ベルギーのプログレッシヴ・ロック・グループ「PAZOP」。WALLACE COLLECTION、WATERLOO、ARKHAM らのメンバーによって 71 年結成。74 年解散。作品は一枚。
Dirk Bogaert | lead vocals, flute |
Frank Wuyts | keyboards, vocals |
Kuba Szczepanski | violin |
Patrick Cogneaux | bass |
Jacky Mauer | drums |
96 年発表のアルバム「Psychillis Of A Lunatic Genius」。
72 年製作の未発表オリジナル LP からバンドの意向に沿わなかったポップ・ソング 4 曲を除き、翌年録音された音源を収録した編集 CD である。
(結局コマーシャルなシングルだけが発表された模様)
内容は、60 年代調のサイケデリックで奔放な姿勢と若者らしいシニシズム、ジャジーなセンスを生かした、エキセントリックだが耳ざわりのいいプログレッシヴ・ロック。
英国ロックの独創性と諧謔にベネルクスのロックらしいイージー・リスニングっぽさ(ALQUIN や SOLUTION や PANTHEON などと共通する)を交えた作風である。
飛び跳ねるように目まぐるしい展開にもかかわらず安定感があるところが特徴だ。
エレクトリック・ピアノに導かれる、ロマンティックなのにリズムだけが捻じれているような展開などカンタベリーの親戚といえなくもない。
ギターレスでヴァイオリンやフルートがフロントを取る辺りも普通のロックバンドとは一線画している。
リズム・セクションを筆頭に演奏はなかなかテクニカルであり、ヴォーカルのリードで自由に跳ねまわる曲調の骨格をしっかりと成り立たせている。
クラシックの翻案をこなしていたようなので発想力や演奏力には卓越したものがある。
そういうベースの上で、ひょうきんなようで意外にヘヴィだったり、メロディアスでロマンティックと思っていたらみるみるこんがらがったアンサンブルに変化するなど、期待を裏切ってはしゃぐように飛び回るところが魅力である。
前半の 8 曲がオリジナル LP からの作品で、あとの 7 曲が第二作用に録音された曲のようだ。ヴォーカルは英語。
流行とともに何度もめぐってくるタイプの音なので、すごく古い!という感じはしない。
「Le La Loo Loo Le La」(2:29)
「Harlequin Of Love」(2:50)
「Crying For Disaster's Hand」(4:08)
「What Is The Further Purpose」(3:10)
「Swaying Fire」(3:32)
「Mirela」(2:10)
「Freedom Dance」(3:28)
「Lovelight」(4:06)
「Bami, Lychee, Si」(5:26)
「Harlequin Of Love (Second Version)」(3:08)
「Can It Be Sin」(6:54)メロトロンが炸裂する幻想的でオペラティックなバラード。
「And The Hermit Will Be The Master」(5:18)
「M.M.M.」(5:50)アッパーに突き進むアグレッシヴな変拍子ジャズロック。フルートのクールでファンタジックな音のタッチがいい。
「In The Army (Devil Likes Smoke)」(1:37)
「Airport Formalities And Taking Off / Stewardess And Breakfast」(6:18)ヴォードヴィル調のコミカルかつノスタルジックな展開をミニマルかつコンプレックスな変拍子ジャズロックが取り巻く。ギクシャクしながらも流れるような筆致が損なわれないインストゥルメンタルがすごい。
モノローグで引っ張る寸劇風の場面もこの時代らしさあふれるもの。
「It's The End」(0:44)グラムやエレポップの曙光を感じさせるエンディング。「See you later, aligator」という地口まがいの捨て台詞は英語圏ではよく使われる(ジェームス・ボンドもいっていた)。
(FGBG 4191.AR)