イギリスのベーシスト「Nicholas Greenwood」。 アーサー・ブラウンのグループ、スティーヴ・ヒレッジの KHAN からソロへと歩む。 72 年唯一のソロ・アルバムは英国ロックの格調を伝える名作。
Nicholas Greenwood | bass, vocals, effect | Dick Heninghem | keyboards |
Eric Peachey | drums | Bunk Gardner | woodwinds |
Bryn Haworth | guitar | Chris Pritchard | guitar |
Nils Oliver | strings | Margaret Immerman | strings |
Janet Lakatos | strings | The Tear Drops | harmony |
Charles Lamon | arrangement |
72 年発表のアルバム「Cold Cuts」。
内容は、クラシカルな重厚さに、ジャズ、ブルーズ、R&B 風味たっぷり交えた正統派英国ロック。
荒々しくも詩情あるハモンド・オルガン、古式ゆかしい弦楽の響き、高鳴る金管楽器、華やかに舞うフルート、ソウルフルな歌声、サイケデリックな毒気あるサウンドなど、ブリティッシュ・ロックのすばらしさを十二分に伝える佳作である。
ストリングスの調べにハモンド・オルガンが重なる、波打つようなユニゾンやハーモニーを耳にすれば、心はいとも簡単に 30 年あまりを遡る。
KHAN 関連というせいか、カンタベリー系と謳われることがあるが、実際はカンタベリーのジャズロック的な洗練された作風ではなく、70 年代初期のブルージーなオルガン・ロック、VERTIGO や HARVEST レーベルのプログレッシヴ・ロック作品に並ぶ作風である。
つまり、THE BEATLES から DONOVAN を経て、AFFINITY や STILL LIFE と共通する世界である。
また、重厚な器楽に隠れがちだが、主メロディには意外なほどポップな味わいがある。
野太い悪声とこの妙にキャッチーなメロディ・ラインのコンビネーションが、タイトなリズムとぜいたくなサウンドと反応することで、翳りとも能天気ともつかぬ独特の魅力が生まれている気がする。
個人的には、本作品のハモンド・オルガンに痺れている。
そのパーカッシヴなハモンド・オルガンをフィーチュアしつつ、さらに管絃楽器をふんだんにあしらうことによって、ブラス・ロックのなめらかでパワフルなタッチとクラシカルな響きの魅力を両方盛り込んだ作品になっているとも思う。
また、アル・クーパーのいた BLOOD SWEAT & TEARS との類似を感じるところもある。
1 曲目、重厚極まるインストゥルメンタルの果て、フルートともにブルージーな歌が始まれば、もう虜である。
余談だが、本作品でグリーンウッドの声を聴いて、初めて、KHAN でもかなり歌っていたことに気がついた。
ヒレッジと声質が似ているため区別がつかなかったのだ。
また、発表は 72 年だが、サウンドはいかにも 70 年前後のものだ。
ひょっとすると、実際の録音時期は数年遡るのかもしれない。
または、あえてサイケの残り香たっぷりの 60 年代末的の雰囲気を演出しているのであれば、それは大成功である。
原盤が高価で取引されることで有名な作品の一つでもある。
管楽器奏者のバンク・ガードナーはフランク・ザッパのアルバムに多く参加。ギタリストのブリン・ハワースはソロ作も多いスライドギターの名手。
プロデュースは、マーク・チェイスとグリーンウッド。
「A Sea Of Holy Pleasure Part I,II,III」(7:17)
「Hope/Ambitions」(2:51)
「Corruption」(3:10)
「Lead Me On」(3:49)
「Big Machine」(2:18)
「Close The Doors」(4:29)
「Melancholy」(3:20)
「Images」(3:25)
「Promised Land」(3:10)
「Realisation And Death」(5:14)
(KINGDOM KVL9002 / AKARMA AK 289)