ノルウェーのプログレッシヴ・ロック・グループ「KERRS PINK」。 ベーシストのヨステン・ハンセンを中心に 72 年頃から活動開始。作品は七枚。 ギターをフィーチュアしたチャーミングにして郷愁あふれるシンフォニック・ロック。 2021 年新譜「Presence Of Life」発表。
Harald Lytomt | guitars | Jostein Hansen | bass |
Freddy Ruud | keyboards | Lasse Johansen | keyboards |
Lasse Tanderø | lead vocals | Knut R. Lie | drums, backing vocals |
guest: | |||
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Lilian Høidal | vocals on 2 | ||
Geir Jahren | backing vocals on 2,3,4,6 | ||
Per Viggo Nilsen | violin on 2 |
2002 年発表の第五作「Tidings」。
ハラルド・リトムト、ジョステン・ハンセンらを中心に再結成して発表した五年ぶりの作品は、モダンなサウンドを使いながらも、KERRS PINK 節というべき郷愁を誘うメロディとギター・プレイをあちこちに散りばめた、ノスタルジックで暖かみあふれるメロディック・ロックの傑作となった。
ギター、キーボード、ヴォーカル・ハーモニー、すべてが柔らかく親しみやすい表情で穏かな歌をささやき、リスナーの琴線に触れてくる。
ギターがパワーコードを轟かせたり、大胆に蓮っ葉ロックンロールを放り込んだり、思い切りポップなアプローチをするなど、アレンジ面で今までにない展開を見せるところもあるが、作風の基調は素朴さとヒューマンな暖かみにある。
そのハート・ウォーミングな資質をもっとも明快に現しているのが、ギターのプレイである。
ナチュラル・ディストーションにエコーやワウを効かせたストラトキャスターの魅力は今回もたっぷり盛り込まれていて、ツイン・リード風のオーヴァー・ダビングも効果的に使われている。
北欧ロックらしい素朴でノスタルジックな民俗音楽風のメロディ・ラインも随所で聴かせる。
また、二人のキーボーディストも、控えめながら的確な音を配している。教会風のクラシカルな演出がいい感じだ。
ロマンティックながらもベタつかず、懐の深さを見せるところは、おそらく、中期以降の CAMEL をイメージしていただくといい。
(特徴的な北欧風味もさることながら、メロディやアレンジのセンスの良さは、英国ロックのエッセンスをつかんでいるところからきていると思う)
製作面においても、きわめて優れた作品です。
ギターの好きな方はぜひ。
ヴォーカルは英語。
本作品がジョステン・ハンセンからの最後の挨拶となりました。
「Hour Glass」(5:32)中期 CAMEL をほうふつさせるファンタジックでメロディアスな作品。
「Tiding From Some Distant Shore」(8:30)哀愁のテーマに豊かな民俗色と厳かな宗教色が交差する佳曲。つややかなヴァイオリンと気品ある女性ヴォーカルをフィーチュア。
「Shooting Star」(9:40)意識して CAMEL を模したようなジャジーでほんのりブルージーな熱のある作品。
「Yumi Yeda」(10:15)
「Moments In Life」(8:32)
「Mystic Dream」(9:46)
「Le Sable S'est Ecoule」(5:38)やや悪夢的な、深い霧に沈むようなインストゥルメンタル。コラージュされる「声」は、ジョン.F.ケネディとマーティン・ルーサー・キング。
(MUSEA FGBG 4451.AR)
Harald Lytomt | guitars, flute | Trond Bohn | keyboards, guitar |
Torre Johanssen | guitar | Halvard Haugerud | keyboards, vocals |
Terje Solas | drums, vocals | Jostein Hansen | bass, vocals |
guest: | |||
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Steinar Straumdal | lead vocals |
80 年発表の第一作「Kerrs Pink」。
内容は、ツイン・ギターによる郷愁たっぷりのロック・インストゥルメンタル。
全編ひなびたトラッド・フォーク調だが、すべてオリジナル曲である。
10 曲のうち 6 曲まで作曲にギタリストのハラルド・リトムトがかかわっており、サウンド面のアイデアマンとなっていることが分かる。
ロック・ギターの基本にあるブルーズの影響が露でなく、北欧独特の土臭いメロディがすべての中心にあるところが、大きな特徴だ。
とにかく、どの作品においても、民俗色豊かな親しみやすいテーマを使ってギターを歌わせている。
ナチュラル・サスティンを効かせたツイン・ギターによる、チャーミングなハーモニーは、KAIPA や KEBNEKAISE の作品と共通する味わいをもっている。
また、ギターやヴォーカルのメロディの魅力に加えて、アコースティック・ギターやフルートによるトラッド・フォーク風の演奏がやがてはシンフォニックな広がりを生んでゆく、というアレンジの妙もある。
一方、キーボードは、裏方に徹しているものの、オルガン、ムーグともに暖かみのあるいい音を出している。
したがって、全体として、「フォーク調シンフォニック・ロック」といっていい内容になっている。
じつは、ギターのサウンドは、ある世代の日本人にとってデパートの屋上や真夏の海岸の思い出と直結せざるを得ない、ベンチャーズ/加山雄三系のものである。
エコーを効かせたストラトキャスターの「あの」音だ。
北欧のトラッドに郷愁を感じる辺り、日本人のルーツの不思議さにも思いを馳せてしまう。
「Velkomst(Welcome)」(2:45)
神秘的かつスリリングな効果音風のオープニングとは裏腹に、メインパートは、きわめてノスタルジックなギター・サウンドによるトラッド調のインストゥルメンタルである。
コブシの効いた軽やかな小品。
これでダメなら、この後もダメだと思います。
ただし、イントロのサウンドの感じから、このグループの音についてのセンスは並々ならぬものであることが分かる。
「Sett Dem bare ned(Please, be seated)」(6:47)
アコースティック 12 弦ギターによる竪琴のようなアルペジオ、そして哀しげなフルートの旋律が導くのは、以外にもアーバンな AOR 調の、ギター、エレクトリック・ピアノの演奏である。
やがて、アコースティック・ギター、ツイン・エレキギター、オルガンらによるソフトなアンサンブルとなり、ヴォーカルも加わってくる。
やや中途半端な、展開の見えない演奏だ。
突如調子が強くなり、ヴォーカルも激しく歌を叩きつける。
やや垢抜けないヴォーカルとギター・ソロが繰り広げられる。
最後は、AOR 風の演奏になめらかなギターが重なる。
いくつかのモティーフをつないだような、オムニバス風の作品だ。
「Barkbillens flukt(The flight of the Bark Beetle)」(3:52)
テーマが冴えるメロディアスなインストゥルメンタル。
見事なユニゾンのキメから、夏の海水浴場に流れていたようなギターのテーマが続く。
いわば、ハワイアンからスライド・ギターだけ除いたような感じである。
中盤、低音のリフをバックにしたソロでは、表情を変えてブルーズ・フィーリングも垣間見せる。
オルガンとの応酬や、ツインギター同士のやり取りも見せながら、オープニング・テーマへと戻る。
細かいパッセージをユニゾンで決める辺り、さりげなくテクニシャンである。
初期の KAIPA にも通じる作風である。
代表作。
「Sang fra skogen(Song from the wilderness)」(4:37)
メランコリックな歌もの。
もっとも、ヴォーカルの声質が、のんびりとした感じなので、さほど暗くはない。
うっすらとたなびくオルガン。
そして、間奏で切なく歌うエレキギターは格別である。
ギターのプレイは次第に力強さを増し、スピードも増して、切れ味のいい、そしてなおかつ暖かみのあるプレイを放ってゆく。
「Pimpernelle(Pimpernelle)」(5:32)
しっとりとした落ちつきと恋人たちの夢語りのような優しさに満ちたインストゥルメンタルの名品。
流れるように展開し、シンセサイザー、ギター、フルートが、それぞれに優れたフレーズを持ち寄ってささやきかける。
ツインギターの巧みなバッキングに支えられた優美なシンセサイザーのテーマと、クラシカルなフルート、控えめに徹しながらもよく歌うギターなど、全編美しい調べに満ちている。
イメージとして近いのは、「Breatheless」CAMEL でしょうか。
終盤のほのかなうねりもカッコいい。
個人的に一番好きな曲です。
湘南ロマン。
「Parringsstevet(Copulation theme)」(3:56)
愛らしくもペーソスある下降音形のテーマとリズミカルでユーモラスなテーマをフィーチュアした、田舎臭くもクラシカルなインストゥルメンタル。
ソロではなく、一体感あるアンサンブルと場面展開の妙を活かした演奏である。
最初のテーマは、オルゴールのようなエレクトリック・ピアノが提示し、ギターが追従してゆく。
第二テーマは、ギターとシンセサイザーのデュオによる。
合間は、メロディアスなギターがそつなくうめてゆく。
可愛らしく、きちんと譜面とおりに演奏している感じだ。
KAIPA の第一作に通じる世界です。
「Bamse Brakar(Brer Bear)」(3:23)
アップテンポで明るい、ややアメリカンなフォークロック。
ふと、ベースがリッケンバッカーらしい鋭い音を立てて演奏をリードしていることに気づく。
珍しくギターよりも、ベースが目立ち、キーボードもピアノ、オルガンなどきわめて多彩である。
「Sirrus(Sirrus)」(4:26)
イントロのハーモニクスが暗示するように落ちついたギターのメロディが歌うナンバー。
ツイン・ギターが見事に揃う。
オルガンをきっかけにブルーズ・ギターへ変化するところが意外だ。
互いに呼応するように二つのギターがせめぎあう。
再び穏かなユニゾンへ戻って終る。
ブルーズ風のソロが入るところが珍しい。
「Hvis jeg er der neste ar(If I'm still here next year)」(6:34)コーラスによるドラマチックなリフレインから始まる。
ギターの落ちついたリフでコーラスが歌う。
悲壮感が漂う歌だ。
そして泣きのギター・ソロ。
ハモンド・オルガンが響き哀愁を醸し出す。
コーラスからギターのオブリガートそしてピアノとエレピのしみとおるデュオ。
美しい。
そしてギターにリードされてコーラスへ。
沈んだメロディである。
コーラス・パートの繰り返しを経てギター・ソロへ。
オルガンの響きを背負って 2 つのギターが切なく歌う。
テンポが上がってギターが熱くせめぎあう。
最後の決めも歌謡曲風。
ギターのリードする歌もの。
暗く沈んだトーンである。
「Avskjed(Departure)」(6:36)
バロック風のオルガン、ピアノと例の如くトラッド風のギターがおり成す、長閑にして上品なアンサンブル。
ギターとオルガンは、細かいパッセージを小気味よくユニゾンする。
クラシカルなキーボードとギターが交互に現れ、最後に一つになってシンフォニックなアンサンブルを編み上げる。
コラールも加わって、エンディングへ向けて盛り上がる。
朗々たるギターがいい。
リズム・セクションもキレがある。
クラシカルなムードの中、ギターによるトラッド風の愛らしいフレーズが活きている。
「Kong Edvardt(King Edward)」(4:41)ボーナス・トラック。
79 年録音、発表のシングルより。
ツイン・ギターの二声の絡みが見事なナンバー。
独特のメロディが生み出す雰囲気に、オルガンがクラシカルな味付けをする。
全体にゆったりと歌う曲だが、時おりベースとドラムスがテクニカルなプレイを挿入し、それがアクセントとなっている。
エンディングも、イントロ同様、ツイン・ギターが鮮やかに絡む。ベースとドラムスがジャズっぽいのが印象的だ。
「Feberlaten(The Fever Theme)」(4:00)ボーナス・トラック。
79 年録音、発表のシングルより。
ギターのアルペジオにエレピとギターのメロディが重なる幻想的なイントロ。
リズムが入ると、やはりツイン・ギターがフォーキーなメロディを奏でている。
切なく甘く、そしてのどかなギターのメロディにあふれた好作品。
懐かしい思いがよみがえる曲ばかりだ。
トラッド調シンフォニック・ロックなぞとあえてジャンル分けする必要のない個性派である。
特筆すべきは、ギター・アンサンブルをしっかり支えるリズム・セクションのよさである。
(MUSEA FGBG 4027.AR)
Harald Lytomt | guitars, flute, keyboards, bass |
Jostein Hansen | bass, guitars, vocals, chorus |
Per-Oyvind Nordberg | keyboards, chorus |
Torre Fundingsrud | drums |
82 年に自主制作、発表された第二作「Mellom Oss」。
92 年の CD 化の際に、大部分が再レコーディングされた。
7 曲がオリジナル・アルバム収録の曲であり、5 曲の未発表曲と 1 曲のコンピレーション収録曲の計 6 曲が、ボーナス・トラックになっている。
内容は、トラッド風のギター・プレイを中心にした、ユーモアとノスタルジーにあふれたシンフォニック・ロック。
ギタリストが一人になることによって、呼吸の合ったギター・アンサンブルはなくなり、伴奏とリードはもっぱらオーヴァー・ダビングに頼っている。
ツイン・ギターの代わりに現れたのは、ギターとキーボードとのハーモニーである。
ギタリストは、エレキ・ギターだけでなく、民族音楽風からジャズ・テイストまで幅広いプレイを見せるアコースティック・ギターでも活躍する。
エレキ・ギターのプレイは、今回も「なぜか昭和歌謡風」に聴こえてしまうフレーズを多用、時おりロックらしいソロを引き立てながら、きっちりとまとめている。
スライドや VENTURES 調はストラトキャスター系のシングルコイル、伸びやかな CAMEL 風の泣きのフレーズはハムバッカー(インナーの写真では Flying V を弾いている)を使っているようだ。
安定した技巧派といえるだろう。
ピアノやゲストのヴィオラによるクラシカルな演出も効果的に作品を引き締めている。
また、朴とつで力みかえったヴォーカルもこの全体の雰囲気によく合っている。
シンフォニックな面もあるが、何より独特の節回しによる完成された「田舎っぽい」雰囲気のユニークさという点で、間違いなくプログレッシヴ・ロックである。
こんなに陽気でお茶目な、愛すべき素人っぽさあるプログレは他にはないだろう。
こういうぶっ飛んだ個性を大切にする北欧というのは、ある意味天国のようなところである。
B 面の 17 分余りの大作は、暖かみのあるサウンドをクラシカルなアレンジでまとめた一大ファンタジー。
明暗くっきりとした色調、夢見るような表情、スケール感などシンフォニック・ロックの大傑作である。
CAMEL の「Snow Goose」や GANDALF あたりのファンにお薦め。
さえずるようなフルート、マギー・ライリーを思い出させる美しい女性ヴォーカルも登場する。
音質こそ自主製作特有のレベルだが、パフォーマンスは一流であり、その一流の演奏によるチープシックな味わいは、また格別なのである。
「Mellow Oss(Between Us)」(5:36)
「Trostevise(Comforting Tune)」(2:56)
「Trostevals(Comforting Waltz)」(1:02)
「Ostenfor Ord(East of words)」(6:06)
「Hvem Snakker Til Meg?(Who's talking to me?)」(5:29)
「Elegi(Elegy)」(3:17)誰もがどこかで聴いたようなと必ず思うはずの名小品。
「Mens Tiden Forgar(While time fades away)」(17:17)七部からなる大作。
リミックス・ヴァージョン。
フルート、ギター、混声ヴォーカルによるクラシカルかつフォーク・タッチの傑作。オープニングからクリアー・トーンのギターによるきらめくようなプレイが続く。
「Marius(Marius)」(3:16)ボーナス・トラック。
未発表曲。
「Parademarsj For Jubilanter(Parade march for jubilants)」(2:36)ボーナス・トラック。
未発表曲。
「Den Siste Russ(The last of the sixth formers)」(3:00)ボーナス・トラック。
未発表曲。
「Hyllest Til Olga(Ode to Olga)」(1:40)ボーナス・トラック。
未発表曲。
「Tromborg Samba(Tromborg samba)」(3:27)ボーナス・トラック。
未発表曲。
「Fredsmarsjen(Marche de la paix)」(3:15)ボーナス・トラック。
コンピレーション盤収録曲。
(MUSEA FGBG 4069.AR)
Torre Fundingsrud | drums | Jostein Hansen | bass, 12 string acoustic guitar, vocals |
Harald Lytomt | guitars, flute | Per-Oyvind Nordberg | lead vocals, keyboards, bass |
Torre Johanssen | guitar, tin whistles | ||
guest: | |||
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Heidi Drengsrud | vocals on 4,6 | John Egil Nordberg | choir on 8,10 |
Sven Fosdahl | choir on 8,10 | Robert Herland | choir on 8,10 |
Roger Magnusson | choir on 4,10 |
93 年に発表された第三作「A Journey On The Inside」。
約十年ぶりとなる作品。
セカンド・アルバム発表後、メンバー交代を経つつも、ライヴ活動は続けられていた模様だ。
内容は、リード・ヴォーカリストのノードベルグ書き下ろしのストーリーに基づいたトータル・アルバム。
一人の男の自己発見の旅が、短い曲の積み重ねで描かれている。
CD ではオリジナル二枚組 LP から「Devotion」、「Leaving No Stones Unturned」の二曲が削られている。
トラッド調からハードな(とはいえそれほどハードではないのだけれど)シンフォニー、変拍子のトリッキーなアンサンブルによるプログレ・チューンまで、盛りだくさんの内容だ。
どんな曲調の作品にも共通するのは、柔らかく優しげな歌心である。
トーンやサウンド、バラエティ豊かな楽曲群で主題を描くスタイルなど、再結成後の CAMEL との共通点が多い。
CAMEL をやや田舎風にした感じといえば、ピッタリだろう。
ギター・サウンドは、現代風のややメタリックなものへ変化し、キーボードも仰々しいスタイルへと移っているが、特徴である「なごみ」のメロディ・ラインとユーモラスなアンサンブルは健在である。
女性ヴォーカルやアコースティックでおちついた音もうまく用いている。
70 分以上の大作だが、ゆったりとした調子を基本に巧みな起伏を設けて流れを構成しており、じっくり聴いても疲れはない。
特に、終盤のナチュラルかつ情熱的な YES の大作風の盛り上がりは、微笑ましくもすなおな感動がある。
一方、時おり見せる PINK FLOYD 風の重苦しい展開は演出過多気味で、このグループの音にはあまり似合わないと思う。
また、フォーク寄りの音とずっしりしたシンフォニックな音がうまくかみ合わずに、居心地悪そうになっているところもある。
結論は、ヘヴィさもあるニューエイジ系シンフォニック・ロックの好作品。
ひなびたリチャード・トンプソン風をはじめ、マイク・オールドフィールドのけたたましさをやや抑えたようなソロやスティーヴ・ハケット風の震えるように繊細なバッキングなど、エレクトリック、アコースティック・ギターのプレイは今回もほんとうにすばらしい。
GANDALF のファンにも受けそう。
ヴォーカルは英語。
「Prologue」(0:19)
「Kingdom Of Nothing」(5:58)
「Mutual Attraction」(3:26)
「Magic Mary」(4:57)
「Journey」(2:59)
「Act Of Appearing」(5:17)
「The Village」(1:44)
「The Voice Inside Your Heart」(2:07)
「The Initiator」(4:08)
「Downtown Happy-Go-Lucky Bunch」(3:23)
「The Sorcerer」(6:02)
「Time For Thought」(1:24)
「Showdown」(5:33)
「The Merger」(1:08)
「The Prisoner」(3:49)
「Rubicon」(10:45)
「Delirious」(5:13)
「Epilogue」(3:09)
(MUSEA FGBG 4085.AR)
Jan Hakon Skarpsno | drums, keyboards | Harald Lytomt | guitars, bass, flute, vocals, keyboards |
Thor Einar Wiik | drums | Jostein Hansen | bass |
Per-Oyvind Nordberg | keyboards | Freddy Ruud | keyboards |
Bjorn Teig | organ | Torre Johanssen | guitar, flute, tin whistle |
Fritz Hunstad | organ | Erik Hageler | vocals |
Geir Jahren | vocals | Heidi Drengsrud Jahren | vocals |
Cecilie Ljunggren | vocals | Tormod Gangflot | viola |
Liv Frengstad | cello |
97 年に発表された第四作「Art Of Complex Simplicity」。
ハラルド・リトムトのソロ・アルバムとなる予定であったが、ジョステン・ハンセンが作詞したことによって KERRS PINK 名義で発表された作品だ。
その内容だが、音色こそ洗練されたモダンなものとなっているが、暖かなオルガンと歌心あふれるギターらの織り成すハーモニーに変わらぬ KERRS PINK 節を見る。
ヴィオラやチェロによる郷愁を誘う音作りや、あの北欧トラッド調のペーソスあふれる語り口も健在である。
メロディアスにしてしなやかなリズムのあるアンサンブルと、ブルーズ・フィーリングをまぶしたよく歌うギターそしてヴォーカル処理が 70 年代の CAMEL を思わせるところも多い。
7 曲目のヴォーカルなど、リチャード・シンクレアへの思い入れもたっぷりだ。
そして、ブリティッシュ・フォークに通じるような枯れた情趣のあるアコースティック・アンサンブルや、宗教/民俗調をさらにポップに推し進めた STRAWBS そのもののような作品で、新境地を見せている。
女性によるケルト風のアリアも美しい。
アルバム・タイトル通り、練られた楽曲と誠実にして的確な演奏があれば、過剰さなぞなくとも、こんなにすばらしい音楽ができるという見本のような作品だ。
CAMEL ファンはぜひ。
ヴォーカルは英語。
「Welcome To The Greenest Forest」(6:23)CAMEL 風の美しくも躍動感あるインストゥルメンタル。
「Lady Of The Lake」(2:52)STRAWBS を思わせる英国風の古楽ロック。
「The Hero Of Chivalry」(4:03)これぞ KERRS PINK 節というべき郷愁のエレクトリック歌謡インストゥルメンタル。ギターとヴィオラによる快調な演奏である。
「Fearful Heart」(4:09)ドラムレスの静かな弾き語り。愛らしくも心に染み入るメロディ・ラインです。うっすらとたなびくヴォカリーズも美しい。
「Never Land」(4:20)VENTURES と CAMEL の中間くらいのエコーの効いたギター・インストに女性のヴォカリーズがからむ。素朴だけれどほんの少しお洒落。
「Lina」(2:36)ギターが優しく語るインストゥルメンタル。オルガン、フルートも加わってほんのりクラシカルなアンサンブルである。
「Affinity」(8:33)「Rain Dances」CAMEL を思わすノーブルな歌もの。憂鬱にしてスリリング。詠唱風の歌のせいか雲間から差し込む光のように厳かな響きもある。伸びやかに歌うギター。特にエンディング近くのブルージーなギターがいい。
「Guiding Light」(3:30)ティン・ホイッスル、ギターをフィーチュアした哀愁のトラッド・フォーク・ロック。クラシカルなオルガンの伴奏もいい。
「Celestial Heavens」(3:03)弦楽器、オルガンによるクラシカルかつメロディアスなインストゥルメンタル。ここでもうっすらと女性のヴォカリーズがたなびく。切々としたチェロの響き。童歌のように優しげなテーマが印象的。
「Linger A Bit Longer」(6:46)CAMEL 風のメランコリックな歌ものロック。「泣きの」ギター、小気味いいオルガン、さらにはフルートもフィーチュアされ、得意のトラッド調のペーソスと伸びやかな歌声、動と静の対比をつけている。
「Days Past」(2:15)
「Joie De Vivre」(10:00)
「A Final Greeting」(6:35)
(MUSEA FGBG 4219.AR)