LAZULI

  フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「LAZULI」。98 年結成。2014 年現在作品は五枚。NEMO と並ぶフレンチ・プログレッシヴ・ロック・ノーヴァ。元々はトラッド・フォーク系。2021 年新作はアコースティック・セルフカヴァー集「Denude」。

 Le Fantastique Envol De Dieter Böhm
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Claude Leonetti Léode
Gédéric Byar guitar
Vincent Barnavol drums, percusson, marimba
Romain Thorel keyboards, French horn
Dominique Leonetti vocals, guitar(12 & 6 strings)

  2020 年発表のアルバム「Le Fantastique Envol De Dieter Böhm」。 内容は、妖艶にしてパワフルな轟音ロック・スピリットが際立つフレンチ・ネオ・プログレッシヴ・ロック。 本作はエッジの効いた英国ギター・ロックのブレンド具合がいい。 派手ではないがライヴなプレゼンスのあるリズム・セクションもこの小気味よいハードさを支えていると思う。 ギターとキーボードのグリッサンドがグワッと迸るところや苦悩するモノローグとそれを取り巻く背景の音には英国由来の暗さと湿り気と奥深い闇が感じられるが、言葉を一つ一つ並べるような歌唱や丹念なソロ・ピアノなどに大陸ロックらしさがある。 うねる音の波間から何度もテーマを浮かび上がらせてリスナーを巻き込む腕も確かだ。 ふと音が途絶えたときの残響が PINK FLOYD によく似ている。
   テーマはおそらくディーター・ベームなる人物を巡る物語と思われるが、詳細は不明。 ヴォーカルはフランス語。 あいかわらずちょうど LP 一枚分の収録時間です。胸掻きむしるストリングスの響きなどクラシック・ロック・ファンにはお薦め。

  Prologue
  「Sol」(4:27)
  Acte I
  「Les Chansons Sont Des Bouteilles À La Mer」(6:13)
  「Mers Lacrimales」(5:04)傑作。THE BEATLES から RADIO HEAD までが蘇る。
  Acte II
  「Dieter Böhm」(5:33)これも傑作。
  「Baume」(3:31)
  Acte III
  「Un Visage Lunaire」(4:15)これも好き。リオードなのか、スライド・ギターなのか、バラードの中で世界がグリッサンドとともに急上昇する感じが「A Day In The Life」を思い出させるんですな。
  Acte IV
  「L'Envol」(2:25)フランス版 IQ のようなロンドン・ポンプ風の小品。インストゥルメンタル。
  「L'Homme Volant」(5:37)レイドバックしたオルタナティヴ・ロック。アメリカナイズのされ方が MARILLION よりいいかもしれない。バックのストリングス(リオード?)とさりげないギターのアルペジオのコンビネーションにセンスが出る。きっちりとまとめた終章という感じです。
  Epilogue
  「Dans Les Mains De Dieter」(5:37)
  
(bzz 041)

 En Avant Doute...
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Gédéric Byar guitar
Sylvain Bayol Warr guitar
Frédéric Juan marimba, vibraphone, percussion
Yohan Siméon percussion, metallophone
Claude Leonetti Léode(synthesizer)
Dominique Leonetti vocals, guitar

  2007 年発表のアルバム「En Avant Doute...」。 内容は、演劇的な歌唱表現のヴォーカリストと冷ややかにして粘着質の器楽が特徴的な暗黒御伽噺系、耽美ポストロック系シンフォニック・ロック。 暗い苦悩と滅入るようなメランコリーの堂々巡り地獄であり、奇怪な樹木が未熟であることの根から枝葉を伸ばしたような作風である。 GENESIS を始祖とする『病的な御伽噺語り』(御伽噺は本来聴き手の興味を惹くためにエキセントリックなものが多い)という面も無論ある。 それでもロックらしい審美センス(キャーキャーいわれるということです)は強固であり、ヴォーカリストの美声や狂おしくもスタイリッシュな演奏にそれが現れている。 一人芝居風の歌唱パフォーマンスから ANGE が連想されるのはもちろん、VAN DER GRAAF GENERATOR 系の狂気すれすれの気鬱もある。(だみ声のおっさんよりも王子様系ナルシストのほうがキャーキャーいわれるという意味でより後者に近いか) この大仰さや芝居がかりは、今この瞬間の一人の人間の妄想の膨張であり、この音以外では外に出せなかったような切迫感がある。 したがって、華美でグロテスク、狂おしいまでにへヴィだが、より普遍性がありすでに整理された感ある(様式化といえばよろしいか)「ゴシック」という表現は似合わない。 また、音にアコースティックな質感があるところも特徴だろう。 これらが相まって「妄想暴走型弾き語りフォーク」のようなニュアンスを生んでいる。 ストリングス系の薄暗いテクスチャに加えて、マリンバやヴァイブといった鍵盤打楽器の愛らしさと哀感を同時に演出するような活躍も目立つ。 繰り返すが、音が「美形」なので弩陰気で狂気スレスレなのに耳になじみやすい、聴きやすいという強みがあるのだ。
   ヴォーカリストは性も年齢も曖昧とする蠱惑的な表情を操る。 旋律そのものよりも言葉の響きが強く印象に残るフランス語ヴォーカルではあるが(「意味が分からない」ということ自体の魅力を体験的に深く理解しているのは、絶滅間近の「洋楽ファン」である、雑談)、トラッド・フォーク風の楽曲(たとえば 8 曲目)で見せる異国的でデリケートな歌唱から、ヴォーカリストとしての腕が確かであることは明らかだ。 (トラッド調の作品では、LED ZEPPELIN に通じる「色気」を見せる) スライドギターとヴァイオリンのハイブリッドのようなレガートでぬめぬめとしたサウンドで、なおかつギター・シンセサイザーでもあまり聴かれないタイプの変わった音は、左手に怪我を負ったキーボーディストがそれをカバーするために自作した「リオード」という楽器によるものらしい。 強いていえば、エレクトリック・ハーディガーディだろうか。 この怪しい、膨らみと光沢のある音とヴァイブのほの暗い響き、そしてメロトロンが絶妙の呼吸でヴォーカルを支えているのだ。
   間違いなく現代のロックだが HR/HM 色はゼロで、どちらかといえばサロン・ミュージックやトラッド・フォークの音に厚みを加えていって到達した艶かしいへヴィネスだと思う。 (実際第一作はトラッド系の音らしい) 個人的には、ジャズとフォークが邂逅した KING CRIMSON の一作目やそれに憧れたらしきノルウェーの WHITE WILLOW、弾き語りの誇大妄想である米国の DISCIPLINEPHIDEAUX といったグループにも思いは及ぶ。
   失礼なもの言いだが、演奏や製作に一流、大物感が漂う。 収録時間が CD にしては長くないものの、腹八分目がちょうどうれしい内容です。 中毒性あり。

  「En Avant Doute」(3:02)古びたラジオから流れ出るのは記憶の果てから甦った呪詛のようなモノローグ。
  「Laisse Courir」(5:11)辿りついた先は錯乱。
  「Le Repas De L'ogre」(5:07)
  「Capitain Coeur De Miel (part 2)」(5:03)
  「La Valse à Cent Ans」(4:20)魔法のメリーゴーラウンド。
  「Film D'aurore」(4:26)
  「Ouest Terne」(3:32)
  「L'arbre」(4:18)
  「Cassiopée」(6:36)珍しく粘り気のうちに力強さも見せるメロディアス・ロック。ヴァイヴの響きが印象的。この路線を強めてほしい。
  
(FGBG 4660 AR)

  Réponse Incongrue À L'Inéluctable
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Claude Leonetti Léode
Gédéric Byar guitar
Frédéric Juan vibraphone, marimba, percussion
Sylvian Bayol Warr guitar
Yohan Simeon percussion, metalophone, guitar
Dominique Leonetti vocals, guitar
guest:
Jean Pascal Boffo guitar, programming on 6

  2009 年発表のアルバム「Réponse Incongrue À L'Inéluctable」。 内容は、サロン・ミュージック、トラッド風味が入り交じった暗鬱系ヘヴィ・シンフォニック・ロック。 存在感あるナルシスティック系ヴォーカリストと粘り気と湿り気の強い器楽(怪奇骨董ハーディガーディのように捻じれる『リオード』も健在)のコンビネーションが、衝動的かつ切迫した調子で暗く妖美な世界を描く。 未知の獣の咆哮のように吹き荒れる血生臭いインストゥルメンタルから、毛が逆立つようにヒステリックでいらついた表情が浮かび上がるところが特徴だろう。 ヴォーカリストは声質こそ甘めで、平板ながらも微妙な揺らぎを見せるメロディをなぞるのも巧みだが、歌唱には狂気の先触れのような「ひとり言」や呪文のニュアンスも強くある。 ヴァイヴやマリンバの残響は極寒の墓場に立ち上る夜霧のようにひたすらに温度を下げ、ヘヴィに轟くギターやリオードをぬって、怪奇のオルゴールのようにポツポツと響く。 軋むようなストリングスや独特のヒップ・ホップ調のリズムなどからポスト・ロックへも目配りしていることも分かる。 ANEKDOTEN やポーランド薄暗系(の本家 KSCOPE 含め)に通じるところもある。 MARILLION はおそらく遠い祖先だろう。 後半の組曲は KING CRIMSONANEKDOTEN 直系の力作。 ヴォーカルはフランス語。(ダイアローグの一部は英語) ヴォーカリストはロバート・プラントのファンではないだろうか。
  

  「Abîme」(6:46)
  「On Nous Ment Comme On Respire」(7:33)
  「La Vie Par La Face Nord」(5:33)
  「Aimants」(5:41)
  「Toujours Un Gars Sur Un Pont」(8:00)
  「La Belle Noirceur
    「Prologue」(2:03)
    「La Belle Noirceur」(5:16)傑作。
    「Epilogue」(3:45)
    「L'Essentiel」(2:50)
  
(bzz033)

 〔4603 Battlements〕
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Claude Leonetti Léode
Gédéric Byar guitar
Vincent Barnavol drums, percussion, marimba
Romain Thorel keyboards, French horn
Dominique Leonetti vocals, guitar
guest:
Elliot Leonetti additional guitar on 2
Christine Villard bass on 3
Sébastien Cairoche hand claps on 3
Eric Vergent hand claps on 3

  2011 年発表のアルバム「〔4603 Battlements〕」。 内容は、耽美系ポスト・ロック風シンフォニック・ロック。 特徴は、中性的美声ヴォーカリストによる妖しくナルシスティックな歌唱とメロトロン・ストリングスとギズモを合わせたようなリオードの響きである。 都市の幻想や退廃感をイメージさせるも、歌を含めた、メロディアスにしてリズミカルなアンサンブルの繊細な表情は、トラッド・ミュージックに由来するようだ。 トラッド調の素朴さを超越して異国趣味に到達するところもある。 そして艶かしく身悶えるヴォーカリストが、ふとマイク・オールドフィールドのような、内省的で、はかない表情を見せることがある。 その侘しく切ない表情と、轟々たるストリングスに吹き晒されて金切り声を上げる表情(GENESIS というか初期 MARILLION のようなネオ・プログレも入ってくる)の落差が、そのままアルバムを通じた音楽の幅になっている。 一方、低血圧で低体温といったコンテンポラリーなポスト・ロック調も抜かりなく備えている。 もっとも、アナログなトレモロ効果、イコライジングされたヴォイスや SP 盤風の弦楽奏といった表現など、同時代、「ポスト」という呼称ながら古いロックやジャズに由来するものではあるが。 また、薄暗く冷気のほとばしるムード作りに、ヴァイヴなどの鍵盤打楽器の音が役立っている。 轟々と狂乱する弦楽奏、ノイジーでアナーキーなギターや原始の猛々しさのままにあらぶるドラミングなどによる圧力の高い演奏は、結果的に、ANEKDOTEN と同じく末期の KING CRIMSON に通じている。 違いがあるとすれば、それは独特の「粘り気」である。 BEATLES 好きもありそう。
   それにしても、なぜフランス語のヴォーカルは単語の一つ一つを舌で転がして弄んでいるように聴こえるのだろう。 言葉を大切にしているのか、そもそも「歌」や「踊り」は前戯だからいやらしくて当然なのか。 なんとなく後者が正解の気がする。

  「」(0:08)
  「Je Te Laisse Ce Monde」(5:35)
  「Le Miroir Aux Alouettes」(6:05)
  「Dans Le Formol Au Museum」(5:18)ストリングスを活かしたカッコいいガレージ・ロック。Walrus 入ってます。
  「15H40」(4:56)アメリカの DISCIPLINE ほどは病んでいないが近い系統の怪しさと鬱な感じがにじみ出る。
  「Les Malveillants」(7:21)ハイテンションのギター・ロック。牙を剥いて挑むよう。悲愴感よりもイキかけた危うさが魅力。
  「Quand La Bise Fut Venue」(2:55)
  「L'azur」(4:58)デンジャラスなヘヴィ・チューン。
  「Saleté De Nuit」(5:07)
  「Festin Ultime」(4:35)
  「」(1:18)
  
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 Tant Que L'Herbe Est Grasse
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Claude Leonetti Léode
Gédéric Byar guitar
Romain Thorel keyboards, French horn
Vincent Barnavol drums, marimba
Dominique Leonetti vocals, guitar
guest:
FISH vocals on 8

  2014 年発表のアルバム「Tant Que L'Herbe Est Grasse」。 内容は、無機的で重厚なサウンドによるオーケストラルで妖艶なメロディアス・シンフォニック・ロック。 エレクトロニカ、ポスト・ロック的な要素も散りばめるが、基本はフランスらしいシャンソンのセンスを活かしたメロディアスなロックである。 しかしながらそれは、ゆりかごを揺らす愛らしい三拍子の童歌がいつの間にか恨み言の果ての呪文へと変わってゆくような「メロディアスさ」である。 特徴は、暗く奥行きのある冷ややかなサウンド・スケープと無数の弦楽器を一つに束ねたような重厚で深みのあるストリングス系サウンド。 パフォーマンスの中心はナルシスティックなヴォーカリストであり、LED ZEPPELIN 同様ヘヴィ・ロックに弾き語りトラッド・フォークの素地が見え隠れする。 往年の英国プログレ御用達のハーモニウムやメロトロン・ストリングス風の音もあれば、70 年代後半の VIRGIN レーベル風のややニューエイジなストリングス・サウンドもある。 湿気や鬱度合いは英国ほどではないが、粘りつくような懊悩からいつ狂気へと踏み入れるか分からないフランス映画風の怖さがある。 ギターは最終曲まではあまり目立たないが、最後にすばらしいプレイを繰り広げる。 すべての表現が成熟して堂々としており、重いメッセージを携えながらも王道を歩んでいるように感じられる。 MARILLIONIQ といったネオ・プログレ勢と同質の繊細な陰影があり、妖艶ながらスケールも大きい。 と思ったら、8 曲目の後半には本家出身のゲスト・ヴォーカリストが現れ、PINK FLOYD ばりのシリアスで重厚な展開となる。 やはりネオ・プログレッシヴ・ロックとのリンクは強そうだ。 マニアックなところでは、ポーランドの今は亡き ABRAXAS なども思い浮かぶ。
   アルバム全体が一つの音として鳴り響く、確立された世界観を感じさせる佳作である。 プロデュースは、ラベイユ・ロデ。

  「Déraille」()
  「Une Pente Qu'on Dévale」()
  「Homo Sapiens」()
  「Prisonnière D'une Cellule Mále」()
  「Tristes Moitiés」()
  「L'essence Des Odyssées」()
  「Multicolère」()
  「J'ai Trouvé Ta Faille」()
  「Les Courants Ascendants」()
  
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 Nos Âmes Saoules
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Claude Leonetti Léode(synthesizer)
Gédéric Byar guitar
Romain Thorel keyboards, French horn
Vincent Barnavol drums, marimba
Dominique Leonetti vocals, guitar

  2016 年発表のアルバム「Nos Âmes Saoules」。 内容は、耽美で神秘的、なおかつスタイリッシュな「遅れてきた」ネオ・プログレッシヴ・ロック。 アコースティックなトラッド、フォーク弾き語りからシンフォニック・プログレの魔界へと迷い込んだタイプである。 メロトロン・ストリングスとハーディ・ガーディの奇怪な嫡子リオードのぬめぬめとした響きと中世的なヴォーカルの「しな」にもかかわらず、意外なまでにキワモノ的なところはなく、王道的なロックのスタイルをしっかりと咀嚼して、堂々たるパフォーマンスを繰り広げている。 また、グラム・ロックやハードロックの様式をたどってゆけばそのまま中世古楽や民俗音楽へとつながるのだと気づかせる音でもある。 (吟遊詩人が風狂の輩だったのは現代のロック・ミュージシャンと同じなのだ) つまり、それほどに、古楽風の音がロックになじんでいるのである。
   8 曲目は、弾き語りからシンフォニックなヘヴィ・ロックへの展開がみごとな力作。オールド・ロック・ファンには必ず訴える内容。ドラムスもカッコいい。 おもしろいのは、U2 へのなびき方が MARILLION とよく似ていること。 最終曲は、ドラマを締めくくるようなピアノ独奏。 曲間に散りばめられた間奏曲も含め、こういったていねいなアルバム構成もたまにはいい。
   硬軟さまざまなスタイルを使い分けながらも独特のロマンチシズムによる一貫したトーンのあるアルバムである。 個人的には、官能を享楽し美に耽る厭世的な作風を HM/HR 的な様式ではなく、むしろオルタナティヴ・ロックのスタンスで提示しているところが新しいと思う。 ヴォーカルはフランス語。 プロデュースは、ラベイユ・ロデ。

  「Le Temps Est À La Rage」(7:00)
  「Le Lierre」(5:54)
  「Vita Est Circus」(5:23)
  「(Fanfare Lente)」(1:01)
  「Chaussures À Nos Pieds」(5:55)
  「Le Mar Du Passé」(4:17)
  「(Le Labour D'un Surin)」(1:19)
  「Les Sutures」(6:08)
  「Nos Âmes Saoules」(5:12)
  「(Un Oeil Jeté Par La Fenêtre)」(2:04)
  
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 Saison 8
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Claude Leonetti Léode
Gédéric Byar guitar
Vincent Barnavol drums, percusson, marimba
Romain Thorel keyboards, French horn
Dominique Leonetti vocals, guitar(12 & 6 strings)

  2018 年発表のアルバム「Saison 8」。 内容は、妖艶、耽美にして青く瑞々しいネオ・プログレッシヴ・ロック。 フォークをベースとしたその作風は、PORCUPINE TREE/ポーランド陰鬱系を経た第三世代ネオ・プログレッシヴ・ロックの成果の一つといえそうだ。 さらには、バロン・ノアール系モダン・フレンチ・トラッド風味、LED ZEPPELIN 的な様式美ハードロック、VdGG 風文学青年弾き語りロックといったファクターあり。 (詩風でいえば、萩原朔太郎か) もし英語で歌ったら MARILLION と区別がつくかどうか、という話もあるが、ぬめぬめ感の手触りが違う。 御伽噺的な怪奇趣味(お郷は遠く GENESIS であろう)に加えて一種のニヒリズムのような冷ややかなタッチは共通するが、こちらには「糸を引きそう」なのだ。 仄めかしではなくより直接的にセックス的なものをイメージさせるといってもいい。 ただし、その情熱は青白い吸血鬼の欲望に由来するものである。
   特徴的なのは、中性的なヴォーカリストとリオードとギターによる粘り気の強いメロディアスなパフォーマンス。 うれしいのはリズム・セクションのキレがよく、表現が多彩なこと。 音数や音圧に頼らない、スリムでタイトなアンサンブルである。 こういう音は、ライヴで大音量になった場合にも荒々しい別の魅力を生み出すことができる。 これはオールド・ロックのファンの耳を必ず惹きつけると思う。 4 曲目は演劇御伽噺ロックとして明快かつ出色。 平たくいえばフランス風怪奇音楽骨董箱である。
   ヴォーカルはフランス語。 プロデュースは、ラベイユ・ロデ。

  「J'Attends Un Printemps」(5:12)
  「Un Linceul De Brume」(6:00)
  「Mes Amis, Mes Fréres」(5:45)傑作。
  「Les Côtes」(6:03)オルゴールのようなピアノで奏でるミステリアスなワルツ。
  「Chronique Canine」(6:15)
  「Mes Semblables」(4:55)THE BEATLES 的サイケデリック・チューン。
  「De Deux Choses Lune」(4:06)
  「Les 4 Mortes Saisons」(4:45)
  
(bzz 040)


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