エストニアのプログレッシヴ・ロック・グループ「MESS」。 74 年結成。リーダーは鍵盤奏者の Sven Grünberg。唯一作は 75 年から 76 年にかけて録音されるも、80 年に EP でのみ発表。 96 年にほぼ全体がドイツのレーベルから Grünberg 氏自身の編集で CD として発表された。 Grünberg 氏はソロで活動中。
Sven Grünberg | keyboards, voice |
Matti Timmermann | bass |
Elmu Värk | guitar |
Ivar Sipra | drums, percussion |
Andrus Vaht (Ruja) | percussion |
guest: | |
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Leho Latte | oboe, English horn |
Valdek Pold | French horn |
Rolf Uusvali | church organ |
Tonu Kaljuste | chorus |
96 年発表のアルバム「Mess」。
内容は、深い陰影のあるシンセサイザーとオルガンとギターが引っ張るロマンティックかつドリーミーなシンフォニック・ロック。
キーボードのスタイルこそクラシカルなピアノ以外はどちらかといえば叙景的かつ実験的で透徹とした感じだが、演奏はそういったサウンドスケープに収まることなく、バンドとして呼吸のいいところも見せている。
演奏全体としては FOCUS や KAIPA のようにダイナミックにして構築性と包容力があり、YES や THE ENID に迫るスケールもある。
特に、幻想的な場面の音のイメージは、「危機」や「海洋地形学」辺りの YES に通じるものがある。
そして、そのファンタジックな世界を演出してるのは、間違いなくシンセサイザーである。
どういう機材なのかは定かでないが、鋭利にして暖かみがあり透き通るようでいて澱みがあり、メカニカルなのに管楽器のような息遣いもある。
メロトロン・ストリングス風の音もある。
何にせよ、あまり聴いたことのないサウンドである。(エフェクトがかかり過ぎていて分かりにくいというのもある)
ギタリストもヤン・アッカーマンやスティーヴ・ハウ、FINCH のヨープ・フォン・ニムヴェーゲンを思わせるナチュラル・ディストーション・トーンを使った存在感あるプレイで迫る名手である。
演奏全体を引っ張っているのは、クールなキーボードと鮮やかにコントラストするこのギターの自然な抑揚である。
独特の胸をかきむしるようなけたたましさがいい感じだ。
全体に漂うサイケデリック・テイストは、主として、湿気のあるにじむようなリヴァーヴ、エコーとこのギターのスタイルによるのだろう。
また、ヴォーカルの発声、表情が WIGWAM のユッカ・グスタフソンやジム・ペンブロークによく似て聴こえる。
これは、フィン語とエストニア語が近接しているということなのでしょうか?
(地域としては、エストニアはフィンランドのすぐ南にあるそうです)
白眉は、オーボエ、ホルン、チャーチ・オルガンらをフィーチュアした 8 曲目「Küsi Eneselt(Ask Yourself)」。
渦巻く幻想と切れのある疾走シーンが印象的なシンフォニック大作である。
録音は 75-76年。
ややチープな感じのプロダクションではあるが、些細なことだろう。
なお、本 CD でも一部カットされている部分もあるそうなので、全貌の CD 化を希望します。(後年されました)
「Avamang (Overture)」(1:48)
「Rohelised Leed (Green Hearts)」(7:14)
「Valged Hommikud (Bright Mornings)」(6:29)
「Pilvini (To The Cloud)」(4:18)
「Tiik (Pond)」(9:41)
「Lugu (Story)」(6:07)ギターが引っ張る名曲。
「Uksi (Alone)」(4:34)
「Kusi Eneselt (Ask Yourself)」(10:36)
「Taevas (Coda) (Sky (Coda))」(2:40)
(BMCD 31.4199)
Matti Timmermann | bass |
Sven Grünberg | keyboards, electronics, lead voice |
Elmu Värk | guitar |
Andrus Vaht | drums, percussion on 1-6 |
Ivar Sipra | drums, percussion on 7,8 |
2004 年発表のアルバム「Mess」。
96 年発表作の完全盤+76 年当時のライヴ音源で構成される。
内容は、きらびやかでファンタジック、エッジも効いているシンフォニック・ロック。
グリュンベルグ氏のキーボードを音作りの中心にした叙景的な作風であり、多彩な展開を見せるが、基本は柔和で穏やかな宗教的世界観が根底にあると思う。
それが抹香臭さにならずに、純真でキラキラとしたファンタジーになっているところがグリュンベルグ氏のセンスなのだろう。
キーボードはオルガン、独特な透明感のあるシンセサイザー、グランドピアノなどを使用。
腕前は卓越したものである。
キーボードはもとより、弾力のあるベースやけたたましいわりには五月蝿くないギターなど、音の質感で最も似ているのは YES。
(写真を見る限りグリュンベルグ氏の当時の風貌はリック・ウェイクマンを意識していると思う)
北欧の言語に近いエストニア語で歌い上げるので、辺境ロックの魅力もたっぷり。
ライヴ音源である CD 二枚目にはボーナスとして、ラジオ放送用音源と 8 本の映像データが入っている。
ポジティヴに躍動する作風は、YES だけではなく CAMEL やオランダの FINCH のファンにもお薦め。
Küsi Eneselt
「Pilvini」(7:27)
「Valged Hommikud」(6:43)
「Tiik」(11:02)
「Lugu」(6:08)
「Üksi」(4:34)神秘的なピアノとシンセサイザーのデュオ。
「Rohelised Leed」(9:25)
「Küsi Eneselt」(16:33)東洋風のエキゾチズムや荘厳なパイプ・オルガンなど重厚な演出をつぎ込むロック・オペラ風傑作。
バンド演奏もタイトでカッコいい。
Live
「Intro」(1:36)
「Pilvini」(8:25)
「Rohelised Leed」(10:25)
「Valged Hommikud」(7:14)
「Tiik」(13:25)
「Pilvini Bolero」(3:53)
(Strangiato Records 2001.6 )