フィンランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「KAAMOS」。73 年結成。 メンバー交代の後に 77 年に唯一作発表。80 年解散。
Johnny Gustafsson | lead vocals, drums, percussion |
Kyosti Lahi | keyboards, minimoog, vocals |
Ilpo Murtojarvi | guitar, vocals |
Jakke Leivo | bass |
77 年発表のアルバム「Deeds And Talks」。
内容は、素朴なポップ・テイストに好感がもてるシンフォニック寄りのポップ・ロック。
ブルーズや R&B、ジャズ を巻き込んで進展した英国ロックを胸いっぱい吸い込み、独特の小気味よさと親しみやすさを加えた、いかにも北欧ロックらしい作風である。
したがって、楽曲と演奏スタイルが多彩であることはまず述べるべきだし、器楽による表現力が並大抵ではないこともいわねばならない。
全パートに安定感と切れのよさがあり、バンドとしての一体感も抜群である。
ガツンとパーカッシヴなオルガンとサイケなギター主導で走るところも、スティーヴィ・ワンダーばりのファンキーなリフではねるところも、アコースティック・ギターとピアノが哀歓込めて歌うところも、すべてさりげなくこなしている。
そして、演奏面での特徴は、ムーグ・シンセサイザーとオルガンがバッキングにとどまらず、オブリガートやソロでどんどん前に出るところだろう。
ヴォーカルはフォーキーな爽やかさとファンキーな熱っぽさがいいバランスを取っており、意外にクリアーなハーモニーもある。
そして、メロディアスな歌もの主体のようでいて、ムーグとギターが鋭くせめぎあったり、オルガンが勇壮に高鳴るようなインストゥルメンタル・パートもなかなか充実している。
キーボードの存在をキーとするシンフォニックなスタイルのアンサンブルと自然なフォーク・タッチには、メンバーの素地の良さに加えて、YES の演奏スタイルの巧みな取り込みがある。
特にクラシカルなアンサンブルを模するような演奏ではその印象が強くなる。
逆に、あまりに YES っぽさが出ると凡百のコピーバンドと同じで安っぽくなるが、幸いにも北欧ロックの長閑さがそれを解消している。
英語のリード・ヴォーカルは、WIGWAM (というかそのネタ元の PROCOL HARUM か)によく似ています。
衝撃的なところはないし大名盤の味わいもないが、この暖かみとお手頃なグルーヴ、そしてカラフルな音楽的ヴァリエーションは貴重である。
決して手放したくない作品です。
また、世間でいうほどには JETHRO TULL には似ていないと思うのですが...
「Strife」(4:31)
「Are You Turning」(5:48)WIGWAM 感たっぷりのノスタルジック・ポップ。ギターがいい音で鳴る。
「Delightful」(3:31)変拍子もさりげないテクニカル・ポップの名曲。
ヴォーカル・アレンジはクラシカルで(ここで初めて、イアン・アンダーソンに似ていると思いました)、キーボードをはじめとした演奏はキレのいいジャズ・タッチ。JETHRO TULL からアクを抜いた感じ。コンパクトだが中身が濃い。
「Barokki」(3:32)YES 風の明朗なノリが愛らしいクラシカルなインストゥルメンタル。愛らしきムーグ・シンセサイザーのテーマ。GREENSLADE 風でもある。ギターはわりとオーソドックスなマイナー・ペンタトニック中心のプレイ。
「Isabelle Dandelion」(3:12)アコースティック・ギター、ピアノが伴奏する哀切バラード。
「Moment(Now)」(6:40)ギターがカッコよく飛翔するジャズロック調の作品。
「When Shall We Know」(3:36)エレクトリック・ピアノがブルーに迫る都会的でライト・ファンクな AOR 風の作品。
「Suit-Case」(8:33)プログレ・スタイルを意識したアレンジが冴える名曲。
またも GREENSLADE にも通じるニュアンスあり。
(MTLP-7 / ROK 037)