スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「N.H.U.」。 ポルトガルに近いガリシア出身の短命のグループであったらしい。アルバムは一作のみ。
Roberto Abai | |
Xose Ferreiro | |
Tino Grandio | |
Xulio Ferreiro | |
Xurxo Perez |
78 年発表のアルバム「n.h.u」。
たなびくオルガン、ディレイ、エコーの効いたスペイシーなギター・サウンドによる 70 年代中期の英国プログレを思わせる逸品。
オルガンは、少し聴くだけで一流と分かるジャジーなプレイの名手。
また、ギターのプレイも、エフェクトに埋まってはいるが、やはりセンスのあるものだ。
ハードな場面でのベース、ドラムス、そしてパーカッションの活躍も痛快だ。
そして、そういうプレイを巧みに配置して筋書きを綴ってゆく力もある。
即興的な瞬発力と計算された動きが理想的に結びついた、プログレの頂点といえる内容である。
さらには、サイケデリックな幻想性と、タイトなアンサンブルによるジャズロック的でアグレッシヴな面もバランスが取れている。
サード・アルバムの頃の YES をメインに、初期 PINK FLOYD の色彩感と 70 年代中盤らしいジャズロック(MAHAVISHNU ORCHESTRA だろうか、やはり)の味わいを加えた世界といえばいいでしょう。
ジャジーで技巧的なプレイを楽しめるオルガン・ロックとしても、シンフォニック・テイストのあるハードなジャズロックとしても聴くことのできる佳作。
もちろん、ポップ・センスあふれる歌メロもあり。
スペインは完全に五年遅れで英国プログレを追いかけていたようだが、その追いかけ方の気合が並ではないことがよく分かる、そんな作品です。
「Na Terra Do Verde Chan」(10:22)初期 YES のようなファンタジー大作。
ワイルドで幻想味の強いインストと、イタリアン・ロックに通じるルーラルにして上質なポップ・テイストのあるメロディやヴォーカル・ハーモニーの絶妙の組み合わせ。
「A Titiritada」(2:52)シャープでワイルドなテクニカル・ジャズロック。
「Friky & Alexo」(7:45)エモーショナルにして幻想的そしてタイトな名品。緩急自在でありこのグループの音楽性をよく現している。
「Doente」(5:31)ヴォイスや即興など、複雑な展開を見せるアヴァンギャルドな作品。
インスト・パートの緊密な演奏がカッコいい。
「Hay Un Tren」(5:33)イタリアン・ロックを思わせるフォーキーな歌もの。ただし、ギターの音やリズム・セクションはぐっと洗練されている。
英国本流を目指した研鑚の成果か、五年遅れによる機材の進化のおかげか。
「A Trancas E Barrancas」(7:05)ソロをフィーチュアしたジャム風のハイテンション・ジャズロック大作。
ギター、リズム・セクションによる硬派なバトルは、いかにも MAHAVISHNU/BRAND X 的。
ここではバッキングもエレピに。
そして、ドラムスの手数も三倍増。
オルガンが入っているため、IL BALLETTO DI BRONZO と MAHAVISHNU が合体したような瞬間もあり。
全員一丸となって突進し、大爆発してます。
(RCA 74321779602)