オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「ALQUIN」。 70 年結成。77 年解散。オリジナル作は五枚。70 年代中期以降の作品はグラム気味のハードロックとか。 2003 年再結成。
Hein Mars | bass, vocals |
Paul Weststrate | drums, vocals |
Dick Franssen | organ, piano, electric piano |
Ronald Ottenhoff | soprano & alto & tenor sax, flute |
Job Tarnskeen | drums, alto sax, vocals |
Ferdinand Bakker | guitar, vocals, piano, violin, Arp-synthesizer |
72 年発表の第一作「Marks」。
内容は、管楽器とキーボードを中心にしたインスト主体のソフトなジャズロック/ブラスロック。
軽めのチャート・ポップス調を基本としながらも、クラシック、古めのジャズ、R&B、フォークなど多様な音楽を無節操に取り入れるミクスチャー感覚に 70 年代初期の英国ロックの影響を強く感じる作品である。
楽曲は、イージー・リスニング一歩手前のジャジーなインストゥルメンタルが中心。
フルート、サックスら管楽器とオルガン、エレクトリック・ピアノ主体のキーボードをフィーチュアしたリリカルでメロディアスな作風である。
特にフルートのデリケートかつ独特の鋭さをもつ音色が印象的だ。
変拍子のリフによるミニマルな展開になるに連れて反復とともに不可思議な緊張感と酩酊感が広がるところは、SOFT MACHINE によく似ている。
管楽器は、ジャジーなアドリヴとともにメロディアスなテーマ演奏でも中心になっている。
リズム・セクションは柔らかめにして堅実であり、4 ビートも楽々こなす。
エレキギターよりも管楽器がフロントに出るところがロックらしからざる、そして一風変わったロックであると思わせる理由の一つだろう。
ヴォーカルは英語でオランダ・ロックらしからぬ垢抜けない訛りがあり、そこがかえって英国調(細かくいうと英国ロックに影響されたドイツものに近い)に響く。
メロディ・ラインやハーモニーのポップなセンスからも英国風のセンチメンタリズムやシニシズムが匂いたち、いわゆるダッチ・ロックの甘ったるさはあまり感じられない。
しかしながら、決して頭でっかちではなく、演奏やアレンジには BGM としての音楽の機能性を見据えたプロっぽさが感じられる。
本作のようにロックらしからぬ、ラウンジ・ミュージックといっても問題ない作品が、時代の流れによって、ロックとしてプログレッシヴであると見なされて新たな命を授かり、今まで生き延びた。
そういう大衆の一種の勘違いや何度も売り込もうとするレコード会社の強欲さ、セレンディピティがあいまって、時も場所も越えたリスナーにこの音を届けてくれたと思うと、じつにおかしいし、おもしろい。
プロデュースは、ハンス・ヴァン・ウースターハウト。ボーナス・トラックはシングル B 面の下品なグラム・ロック、ムーグ入り。
「Oriental Journey」(4:22)明るい暖かさとペーソスの絶妙のブレンド、そして、短い中にこれだけ詰め込んで自然に聴かせるアレンジのセンスもよし。小洒落た FRUUPP。
「The Least You Could Do Is Send Me Some Flowers」(2:25)エピローグ風に前曲からつながるジャジーな小品。
「Soft Royce」(6:57)エレクトリック・ギターが初登場。主役はサックス。トレモロ効果を加味したベースも独特。ジャズからブルーズ・ロック、ラテンまで、ここでも目まぐるしく展開する。後半はデイヴ・シンクレア風のオルガンもフロントに出る。締めはやはり CARAVAN 風のサックス。
「Mr. Barnum's JR.'s Magnificent And Faboulous City」(5:27)本曲のみライヴ録音とのこと。ヴァイオリンが現れ、フルートとバロック音楽調のデュオを披露し、そのままジプシー・ヴァイオリンのリードするエネルギッシュな展開へ。CURVED AIR 風、または IT'S A BEAUTIFUL DAY 風か。昔の CD では割愛されていました。
「I Wish I Could」(11:27)
ギターとオルガンがリードし、単調ながらも力強いドラミングが支える、ヒプノティックなサイケデリック・フォークロック。
PINK FLOYD を思わせる謎めいた序章からの緩やかな発展。
穏やかなようでいて逸脱感や狂気を感じさせるところは、AMON DUUL II 的でもある。
終盤に向けて転調を繰り返し、ウェストコース風も交えたしなやかな展開となる。
これはダッチ・ロックとしては異色。
シンセサイザーも強烈。
「You Always Can Change」(3:04)70 年代の良心というべきポップな歌もの。
「Marc's Occasional Showers」(3:21)SOFT MACHINE 風の変拍子小品。本家のようにアブストラクトにならず妙にメロディアスで哀愁があるところがおもしろい。後半はすっかり CAMEL である。
「Catharine's Wig」(2:31)管弦/リズム・セクションによるクラシカルかつジャジーで軽妙な変拍子アンサンブル。
第一曲と同じく、短い中にドラマをまとめる手際のよさを発揮している。
ユニークな作風を象徴する佳曲。
「Hard Royce」(2:41)ボーナス・トラック。
(POLYDOR 843 211-2 / ECLEC2144)
Ferdinand Bakker | guitar, piano, vocals, violin |
Ronald Ottenhoff | alto, soprano & tenor sax, flute |
Dick Franssen | organ, piano, electric piano |
Hein Mars | bass |
Paul Weststrate | drums |
Job Tarnskeen | vocals, alto & tenor sax, percussion |
73 年発表の第二作「Mountain Queen」。
A/B 両面冒頭の二つの大作が代表するように、雑多な音楽性はそのままに、前作よりもシャープでスリリングなプログレ色(ブラスロック、ジャズロック)を若干強めた作品となった。
インストゥルメンタル・パートは大きく拡充され、メロディアスなテーマにブラス・ロックらしい押しとパワー、ジャズロックらしい鋭利なビート感とスピードが加わっている。
キーボード、管弦楽器の多彩な音色に加えて、73 年にしてはやや古めかしいファズ・ギターが意外にカッコいい。
位相系エフェクトをかけたエレピ、BS&T 調のサックスも入るが、ジャジーというよりは R&B 風味が強く、ファンキーである。
アメリカンな音といってもいい。
そして、ヴォーカルが入ると すっかり中後期の CARAVAN である。
しかし、アコースティック・ギターやオルガンによる甘く訴えかける調子には、英国ロックにあこがれるオランダらしさがにじみ出ている。
全体として見ると、IF を緩くしたようなイメージである。
「Don And Dewey」はアメリカの IT'S A BEAUTIFUL DAY の作品のカヴァー。
プロデュースは、デレク・ローレンス。
「The Dance」(13:00)
「Soft-Eyed Woman」(2:38)
「Convicts Of The Air」(3:50)
「Mountain Queen」(14:45)
「Don And Dewey」(1:27)
「Mr. Barnum's JR.'s Magnificent And Faboulous City (Part one)」(8:25)
(POLYDOR 843 211-2 / ECLEC2145)