ポーランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「SKALDOWIE」。 65 年結成。ホームページを見る限り現役のようです。
Andrzej Zielinski | vocals, organ, piano, ,electric piano, sythesizer |
Jacek Zielinski | vocals, trumpet, violin, percussion |
Konrad Ratynski | bass, vocals |
Jerzy Tarsinski | guitar |
Jan Budziaszek | drums |
Jozet Gawrych | percussion |
72 年発表のアルバム「Krywań, Krywań」。
内容は、ブリティッシュ・ビートにジャズやクラシックを盛り込みフォーク風のメロディで貫いたアートロックである。
60 年代調ヴォーカル・ハーモニーをエネルギッシュなベース・ランニングとけたたましいバロック・ヴァイオリンが守り立て、ジャジーなドラムスと強面のオルガンが火を放つ。
THE NICE、VANILLA FUDGE、初期 DEEP PURPLE 直系の多彩なオルガン・ロック、CREAM のようにパワフルなアドリヴ・バトル、CHICAGO 風のブラス・ロックなど顕著な影響元が確かに見えてくるが、本作品にはそこにとどまらないスケールの大きいロマンがある。
風土に由来する確かな音楽精神を携えた上で、ジャズ、クラシック、ロックのすべてにわたって水準以上の演奏力とセンスのよさを発揮しているといってもいい。
COLOSSEUM に近い位置にいるグループである。
さらに、門外漢なので定かではないが、少し調べたところによれば、ポーランド南部高地地帯のトラディショナルなフォーク・ミュージックの影響が強いようだ。
この英国風ロック、ジャズ、クラシックにご当地のフォーク・ミュージックをブレンドした作風は、当時のポーランドの音楽界に衝撃を与えたそうである。
17 分にわたってクラシックの翻案も交えた奔放な演奏を繰り広げるタイトル曲は、その衝撃の象徴であり、ポーランド・ロックを代表する作品となった。
他の作品も、フォーク・タッチのテーマを中心にピアノ、ギター、サックスらによるジャジーなアドリヴが繰り広げられる、バンドの演奏力を十二分に生かした内容となっている。
2 曲目は、メロディアスなハーモニー・ヴォーカルをせわしないビートと粋なジャズ・ピアノが支える作品。ギターが飛び込みトランペットが高鳴るとリー・モーガンのようなジャズロック調となる。
3 曲目は、男臭く熱っぽい歌もの。リリカルなジャズ・タッチのピアノとの小粋なコントラスト。
4 曲目は、ファズ・ギターが唸り、オルガンが蠢くサイケなニューロック。エコーの深いヴォーカル・ハーモニーも似合っている。
5 曲目は、ワイルドなハモンド・オルガンをフィーチュアしたソウル・ジャズ風味あるへヴィ・チューン。ソロはオルガン、ワウギター、ヴァイオリンと移ってゆく。
ポーリッシュによるヴォーカル表現は、野性味と知的な表情が交差するじつに雄々しくカッコいいものだ。
メロディがまとう独特の哀愁はなぜか日本人の琴線に触れ、深く胸を打つ。
Neimen の作風と比べると哀愁は共通するが、ダイレクトなブルーズ・テイストは少なく、その分ジャズやクラシックのごった煮独特のアクの強さと若々しさがある。
多様な音楽性を豊かな演奏力で花開かせた芸術性の高い、いいかえるとプログレらしさ満点の、傑作である。
(SXL 0888)
Andrzej Zielinski | vocals, organ, piano, electric piano, sythesizer |
Jacek Zielinski | vocals, trumpet, violin, percussion |
Konrad Ratynski | bass, vocals |
Jerzy Tarsinski | guitar |
Jan Budziaszek | drums |
A.Zielinskiego | Strings Orchestra |
Jozet Gawrych | percussion |
76 年発表のアルバム「Stworzenia Swita Czesc Druga」。
クラシカルかつフォーキーなシンフォニック・スタイルはそのままに、同時期の他の多くのグループと同じく技巧的で緻密なスタイルも採用し、MAHAVISHNU ORCHESTRA や「Relayer」YES を思わせるハイ・テンションのジャズロック色が現れる。
A 面を占める大作にその作風は顕著である。
しかし、メロディ・ラインとコーラスの独特の演歌っぽさはまったく変わらない。
エレガントなストリングスがコテコテのヴォーカル・ハーモニーを支える場面は、完全に「田舎の NEW TROLLS」、または PELL MELLのようなドイツのもっさりしたシンフォニック・ロックに近いニュアンスである。
しかし、真面目に丹念に取り組んでいるおかげか、迷いは感じられずどこまでも堂々、悠然としている。
したがって、こちらも次第にその音に惹きつけられてゆく。
また、ポップ・テイストに時代に合わせた涼しげで小洒落たラテン風味も出てきた。
最終曲にいたっては、ファンク・タッチとサイケなプログレ風味が交錯した電化マイルス風の佳曲である。
ヴァイオリンやチャーチ・オルガンらによる純クラシカル・アンサンブルは、76 年にしてはやや時流に逆らっていると思うが、とてもよく似合っている。
やはり、フォーキーなメロディ/歌、ベタなポップス・オーケストラ風ストリングス、クラシカルなオルガンとヴァイオリンの合体が基本であり、そこへ緊迫感あるスタイリッシュな演奏を取り入れたのが本作品の特徴である。
一方、個別に器楽に目をやると、軟弱ポップスにはあり得ない、プログレらしい技にあふれている。
オルガンは今回もマリアン・ヴァルガばりの軽快かつ大胆な弾き飛ばしで大活躍している(どうやら EL&P の「展覧会の絵」が相当に気に入っているようだ)し、ヴァイオリンもジャンリュック・ポンティを思わせる暖かくも鋭い音できりきり舞いするようなプレイを放つ。
特に、大作中盤のオルガンとヴァイオリンによるクラシカルなアンサンブルは格調あるなかなかの力演だ。
そして、シンセサイザーの尖ンがった音がロマンティックなストリングスと平然とオーヴァーラップするところも 70 年代後半らしい味わいである。
プログレ・ファンはもちろん、70 年代後半の音を愛する人には無条件でお薦め。
(SXL 1412)