ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「FRUMPY」。 65 年結成、72 年解散。 作品は四枚。 オルガンをフィーチュアした黒っぽいヘヴィなサウンド。 90 年に再結成。 ヴォーカリスト、インガ・ランフは現役シンガー。
Carsten Bohn | drums |
Inga Rumpf | vocals |
Jean-Jaques Kravetz | keyboards |
Karl-Heinz Schott | bass |
70 年発表の第一作「All Will Be Changed」。
内容は、ソウルフルなゴスペル系女性ヴォーカルとオルガンをフィーチュアした、R&B 色濃いヘヴィ・ロック。
R&B に加えて、ジャズ色やアーシーな力強さもある、典型的な 70 年代初期のサウンドである。
オルガン中心に、ひたすらエネルギッシュに攻め捲くる。
フランス出身のキーボーディストは、オルガン以外にもピアノ、チェンバロを操り、音色に変化をつけている。
そして、ジャズを主にクラシックから中近東にまでにわたる多彩なフレーズを用いるところが特徴だ。
R&B 調が瞬時にクラシカルなソロに変貌するところは、まさしくプログレの醍醐味であり、ジョン・ロード、キース・エマーソン、ピート・ロビンソンといった猛者連に並ぶ、けたたましくも色艶のある演奏である。
ランニング・ベースと手数勝負型ジャズ・ドラムスからなるリズム・セクションのプレイも豪快そのもの。
また、女性ヴォーカルは、ハスキー・ヴォイスのコントラルトであり、すばらしくパンチの効いた傑物である。
声質だけだとハイトーンの男性といってもわからないし、何よりその存在感がすさまじい。
攻めに徹したインスト・パートのおかげで、「引き」のパートにはブルージーで切ない情感が濃密に漂う。
イメージは、長髪、ベルボトム、ヒッピー、もしくは咥え煙草で夜霧の第三京浜ぶっ飛ばしながら別れた人を思うとき、貴女のカーステから流れてきそうな音です。
オルガン・ファンは必携。今ならクラブ御用達。
「Life Without Pain」(3:50)シングル向けの逸品。
シンプルな繰り返しにもかかわらずしっかりと世界を描ききる。
「Rosalie Part 1」(6:00) VANILLA FUDGE を思わせるサイケデリックなオルガンをフィーチュアした作品。
乾いた情感の漂う序奏を経て、ジャジーなベース・ランニングとともに圧倒的なアドリヴが炸裂する。
後半再びドライなスロー・バラードへと変化し、銃口にたなびく煙を見つめるようにヴォーカルが歌いだす。
最後は息せき切るようなテンポ・アップ。そして次曲へ。
幻想的にしてハードボイルドな傑作だ。
「Otium」(4:22)再びクールなジャズ・オルガンが走る。
シャフルから細かいビートへとリズムが変化すると、それに連れてオルガンもクラシカルなオスティナートへ。
一転チェンバロによる華やかなソロ。
フォスター辺りの作品を思わせる展開である。
終盤思弁的とでもいうべき重厚な演奏から次曲へ進む。
THE NICE や COLOSSEUM の「Valentine Suite」、BEGGARS OPERA の作品を思わせるインストゥルメンタル。
「Rosalie Part 2」(4:14)
うっすらと流れるオルガンに支えられて、ヴォーカルが静かにささやき始める。
雪崩を打つようにテンポ・アップと思いきや、一転ホンキー・トンク・ピアノともにルーズなブギーが始まる。
ヴォーカルはロバート・プラント風。
「Indian Rope Man」(3:19)
半音下降のメランコリックなテーマと一気にヒート・アップする展開がノスタルジックにしてスリリング。
泣きのヴォーカル、ジャジーなオルガン、ベースがカッコいい。
「Morning」(3:24)
リズム・セクションの存在が際立つパーカッシヴな R&B ナンバー。
バスドラ連打による沸立つようなビートとサックスが目新しい。
自由に暴れるオルガンもいい感じだ。
「Floating Part 1」(7:39)
モッズかビートポップといった趣のオープニングが意外な即興組曲。
アフロなビートなどのアレンジもあるが、やはりベースのリフに支えられたオルガンのプレイが圧巻。
完全フリー・フォームの即興を経てドラム・ソロ。
「Baroque」(7:36)オルガンをきっかけに本曲へ。
初めはドラムレスで完全なアドリヴである。
「Floating Part 2」(1:25)
「Roadriding」(4:02)ボーナス・トラック。
「Time Makes Wise」(2:49)ボーナス・トラック。
(PHILIPS 6305 067 / RR 4146-WP)
Carsten Bohn | drums |
Inga Rumpf | vocals |
Jean-Jaques Kravetz | keyboards |
Karl-Heinz Schott | bass |
Rainer Baumann | guitar |
71 年発表の第二作「Frumpy 2」。
ギタリスト新加入に伴いサウンドは前作よりも R&B 色が後退、オルガンとヴォーカルのせめぎあいを中心としたハードロック色を強めている。
破天荒なオルガンに対して、ギターは比較的メロディアスでオーソドックスなプレイに徹する。
とはいえ全体にはどっしりと腰の座った雄々しい演奏であり、展開も悠然たるもの。
テーマをリフでドライヴし、ブルージーなソロへと流れ込む演奏は英国の一流グループと遜色なく、スタイリッシュかつ完成度が高い。
すべての曲がドラマチックだ。
そして一番の特徴は、無常感漂う独特の幻想性だろう。
この空気感は、LED ZEPPELIN に迫っている。
白熱するインストゥルメンタル・パートとクールな叙情性が矛盾なくそびえ立つ。
特に 2 曲目は名曲。
VERTIGO、NEON、ハードロック・ファンおよびオルガン・ファンには絶対のお薦め。
「Good Winds」(10:02)幻想的で悠然としたテーマをもつ大作。
中盤から堰を切ったように飛び出すオルガンがカッコいい。
「How The Gipsy Was Born」(10:05)堂々たるミドルテンポのハードロック。
ヴォーカルの力量を見せつける。
劇的。
クラシカルにしてパーカッシヴな後半の演奏は、プログレの王道といえるだろう。
「Take Care Of Illusion」(7:30)CRESSIDA や BEGGARS OPERA を思い切りヘヴィにしたようなオルガン・ロック。
後半のアラビア風の音使いがおもしろい。
DEEP PURPLE よりも遥かに爆発力がある。
「Duty」(12:09)古色蒼然たるメロトロン・ストリングスの調べで幕を開ける、正調英国ロック。
どっしりブルージーなヴォーカル、ワウ・ギターのオブリガート、オルガンの和音の轟き、クラシカルなオルガン・ソロ、俊敏なベース・ラインなどすべてのパーツがオーセンティックである。
(PHILIPS 6305 098 / RR 4339-WP)
Carsten Bohn | drums |
Inga Rumpf | vocals |
Jean-Jaques Kravetz | keyboards |
Karl-Heinz Schott | bass |
Rainer Baumann | guitar |
72 年発表の第三作「By The Way」。
内容は、R&B、ソウル、アーシーなアメリカン・ロックの影響色濃いしなやかなブリティッシュ・ロック。
いわゆるハードロックのスピード感やメタリックな重量感はさほどでなく、サザン・ロック調の跳ねるような弾力とファンク感覚の強い演奏、さらには攻撃的なオルガンを用いたヘヴィ・サイケ調の展開もある。
翳りや澱みよりも開放的な面が目立ち、おおむね、アメリカ志向の音といえる。
インガのヴォーカルは、R&B 的な粘り腰と存在感ある声量を兼ね備え、シャウトはほとんど女クリス・ファーロウ状態。
また、ギターは過剰なスペースは取らずに見せ場できちっと引き締めるタイプ。
スライドも何気なく決めており、前作までのおとなしさがウソのようだ。
オルガンやエフェクトを用いたエレピ、凝った構成などがややプログレ的だが、全体のイメージは、ファンキーかつ翳りのあった初期英国ロックがややアメリカを向き始めた頃の音、これだろう。
手数の多いドラムスとヴォーカルを中心とした俊敏な演奏にバンドの一体感がある。
個人的には、土臭さや黒っぽさとシリアスな重量感のバランスが理想的。
「Goin' To The Country」(3:40)スライド・ギター、ホンキートンク調のピアノなどサザン・ロック風の作品。
「By The Way」(8:51)EARTH AND FIRE のような、バラードの間奏がプログレな佳作。
序盤を忘れそうなほどサイケに広がる。
「Singing Songs」(7:02)米国風と英国風がみごとにごちゃごちゃになった作品。
「I'm Afraid, Big Moon」(6:25)ハードロック。
「Release」(8:50)
「Keep On Going」(5:25)
(VERTIGO 6360 604 / IMS 7019)