LEVIATHAN

  イタリアのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「LEVIATHAN」。 82 年に結成された、ポンプ世代のベテラン・グループ。 作品は、2001 年現在三枚。 プログレ・リヴァイヴァルにとどまらない、ロックとしての優れたセンスを持つ。 新作は 2009 年の MUSEA 企画によるホラー映画トリビュート盤。フルアルバム期待。

 Heartquake
 
Alex Brunori vocals
Giorgio Carana guitar, MIDI guitar
Andrea Moneta drums, percussion
Franco Pezzella piano, keyboards
Sandro Wlderk bass, bass pedal

  88 年発表の第一作「Heartquake」。 内容は、MARILLION らポンプ・ロック勢含め、英国シーンの影響を強く受けたネオ・プログレッシヴ・ロック。 「ポンプ」とはいうものの、演奏の水準が高いために、聴き応えは十分ある。 はつらつとしたアンサンブルやバラードの表現力(AOR 寸止め)など、ただならぬものがある。 そして、産業ロック調のヌケのよさとプログレらしい耽美なロマンティシズムとがバランスしており、大げさにいえば、TEARS FOR FEARSSMITH らに倣いつつも、時としてメロディ・ラインの魅力すら損なってしまう英国ロック特有の「陰鬱な屈折」がない。 つまり、泣きのメロディを「ポジティヴ」かつ「情熱的」に歌い上げているので、音楽のヴァイヴレーションが素直に伝わってくる。 演奏面でみごとなのは、スティーヴ・ロザリー・スタイルをさらに泣き虫にしたようなギターのプレイといかにも現代風のキーボードが織り成すダークな幻想絵巻に、夢幻のまろやかな味わいとともにロックらしいしなやかさと機敏さがしっかりとあること。 これは、小技からダイナミックな表現までを丹念に繰り出して演奏を支えるドラマーのおかげだ。 たまにヨタるのは確かだが、このリズムの弾力性によって、なめらかで優しげな上モノがさらに輝きを放つようになっている。 深めのエコーに頼った同じようなサウンドによるプレイが続いてメリハリを欠くこともある。 しかし、80 年代のメロディアスなロックとしては十分水準クリアだろう。 アコースティックな音などのアクセントがあれば、また低音域をもっと力強くすればなど、製作面を充実させればさらによかったかもしれない。 何にせよ、テクニシャンによるポンプ・ロックという意味では、かの時代状況を考えれば、大健闘のアルバムでしょう。 やや訛りのある英語のヴォーカルさえ我慢できれば、問題なし。 全体的な印象としては、曲のよさで聴かせるアルバムである。 フェード・アウトがカッコいいというのは、なかなかありません。

  「The Waterproof Grave」(3:53)
  「Hellishade Of Heavenue」(8:03)
  「Only Visiting This Planet」(6:35)
  「Up We Go!」(7:00)
  「The Dream Of The Cocoon」(5:21)
  「Heartquake」(8:26)シンフォニックな広がりが魅力の力作。
  「There's Only Watershade / In The Dream Of Up We Wake !」(3:19)インストゥルメンタル。

(FGBG 4090.AR)

 Bee Yourself
 
Andrea Amici piano, keyboards
Alex Brunori vocals
Giorgio Carana electric & acoustic guitar
Andrea Moneta drums, percussion
Sandro Wlderk bass, bass pedal

  90 年発表の第二作「Bee YourselfGENESIS 調を堅持しつつも、メロディ・ライン、サウンドともにナチュラルさを増した傑作。 テクニカルなキレのあるリズム・セクションと透明感のあるギター、キーボードのフレージングを組み合わせ、さらには、ややジャジーでソフトな音も交えることによって、中期 GENESIS の強い影響の下から一歩踏み出して、オリジナルな音を作り上げている。 ヴォーカルも思い切り前に出るが、今回は、英語の歌唱にさほど違和感を感じない。 涼やかなキーボード・サウンドを中心に、陰と陽を巧みに交差させ、歌うところではゆったりと歌い、リズミカルにたたみかけるインストゥルメンタルでは思い切りよく走る。 仕掛けのあるシリアスな変拍子アンサンブルも堂々たるものだ。 そして、70 年代風の厚過ぎず薄過ぎずのセンスのいいシンフォニック・タッチで訴えてくるところが驚きである。 MARILLIONPENDRAGON も、ここまではできていない。 90 年代のプログレ・リバイバルを代表できる作品の一つであり、GENESIS 系ネオ・プログレッシヴ・ロックという括りでは、出色の作品といえるだろう。 堂々たるメロディアス・シンフォニック・ロックの 1 曲目、ヒネリを効かせた 2 曲目、詩的で清廉な幻想美をたたえる 3 曲目、本家もびっくりのシアトリカルな小話調の小品。そして、最終曲の大作は、近年のアメリカなどのプログレ・グループが憧れる「Trick Of The TailGENESIS が、あたかも「Supper's Ready」をやっているような大傑作。 クラシカルなピアノを筆頭に、ハモンド・オルガンとドラムスがすばらしく小気味いいパフォーマンスを繰り広げる。 中盤の二つのアンサンブルが対話のように交差する辺りから、なめらかな筆致ながらも、ドラマは二転三転、どんどん盛り上がり、やがてリスナーは釘付けとなる。 音の感じからしてかなり一発録りに近そうだが、だとすると相当なテクニシャン集団です。 再発が望まれます。

  「The Red Moon」(8:45)
  「New Baby Born」(3:22)
  「Endless Hunting」(7:40)
  「The Devil In The Cathedral」(3:16)
  「Bee Yourself」(19:37)

(CONTEDISC 154)

 Volume
 
Andrea Amici keyboards
Paolo Antinori vocals, acoustic & electric guitar
Fabio Varano bass, bass pedal
Andrea Moneta drums, percussion
Claudio Varamo electric guitars
guest:
Anchise Bolchi violin solo on 8
Giancarlo Petrosino guitar solo on 2
Gabriella Aiello vocals on 5
Xenia Hungarian announcement on 7

  96 年発表の第三作「Volume」。 ドラムスとキーボード以外のメンバーを刷新した六年ぶりの作品である。 内容は、キーボード、ギターによるほんのりクラシカルで軽快なアンサンブルをダイナミックなリズム・セクションが支える、ライトなシンフォニック・ロックとなる。 90 年代初頭にたくさん現れたイタリアのネオ・プログレを思い出していただいて、それらの中で上位に位置する、と考えていただきたい。 けたたましいデジタル・シンセサイザーとともに全体に突き抜けたようにポップなノリがある。 ただし、時おりシリアスな表情を見せたり意外な方向へと切り返すなどアンサンブルに工夫があるので、やはりプログレというべき内容だ。 イタリア語のヴォーカルは若々しく魅力的であり、ギターもオーソドックスながらいいプレイだ。 全体に、なかなかの技巧をひけらかさずに、あえてポップでストレートな表現をしているような気がする。 ただ、もう少しリズムやテンポに変化をつければもっとドラマティックに胸を打ったとも思う。
   特に残念なのは、エレクトリック・キーボードの音質に奥行き、深みがないこと。 さまざまな音を使い分けていいフレーズを弾いている(アコースティック・ピアノの演奏を聴けば技量が並ではないことが分かる)ことを考えると、このサウンド・メイキングはあまりに物足りない。 GENESIS 調が露でなくなったと感じてしまう理由の一つがこのキーボード・サウンドである。 7 曲目「Sotto Le Mie Ali」のように本グループが FINISTERRE らと同じく、現在的な音響感覚にあふれることを示す佳作もあるだけに、軽くてシンプル過ぎるビートとチープなキーボード・サウンドが惜しい。 また、ドラムスのリズム・パターンが単純化したのも残念だ。
  とはいえ、イタリア語のロマンティックな響きを活かしたメロディアス・ロックとしてはかなりの内容だと思う。 ファンタジックな演出とタイトな演奏が支える AOR 風の歌ものととらえるべきなのかもしれない。 最後の 2 曲はかなりの力作だろう。

  「Baussant」(3:46)インストゥルメンタル。
  「Sabbia Ed Argento」(4:44)
  「Regioni Della Menta」(9:10)
  「Vae Victis !」(5:50)
  「Racconto D'inverno」(6:35)アコースティック・ギター弾き語りでリードする王道イタリアン・ロック。女性ヴォーカルがサポート。
  「Punto Di Fuga」(4:50)
  「Sotto Le Mie Ali」(11:33)リズムレス・パートの幻想性は圧巻。そして後半の幾何学模様を描くようなギター中心のインストゥルメンタルもおもしろい。
  「Epilogo」(6:32)

(MMP 335)


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