ブラジルのプログレッシヴ・ロック・グループ「KAIZEN」。 元 QUATERNA REQUIEM のヴァイオリニストが結成したグループ。 2019 年新譜「Aqvila」発表。
| Kleber Vogel | violin, bandolim |
| Wagner Andre | piano, synthesizer |
| Anderson Machado | guitars |
| Didier Fernan | bass |
| J.Couto Neto | drums |
2019 年発表の第二作「Aqvila」。
内容は、たおやかなヴァイオリンのプレイをアクセントにしたメロディアスなシンフォニック・ロック。
ヴァイオリン奏者以外のメンバーは一新している模様。
前作から 25 年経っているので、いろいろと変化はあって当然だろう。前作の危なっかしさは霧消した。
何にせよ、クラシカルなメロディとハーモニーの抑揚をよくする大らかなアンサンブルにタイトなギター・リフやリズム・セクションを加えて躍動感を生む手法が、現代でも通用するように感じさせられる作品である。
90 年代のプログレ復興期にたくさん現れたグループと共通する作風ながらも、そういった音に食傷気味の耳ですら納得させる、信じた道を真っ直ぐ進む潔さと若々しさに胸打たれる。
キーボードとギターのやり取りはハードだがヘヴィ過ぎず、なめらかで透明感あるヴァイオリンのサウンドとの親和性もある。
ピアノ、オルガン、ヴァイオリンによるクラシックそのもののようなブリッジも眼の醒めるような効果あり。
仄かなエキゾチズムのアクセントもいい。
どちらかというと軽快な場面よりも厳かで勇壮な場面の方が演奏が優れて聴こえる。
そして SAGRADO よりも油分が少なく清々しい。
卒なくまとめている感が強いのは、メロディやフレーズにドキッとさせるようなところがないためか。
それだけが残念。
全曲インストゥルメンタル。
「Gryphus」(7:22)
「Mazara」(8:18)
「Vecchio Castello」(6:00)
「Suite Aqvila」(17:52)
(AA0001000)
| Kleber Vogel | electric, MIDI & acoustic violin, acoustic mandolin |
| Carlos Albuquerque | electric & acoustic guitars |
| Ronaldo Dos Guaranys | keyboards |
| Alvaro Seabra | bass, keyboards, electric percussion |
| Cleto Castañon | drums |
| guest: | |
|---|---|
| Roberto Meier | flute |
| Francisco Gonçalves | oboe |
| Muaro Avila | bassoon |
| Duo Santoro | cello |
94 年発表のアルバム「Gargula」。
内容は、エレクトリックおよびアコースティック・ヴァイオリンをフィーチュアしたメロディアスなクラシカル・ロック。
甘くロマンティックな癒しの曲調が主。
キーボード、ギター、ヴァイオリンがフロントで丹念にメロディを歌わせるところにゲストの管弦がアクセントとして散りばめられている。
面映ゆくなるほど健やかなテーマを訥々朗々と奏でて物怖じしない、これが強みだ。
ただし、リズム・セクション含めアンサンブルのまとまりに若干の不安あり。
スローな曲やミドル・テンポになるとそれが露わになってツライ(最後の二曲のようなアップ・テンポで押す楽曲では気にならなくなる)。
また、ヴァイオリンのプレイは華やかであり技量も感じさせるのだが、エレクトリック・ヴァイオリンの音程が揺らぐところがある。
それでも丹念な演奏から本格的なクラシカル・ロックをやりたいという素直な思いは伝わってくる。
そして、ヴァイオリンの音に食傷気味なったとき 5 曲目のマンドリンが意外に新鮮なのだ。
本作は習作と考えて、ぜひ次作が聴きたいです。
微笑ましさを湧き起こさせてリスナーの我慢の緒を緩めさせるというのもじつは意図しない作戦かもしれない。
全曲インストゥルメンタル。
「Aberiura」(4:42)ローマ史劇のサウンド・トラックのような重厚なシンフォニー。
ゲストの管絃とともにキーボードによるオーケストラ・シミュレーションがみごと。
小品だが、ずっしりした手ごたえの快作だ。
「Zenith」(12:56)ロマンティックな大作。
キュートなギター、フルート、麗しきヴァイオリンが活躍するメロディアスなオープニングから、オルガンがリフをドライヴしヴァイオリンが走るややへヴィなパートを経て、再び甘やかなメロディのヴァイオリン、フルートがピアノ伴奏で歌う若々しい情感に満ちたエンディングを迎える。
分かりやすく甘美なメロディがすばらしい。
曲想とテンポがかみ合わないせいかリズムがもたついて感じられるところが多いのが難点。
「Gargula」(5:56)ヴァイオリンがリードする華やかなシンフォニック・ロック。
チェンバロ、オーボエ、バスーンのバロック・トリオから一転勇ましくジャジーでリズミカルな演奏へ。
背伸びして無理にキメキメのフュージョン風の演奏にする必要はない。
キーボード、ヴァイオリン、ギターによるクラシカルなアンサンブルが続く。
主たるフレーズはここでも甘く口ずさめるようなものだ。
リズム・セクションが加わるも、かちっと締まった感じがない。
また、各パートのソロがリードする展開が主であるにもかかわらず、歌い方が十分でないためにどこか散漫に感じられる。
NUOVA ERA や SITHONIA のように不器用でもいいからしっかりと自分の歌を歌うことが肝要だ。そうすればいつしか耳は惹きつけられる。
「Noturno」(6:22)ドラムレスのメランコリックなエレクトリック室内楽。
オーボエ、バスーン、ヴァイオリン、ピアノ、アコースティック・ギターらによる挽歌。
不協和音の響き(チューニングが甘いだけか?)が哀愁にモダンな陰影をつける。
ヴァイオリンのテーマは哀感が強い。
いくつかの旋律が折り重なりあいながらもっさりとしたアンサンブルが繰り広げられる。
アコースティック・ギターがひなびた響きを付け加える。
重厚な弦楽の響きにシンセサイザーも加わってテーマを追いかけ合いながら高まる演奏、そしてクライマックスを迎える。
エレキギターの訥々としたメロディが次第に演奏全体の表情を和らげてゆく。
もう少し練習してから録音した方がよかったかもしれない。
「Runas」(9:38)
アコースティック・ギターとマンドリンのトレモロによるフォーキーな序奏にフルートとヴァイオリンが加わって緩やかで暖かみのある演奏になる。
ジャジーなヴァイオリンのアドリヴ、そしてラテン・ポップ調のマンドリン。
フルートも加わった愛らしいアンサンブル。
そしてリズム・セクションとギターが加わると一気に軽快なロックへ。
どこまでも可愛らしくキュートな演奏であり、思いのほかリズムの変化も目まぐるしい。
技量を除けば SAGRADO や DOGMA にも通じるムードあり。
ヴァイオリンとギターのツインリードで軽快に走り続けるが、リズム・セクションの垢ぬけなさがどうにもならない。
ゲストの管弦はそれを懸命に補っていい仕事をしている。
ヴァイオリニストもクラシカルなプレイは安定しているので無理にジャズやロック風に崩す必要はない。
自由な発想のもとにエネルギッシュに綴られたオムニバス風の大作だ。
「Horda」(6:47)キレのあるスピーディな作品。
忙しないリズムのバッキングを一切気にしないでギターは自由気ままに走る。
ピアノの和音が受け止めてからのジャジーなヴァイオリン・ソロは悪くない。
ブルーズ・フィーリングはダリル・ウェイに迫る。
後半はシンセサイザーのリードで突っ走る。
ニューウェーヴ風のメタリックな光沢を出そうとしているようだがギター・ソロがどうにもオソマツ。
トゥッティのテーマやリフにはカッコいいところもあるのだが。
「Kaizen」(9:10)エレポップ風のトゥッティを中心にオムニバス風に演奏が続く作品。
前半のアンサンブルは比較的締まっているが、気まぐれ風に曲調が変化するうちに足元を見失いそうになる。
ヴァイオリンの朗々たるソロ以外、どこにいて何を聴いているのかよく分からなくなってくる。
中盤にベース・ソロをフィーチュア。
このソロのおかげで、演奏だけではなく録音の悪さもこの未完成な雰囲気の原因の一つであることがよく分かる。
(PRW018)