KORNELYANS(Korni grupa)

  セルヴィアのプログレッシヴ・ロック・グループ「KORNELYANS」。 68 年結成、74 年解散。 イタリアからの国際デビューにあたり元のグループ名「KORNI GRUPA」を変更した。

 Not An Ordinary Life
 
Kornelije Kovac keyboards
Josip Bocek guitar
Zlatko Pejakovic  lead vocals
Boyan Hrellac bass
Viadimir Furduy drums

  74 年発表のアルバム「Not An Ordinary Life」。 通算第二作であり、世界進出を目指してイタリアの RICORDI レーベルから発表された。 内容は、テクニカルなギターとあまりに多彩なキーボードを駆使したジャジーなプログレッシヴ・ロック。 アンサンブルのタイプは、いわばジャジーな YES または P.F.M というべき「弾きまくり」型。 ただし、テーマがロックンロールとしてこなれていること、キーボードがアコースティック・ピアノを多用してセンスあるプレイをすることなどから、いわゆるプログレ然とした印象は、少なくとも当初は、薄い。 ただし、演奏中心のパートになると事情が一変する。 ギター、キーボード、リズム・セクションすべてが、もてる技巧の限りを尽くして、走り、刺激し合い、飛翔する。 そして、2 曲目に象徴されるように、ロックの不良っぽいカッコよさとジャジーでテクニカルなプレイがまったく矛盾なく合体している。 いわば、JEFF BECK GROUPYARDBIRDSYESMAHAVISHNU ORCHESTRA の合体である。 これは、グループの音楽的な素養とその発展の仕方に負うのだろうが、かなり珍しいスタイルだ。 ハードロック的に攻め込む演奏も、倍密倍速といったイメージである。 そういう演奏の中ですら、ヴォーカルと器楽が余裕を見せながら完璧に呼応する辺りは、フランク・ザッパのグループのようだ。 また、およそシンフォニックなプログレとは縁のなさそうなブルーズ、 R&B 調の作品に思い切りシンセサイザーを放り込むスタイルは、東欧のグループにはよく見られるスタイルである。 このグループは演奏の水準が高いだけに余計にそれが強烈な印象を与える。 ヴォーカルは英語。 作曲は、すべてキーボードのコヴァクによる。
  キーボードのプレイは本格的なアコースティック・ピアノからスピーディなシンセサイザー、ジャジーなオルガンまできわめて多彩。 クラシック、ジャズ、黒人音楽、何でも来いといった感じである。 ドラムスは手数勝負の豪腕型。 そしてベースのプレイがかなりカッコいい。 加速時の「うねり」はこのベーシストのおかげである。
  スピード感のあるスリリングな演奏は、欧米のジャズロック・グループに匹敵するどころか、若干ではあるが、追い越してすらいそうな気がする。 ただし、ロックンロール、ブルーズの基本表現から逃れられていない、つまりあくまでスタイルの模倣であるところが、英国音楽の超絶的個性とは異なる。 「新しいこと」の範囲が演奏技術に限られているといってもいい。
  シーンをリードしたグループだけあって、総じて 74 年のサウンドにしてはテクニック的にも音的にも申し分ない。 アグレッシヴにして安定感もあるところもさすが一流グループといえるだろう。 「Generation 1942」はコンテストにも出展したグループの代表作。 シンセサイザーを大幅に使いながらもキャッチーな傑作である。 各曲も鑑賞予定。

  「Rising」(2:16) 気品の感じられるインスト小品。キーボードがみごと。
  「Not An Ordinary Life」(10:19)
  「Generation 1942」(6:43) ポップな傑作。
  「Fall Of The Land Of Woman」(5:31)
  「Temporaray Parting」(4:00)
  「Man With A White Flag」(11:50)

(Ricordi SMRL 6130 / PGP RTB 5842 / VM 030)


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