックの融合から出発し、RIO を通して多くのミュージシャンと共演を続け、意欲的に作品を発表する。 ギター、ヴァイオリン奏者といったプレイヤーとしての活動に加え、作曲者としてもさまざまな分野の音楽を手がけ、多くのアーティストに作品を提供する。
Fred Frith | guitar |
74 年発表の第一作「Guitar Solo」。
HENRY COW 在籍中のソロ・アルバムに、76 年、79 年に発表された二つのソロ・ギター・コンパイル作品よりフリスの演奏のみを抜粋した CD である。
写真は、ESD の CD ジャケット。
ほとんどの作品がギター一本による即興演奏であり(ただし、音だけではギター独奏とは到底思えない)、フリー・インプロヴィゼーショニストとしてのフリスを前面に出した内容である。
ギターという楽器の特性を知り尽くした上で、あきれるばかりに豊富なアイデアを並べ立ててゆく。
ピックや指で弦を弾く、という基本的かつ因襲的な作動原理にこだわらず、音を出すため(あるいは消すための)のあらゆる「スイッチ」を試したみたようなパフォーマンスだ。
あたかも複数のギターがオーヴァーダビングされて、それぞれが自由闊達な演奏を繰り広げているかのように躍動感ある「Hello Music」。
これがギター一本による演奏とは到底信じられない。
「Glass c/w Steel」では何かで弦を摩擦して音を立てているようだ。背景にもう一つ楽器が鳴っているようにも聴こえる。
「Ghosts」は、ヴォリューム・ペダルをうまく使った作品。
これは、わりと仕かけが分かりやすいが、真似してできるかというと別問題。
オルゴールのような音が美しい。
「Out Of Their Heads」では、ファズが使われている。
ピアノの弦を叩いているような音がギターとはとても思えない。
「プリペアド・ギター」なるものが、本作品全編で使われているようだ。
ジョン・ケージのプリペアド・ピアノと同じようなものと想像されるが、どんな調整が施されているかなど、詳細は不明である。
(ジャケットの写真でピックアップ付近に何か付けているのが、それかもしれない)
スチール・ドラムスのような打楽器系の音が凄い。
すばやいピチカートと弦を叩いているのだとは思うが、これまたとてもギターとは思えない。
最後で入る怪獣の叫びのような轟音が意外にギターらしく、妙に安心する。
到底「安心」というカテゴリの音ではないのですが。
典型的な暴力的アヴァンギャルド・サウンドでまとめる大作である。
「Not Forgotten」は、メランコリックな表情が美しい佳曲。
音が二個抜いてあるそうだ。
どの音かなんて考えるのもうっとおしいが気にはなる。
一つは E だと思うが。
「Hollow Music」も、比較的まともにギターを弾いている、すなわち和声やリズムがある作品。
次第にエキサイトするところが、かえっておかしい。
「Heat c/w Moment」も、ファズを使った曲。
ヴォリューム・コントロールとファズのせいか、どこか異教の呪文のようである。
足を踏み鳴らす音が、原始的なパーカッションのようにも聴こえる。
「No Birds」はファズ、ディレイが使われている。
シンセサイザーのような幻想的で空間的なサウンド。
エフェクトもうまく使うと無限の可能性があることを示している。
轟音は、巨大な機械がゆっくり動いているようなイメージ。
どうやっているのだろう。
ギター一本によるインダストリアル・ゴシック・ミュージックである。
二つのギターがせわしなく演奏されてようやくギター・ミュージックらしくなってくる。
デュオは美しく重なりあって響く。
一音の美しさが沁みる。
12 分にわたる大作だ。
楽器の達人の無限の探求心と、徹底的にギターにこだわる職人魂が生み出した傑作。
ギターが好きな人、ギターを弾く人にはお薦め。
またギターにこだわらずとも、先鋭的な音楽としても魅力的、刺激的である。
Frith 氏も Derek Bailey を聴いて影響を受けたのでしょうか。
(ESD 80442)
Fred Frith | bass, guitar, violin, keyboards on 7-13, drums, on 7,11,13 |
Hans Bruniusson | drums on 1-6 |
Eino Haapala | guitar, mandolin on 1-6 |
Lars Hollmer | piano on 1-6, organ on 1-6, accordion on 1-6 |
Marc Hollander | alto sax, clarinet on 1-6, bass clarinet on 7-13 |
Dave Newhouse | alto sax on 7-13, organ on 10 |
Tom Scott | soprano sax on 11 |
Paul Sears | drums on 7,8,10,11,13 |
Billy Swann | bass on 8,10,11,13 |
80 年発表のアルバム「Gravity」。
放浪するフリスが、マルク・オランデル、ZAMLA MAMMAZ MANNA、THE MUFFINS のメンバーやクリス・カトラー、ミシェル・ベルクマンらと共演したダンス・ミュージック・アルバム。
引用によれば、「ダンスとは重力(Gravity)に対する勝利」なのだそうだ。(確かに、ジャケットに描かれた人が宙に浮いている)
スウェーデン、スイス、アメリカ録音。
この後フリスは N.Y. を拠点として活動する。
ZAMLA と共演した 1 曲目から 6 曲目は、さまざまな楽器を使った、変拍子フォーク・ロック。
ペーソスあるテーマをリズミカルに歌う民俗調である。
ときおりシリアスなギターとともに HENRY COW 風の厳しい調子も現れるが、大半は、ノホホン能天気でさりげなく哀愁のあるテーマが輪舞する、すてきな演奏である。
安っぽいキーボードや突っ込み気味の変拍子が生み出すアンサンブルは、軽妙奇天烈にしてひたむきで素朴な魅力があり、一気呵成のノリのよさもある。
特に、ZAMLA が主導権を取っている 5 曲目から 6 曲目への流れがいい。
ZAMLA については、どことなくユーモラスなリズムや奇声などいかにも「らしい」演奏だが、あの北欧臭い独特の節回しが、ここでは汎世界的(無国籍?)ダンス・ミュージックの象徴としての役割を果たしている。
THE MUFFINS と共演した 7 曲目から 13 曲目は、舞曲風であるとともに圧倒的にロックらしい骨っぽさをもつ。
7 曲目冒頭、ロバート・フリップばりに歪み切ったギターが壮絶な緊張感を伴って凶暴にうねる。
みごとなインパクトだ。ゲストのベース、シアーズのドラミングがカッコいい。
すかさず 8 曲目では、楽曲がバラバラと解体し、スットコドッコイなインプロとなる。
そして 9 曲目では「007」の MODS 風パロディの如きサスペンスフルでスリリングな疾走へ。
10 曲目は、長閑なオルガンのテーマをインダストリアルなノイズが取り巻く作品からとぼけたようなギター・インストへのメドレー。
11 曲目では、きっぱりとした縦揺れビートでフリーキーなギターがとぐろを巻く。
12 曲目は、ヴァイオリンを使った東欧、中央アジア風のトラッド作品。ギターやキーボードらによるヘヴィなアクセントも効いている。
13 曲目は、ギター、ベース、ドラムス、ピアノによる即興断片。ノスタルジックな響きのピアノによる幕引きがいい。
CD 化に際しての追加トラックと思われる 14 曲目以降は、HENRY COW の未収録曲や ART BEARS、AKSAK MABOUL、SKELETON CREW の作品から。
最終曲は、最近のギター即興とフリスがコメントしているが、あきれるくらいカッコいい。
(ESD 80452)
Fred Frith | guitars, voice, casio, radio |
Bill Laswell | bass, pocket trumpet |
Fred Maher | drums, percussion |
81 年発表の作品「Killing Time」。
ビル・ラズウェル、フレッド・マアーと結成したユニット MASSACRE の第一作である。
内容は、ロック衝動を煮詰めたようなノイジーでアグレッシヴでケイオティックなロックンロール・インストゥルメンタル。
即興演奏がかなりの割合を占めているようだ。
変拍子や特殊奏法といった実験的な面もあるが、直情的で開き直ったようなグルーヴやロレツの回らない殴打のような衝撃など、パンクなロックの根っこは外していない。
フリスという求道者な音楽家による前衛的な音楽実験が、研ぎ澄まされた刃のように緻密な演奏力を発揮し、音楽以外では表現できないものを確かに表現しながらも、かようにハードコア・パンク風の外観を呈しているところがおもしろい。
さまざな要素が、さながら激流に巻き込まれるように現れては消え、消えては現れる。
聴覚にぎらぎらとソリッドな刺激を残しながら、はたまた、幻のように明滅しながら、勢いよく駆け抜けてゆく。
フレッド・マアーのスタミナ十分のぶっ叩きドラミングは、じつにこの音楽に合っていると思う。
このドラムスなしにはここまでの手応えはなかっただろう。
そして、ざらついたインダストリアルなサウンドから、実験音楽の厳(いかめ)しさや険しさや抽象性はたまたパンクの凶暴性をも越えて、独特のナンセンスなユーモアが染み出ているところもいい。
ニューウェーヴという文脈でも十分通用したと思う。
が、それより何より驚くのは、今現在聴いてもほとんど古臭さが感じられないことだ。
「As Is」は名曲。
楽曲は、パリでのライヴ録音と N.Y. でのスタジオ録音から構成されている。
写真は、左がオリジナル LP ジャケット、右が 2005 年のリマスター版 CD ジャケット。
2005 年リマスター版には、8 曲のライヴ収録曲がボーナスとしてついている。SHADOWS の「F.B.I」のカヴァーが秀逸。
フリスによれば、このリマスター版が元々の作者の意図を最もよく伝えている、とのこと。
MASSACRE は 90 年代に復活を遂げる。
(CEL 6597 / ReR FR010)
Fred Frith | voice, guitar, violin, mellotron, bass on 1,8,10,13, drums on 7,8 | |
ETRON FOU LELOUBLAN | ||
MASSACRE | ||
guest: | ||
---|---|---|
Tina Curran | unusual edit, recorders, bass on 7,12 | |
Roger Kent Parsons | bagpipes on 4 | |
Steve Buchanan | snake sax on 7 | |
George Cartwright | alto sax on 6,7,9 | |
Mars Williams | baritone sax on 6,7,9 |
81 年発表のアルバム「Speechless」。
ETRON FOU LELOUBLAN、MASSACREらと共演した作品。
緊張感あるアンサンブルにフリスが採集したテープ音を背景や効果として散りばめることによって、音楽への一面的な集中を打破するような大胆なベクトルが生じ、
突発的なおかしさや驚きとともに、リスニングに新しい刺激を与えてくれる。
前半、ETRON FOU LELOUBLAN との共演部分は、管楽器やハーモニウムの音、激しいドラムス、ユーモラスなギターが印象的。
メロディは比較的わかりやすいが、追い立てるようなリズムとノイズや効果音のおかげで、先の読めないスリルがある。
3 曲目は無国籍風ながらも明快な民族ダンス音楽。
4 曲目は、ユーモラスな民族ダンス音楽と無機的、攻撃的な演奏が交錯する勢いのいい作品。
5 曲目「Women Speak To Men;Men Speak To Women」は、効果音とアンサンブルが一体化したアヴァンギャルドな佳作。
後半は MASSACRE との共演。
ノイズや即興を何もかもごたまぜにして強靭かつ不器用極まるリズム・セクションが強引にドライヴする。
異なるアンサンブルを巧みに一つにまとめ上げる、尋常ならざる音の定位を作り上げるなど、編集の技が冴える。
自然なニューウェーヴっぽさがあるところがおもしろい。
8 曲目「Balance」は、まともには突っ込ませてくれない怪曲。
CD には 6 曲 のボーナス・トラック付き。すべて、趣向を凝らした奇曲ぞろい。
(ESD 80542)
Fred Frith | guitar |
83 年発表のアルバム「Cheap at Half the Price」。
4 トラック宅録によるオリジナル・ポップ・ソング・アルバム。
ドラムス以外はフリスの演奏。
何を演るか伝えずドラム・トラックを作らせた(ハンス・ブルニッセンやフレッド・マアーである)、といういかにも「らしい」話が裏ジャケに載っている。
内容は、元気一杯のヴォーカル中心の軽快なポップロック。
伴奏は、煽り気味のリズム(無理矢理ループ)とサーフ・ロック調ギターとオモチャみたいなキーボード。
ニューウェーヴでもなきゃ今までの音でもない、へんてこりんな作品である。
アカデミックで職人的なギター即興音楽求道者であるとともに、独特のセンスをもつポップス、ロック・ミュージシャンであることがよく分かります。
(ESD 80572)
Fred Frith | guitars, violin, flotsam, bass |
Chris Cutler | drums, electrified drums, jetsam, contact mike, telephone mouth-piece |
90 年発表のアルバム「Live in Moscow, Prague & Washington」。
83 年に発表された LP(83 年プラハでのライヴと 79 年ワシントンでのライヴを収録) に 89 年のモスクワでのライヴ録音を追加した CD である。ジャケット写真は左側が CD で右側が LP。
内容は、プリペアド・ギターやエレクトリック・ドラムスの生み出す轟音ノイズ(ヴォイス含む)を徹底的に用いた完全即興演奏。
いわゆる旋律や和声、リズム、シーケンスはなく、二人の演奏家が、時に勝手に時に相互に触発されて高揚したり弛緩したりを繰り返す。
(ごくたまに民族音楽風のメロディやギター・リフらしきものが浮かびかがる)
また、少なくとも一部は電気処理されているはずだが、全体の音の感触はアコースティックな生音のものである。
これは、打楽器的な音が主なためだろうか。
1 曲目のモスクワ・ライヴでは、21 分あたりで演奏が一段落してまばらな拍手が起こるが演奏はそれを無視するかのように力いっぱい甦って続いてゆくという、臨場感あふれる展開となる。
2 曲目プラハ・ライヴは、1 曲目よりも「動き」が感じられる、ハードなアタックのある演奏である。中盤のドラミングがものすごい。
「Moscow」(43:00)
「Prague」(27:13)
「Washington」(2:49)
(LP Re 1729 / ReR CCFFCD)
Fred Frith | guitars, violin, flotsam, bass | Tom Cora | cello, drums, vocals |
Zeena Parkins | keyboards, drums, vocals | Bill Laswell | bass |
Fred Maher | drums | Bob Ostertag | synthesizer, tape, sampler |
Haco | piano, vocals | John Zorn | sax |
Daihachi Oguchi | drums | René Lussier | bass |
Kevin Norton | drums | Jean Drome | sax |
Hans Bruniusson | drums | Eino Haapala | guitar, drums |
Lars Hollmer | keyboards | Tim Hodgkinson | clarinet |
Iva Bittová | violin, vocals | Pavel Fajt | guitar, vocals |
Tina Curran | bass |
90 年発表のアルバム「Step Across The Border」。
同名のドキュメンタリー映画の音楽集。
特殊奏法と人声(日本語)、ノイズを散りばめた演奏はタイトで刺激的、なおかつセンチメンタルなほろ苦さや旅愁があり、ロックなカッコよさにあふれる。
アグレッシヴな MASSACRE の演奏や ZAMLA との共演の録音、既発表曲の続編もあり。
本来は映像込みで鑑賞すべきだろうが、音楽だけでも十分に魅力的であり、フリスのベスト・アルバムとしてとらえることもできる。
本作のような記録映画含めて、商業分野でもジャームッシュやヴェンダースなど、アンダーグラウンドなスタイルの映像に大きく日の当たった時代でした。
(みんな彼女、彼氏とこざっぱり決めて「バグダッド・カフェ」や「ベルリン天使の歌」見たでしょ)
「Williamsburg Bridge」のギターの響きが胸を打つ。
個人的にはベスト。
(RecRec 30 / ESD 80462)
Fred Frith | guitars, bass, violin, caslo, piano, drums, singing |
Tom Cora | cello, bass, caslo, drums, contraptions, singing |
84 年発表のアルバム「Learn To Talk」。
N.Y. にて結成した新グループ「SKELETON CREW」による第一作。当初デイヴ・ニューハウスを含む四人編成だったらしいが、結局、トム・コラとのデュオに収まる。(第二作ではジーナ・パーキンスが加入する)
ライヴもこの二人で行っていたようだ。
内容は、エネルギッシュでキレのいい、おまけにユーモアもあるパンク調アヴァンギャルド・ロック。
荒っぽくもパワフルなドラム・ビートにのせた元気の塊のような演奏だが、勢い任せのようでいて、音色はあまりに多彩であり、弦楽器によるクラシカルな表現や SE、ラジオ音声のコラージュ、カットバック的な演出もあり、脈絡ある音楽展開による効果はしっかりと計算されているようだ。
即興の鬼のような二人が過激な姿勢のまま真っ当にポップ・ミュージックにアプローチしているようでおもしろい。
大道芸的なペーソスとコミカルさとともに、痛快な開き直りによる、ロックな骨っぽさ、締まり具合、クールな叙情性が抜群である。
いわゆる即興音楽の非慣用的(non-idiomatic)な表現を使いながらも、変に堅苦しい現代音楽ではなく、アジテートするロックに正しくなっている。
そこがいい。
ヴォーカルがこの時代の英国ロックらしさあふれるパンキッシュでダムヘッドなスタイルであるところが意外だった。
右側のジャケットは、RECREC による次作との 2in 1 CD のもの。
(RecRec 05 / reCDec 512)
Fred Frith | guitars, 6string-bass, violin, home-mades,drums, singing |
Tom Cora | cello, bass, accordion, drums, contraptions, singing |
Zeena Parkins | organ, electric harp, accordion, drums, singing |
86 年発表のアルバム「The Country Of Blinds」。
「SKELETON CREW」による第二作。ジャケット写真は LP のもの。
ジーナ・パーキンズが参加してトリオ編成となる。
特殊奏法による効果音的音響と絶叫型ヴォイスを活かした、時にシリアス、時にインダストリアル、時にのどかなアヴァンギャルド・ポップ。
女声があるため、イメージ的に SLAPP HAPPY につながるところがあるが、よりシンプルでワイルドなロックビートによる頭悪そうな感じが特徴である。
パーキンズのヴォーカルはなかなか過激。名作「The Border」収録。
なぜか、ボブ・マーレイのバンドとの共通性も感じる。
CD は「Learn To Talk」との 2 in 1。
(RecRec 12 / reCDec 512)
Fred Frith | composition |
Emsemble Evan Kant | performance |
Sergio Meza | poetry reading |
98 年発表のアルバム「Pacifica」。
内容は、フリス作曲の現代管弦楽曲である。
管弦楽といったが、弦よりも重層的な管楽器ドローンが主であり、他にも鍵盤楽器の多用やパーカッション類、プリペアド・ギター、ささやき、録音音源など独特の音楽構成になっている。
独特の健やかさ、まろやかさのあるサウンドによるスペイシーで瞑想的な作風である。(個人的には ART BEARS に近いと思う)
まさしく「レコメン・オーケストラ」だが、そういってしまうとアヴァンギャルドな面ばかりが強調されそうで、的を外しそうだ。
険しさや逸脱感はさほどでなく、誘惑的かつ催眠効果のあるサウンドから無機的な叙情性とでもいうべき個性あふれる「歌」や諦念の果ての「祈り」が聴こえてくるというべきだろう。
読み上げられる詩は、遅れてきた象徴詩人パブロ・ネルーダによる。
45 分あまりの作品と 3 分弱の小品の二曲構成。
カリフォルニアのビッグサーで太平洋を眺めながら作曲したそうです。
(TZ 7034)
Fred Frith | guitar, bass, keyboards, violin, tape manipulations |
Joey Baron | drums |
George Cartwright | alto sax |
Tom Cora | cello |
2004 年発表のアルバム「Allies」。
89 年録音、96 年発表の作品の再発盤。
2004 年に再マスタリングと記載がある。
「The Technology of Tears」に続く、舞踏パフォーマンスのための音楽第二弾ということだ。
内容は、メランコリックなメロディとはっきりしたリズムによるアンサンブルが切々と続くインストゥルメンタル。
アヴァンギャルドな感じはほとんどなく、やや翳のある表情を保ったまま、淡々と演奏されてゆく。
カートライトのサックスですら、情感のあるフレーズを紡ぐことがある。
また、バロンのドラムスは、ニューウェーブ風のシンプルな 8 ビートに痛いくらいのインパクトがある。
どちらかというとクラシカルというべき作風だろう。
シンプルな素材を少しづつ変化させ、重ねてゆくフリスの丹念な作曲/アレンジ手法が、古典的な音楽の構築法に通じるからだろう。
破断による緊張の喚起の仕方も巧みであり、ドラマを感じさせる。
全体に、明らかにカンタベリー・ファン、プログレ・ファン向きの内容だ。
改めて、ロバート・ワイアットと共鳴する個性を感じました。
また、おそらくもう少し音を「それ風に」加工すると、ECM の作品といって通るでしょう。
CURLEW のジョージ・カートライトをはじめ、盟友トム・コラ、NY フリージャズ・シーンの名ドラマー、ジョエイ・バロンらがサポート。
(ReR FR0 07)