フィンランドの鍵盤奏者「Olli Ahvenlahti」。49 年生まれ。作品多数。 UMO JAZZ ORCHESTRA のメンバー。
Pekka Pöyry | alto sax, soprano sax, flute |
Pekka Sarmanto | bass |
Esko Rosnell | drums, percussion |
Olli Ahvenlahti | piano, electric piano, clavinet, synthesizer |
Bertil Löfgren | trumpet, flugelhorn |
75 年発表のアルバム「Bandstand」。
内容は、ラテン/ソウル・ジャズのファンキーな素地を垣間見せつつも、ファンタジーの趣も強い管楽器フロントのクロスオーヴァー・ジャズ。
ブラス・ロックばりのパワフルな管楽器セクション、リリカルなアコースティック・ピアノと明け方の夢をたどるようなエレクトリック・ピアノが売り。
このイマジナティヴでポエティックなキーボードのバッキングのおかげで、パンチの効いた管楽器セクションに、熱気だけではないヒップななめらかさや清冽さが感じられる。
もちろんスティーヴィ・ワンダーばりのファンキーなクラヴィネットもカッコいい。
そして、ベースがアコースティックのみなところは、初期 WEATHER REPORT と同じセンスでジャズを敷衍していることを図らずも象徴するようだ。
名サックス奏者ペッカ・ポイリはここでもしなやかな筆致のいい仕事をしているが、それより目立つのが、ベルティル・ロフグレンのトランペット。5 曲目のプレイは秀逸。
熱くてクールな名盤であり、どうしようもない感傷や後悔をかきたて、なだめ、癒すような音である。
プロデュースは、マンス・グランドシュトロム。
「Breeze」(6:45)スペイシーなサイケデリックな感覚を活かしたクロスオーヴァー。夢語りのようなエレクトリック・ピアノ、真夜中のやるせない憂鬱を貫くようなトランペットとサックス。
「Countenance」(6:12)スリリングでアッパー、なおかつキャッチーなテーマのビッグバンド風ジャズロック。ソロは、エッジの効いたアルト・サックス、凛と勇ましいフリューゲル・ホーン。
ソロを支える(食おうとしている)バッキング(後半シンセサイザーも参加)もパワフルだ。
力演。
「The Daughter」(6:31)正調ピアノ・ジャズ・コンボ。お郷はビル・エヴァンスか?
幻想的なピアノが管楽器セクションのさわやかなオブリガートと好対照を成す。
トランペットがリリカルで自由なソロを披露。ピアノのアドリヴはなんとも高貴。
「Cadenza For Christina」(5:45)クラヴィネットをフィーチュア。
「Sandy」(6:50)ロマンティックでメローなジャズロック。
「Havana Two」(8:14)ラテン風のご機嫌なビッグ・バンド・ジャズ。
二管がガシガシやりあう。
アグレッシヴだが優しい。
フロントの管楽器のやんちゃなエネルギーを受け止めるようなリズム・セクションが不思議な効果を生む。
序盤では、フルート・ソロもフィーチュア。
(LRLP 126 / LRCD 126)
Pekka Pohjola | bass |
Esko Rosnell | drums, percussion |
Tommy Körberg | percussion |
Georg Wadenius | percussion |
Olli Ahvenlahti | piano, electric piano, organ, synthesizer |
Pekka Pöyry | soprano sax |
Eero Koivistoinen | tenor sax |
Bertil Strandberg | trombone |
Markku Johansson | trumpet, flugelhorn |
76 年発表のアルバム「The Poet」。
内容は、腰のすわったリズムで奏でる、R&B、ブラジリアン・テイストたっぷりのクールでファンキーなジャズロック。
管楽器のソロを大きく取り、ピアノはみずみずしい音でバッキングやオブリガートで存在感を示す。
打楽器が積極的に前に出てくるところが特徴的。
アクション映画のサントラ調のキャッチーなテーマをバネのようなリズムが支えてスリリングな味わいを演出するが、これはペッカのベースによるところが大きい。
エレクトリック・ピアノやストリングス・シンセサイザーによるファンタジックな余韻もいい。
全曲でがっつりとヴォリューム感ある演奏が繰り広げられてお腹いっぱいになるが、胸焼けしないところが北欧もののいいところだ。
ホーン・セクションによるテーマ演奏は、まろやかで熱気にあふれ、なおかついい感じのラフさもあって、CHICAGO のようなブラス・ロックのニュアンスがある。
華やかな管楽器のプレイとパーカッションらによるしなやかなグルーヴ、そして、ジャン・リュック・ポンティ風のスペイシーな幻想性が盛り込まれたクロスオーヴァー・ジャズロックの逸品。
これならクラブ系でも取り上げられるでしょう。
プロデュースはゲオルグ・ワデニウス。
「The Poet」(6:29)固めの凝った 8 ビートで奏でるメロー・ジャズロック。
独特のアクセントでスクエアな曲調にゆらぎを交えるドラムスと堅実かつスピード感のあるベースの上で、アーバンなイメージのテーマとクールでロマンティックなソロが舞う。
前半はフリューゲル・ホーン?が主役で、後半はピアノ。
ホーン・セクションによるテーマもまろやかでいい。
「Sunday's Stuff」(6:59)R&B 味の強いジャズロック。
派手目のリズム・セクション(何気に目立ちまくるベース!)に支えられて、しなやかに跳ねる。
ソロはフリー・ジャズのエネルギーを活かすソプラノ・サックス、トロンボーン。
ややこしく捻じれるテーマと突き抜けるソロのツッコミ合戦もよし。
スペイシーなシンセサイザーはソリストをなだめながら全員を宇宙へ導く。
「Aura」(6:24)エレクトリック・キーボードとワウ・ベースがロマンティックな交歓を見せる極上のファンタジー。
遠景を横切るほうき星のようなストリングス、夜の潮騒のようなエレクトリック・ピアノ、そして暖かなホーンのテーマ。
「Sambatown (Rock Ridge)」(7:17)極上のラテン・ジャズロック。
男気あふれるトロンボーンのすてきなソロとロマンティックなピアノ・ソロ、ベースの超絶ソロあり。
スリリングで哀愁あるテーマもいい。
クレジットはもれているが、エンディングではペッカ・ポイリのフルートも登場。
「A Day At The Zoo」(6:20)秋の午後の日差しのおだやかさの中にひそむ微熱のようにロマンティックな作品。
コイヴィストイネンの官能的なサックス登場。
抑制したストリングス・シンセサイザーの響きが非常にいい。
ピアノとベースの対話もどこか悩ましい。
「Grandma's Rocking Chair」(5:25)
ハービー・ハンコックや後期 SOFT MACHINE、あるいはヒップホップやハウスのように、ジャズ・ファンクにメカニカルなミニマル調を取りいれた、アブストラクトなイメージのジャズロック。
トロンボーンによる意外性あふれるアクセント、こっそりとオブリガートするオルガン、スリリングなエレクトリック・ピアノとクラヴィネットとワウ・ベースのインタープレイ、などなどカッコいいシーンが次々と。
傑作。
クラブ御用達。
(LRLP 168 / LRCD 168)