イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「YUGEN」。2004 年結成。作品はライヴ盤を含めて五枚。ひさびさに現れた本格派チェンバー・ロック。
Stefano Ferriari | 8-string guitar enor & alto sax, stick | Francesco Zago | guitars, mellotron |
Dalila Layros | vocals | Elaine Di Falco | vocals |
Alessandro Cassari | bass | Matteo Lorito | double bass |
Paolo Ske Botta | electric piano, hammond organ ,ARP | Maurizio Fasoli | piano |
Michele Salgarello | drums | Camelo Miceli | drums |
Jacopo Costa | vbe, marimba, glockenspiel, zymbalon | Giuseppe A Olivini | percussion, theremin, toy piano |
Valerio Cipollone | clarinet, contrabass flute | Peter Schmid | tubax, contrabass clarinet, contrabass flute |
Fedele Stucchi | trombone, euphonium | Taiko Lecco | taiko drums ensemble |
2016 年発表の第五作「Death By Water」。
内容は、精緻なアンサンブルが特徴的なアヴァンギャルド・チェンバー・ロック。
70 年代の HENRY COW や ART BEARS を源流とするニューミュージックの系譜にある作風であり、方法論はほぼこれらの先達に倣っている。
ふんだんな管楽器群とアコースティック・ピアノの存在感から UNIVERS ZERO のイメージも強い。
アコースティックなサウンドによるクラシカルなアンサンブルをビート強調、調性解除、不協和音、即興という現代的な試みでリフレッシュした結果、アグレッシヴで狷介な表情を保ちつつもユーモアが沸騰したようなナンセンスが放り込まれた、バラバラに飛び散る前の最後のきらめきのような演奏になっている。
鍵盤打楽器の可憐にしてデジタリーなクールさのある音も特徴的。
急旋回しながら密度高く攻め込む演奏とともに音の希薄な空間を強調した表現も巧みであり、ストーリーを感じさせる劇的な演出効果を上げている。
またテーマが普通の意味でのメロディの体を成した演奏では深い情感も湛えることもできている。この辺りはクラシックの素養のおかげだろう。
二人の女性ヴォーカリストを生かした歌唱表現は宗教音楽風の強い哀感と厳粛さをもたらしている。
ディファルコ嬢のコントラルトは一聴すぐに分かる。
小曲をブリッジ風に挟むアルバム構成は常套手段ではあるがここでは悪くない。
プロデュースはマルチェロ・マリノーニ。
「Cinically Correct」(7:48)緻密な計算と無意識の本流の如き勢いがバランスし、序破急が幾重にも渦巻くエネルギッシュな快作。
「Undermurmur」(1:31)音の粒粒が衝突して来て痛い小品。
「Death By Water」(5:06)アコースティックでアンビエントな Virgin、ECM 風の音とサイケデリックなセンスが合わさったプログレ作品。美しく重厚。
「Ten Years After」(1:12)
「As It Was」(4:58)ディファルコ嬢のアルトヴォイスを生かした気怠くも美しいバラード。素肌にシーツを巻きつけただけの姿でガラス越しの夜明けの街並みに向けて口ずさんでいる感じ。こういうオネエちゃんにはあまり深入りしない方がいい、笑。
「Studio 9」(2:36)ジャズの断片。うるさい歯ぎしりや、やけにはっきりした寝言。
「As A Matter Of Breath」(9:27)危険な香りに満ちたおもちゃの楽隊。
「Drum'n'Stick」(2:12)インダストリアルなデュオ。スティックがピアノに聴こえるが。
「Der Schnee」(6:05)キース・ティペットのジャズ・オーケストラを思いだした。
「A House」(1:25)
(ALT-053)
Stephan Brunner | bass | Paolo Ske Botta | e-piano, mellotron, organ, moog |
Maurizio Fasoli | piano | Dave Kerman | drums on 4 |
Tommaso Leddi | mandolin, flute | Massimo Mazza | vibraphone, marimba, glockenspiel |
Elia Mariani | violin | Guiseppe A. Olivini | cembalo, percussion, shakuhachi, theremin |
Mattia Signo | drums | Peter Schmid | bass clarinet, tubax, sub contrabass sax, bass flute, taragot |
Marco Sorge | clarinet | Markus Stauss | sax |
Francesco Zago | guitars, keyboards | Diego Donadio | drum arrangements |
2006 年発表のアルバム「Labirinto D'Acqua」。
内容は、暗黒ではない陽性の小オーケストラ・ロック。
ロックな強さとクラシカルな緻密さの合体にキュートな色気があるのが特徴。
HENRY COW やフランク・ザッパの管弦楽作のように、ギターやドラムス中心のロック・バンドに管弦楽器を交え、無調、不協和音、ミニマリズム、複合拍子、ポリフォニーといった近現代クラシックの要素を加味した作風である。
強靭なリズム・セクションがリードする目まぐるしい変拍子ロックに木管楽器や鍵盤打楽器らによるアコースティックなサウンドでメリハリをつけている。
かみつくように激しいところは一番パンクっぽかった頃の STORMY SIX に似る。
険しくも舌を咬みそうな早口言葉風のアンサンブルは北米チェンバー・ロックの老舗 THINKING PLAGUE や BIRDSONG SOF THE MESOZOIC 風。
アグレッシヴに攻め込むアブストラクトな演奏は 5UU'S のインストゥルメンタル・パートに通じる。
音響イメージの振れ幅は、KING CRIMSON から ART ZOYD までにわたる広さである。
アンビエント、空間系の音遣い(メロトロン・ストリングス/クワイヤが要所でインパクトを残す)やノスタルジックなインサートといった演出も巧みである。
音的にもイメージ的にも全体を引き締めているのはアコースティック・ピアノの存在。
即興作品、即興に近いがスコアのありそうな作品、スコアのあるアンサンブル作品など、作曲法はさまざまなようだ。
いわゆる RIO 系のチェンバーロックと比べると、強烈な逸脱感よりもクラシックの調和感あるアンサンブルが透けて見えるところが多い。
北米のグループと比べてもそん色のない緻密さ、厳格さがあり、それと大陸らしい伝統音楽の生地がうまくマッチしている。
プロデュースはフランチェスコ・ザゴとマルチェロ・マリノーニ。
ゲスト・ドラマーにデイヴ・カーマン、ミックスとマスタリングはウディ・クームランが担当と、チェンバー系人員がしっかり参加している。
タイトルは「水の迷宮」。
「Sévére Réprimande」(0:50)ピアノ・ソロによる序曲。エマーソンの面影が。
「Catacresi」(6:35)
「Omelette Norvegese」(1:07)
「Corale Metallurgico」(7:33)
「Danse Cuirassée (periode grecque)」(1:03)
「Brachiologia」(3:11)
「La Mosca Stregata」(0:56)
「Quando La Morte Mi Colse Nel Sonno」(9:23)
「Skellotron 003」(1:23)
「Le Rovine Circolari」(6:53)KING CRIMSON ファンが目を覚ます。
「Anastomosi」(1:28)
「Danze Corazzate」(3:49)
「Labirinto D'Acqua」(1:21)
「Incubi Concentrici」(4:42)これはカッコいい。
(ALT001)