スウェーデンのベーシスト「Jonas Hellborg」。 ジャコ・パストゥリアス亡き後のスーパー・ベース・プレイヤーの一人。 再編 MAHAVISHNU ORCHESTRA で頭角を現す。 80 年代は MAHAVISHNU ORCHESTRA 以外にもいくつかのグループに参加、近年も急逝したショーン・レーンとともに、ハードコアなサウンドで作品を発表し続ける。
Jonas Hellborg | bass |
Mattias IA Eklundh | guitars |
Jens Johansson | keyboards |
Anders Johansson | drums |
Salvaganesh | kanjeera |
2007 年発表の「Art Metal(Vyakhyan Kar)」。
ひさびさに、ヨハンソン兄弟とともに製作された作品。
内容は、ジャズロック+ヘヴィ・メタル+民族音楽+パンクの鮮やかなる合流。
エルボーグ氏が、共演者を変化させつつも、積年追い求める音楽である。
変人ギタリスト好きも変わらない。
まずは、四の五のいわずに、怪人エクランドが刻む嵐のような変拍子リフと超速スラップとの痛快きわまるバトルを堪能しよう。
ただし、かように狂暴な音で遮二無二圧迫する演奏はエルボーグ氏の得意中の得意だが、本作品ではそこにとどまらず、音楽の彩りをもっと余裕をもって明快に提示しようとしている。
その結果、豊かなイメージを与えるパフォーマンスになっている。
弾けるようなスラッピングとインド・パーカッションをフィーチュアした、加工し過ぎない細身のリズム・セクションが、ガレージ風の小気味よさでファンク・テイストを生み、もろに KING CRIMSON なところや、ワウギター、ストリングス系のバックグラウンド、リフの組み立てなど、ハードロック/プログレ・クラシカルなところもある。
ギターのプレイは古典的 HM テイストのパワーリフ + エキゾチズム + ホールズワース流の奇怪なソロが中心で、超絶的なアコースティック・ギター技も披露、また、ドラムスは、ヨハンソンらしい「人間リズムマシーン」演奏が健在、独特なタッチのパーカッションとともに切り刻み捲くってもビート感はシンプルかつ軽やかであり、ベースとの相性もいい。
また、エキゾチズムは、インド/第三世界のみならず「原始」への憧憬もありそうだ。
ストイックかつサディスティックな演奏の中に、意外や和むシーンもあるが、そういう場面でも表現は堂々としている。
ところで、全曲でリズムを支え、核爆発的な最終曲ではソロも取る Kanjeera というのは、腕に抱えるサイズの小ぶりな太鼓のようです。
音からはとても信じられませんが。
全体として、確かにテクニカルだが、テクニックの応酬というイメージの演奏とは異なる、軽やかさと余裕のあるパフォーマンスです。
アコースティックな音の質感が活かされているのも、特徴だろう。
パーシー・ジョーンズ TUNNELS との聴き比べもおもしろいだろう。
(BARDO 045)
Jonas Hellborg | bass |
Jeff Sipe | drums |
Shawn Lane | guitars |
2002 年発表のライヴ・アルバム「Personae」。
内容は、早世した超速ギタリスト、ショーン・レーンを中心としたハイパー・ヘヴィ・ジャズロック。
ドイツでのライヴ録音にスタジオで若干手を加えたもの。
あれ、意外にジャズな瞬間がある、と思ってしまうということは、それ以外の部分が、あまりに度外れているということだと思う。
レーンはスウィープによる跳躍アルペジオや変則スケールといった技巧を軽やかに放っている。
テクニカルなあまりメロディや和声といった人間的な呼吸をぶっ飛ばしてしまっていて抽象的な印象を与えるかもしないが、決してプレイは無機的ではない。
要は、すさまじく速いのである。
変な言い方だが、いわゆる「ハードロックの泣きのギター」や「ジャズ・ギター」を 10 倍速 10 倍密にした感じである。
同じ速いプレイでも「ひっかかり」や抵抗を感じさせるプレイは人間的な息遣いを感じさせるが、これだけ摩擦のないなめらかな速さ(キーボード的ななめらかさといってもいい)は異様に聴こえても仕方がないと思う。
3 曲目のソロのように、あまりに速くて音が固まりあっているためフレーズがよく分からないが、それでも音色はたっぷりとエモーショナルである。
イバニーズのいい音が出ている。
そもそもフレーズを分解していわゆるメロディとして理解する必要はなく、この弾力ある音の塊をそのまま受けとめて、目を回していればいいような気もする。
また、元々メインストリームのフュージョンをやっていてメロディアスに歌うのも得意だったそうで、確かにこういうスタイルにしてはピッキングが意外なほど丁寧だ。
そしてレーンのプレイには、アメリカ人の血の為せる業か、ライトなカントリー・テイストがあるようだ。
おそらくはそれがうまくはたらいて、稠密過ぎる音楽から重苦しさを払拭している。
また、三人それぞれの個人技は当然として、ギターとベースとのやり取りなど、トリオとしての呼吸の良さが分かるところもたくさんある。
個人的には、ジェフ・サイプのヌケのいいドラミングも好み。
2 曲目の中盤のようにエルボーグのベースもあいかわらず凄まじいが、全体としては本作ではギターに主役を譲っている感じがある。
しかしながら、ハードロックが大好きなところは二人とも同じだ。
インストゥルメンタルとしての技巧を極めた名作であり、いわゆるフュージョンとはまったく異なるヘヴィなファンク調ジャズロックの代名詞となる作品である。
「Time Is The Enemy」(4:39)比較的ギターのフレーズが分かりやすく、ノレるハード・ジャズロック作品。
「Rag B/B」(20:08)ソロを盛り込んだロマンティックな長編。わりとジャズ。
「Personae」(07:18)フレットを飛び回りつつも美しくブルーズ・フィーリングあるギターがいい。
「Heretics」(11:23)後半、ジェフ・ベックばりのスタイリッシュなギター・ソロにやられます。エルボーグのスラップも快調。
「Hell is Other People」(8:00) 後半、BRAND X を思わせる展開が。
「Rice with the Angels」(05:21) 両手奏法による曲芸的なギター・ソロ。冒頭がベックっぽいぞ。
(BARDO 041)
Jonas Hellborg | bass, MIDI bass, keyboards |
Ulf Wakenius | guitar |
Jaime Salazar | drums |
Robert Blennerhed | guitar |
Trilok Gurtu | drums, percussion, tabla |
89 年発表の「Adfa」。
再編 MAHAVISHNU ORCHESTRA を退いた後の作品。
布陣は、ギター、ドラムス、ベースのトリオを基本に、適宜キーボードを加えたもの。
ドラムスは、マシンとプレイヤーを同時に使っているが、プレイヤーのメンツが凄い。
今をときめく THE FLOWER KINGS のレギュラー・ドラムスのハイメ・サラザールとインドの怪人トリロク・グルツである。
グルツとは MAHAVISHNU のツアー中に出会い、彼の作品にもエルボーグが参加している。
内容は、きわめて個性的なリズム・パートをもつテクニカル・フュージョン。
1 曲目「Sweet Tooth」(2:33)
ハードロック系テクニカル・ジャズロック全開。
ファズ・ベースがほとんどギターのような轟音をたてる。
ギターが大きくフィーチュアされている。
2 曲目「Sandman」(5:46)
ギターの如きファズ・べースは自由気ままにバッキング、ギターは絶叫し、シンセサイザーがぶわっと響く、不思議な曲である。
打ち込み+人力二重ドラムスが、機械的なビートを強烈に叩き出す。
最後はダブルベースのスラッピングだろうか。
ファンク/ヒップホップ的であり、リズムが主役の作品。
3 曲目「Adfa」(4:36)
サンプリング・キーボードと MIDI ベース、スラップ・ベースが絡まり合う作品。
ドラムスは、再び二重構造。
よく聴くと、普通のエレキベースの音とシンセサイザーっぽい音、ビョンビョンいう音とプツプツいう音がある。
この分けわからぬバッキングで、ギターのソロがどこか白々しい。
ファンキーな曲調が「変」である。
4 曲目「Major Minor Movement」(4:49)
突如現るメロディアスなバラード。
ズッコけそうな落差である。
ギタリストも交代し、ぐっとジャジーなプレイを聴かせる。
アコースティック・ベースのソロは、息遣いが聴こえそうなほど、すばらしい演奏である。
オルガン系のシンセサイザーも暖かい響きを持つ。
立派なフュージョンだ。
ただし、ドラムスは、こういう曲想での細かなニュアンスが苦手な模様ではあるが。
5 曲目「Body Talk」(4:34)
ドラマーがグルツに交代。
きわめてアド・ホックなドラミングとなり、楽器としての主張がある。
序盤は、ノイジーなベースとドラムスのフリーな応酬。
ギターのリードで、一気にブルージーな演奏が立ち上がる。
なまめかしいスラッピングとアメリカンなギターの呼応もいい感じだ。
スティール・ドラムスのような音は、MIDI かパーカッションか。
ベース・ソロ(きわめてアコースティック)は、テンポというか呼吸というか、ブルーズ・フィーリングあふれる絶妙なプレイ。
速けりゃいいってもんじゃないヨ、ゲイリー・ウィルス君。
6 曲目「Why Does It Happen?(PART.1)」(2:58)
タブラとアコースティック・ベースのデュオ。
美しく張りのあるベースの音色。
暖かな南の夢。
7 曲目「Why Does It Happen?(PART.2)」(4:20)
再びホールズワース風ギターが入り、ドラムスも(ケッタイではあるが)復活。
ベースは奇妙な変調がなされており、うごめくような演奏。
最初のベース・ソロが軽やかだ。
ギタリストはホールズワース的である以外は、さほど個性的ではない。
むしろ、ギターに絡むスラップ・ベースとドラムスのプレイがおもしろい。
個性的なリズムによるテクニカル・フュージョン。
8 曲目「Sign」(3:05)
激しいドラムスとベースによる超絶ユニゾンの断続。
ジョン・マクラフリンがベースを弾いているような感じである。
ジャジーなシンバルをバックに、東洋風のベース・ソロが続く。
シンセサイザーの和音も不思議な色合いだ。
ギターはここでも同じようなソロ。
三人が勝手に演奏している。
9 曲目「Berlin」(2:43)
SE とベースのみによる作品。
雷鳴や雨の音、鳥のさえずりのなかを、エレキベースがゆったりと響く。
音に広がりと芯がともにある。
フレーズの呼吸がわたしと合うみたいです。
10 曲目「New York Fall」(3:29)
打ち込みドラムスとアコースティック・ベースのデュオ。
ベースは、あたかも、アコースティック・ギターのようなニュアンスをもち、デリケートかつライヴなプレイ。
エモーショナルなベースに対し、打ち込みのスネアの音が、描き割りのような非現実感を醸し出し、奇妙なアクセントとなっている。
11 曲目「Spinal」(1:29)
ベースのみの多重録音作品。
MIDI トリガのオルガンとビートを刻むエレクトリックのスラップ、そしてアラビア風のメロディを奏でるアコースティック・ベースによる。
12 曲目「Tap」(3:02)ラップ。
ヴォイスとベースの多重録音。
4 曲目、6 曲目のアコースティック・ベース・ソロが非常に美しい。
10、11 曲目も、ベース独奏の可能性に挑戦し成功した作品。
また、エレキ・ベースのスラッピングの音がクリアーなのも、この人の特徴か。
他の曲も痛快なハード・ジャズロックである。
(JICL-89111)
Jonas Hellborg | Wechter acoustic bass guitar |
Tony Williams | drums |
guest: | |
---|---|
Soldier String Quartet |
90 年発表の「The Word」。
ドラムスに名手トニー・ウィリアムスを迎え、弦楽四重奏をしたがえた作品。
得意のアコースティック・べースを駆使して、躍動するジャズロックから、きわめてシリアスな室内楽、ロマンティックなセレナーデまで、さまざまなスタイルに挑戦している。
そして、モーダルな中近東音楽、近現代クラシック、ジャズ、ロックといった幅広い音楽の背景にそそり立つのは、ベラ・バルトークの偉容である。
ジェフ・セファー、ZAO を思い出してしまう場面もある。
それにしてもエルボーグ氏、きわめてパンクなマインドの異端児にもかかわらず、弦楽四重奏、トニー・ウィリアムスと共演し、これだけの重厚なロマンを感じさせる作品を生み出してくる。
やはり只者ではない。
ウィリアムスの、LIFETIME を彷彿させる容赦ない爆発的なドラミングに感動。
特に厳かな序章を経た、2 曲目のプレイは圧巻。
現代音楽的な風格を備えた大傑作である。
プロデュースは、元祖「仕掛人」ビル・ラズウェルとエルボーグ。
「Akasha」(0:54)
「Zat」(1:50)
「Saut-E Sarmad」(3:28)
「Two Rivers」(4:32)
「Be! And All Became」(3:19)
「Poets」(2:36)
「Black Rite」(6:29)
「Cherokee Mist」(5:00)ジミ・ヘンドリクス作。
「Miklagaard」(5:14)
「Path Over Clouds」(3:27)
(AXIOM 162 539 898-2)
Jonas Hellborg | Wechter acoustic bass guitar |
91 年発表の「The Silent Life」。
アコースティック・ベース一本で勝負の完全ソロ・アルバム。
正直、アコースティック・ベースでここまでできるとは思わなかった。
すさまじいパワーを解き放つような激しいストロークと超絶スラッピング。
そして、シングル・ノートを大切にした歌のあるフレージングもすばらしい。
ストロークの効果は、いってみれば、津軽三味線に通じるのではないだろうか。
そして、ブルーズ・フィーリングを超え、ガット・ギターの哀感に通じるエモーションもある。
とにかく、一音にかける真剣さは、「鬼気迫る」といっていいレベルである。
圧巻は、1 曲目の激しいストロークと 3 曲目の歌心あふれる演奏、6 曲目のスラッピングを駆使したポリフォニックにしてダイナミックなプレイ、そして 11 曲目、タイトル・チューンの不
敵なまでに腰が据わったパフォーマンス。
鋭い眼光を放つモノクロームのポートレイトのイメージ通りの内容です。
名盤。
(DEM 026)
Jonas Hellborg | bass |
Jens Johansson | organ |
Anders Johansson | drums |
94 年発表の「e」。
ヨハンソン兄弟との共演作。
オルガン、ドラムス、ベースのシンプルなトリオ編成による演奏は、最早ジャズというよりは、「ハード・ファンク・プログレ」というべきものだろう。
刻みに刻み押しに押す、とにかく凄まじい演奏である。
冷静なままイタズラの限りを尽くすベース、抑え目にして痺れるような速弾きフレーズを繰り出すオルガン、打ち込みよりも非人間的な人力ドラムス、全者譲らずカッコいい。
ドラム・ロールとの壮絶なユニゾンや抑えた反復がインプロの嵐に爆発する瞬間なぞ、快感といわずしてなんといおう。
決めどころのベースの音は、ジャズロックというよりも、PRIMUS やレッチリ辺りを思い出してしまうオルタナティヴ/HR/HM 系のもの。
また、ヨハンソンが参加した曲がやや複雑な展開/構築性をもつのに対し、ヨナスの曲はストレートにハードロックしている。
こういうところに、この人のプレイヤー魂を感じてしまう。
奇しくもトニー・ウィリアムスの LIFETIME と同じ編成による野心作である。
1 曲目「Dog Bar-B-Q」(7:43)
派手なのに無機的な速弾きベース・リフで幕を開ける。
マシンガンのようなドラムスが応戦。
やや落ちついた後は、まずオルガン・ソロ。
タガが外れたように速弾きへと転げてゆくが、全体にブルーズ・フィーリングのあるカッコいいプレイだ。
ワイルドなわりにはフュージョン・タッチもあり。
個人的には、このハモンド・オルガンの音にヤられます。
しかしながら、バッキングのワイルドなベースが、悪い仲間のようにオルガンをブルージーなユニゾンへと引き戻す。
ベースのアルペジオによるバッキングも珍しい。
続いてベース・ソロ。
コンプレッサーだろうか、妙にくすんだ音で、機嫌が悪いようなソロをとる。
ここでも、バッキングのオルガンのコードの響きがなんともいい。
緊張感あふれるインタープレイから、次第に表情を現してゆくベースも見事。
最後は再び元気にテーマを決める。
不良っぽいベースと意外や正統的なオルガンによるジャズ・ファンク。エルボーグ作。
2 曲目「JB」(6:00)
ファンキーなベースのリフレインがタイトなドラミングの上で弾けるオープニング。
それにしても音数の多いドラミングだ。
そして、ジャジーなオルガン・ソロ。
ソウル・ジャズのジミー・スミスをやや端正にしたようなイメージ。
前曲よりもぐっと明快なファンクである。
スネアを叩き捲くるドラムスは奔放にリズムを作る。
ベースは、その上で自由自在に動き周るが、爆発には至らない。
なんとなく、一人で楽しむような風情である。
音がぎゅっと詰り始めると次第に緊張が高まる。
後半、全拍バスドラ連打のドラムスの上で、オルガンとベースのインタープレイがスリリングに繰り広げられる。
終盤、なんとか元のファンキーな調子を取り戻す。
黒っぽいファンクが次第にヘヴィに牙を剥いてゆく。
もう少しヤワいとクラブ受けしそうですが、いかんせんコワ過ぎるので。
エルボーグ作。
3 曲目「Vilnius」(6:20)
メタル出身の性か、機械のようなドラミング、そしてオルガンとベースによるワイルドなリフによるオープニング。
もつれるようなオルガンの速弾きオブリガートがカッコいい。
続いて、珍しくジャズらしいライド・シンバル連打に切りかわって、謎めいたベースのソロが続く。
オルガンもロングトーンで応戦しつかの間の静寂。
次第に加速するベースのプレイ。
いつクるのか固唾を呑んでしまうのだ。
そして再び、マシン・ドラムスの連射、吼えるオルガン。
リズミカルなオルガンのプレイを経て、またもテンポ・ダウンし、ミステリアスな演奏へと拡散してゆく。
トーンを絞ったオルガンによる呪われたフルートのようなメロディと重苦しく応ずるベース。
ややアラビアン・エスニックなテイストもあり。
和音をかき鳴らすベース。
最後は三度テーマから壮絶なユニゾン。
ファンク色は消え、ミステリアスな HM 風テクニカル・ジャズロックへ。
なにか硬質な核のようなものが感じられる演奏だ。
BRAND X にも通じるようなプログレ色あり。
エルボーグ作。
4 曲目「Mouteadne」(6:10)。
ドラムスと絡むベース。
次にオルガンと絡むベースのリフレイン。
そしてリフに乗ったオルガンのブルージーな旋律。
突発的で凄絶なユニゾン。
重いリフとともに無表情なオルガンが走り出す。
スラップが冴える。
エルボーグ、ヤンス・ヨハンソン共作。
5 曲目「Kenneth」(7:43)。
変拍子のリフ。
歯切れよい音で走るベース。
高音を抑えたオルガンのリフにベースのハーモニクスが絡みつく、奇妙なアンサンブル。
スラップとタメの効いたドラムスによるファンキーなノリにジャズを感じる。
ブルージーなオルガン・ソロがいい。
変拍子のリフとポリリズミックな絡みがおもしろいテクニカル・ジャズ・ファンク。
オープニングはやたら挑戦的である。
中盤以降は、ファンキーでゴキゲンな演奏。
エルボーグ、ヤンス/アンダース・ヨハンソン共作。
6 曲目「Moving」(6:36)。
いきなりオルガンのハードな変拍子プレイにベースもゴンゴン応じるオープニング。
テンポアップして両者それぞれにフレーズを強烈に叩きつける。
中間部はあくまでうるさく叩くドラムスとベースのソロ。
ドラムスとユニゾンの壮絶なフレージング。
オルガンのきっかけで抜けて再びベースのリフレインにオルガンが絡む展開。
次第に走り出してビシッと終わる。
エルボーグ作。
7 曲目「Sovjet」(1:51)
旧ソビエトの国歌なんだろうか。
なぜここに入るんだろう。
マルクス、レーニン作。
オルガン・トリオによる青白い火花を散らす壮絶なインタープレイをフィーチュアしたジャズロック。
ジェフ・ベックがギターの代りにベースを弾いているような凄まじい演奏です。
硬質なタッチにブルーズ・フィーリングを漂わすオルガンとベースのコンビネーションは、ぐつぐつと煮えたぎりながらも常にクール。
ジャジーなプレイでも金属音が突き刺さるような衝撃があり、いわゆるジャズのスウィングするグルーヴとは縁遠い。
とにかく狂暴です。
白眉は、6 曲目「Moving」。
名盤です。
(DEM 033)
Jonas Hellborg | acoustic bass guitar |
Buckethead | acoustic guitar |
Michael Shrieve | drums |
95 年発表の「Octave Of The Holy Innocents」。
内容は、ギター・トリオによるミステリアスなグルーヴのあるアコースティック・フリー・ミュージック。
テンションが高まると、エルボーグの作品らしく、捻れた、エキセントリックなイメージが強まるが、アコースティック楽器の一音一音の響きに深みと謎めいた余韻があり、その叙情性が特徴になっている。
エルボーグは、得意のアコースティック・ベースで豊かな音の旋律を奏でている。
鋭利なスラップや高速搬送波のようなフレージングはもはや当然だが、本作品では音響的かつメロディアスな表現の魅力が際立つ。
そしてギタリストは、あの「フライドチキン・バケツ帽子+白仮面」の変人。
三人しかいないのにうち二人がキxガイではどもならん、と思ったが、アコースティック・ギターのプレイは、エレキギターの時のような奇天烈超テク爆裂だけではない、抑えも効かせたものである。
単なる特撮ヲタクではない、並々ならぬ音楽センスの持ち主のようだ。
したがって、全体の作風は、ECM 風の冷ややかな叙情性とエキゾチズムの内側で灼熱のマグマが波打ち、一度飛び出せば辺りは火の海、そんな感じに仕上がった。
1 曲目、15 分にわたる組曲風の作品が充実。ライトゲージらしいアコースティック・ギターの超絶的なプレイが聴ける。(あまりにぐしゃぐしゃでシタールのように聞こえるが)
全編を通して感じられるこの静けさ、ひょっとすると、キxガイ二人は互いに風貌のわりには相手がネクラであることに気がついて、セッションの終わりとともにそっと別れたのかもしれない。
一部電気処理された音もあるようだ。
「Rana And Fara」(15:00)
「Death That Sleeps In Them」(5:22)
「The Past Is A Different Country, I Don't Live There Anymore」(9:14)
「Childking」(5:47)
「Kidogo」(7:13)
(DEM 032)
Jonas Hellborg | bass guitar |
Shawn Lane | guitar |
Kofi Baker | drums |
95 年発表の「Abstract Logic」。
内容は、ハードロック・タッチを交えたテクニカルなジャズロック+各メンバーのソロ。
レーンのギター・プレイは、エルボーグとの共演作の中では、わりと分かりやすい部類に入ると思う。
エルボーグは、敢然とそして時に超然と、レーンのギターとのバトルを受けて立つ。
全体に、グルーヴはあるがファンキーでは決してなく、ストレートな疾走感と硬質なサウンドが魅力である。
ギター・トリオとしての引き締まった雰囲気は、ギターのスタイルは異なる(アラン・ホールズワースを意識しているようなところが多い)が、往年のジェフ・ベックのグループに近い感じがある。
タイトル曲は、唯一メロディアスで叙景的な広がりのあるジャズロック。
また、本アルバムでは、三人それぞれのソロ曲をフィーチュアしている。
3 曲目がレーンのピアノ・ソロ、4 曲目がエルボーグのベース・ソロ、6 曲目がベイカーのドラムス・ソロ。
レーンのピアノ演奏には間違いなく天才のきらめきがある。
ドラムスのコフィ・ベイカーは、かのジンジャー・ベイカーのご子息。
性急でアグレッシヴなところが特徴のグループだが、本作品では、楽曲の枠組みでさまざまなイメージを落ちついて提示している。
「Serpents And Pigs」(5:03)シャフル・ビートでレーンが気持よさそうにギターを弾くニコニコ・チューン。
「Rice With The Angels」(8:02)ワールド・ミュージック風のオープニングをシャープなテーマで切り裂くテクニカル・チューン。
カッコいいがテーマ以上の爆発がないのが残念。
「Pluie De Etincelles」(4:03)ショーン・レーンのピアノ独奏。美しいです。
「Layla Attar」(5:43)エルボーグのアコースティック・ベース独奏。響きを大事にしているのが分かる。
「Abstract Logic」(8:45)またもオープニングだけサード・ワールドだが、以降はわりと爽やかなサウンドのフュージョン。
ギターのナチュラル・ディストーション・サウンドが心地よい。
「Put The Shoe On The Other Foot」(6:11)ドラムス・ソロ。
「Throwing Elephant And Wrestling」(8:37)ベースが牙をむくへヴィ・チューン。象はブリューか?
(DEM 035)