ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「NEUSCHWANSTEIN」。 71 年結成。グループ名は狂王ルードヴィッヒUの居城から。唯一作は初期の GENESIS に似た詩的なシンフォニック・ロック作品。 2009 年幻の未発表作品発見さる。
Thomas Neuroth | piano, organ, keyboards |
Klaus Mayer | flute, synthesizer |
Roger Weiler | guitars, narration |
Rainer Zimmer | bass |
Hans-Peter Schwarz | drums, percussion |
2009 年発表のアルバム「Alice In Wonderland」。録音は、1976 年。74 年くらいからライヴ演奏されていたらしい。
内容は、「アリス」をモチーフにした 40 分あまりのトータル作であり、きわめてクラシカルで甘美、ファンタジックなロック・シンフォニーである。
フルート、ユニークな音のシンセサイザー、丹念なギターのアルペジオ、小気味いいドラムロールらによる、にこげのように柔らかく優しい演奏であり、自ら影響を受けたと語っているとおり、「上品でモデストなリック・ウェイクマンのソロ作品」という趣が強い。
二人のキーボード奏者を擁するので、オルガンとシンセサイザー、ストリングスとピアノのようなコンビネーションがふんだんにあり、多彩な音の色合いによる緩急や強弱の展開がうまくつけられている。
そして、リリカルな表現だけではなくスピーディでたたみかけるような場面でも演奏がしっかりとまとまっているところがいい。
オルガン、ギター、シンセサイザー、フルートが一体となってスリリングに迫るシーンはかなりカッコいい。
特にフルートは、主旋律でアンサンブルを引っ張り、リード・ギターなみに活躍している。
かように、優しげな風情にバンドらしいグルーヴが息づいているところや位相系のカラフルなエフェクトなど、いかにも 70 年代ロックらしさが現れているが、リスナーとしてはノスタルジーにとどまらない作りこまれた音楽の魅力を見つけられると思う。
ドイツ語のナレーション以外は、5 曲目のコミカルな "Mad Tea Party" でコーラスが入るのみ。
録音は通常盤には及ばないが、音楽的な内容は発掘ものとして出色の内容である。
バッハなどクラシックのモチーフもいろいろ取り入れられている。
後の GENESIS 風味はまだ醸造中ながらも、NOVALIS を超えて ANYONE'S DAUGHTER に迫るファンタジック・シンフォニック・ロック。
ユーロロック・ファンには突き刺さるでしょう。
(RSLN 126)
Thomas Neuroth | keyboards |
Klaus Mayer | flute, synthesizer |
Roger Weiler | guitar |
Frederic Joos | lead vocals, acoustic guitars |
Rainer Zimmer | bass, vocals on 1 |
Hans-Peter Schwarz | drums except 1 |
Hermann Rarebell | drums on 1 (Scorpions) |
79 年発表のアルバム「Battlement」。
内容は、ピーター・ゲイブリエルに酷似したヴォーカルをフィーチュアし、シンセサイザーを多用したクラシカルなシンフォニック・ロック。
シンセサイザーの音色こそ 70 年代終盤のものだが、ヴォーカルの力と丹念なアンサンブルのおかげで全盛期の GENESIS を思わせるサウンドになっている。
その徹底ぶりは、竪琴のようなアコースティック 12 弦ギター、デリケートなフレーズを紡ぐギター、さらにはフルートも用いるなど、みごとなものである。
キーボードは、シンセサイザーを中心にピアノ、オルガンなどを用いて、フレーズ反復に巧みな変化をつけた精緻な演奏を得意とする。
全体としては GENESIS の牧歌的な面を採用した作風である。
そして、本家と比べると、繊細さを突き詰めた果ての緊張感やグロテスク趣味に至る手前の、素朴で直截的な情感が感じられる。
ドラミングは、シャープでていねいなプレイを見せ、全体演奏における心地よい緊張感とスピード感の源になっている。
7 拍子による走り出すような演奏も鮮やかに決めている。
しかし、大胆なポリリズムをドライヴするところまではいかないし、そもそも、楽曲の展開にも本家ほどキチガイじみた複雑さはない。
やはり、メロディアスなギターとさざめくように音で埋め尽くすキーボードによる、リリカルな演奏がメインといえるだろう。
余談だが本作品のおかげで、GENESIS に似せるポイントが美麗なメロディや声質、奇数拍子だけではなく、R&B を意識したポップ・センスであることに気づいた。
何はともあれ、プログレ・ファンとして、素通りは困難な音です。
ディーター・ディルクスのスタジオで収録されたため、1 曲目では SCORPIONS のドラマーが客演している。
プロデュースは、ウリ・ライヒャート。
ヴォーカルは英語。
「Loafer Jack」(4:42)GENESIS 風のパーツを駆使したポップにしてエレガントな名品。シングルでもよかったでしょう。美しく、すべてを心得たシンセサイザーの調べ。
ひょっとして MARILLION はこれの真似?
「Ice With Dwale」(6:21)冒頭、白々とした夜明けを思わせるアコースティック・ギターとフルートのデュオが導くので、ファンタジックな作品かと思いきや、終盤は意外にも垢抜けたポップス風を展開も見せる。
「Intruders And The Punishment」(7:34)
シンセサイザーとドラムスがけたたましくがんばり、ハイテンションのまま一気呵成に進む作品。
微妙なコード進行も交えつつ、終盤シンフォニックなクライマックスへと駆け上る。
「Beyond The Bugle」(7:31)
一転して、バラード(というか怪しげなささやき)風も交えた、しっとりとした歌いこみ中心の作品。
翳りある表情にときおり光が差しこみ、やがて再び沈んでゆく。
明暗陰陽の切り換え、インストゥルメンタル・パートの凝った音作りがみごと。
「Battlement」(7:05)
ジャーマン・ロックらしさの出たスペイシーでファンタジックな作品。
ギターは初期 GENESIS だが、キーボードはそれにはとらわれない多彩な音である。
「Midsummer Day」(7:42)
MARILLION に近い泣きの歌もの。中盤 JETHRO TULL のような沸騰も。
「Zartlicher Abschied」(5:52)
クラシック GENESIS に迫る明るくポジティヴな快速チューン。
クラシカルなキーボード、フルートがいい。インストゥルメンタル。
(RRK 15.002 / MUSEA FGBG 4063 AR)