フィンランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「SUKELLUSVENE」。 前衛パフォーマンス集団として 71 年結成。79 年解散。作品は一枚。
Kari Litmanen | piano, electric piano, synthesizer, organ |
Tapani Tuomanen | guitar, percussion, bongos |
Lassi Talasmo | alto & soprano sax, clarinet |
Pekka Muhli | bass |
Timo Kotineva | drums |
79 年発表のアルバム「Vesi- Ja Lintumusiikkia」。
内容は、凄腕鍵盤奏者と管楽器奏者を軸にした鋭角的なサウンドによるスペイシーなジャズロック。
ハイブラウなモダン・ジャズとエレクトリック・サウンドとロック・ビートを、それぞれの優位性を損なわずに結びつけたアーティスティックな好作品である。
当然の如く、初期の RETURN TO FOREVER、WEATHER REPORT、MAHAVISHNU ORCHESTRA らの影響下の作風であり、特に、これらのフュージョン草分け期のグループ同じくモダン・ジャズのプレイが露になっているところが特徴である。
たとえば、ベーシストは曲によってエレクトリックとアコースティックを使い分けている。
その古さとそれを打ち破る新しさが反発しつつも同居し、めまぐるしく入れ替わって火花が散るところにこの作品の魅力があると思う。
そして、技巧を詰め込んで性急に躍動するパートでもタメのきいたファンクでもブルージーなモダン・ジャズでも、通底するのは、透明感と神秘性である。
最初期 RTF も好きだが、PINK FLOYD も好きだったのだろう。
お洒落フュージョンもあるが、CAMEL ばりの泣きのギター・ロックも北欧らしい哀愁の GS 歌謡テイストもあり。
ピアノとサックスのキレも安定感もある技、エフェクトも含めたエレクトリック・サウンドの使い方の妙、メロディアスな説得力などなど、魅力をあげると数多い。
明朗にして陰影があり、愛らしくもジャジーな大人っぽさもあるというハイプリッド感覚、多面性、不思議ちゃんテイストはペッカ・ポーヨラと同じだと思う。
サイケデリック・ロック的な感性もあるこの内容だと、おそらく 70 年代前半に出したかったのではないだろうか。
ドイツの PASSPORT とも共通するモダン・ジャズ・テイストが特徴的なジャズロック・アルバムである。
プロデュースはアッテ・ブロムとグループ。
「Hiilijuna」(8:55)アコースティック・ピアノが冴えわたる序奏、シンセサイザー、サックスによるスペイシーなアンサンブル、ジャジーなギター・アドリヴなどなど、てんこ盛りの充実作。
「Metsän Takaa Nousee...」(5:20)ほんのり哀愁のあるメロディアスなインストゥルメンタル。
ジャズともロックともつかないイージー・リスニング調がいい。ベースが細かいパッセージの速弾きを見せるのでペッカのイメージあり。泣きのギターもカッコいい。
「Ilmojen Halki」(4:33)アッパーなモダン・ジャズロック。
ギターのナチュラル・ディストーションの音色がいい。
アコースティック・ピアノ、ランニング・ベースといったモダン・ジャズが唐突に現れるのもおもしろい。
「Music Maze」(5:53)ライト・ファンク、ソウル・ジャズなど目まぐるしく曲調の変わる作品。アコースティック・ギターやオルガンをフィーチュア。
「Moon Funk」(6:40)管楽器、シンセサイザーがリードするファンク・ジャズ。
初期 WEATHER REPORT 風といえなくもない。
ハービー・ハンコックを田舎風にした感じ。ギター・アドリヴはサイケ。中盤で宇宙へ飛び出してミロスラフ・ヴィトウスと逢う。
「Tosikertomuksia」(5:58)ファンタジックでロマンティックなニューエイジ・ミュージック。ジャズ臭さがなく、どちらかといえば北欧フォークの鄙びた趣あり。
やはりペッカのイメージ。
以下 CD ボーナス・トラック。 アルバムと同年のシングル盤。
「Savitaipaleen Polkka」(2:28)演奏力を喧伝するような快調ポルカ。原曲はトラッドらしい。SAMLA、KEBNEKAJSE 路線。
「Sea Journey」(2:56)メローでスリリングな王道ジャズロック。チック・コリアの作品。
(LRLP 301 / SRE106CD)