イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「GREENWALL」。 90 年代から活動。作品は、中心人物らしきキーボーディスト名義の作品も含め、四枚。
Andrea Pavoni | keyboards, piano, programming | Fabio Zoeli Ciliberti | bass, backing vocals |
Riccardo Sandri | guitars | Michela Botti | vocals |
Andrea Moneta | drums, all percussion on 5 | Alfredo De Donno | keyboards |
guest: | |||
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Sofia Baccini | vocals on 1,4,7 | Francesco Chillemi | speaking voice on 1 |
Alessandro Tomei | flute on 5,6 | Pierpaolo Ferroni | drums on 7 |
Pierpaolo Ranieri | bass guitar 7 |
2005 年発表の第三作「From The Treasure Box」。
内容は、ファンタジックでアンビエント、ややジャジーなシンフォニック・ロック。
音楽的なパッションをクラシックやジャズに強く依拠しつつ噴出させることで独特の味を出していたイタリアン・プログレだが、ここでは、サウンド面でもアレンジ面でも、その手際ははるかに洗練されている。
効果音を巧みに交えた薄墨色のサウンド・スケープやクリアーな管弦楽シミュレーションなど、すべてに透明感があるところが特徴だ。
気品とコケットさを兼ね備えた女性ヴォーカリストは声域が広く表情豊かに、安定した歌唱を見せる。
ニューエイジ風味を強く印象づけるのはこのヴォーカルである。
また、いわゆるロック・ギターらしいプレイはほとんどなく(サウンドの透明感はこのためでもある)、演奏はキーボード主体のアンサンブルを軸にしている。
忙しなくたたみかけることもあるが、小洒落たリフレインにのせて、なめらかなメロディとふくよかな和声の響きを携えて静々と進むのが基本である。
90 年代ネオ・プログレのようには 70 年代プログレの影響を直に露にはせず、モロなフレーズ(P.F.M !)すらも、あくまでさりげなくおり込むところが今風である。
シリアスな展開においても、その面持ちの向こうには、反骨心よりも、風景にとけ込んで消え入りそうな静かな諦観が感じられる。
いわゆる「草食系」というやつだ。(そういえば名前も「緑の壁」と、いかにも植物系だ)
トラジックで重厚な盛り上がりを見せるところでも、力強さよりも女性的なデリカシーや慎ましさが強く感じられる。
こういうところは、PORCUPINE TREE など新しいマニア世代による作品に共通すると思う。
ハープを思わせるシンセサイザー・サウンドやアコースティックな音響に気を遣うという点で、90 年代の FINISTERRE や H2O が思い浮かんだ。
全体としては、薄味ながらも場面の変化に富みキレのいいビート感と現代的なクールネスを盛り込んだモダン・シンフォニック・ロックの佳作といえるだろう。
創作童話の装丁画を思わせるジャケットとブックレットのアートワークは、Serena Riglietti というイラストレータによるものらしい。
「Il Cunicolo」(5:07)
「Dentro La città'」(1:46)
「Abbiamo Ragione」(5:00)プレモリ氏のあのミニ・ムーグのフレーズが。
「Dondolando Su Laghi Di Smeraldo」(5:28)
「La Gabbia」(3:59)
「Pollicino」(7:01)
「Preludio... To The End」(26:17)オムニバス風の超大作。環境音楽的な聴き方ができ、BGM にしておいても心地よい。
「Intro」(3:20)シンセサイザーによる木管アンサンブル風の美しい小品。次回作への導入か、はたまた後置された前曲のイントロか。
「Là, Dove」(1:45)隠しトラック。13 曲目として現われる。
(RRCD 003)