フランスのジャズロック・グループ「ZAO」。 71 年結成。 作品は六枚。 インプロヴィゼーション中心のライヴな演奏を目指し、MAGMA の影響濃いサウンドから次第にオリジナルなサウンドへと変化した。 94 年再結成。2003 年来日。
Jean My Truong | drums |
Mauricia Platon | vocals |
Francois Cahen | keyboards |
Joël Dugrenot | electric bass |
Yochk'o Seffer | soprano saxophone, bass clarinet |
Jean-Yves Rigaud | electric violin |
73 年発表の第一作「Z=7L」。
内容は、キーボードとサックス、イタコ風のエキセントリックな女性ヴォーカル・パフォーマンスをフィーチュアした圧迫感あるジャズロック。
エレクトリック・ヴァイオリンとスキャットを中心にした澱みない変拍子トゥッティや反復、ポルタメントとを多用するベースのプレイなどに MAGMA の影響が感じられる。
したがって MAGMA にはないサックスとヴァイオリンが即興的に絡むシーンやフュージョン寄りのプレイは新鮮だ。
また、全体にスリムで凝縮されたイメージの音であり、本家よりもモダンジャズの音質に近いと感じた。
キーボードとソプラノ・サックスの双頭というグループ編成には、WEATHER REPORT への意識があったのかもしれない。
セファーの出身である東欧の異国情趣を意識させる音もある。
1 曲目「Marochsek」(7:13)
抑制の効いたエレクトリック・ジャズ・アンサンブルを背景に狂おしいスキャットが暴れまわる怪ジャズロック。
頓狂にして不気味なスキャットがどうしても MAGMA を連想させる。
堅実なアンサンブルはベース・ラインが主導する。
緩やかにして着実なクレシェンドの果てに神秘のエネルギーを発揮するトゥッティが押し寄せる。
ほとんど雑音のようなヴァイオリン即興も強烈。
管楽器が前面に出たビッグ・バンド風のスケールの大きい演奏やエレクトリック・ピアノのプレイは、アメリカのクロスオーヴァーに近いようにも思う。
スキャットはフリージャズの語法をそのまま生かしているようだ。
2 曲目「Ataturc」(5:49)
圧迫感はあるが全体としてはややリラックスした、ロマンティックな調子のビッグ・バンド・ジャズロック。
リズミカルで安定感あるテーマとスキャットがリードするスピーディな反復の強圧がうまくバランスしてなめらかに進行する。
MAGMA 影響下ながらも独自色を出している。
ピアノの変拍子オスティナートが導く展開部ではテンションがさらに一段階上がる。
ヴァイオリンとともに加速してクライマックス、そこを超えるとおだやかなエレクトリック・ピアノの独壇場だ。
扇動するスネア・ドラムスと巧みなベース・ラインもカッコいい。
管楽器とヴァイオリンのユニゾンが小刻みな反復で演奏をドライヴする。
高まる緊張そして弛緩。
スキャットの調べとともに再びゆるやかな世界が広がる。
3 曲目「Ronach」(4:39)
再び強烈な絶叫スキャットがリードするハイテンションのビッグ・バンド・ジャズロック。
一体となったアンサンブルが、自由自在なテンポとリズムで動き回る劇的な作品である。
冒頭からクライマックス、スキャット主導の変拍子ユニゾンでたたみかけてくる。
振り回されるように強烈な演奏だ。
テーマは凶暴すぎるスキャットが主役の一体感ある演奏。
第一展開部はエレクトリック・ピアノの刻む SOFT MACHINE 風の 16 分の 10 拍子のリフの上でオーバーダブされたスキャットがモアレを成す。
圧巻のドラミング。
第二展開部はテンポ・ダウンして不気味に重いアンサンブル。祈祷のようなスキャットが繰り返される。
テーマへと回帰してタイトな演奏が繰り広げられ、技巧的なユニゾンで締め。
4 曲目「Atart」(3:31)
一直線で走るハイテンションのテクニカル変拍子ジャズロック。
テーマからソロまでエレクトリック・ピアノの繰り出す 16 分の 9 拍子のリフ上でプレイヤーがせめぎあう。
小刻みなリフと管弦によるロングトーンのテーマの対比が劇的な効果を生む。
リフの主導はエレクトリック・ピアノ、スキャット、ベースと次々と手渡されてゆく。
悠然たるクレシェンド、そしてソプラノ・サックスの朗唱にヴァイオリンが寄り添う。
エネルギッシュな暴走の上でのロマンティックなクライマックス。
全編でテクニカルなドラミングが際立つ。
惜しげなく楽器を投げ捨てるようなエンディング。
SOFT MACHINE や RETURN TO FOREVER を思わせる堂々たる演奏だ。
傑作。
5 曲目「La Soupe」(7:20)多彩な場面を描きつつ駆け抜ける映画音楽の O.S.T を思わせる傑作。
ミステリアスながらも常に印象的な旋律、東欧風なのか妙にぶっ飛んだ調子のテーマ、疾走感と一体感のあるアンサンブル、奔放なソロと大胆な音響効果などなど、タイトでキレのある演奏が次々繰り出される。
主役を張るのはスキャットとサックスだ。
セファーのアルト・サックス・ソロがお目見えする。
フロントに絡むドラミングのすさまじさよ!
リズムとテンションのキープはエレクトリック・ピアノとベースに任せて自らは千手観音状態で絨毯爆撃。
バーバリックな美しさを感じさせる本作のクライマックス。
6 曲目「Satanyia」(6:46)
アッパーな変拍子リフとレガートなテーマが強烈なコントラストを成すミステリアスなジャズロック。
が鳴るようなスキャットがリフとテーマのブリッジとして機能している。
本曲ではスキャットは男声ファルセットのようだ。
タイトなアンサンブルが一気にフェードアウトして背景と化し、幻想的なヴァイオリンのカデンツァがスタートするという劇的な展開。
モールス信号のように背後で蠢くバッキングが不気味。
最後はサイレンの如き女声スキャットがリードするレガートなテーマが復活して朗々と謡われ、幕を引く。
管楽器、ヴァイオリン、エレクトリック・ピアノ、女性スキャットをフィーチュアしたテクニカルかつエキゾティックなジャズロック・アルバム。
変拍子を多用し、一体感の強いアンサンブルでひた走るスタイル、不気味ともいえる重々しいテーマ、繰り返しの多用など MAGMA の影響は色濃い。
サックス、ヴァイオリンがソロで見せ場をつくるが、どちらかといえば、彗星のように飛び回る敏捷で緊密なアンサンブル中心の演奏だ。
スキャットは、一体と化したミステリアスなアンサンブルの最上層に仕上げとして肉感的な表情付けを行っている。
また、セファーのサックスは本格モダン・ジャズ出身らしい音色の豊かさがあり存在感は大きい。
ただし、ビッグ・バンド風の一直線のパワーを持つ演奏やスリリングンなジャズロックは盛り込まれているものの、いまだオリジナルな音への過渡状態にあるという印象を与える。
(VERTIGO 6499 738 / MUSEA FGBG 4081.AR)
Francois Cahen | keyboards |
Joël Dugrenot | bass, vocals |
Yochk'o Seffer | saxophone, vocals |
Jean My Truong | drums, percussion |
Jean-Yves Rigaud | electric violin |
Marc Chantereau | percussion |
Pierre Guignon | percussion |
74 年発表の第二作「Osiris」。
女性スキャットを外し(セファーやデュグルノによるスキャットはあり)、MAGMA 風の圧迫感ある変拍子ジャズロックを基本に、RETURN TO FOREVER や WEATHER REPORT のような典型的クロス・オーヴァー・スタイルも散見される内容となる。
特徴は、強圧的なテーマ、スピーディな変拍子リフ、反復とともに昂揚し膨張するアンサンブルなど。
緊迫感ある演奏によるスリルとエレクトリック・ピアノの音に象徴されるメローな面が共存し、一つの楽曲においても変化の振幅は大きい。
低音部の強調は前作ほどではないが、精緻かつダイナミックなリズム・セクションを従えてソプラノ・サックスのリードですべてが煮えたぎる場面には空恐ろしい迫力がある。
ただし、本作においては重量感よりも疾走感と小気味よさが強調されていると思う。
多彩なパーカッションもアンサンブルのスピード増強に一役買っているようだ。
エレクトリック・ヴァイオリンとサックスによるレガートなアンサンブルも印象的。
プロデュースはグループとイーヴス・チェンバーランド。
MUSEA の CD は盤起こし。
前半はサーフェイス・ノイズがやや強い。
1 曲目「Shardaz」(4:48)
レガートなテーマで圧迫するオープニングから、スピーディな変拍子リフを忙しなく刻み込む演奏へと突っ込む。
リフは、8 分の 8+9 拍子。
ヴァイオリン、ソプラノ・サックスが主となる、なめらかで不気味(!?)なビッグ・バンド調のトゥッティと、ミステリアスな「呪文」スキャット。
カーンも凄まじい迫力で荒々しいアコースティック・ピアノの和音の打撃を放つ。(アコースティック・ピアノは前作ではあまり使われていなかった)
軽めの MAGMA といってしまうと失礼かもしれないが、怪しい疾走感と急旋回はまさしくそういう感じである。
バンドの一体感を示すジャズロック。
セファー作曲。
2 曲目「Isis」(9:32)
オープニングは映画音楽のようなフルートによるひめやかなアンサンブル。(メロトロンの可能性もある)
ソプラノ・サックスとエレクトリック・ピアノによるジャジーで叙景的な演奏は、リズムこそ無表情だが、きわめて RETURN TO FOREVER 的である。
ピアノの和音連続打撃を境に、スキャットも加わって突き抜けるように高音部が強調され、再び MAGMA 風の圧迫感ある反復トゥッティへと進む。
8 分の 7 拍子に切り替わって演奏は加速する。
ピアノのオブリガートはキース・エマーソンのように華やかだ。
サックス、エレクトリック・ヴァイオリンのソロ辺りから、演奏は強度を増し、熱気も生まれてくる。
エキゾティックな叙景、奇数拍子のリフの生む不安定感、その上で小刻みに制御されるエネルギーの流れ、ドラマティックな展開などが特徴の大作である。
カーン作曲。
3 曲目「Reinna」(4:23)
スリリングなビッグ・バンド風のオープニングから MAGMA 的な狂乱スキャットへと進む序盤。
ヴァイオリン、サックスのソロをドラムスが挑発し、エレクトリック・ピアノ、パーカッションも巻き込んで、直線疾走型の演奏が続く。
テーマ、ソロともにややエキゾチックであり、人をおちょくっているようなリフがおもしろい。
運動能力を活かした扇動と挑発のジャズロック。
MAHAVISHNU ORCHESTRA に近い。
デュグルノ作曲。
4 曲目「Yog」(8:05)
謎めいたスキャットとエレクトリック・ピアノによる暗鬱なテーマ。
メランコリックなサックス、ヴァイオリンのデュオが美しいだけに、狂的なアジテーションとのコントラストが鮮明。
エレクトリック・ピアノが細かなパッセージのリフを提示するところから、テンポ・アップし、狂おしい演奏がスタート。
8 ビートから少しずれた変則的なリフの上でヴァイオリンとサックスのなめらかな歌が走り、狂おしいスキャットが応じる。
一旦静まった後の全体演奏は、ファズ・ベースのような意表を突く音も飛び出し、リズム・セクションも全力を出し切る壮絶なものとなる。
静と動を気まぐれに、落ちつかなくゆき交うヘヴィな MAGMA 風のジャズロック作品である。
率直にいって神秘的というにはやや「変」であり、その「歪さ」が MAGMA 的なのだ。
セファー作曲。力作。
5 曲目「La Rhune」(4:08)カーン作曲。
ピアノとベースが刻む 8 分の 6 拍子によるシンコーペーテッド・リフ。
パーカッションがざわめき、エレクトリック・ヴァイオリンが緊張気味で旋律をたどる。
波乱を予感させるスリリングな作品だ。
どこかで聴いたような気がするのは、なぜでしょう。
6 曲目「Montreal」(11:44)カーン作曲。ボーナス・トラック。カナダのミュージシャンとの共演。
パーカッションとキーボードがセファーのテナー・サックスを支える、ややサイケデリックではあるがメイン・ストリーム風のジャズロック作品。
後半、オルガンもフィーチュアされる。
女性スキャットあり。
音の分離のいい録音である。
(DISJUNCTA 000004 / MUSEA FGBG 4130.AR)
Yochk'o Seffer | saxophone, clarinets, vocals |
Francois Cahen | keyboards |
Gerard Prevost | bass |
Jean My Truong | drums |
Pierre Guignon | percussion |
Michele Margand | violin |
Marie-Francoise Viaud | violin |
Francoise Douchet | viola |
Claudine Lassere | cello |
75 年発表の第三作「Shekina」。
ストリングス・カルテットをゲストに迎えた作品。
内容は、雄大なロマンを湛え、開放感と神秘性を両立させたジャズロック。
前作までの MAGMA からの直接的な影響の消化は(ベース以外は)一段落し、エキゾチックで神秘的、技巧的にしてどこまでも繊細な美感をともなうサウンドとなった。
いわゆる「フュージョン」的な音楽性の強化によるポピュラリティ志向もあるようだが、同時に、バルトークを思わせる、アジア・ヨーロッパ折衷風の不思議な旋律を用いた瞬間もあって音楽的な冒険精神は旺盛である。
初期 WEATHER REPORT にも通じるユニークな世界であり、三作目にして、オリジナルなサウンドへ到達したようだ。
セファーのサックスはフロントで演奏をリードしており、その存在感は抜群だ。
ベーシストは、ジョエル・デュグルノからジェラルド・プレヴォに交代。
この弦楽セクションをバンドに取り込んだ作風は、セファーが ZAO 脱退後に結成したユニット NEFFESH MUSIC へと引き継がれてゆく。
プロデュースは、カーン、セファー、パスカル・レグロ。
CD 再発では、2 曲目と 3 曲目がつながっている模様。(計 5 トラック)
1 曲目「Joyl」(3:52)セファーの鋭利なユニゾンでぶっ飛ばされるパワフルかつメローなジャズロック。
2 曲目「Yen-Lang」(8:07)弦楽を活かした幻想的かつ重厚な作品。
雅楽っぽいところ、ニューエイジ・ミュージックっぽいところもあり。ノン・クレジットのフルートあり。
一部即興演奏の可能性もある。
エレクトリック・ピアノの揺らぎや管楽器によるスピリチュアルな即興は、初期 RETURN TO FOREVER や WEATHER REPORT 直結する世界観である。
後半のトゥッティには KING CRIMSON と MAGMA が七三割で合体してジャズロックに寄ったような迫力あり。
3 曲目「Zohar」(10:54)サックスがリードするテクニカルな変拍子ジャズロック。
開放感と閉塞感の間を揺れ動き、突き抜けそうで突き抜けない超絶ミニマル・ミュージックである。
ベースは MAGMA 風。
中盤のシリアスにして熱い弦楽奏がカッコいい。
キーボードとリズム・セクションが貫く終盤からのビッグバンド風の展開は、ほぼ SOFT MACHINE。
4 曲目「Metatron」(8:15)反復多用の変拍子ジャズロック。
折れ曲がりつつも変拍子パターンを延々と繰り出すアンサンブル。
ベースは再び MAGMA 化。
やはり、ほぼ SOFT MACHINE、ただしスキャットあり。
サックスやクラリネットが、エルトン・ディーンとカール・ジェンキンズの折衷に聴こえるところもある。
後半のカルテットによる高密度の演奏がすばらしい。
5 曲目「Zita」(4:34)弦楽とエレクトリック・ピアノ、ベースによる優美でファンタジックな作品。コズミックな夢。
6 曲目「Bakus」(5:12)ファンキーとは異なる独特のグルーヴのあるエネルギッシュなジャズロック。阿波踊りに近いかも知れない。
(FPL 1 0097 / MUSEA FGBG 4067.AR)
Francois Cahen | piano, electric piano, synthesizer |
Dedier Lockwood | acoustic & electric violin, bass violin |
Gerard Prevost | acoustic & electric bass |
Yochk'o Seffer | soprano & sopranino saxophone, vocals, piano |
Jean My Truong | drums |
Bill Gagnon | bass |
Christian Saint Roch | drums |
Michel Seguin | percussion |
76 年発表の第四作「Kawana」。
前作の実験的編成の試みを経て、本作ではディディエ・ロックウッドら技巧派ミュージシャンによるソロと火花散るインタープレイをフィーチュアしたジャズロックへと変貌する。
奔放なプレイが化学反応してあたかも結晶のようなアンサンブルを成しており、テクニカル・ジャズロック作品としては白眉といえる。
パワフルなフリー・ジャズと構築的なクラシックが融合した作風には、安易にジャズロック、フュージョンとはいえない音楽的真剣勝負の重みがある。
ロックのようなデラシネはどこにも見当たらない気がする。
さて、演奏面では、サックスと対等にせめぎあうヴァイオリンの存在によってアンサンブルは大いなる刺激を得て、活発化している。
カーンのキーボード・プレイも多彩だ。
プロデュースはジャン・ルイ・フィリベール。
本作を最後にヨシコ・セファーは脱退。
ロックウッド、トルオンも SURYA 結成のため脱退し、バンドは崩壊気味となる。
1 曲目「Natura」(7:06)渦を巻くようなアコースティック・ピアノの響きが印象的な、クラシカルな陰翳あるジャズロック・ナンバー。
険しさとファンタジックな美感のバランスがいい。
セファーのプレイにはエルトン・ディーンを越え、コルトレーンのような重厚な存在感あり。
スリリングにして品格と優美さも兼ね備えた名品。
キメがカッコいい。
2 曲目「Tserouf」(8:53)WEATHER REPORT をほうふつさせる切れ味いいフュージョン/ジャズロック。
前半は、キーボード、ドラムスをフィーチュアした超絶演奏。
後半は、ロックウッドの「ロマンティックな」ヴァイオリンと、セファーのソプラノ・サックスの壮絶にして華麗なるバトル。
ヴァイオリンのプレイは、速度が上がると、ピッチベンドを使用したシンセサイザーと区別がつかない。
その間を、典型的なテクニカル・ユニゾンで縫う。
ファンキーだがしっかり 7 拍子。
終盤のポリリズミックなバスドラ連打もすごい。
本作の最初のクライマックスです。
3 曲目「F.F.F」(2:29)
近代クラシック的なピアノとヴァイオリン、コントラバスのトリオ。
ミステリアスな和声による衝撃的かつ幻想的な小品である。
バルトーク風。
ピアノはセファー。
4 曲目「Kabal」(4:08)再びハイテンションのテクニカル・チューン。
変拍子のテーマをつんのめるような勢いで弾き飛ばす。
アドリヴをそのまま発展させたような細かく強引なユニゾンと、歌うようにメロディアスなフレージングを対比させつつ、ぐいぐいと進む。
ドラムスのピックアップによるイントロダクションがいかにも挑戦的。
佳曲。
5 曲目「Sadie」(3:37)メロディアスなバラード。
ソプラノ・サックス、ヴァイオリンがなめらかなユニゾンで歌い上げる。
6 曲目「Free Folk」(10:39)
イントロとアウトロはミステリアスなヴォカリーズである。
テーマもほのかに中近東風味(中央アジアもしくは東欧なのでしょうか)漂うエキゾチックなもの。
演奏はなめらかだが、リズムは変則的。
中盤のヴァイオリン・ソロが圧巻。
7 曲目「Salut Robert」(12:48)ボーナス・トラック。
73 年録音の作品。
MAGMA 調の快速ビッグバンド・チューン。
サックスはきわめてフリーなソロを展開。
扇動的。
(FPL1 0178 / MUSEA FGBG 4039.AR)
Yochk'o Seffer | saxophone, clarinets, vocals |
Francois Cahen | keyboards |
Jean My Truong | drums |
Dominique Bertram | bass |
Patrick Tilleman | violin |
94 年発表の第五作「Akhenaton」。
再結成後に発表された作品。
これまでの作品と比べると、変拍子、ミニマリズム・マニアはそのままだが、「ソロイストをフィーチュアしたメロディアスなフュージョン」的なイメージも強い内容である。
1 曲目冒頭のリリカルなサックスとピアノのデュオなど RETURN TO FOREVER ばりのファンタジーを演出している。
ミドル・テンポのスリムなアンサンブルで描く音は、ロマンティックとエキゾティックとエキセントリックの中間地点にあり、エっと思うほど繊細で詩的な瞬間もある。
サックスとヴァイオリンが綾なす変拍子の強圧的なリフやエキゾティックな音階でうねうねとのたうつサックスなどは、SOFT MACHINE や初期 WEATHER REPORT と共通する。
そういうときのアンサンブルが醸し出す心地よい緊迫感が楽しみである。
楽曲は、凝った作曲ものというよりは、テーマを軸としたセッションをさっとまとめたような作品が多い。
1994 年にこの 70 年代サウンドを甦らせた意味は、ノスタルジー以外にはよく分からないが、ZAO にとってはこの表現手法が自然なのだろう。
もっとも、このサウンドには、あらゆる時代に普遍的たろうとするモダン・ジャズほどのずうずうしさは感じられず、もっとデリケートなニュアンスがある。
そして、ジャズよりも室内楽の味わいが強い。
これは変わらない特徴だ。
やや爆発力不足で、こじんまりとしていること、また、カーン氏のプレイがエレクトリック・キーボードになるとおとなしくなってしまう(技巧的ではあるが)ことが残念。
3 曲目「Baityare」はソロの応酬が刺激的な佳作。
最終曲は、ピアノとサックスのデュオによる美しいバラード作品。
プロデュースは、カーン、セファー、
1 曲目「Elioth」(7:33)パスカル・ロジェ調のピアノに魅せられるオープニング。メイン・パートは、メロディアスかつトリッキーなテーマとファズ・ベース、ヴァイオリンらの荒々しい音が対立、調和する変拍子ジャズロック。サックスは調性のない独特のフレーズで強烈に存在感を出す。
2 曲目「Thebes」(7:06)
3 曲目「Baityare」(8:09)
4 曲目「Cobra」(6:37)
5 曲目「Yzzo」(6:40)
6 曲目「Sable」(3:45)
7 曲目「Ozz」(6:04)
8 曲目「Sakkarah」(5:47)
9 曲目「Des Fleurs Pour Nefertiti」(7:31)
10 曲目「Free Folk」(9:31)日本版 CD のみのボーナス・トラック。86 年の再編ライヴでの収録。録音状態はよくないが、マジカルなイメージのアグレッシヴな演奏である。
(FGBG 4125.AR)