エストニアのプログレッシヴ・ロック・グループ「KASEKE」。 IN SPE、PROPELLER、RUJAS のメンバーによって 80 年結成。 83 年にフル・アルバム発表。
Peeter Malkov | flute | Ain Varts | guitar |
Riho Sibul | guitar | Priit Kuulberg | bass |
Andrus Vaht | drums | Margus Kappel | keyboards on 1 |
Olav Ehala | keyboards on 3 | Tõnu Naissoo | keyboards on 8, 10-13 |
Erkki-Sven Tüür | keyboards on 9 | Mart Metsala | synthesizer on 1-9 |
2000 年発表の「Kaseke」。
81 年発表の EP「Sõnum」と 83 年発表の LP 「Põletus」のカップリング CD。
CD ジャケットは、EP に類似。
内容は、ギターとシンセサイザーをフィーチュアした、シンフォニックなフュージョン。
全体としては、フュージョンといっていい内容ながらも、シンセサイザー・サウンドやオルガンのプレイはきわめてプログレ的。
変拍子によるハードなアンサンブルもある。
いわゆる「フュージョン」になり切らないのは、このキーボードの存在とグルーヴよりもビートのアクセントの強さが強調されたドラムスのせいでもあるだろう。
メカニカルな音とプレイが多く演奏にどっしりとした重みがあり過ぎるため、フュージョン調の「爽やかさ」はほとんど出てこない。
ライトなノリの作品に変拍子パターンや大胆なブレイクをはさんだアレンジもプログレ的である。
そういったところが個性のようだ。
また、80 年代初頭の音が今聴くと妙に古めかしいが新鮮でもある。
ギターは、硬質な音ながらもメロディアスなプレイを決めてゆく安定したテクニシャン。
トリッキーなプレイはないが、オーソドックスなプレイヤーである。
RETURN TO FOREVER ばりのキーボードとの快速ユニゾンや、超絶的な速弾きも見せる。
紋切り型のプレイもあるが、それを他のパートがメタリックな重量感でカヴァーしている。
シンセサイザーはギター以上にフィーチュアされて、独特のなめらかなタッチで朗々とソロを取っている。
他にも、フルートの大胆なプレイ、チック・コリアばりのエレクトリック・ピアノのプレイなどがある。
しかしながら、そういった記名性の高いプレイのつぎはぎだけには収まっていない。
典型的なパターンを使いながらも、そのパターンをそれが最も活きる場所にはめ込むセンスがあるのだ。
つまり、楽曲でいいたいことが明快であり、叙情的な表現や勢いある表現の係り結びが必要十分に完成されているのだ。
全体としては、軽快で溌剌とした楽曲が主であり、そこにビートやリフで鋭く硬質なアクセントつける作風である。
決して「暗く」はなくむしろ「軽やか」だが、常に「硬い」のだ。
この背骨のような固さは、ロシア東欧圏の政府御用達の正統的なクラシックに起因するのだろうか。
中期 CAMEL や FINNFOREST、FERMATA、EAST、PEKKA POHJOLA などが近いイメージか。
全編インストゥルメンタル。
「Elevant(Elephant)」(4:17)オルガンやヘヴィなシンセ・ビートなど、プログレ寄りのスタンスを見せる名作。
「Valhalla(Valhalla)」(4:14)躍動感とドリーミーなサウンドが共存した佳作。
「Elevantsi Hirmulaul(Little Elephant's Song Of Fear)」(3:43)ほんのりユーモアも交えたフュージョン風ポップ・インストゥルメンタル。
「Salajane rõõm(Secret Joy)」(3:46)この重く固い感じが特徴。
「Põletaja(Con Fuoco)」(3:36)ポップでハードなジャズロック。
「Tantsija(Dancer)」(5:48)
「Nãotused(Unsightliness)」(4:47)
「Pikki Pãevatee(Long Way To Go)」(4:45)
「Põlenud Maa(Burnt Land)」(4:45)
ここからが EP「Sõnum」 の内容。EP には IN SPE の Erkki-Sven Tüür が参加。
「Introduktsioon(Intorduction)」(2:05)
「Sõnum(The News)」(4:35)
「Kala Jãlg Vees(Fish's Trace In The Water)」(3:30)
「Laupãeval Koos Isaga(Tpgether With Dad On Saturday)」(4:15)
(BOHEME CDBMR 008154)