ベルギーのプログレッシヴ・ジャズ・グループ「AKA MOON」。 92 年結成。 ボーダーレスな音楽性でコミュニケーションの可能性を模索するグループ。 作品多数。
Fabrizio Cassol | alto sax |
Michel Hatzigeorgiou | fender jazz bass |
Stephane Galland | drums |
Fabian Fiorini | piano |
2015 年発表のアルバム「The Scarlatti Book」。
内容は、バロック期イタリア人作曲家ドメニコ・スカルラッティのピアノ・ソナタ作品からインスパイアされたジャズロック。
編成は、アルト・サックス一管、リズム・セクション、そしてピアニスト。
ピアノによるクラシカルなモチーフの提示から展開する、暖かみのあるサウンドによる端正かつスリルもある好演である。
そのスリルは、ジャズの即興性とクラシック的な緊張感の両方から構成されている独自のものだ。
たそがれのジャズ・コンボと教会風の音の取り合わせが不思議と独特なペーソスを生んでいる。
調和の取れたクラシカルなプレイから一瞬にしてジャジーで過激な動きのアンサンブルに切りかわる瞬間がカッコいい。
今回も、小刻みなフレージングで鋭いリフを刻むベース、ガレージ風の抜けのいい打撃を放つドラムスの二人がしっかりとドラマの舞台を支えている。
現実世界の息づきにもまれ続けるジャズに、時おり郷愁のようなクラシックが訪れて、街場の埃をぬぐいつかの間の癒しの手をさしのべる。
(OUT 658)
Fabrizio Cassol | alto sax |
Michel Hatzigeorgiou | fender bass |
Stephane Galland | drums |
92 年発表の第一作「Aka Moon」。
内容は、エネルギッシュながらも端正な音作りが印象的な変拍子ジャズロック。
アンサンブルをリフでドライヴし、そこからサックスのリードで挑戦的な広がりを持たせてゆくのが主な展開法である。
ベースとサックスは、いわゆるテーマやソロといった形式を超えて、無調の込み入ったハーモニーやユニゾンを変拍子をぬって絶妙な呼吸で動き回る。
ドラムスにもビートだけではない、突っ込んだ自己主張とフロントに対する敏捷な反応がある。
便宜的にジャズロックといったが、ジャズだロックだという区分けはあまり意識する必要はなく、あえていえば、現代音楽的な手法をフリー・ジャズのスピリットとサウンドに持ち込んだポリリズミックで明快なノンジャンル・ミュージックということになるだろう。
そして、即興よりも作曲が主であり(楽譜が売っている)、いわゆるフリー・ジャズの力任せなインプロヴァイズはほとんどない。
つまり、サックス、ベース、ドラムスのトリオによる演奏ではあるが、フリー・ジャズよりも室内楽に近いニュアンスがあるというべきだろう。
また、ハイテンションで熱い演奏にもかかわらず、ヨーロッパ・ジャズらしいクールに抑制された表情が貫かれている。
いっぱいいっぱいのプレイではなく、安定感のあるプレイで、精緻にしてしなやかな動きもある音楽的構築物を作り上げていると思う。
ライナーノーツによれば、このグループの音楽はアフリカの AKA Pygmies(いわゆるピグミー族でしょうか) との交流を通して、生み出されたもののようだ。
素朴な人々がこんなにこんがらがった音楽を人生の友として過ごしているというのはにわかに信じられないが、いわゆるヨーロッパの人々から見ると、彼らの暮らしぶりがさまざまなインスピレーションの源になるのだろう。
欧米人特有の多少の勘違いがあろうが、出てくる音がおもしろければ、世界の辺境の一つ「極東」のリスナーとしてはうれしい。
よく考えれば、日本人でもインドに出かけて人生が変わる人がいる。あまり人のことはとやかくいえない。
たしかに、サックスの音色とフレーズにある突き抜け感と素朴なオプティミズムは、アフリカの広く青い空につながるものだ。
変則的なリズムにもかかわらず流れるような演奏になっているのも、これが彼らにとっての生来の自然さだからだろう。
CD の番号からすると、本作品が、CARBON 7 レーベルの最初の作品のようです。作曲は、サキソフォニストのファブリツィオ・カソル。
「Aka Moves」(6:47)
「Aka Moon」(5:33)
「Aka Earth」(12:43)ゆきりんの流し目(誰も読んでねーだろ)のようなサックスのみずみずしく艶っぽいトーンが冴え渡る佳作。
「Aka Truth」(6:41)この曲辺りからベースの主張が強くなる。
「Aka Dance」(5:15)キレのあるアッパーなノリで突っ走る痛快作。
「Aka Bird」(2:04)
「Aka Song」(8:03)
(C7-001)
Fabrizio Cassol | alto sax |
Michel Hatzigeorgiou | fender jazz bass |
Stephane Galland | drums |
Fabian Fiorini | piano on 1,2,3 |
ICTUS | orchestra |
99 年発表のアルバム「Invisible Mother」。
ICTUS なる小編成管弦グループとの共演盤。
元々は映画とともに演奏されたようであり、以下に述べるようなアイデアに則った実験的な作品である。
音楽的な内容は、シリアスな現代音楽とジャズロックの交差といえばいいだろう。
四部から構成される。
本作品は、ライナーノーツによれば、二種類の要素に基づくようだ。
一種類目の要素は古代の知恵と称され、中国の易経と南インド(カーナティック)固有音楽の二つ、二種類目の要素は音楽的姿勢と称され、管弦による書き下ろし曲演奏とバンドによる即興演奏の二つである。
これらの要素の組み合わせが、ポリフォニックなアンサンブルによるシリアスな現代音楽とビートの強いスリリングなジャズ、ジャズロックという形で、明快に表現されている。
ざっくりいって、バンド主導の部分ではサックスのリードするシャープなコンテンポラリー・ジャズ、管弦主導の部分では音は込み入っているのに全体としてはスペイシーでぼんやりと光るようなイメージの現代音楽である。
バンドと管弦がうまく合流すると、打楽器による怒涛の攻めと弦楽のユニゾンが迫力のあるコンビネーションを成して襲いかかってきたり、弦楽による抽象的な反復パターンを饒舌にして骨太なサックスが貫いたり、ピアノと弦楽による厳格な演奏にダイナミックなグルーヴが生まれたりと、意外なまでにカッコいいパフォーマンスが繰り広げられる。
混沌としたアンサンブルに決然と切り込む透明感あるピアノのアクセントがいい。
他のアルバムで見られるエキゾティックな要素は少なく、クラシカルな現代音楽風の表現の割合が大きい作品といえるが、アカデミックな難解さや厳格さや険しさよりも、豊麗な音そのものの魅力をよく表現した作風だと思う。
作曲は、サキソフォニストのファブリツィオ・カソル。
ICTUS のピアニストとして、UNIVERS ZERO のジャンリュック・プルヴィエールが参加。
アルバムのタイトル「坤」は「乾"坤"一擲」のコン。
「土」という意味があるようだ。
「Part 1」(09:54)現代音楽。木管、弦楽、ピアノが主。
「Part 2」(22:03)ジャズロック。
「Part 3」(12:40)クラシカルなジャズロック。
「Part 4」(09:16)雅楽を思わせる現代音楽。
(C7-038)
Stephane Galland | drums |
Michel Hatzigeorgiou | fender jazz bass |
Fabrizio Cassol | alto sax |
Fabian Fiorini | piano |
2000 年発表のアルバム「Invisible Sun」。
フリージャズ、クロスオーヴァー(電化マイルスか、はたまた NUCLEUS か)、フュージョン調からビッグバンド(デューク・エリントンか、ギル・エヴァンスか、はたまた ZAPPA か)、現代クラシック、サントラ調まで、緻密なコンポジションと多彩な音色のダイナミックなアンサンブルが豊麗にしてスリリングなパフォーマンスを繰り広げる好作品である。
ブラス・セクション含めゲストは多数であり、このグループの特徴である多才さが遺憾なく発揮された内容である。
なにせ、ゲストによるチャーチ・オルガンの独奏まである。
オーソドックスにして華のある管楽器のアドリヴに加えて、リズム・セクションが自由闊達な自己主張と推進力の役割を矛盾なくこなし、無限にして一期一会の躍動感を生み出している。
ピアノを軸としたクラシカルで神秘的な演出も冴える。
ビッグ・バンドのファンにもお薦め。
64 分あまり、一気に駆け抜けます。
1 曲目「Spiritualisation (K'ien)」は、サックスをフィーチュアしたビッグ・バンド作品。管楽器群による重層的でダイナミックな演奏がとにかくカッコいい。
6 曲目「Cosmic Duke」は、フルートがさえずりピアノが湧き立つエキゾティックでスペイシーな幻想曲。
7 曲目「Tchen」は、スリリングな変拍子のリフでフリーキーなソロをドライヴする大作。ポリフォニックな展開からの終盤のシンフォニックな展開がカッコいい。
ジャケットには、今回は「"乾"坤一擲」の「乾」の文字がある。
「Spiritualisation (K'ien)」(5:32)
「Alchimie (Part I)」(1:46)
「K'an」(2:06)
「Eclipse」(6:23)
「Alchimie (Part II)」(1:28)
「Cosmic Duke」(6:06)
「Tchen」(8:53)
「Invisible Father」(4:59)
「Alchimie (Part III)」(2:08)
「Li」(7:21)
「Offering」(7:51)
「Peace」(9:41)
(C7-047)
Stephane Galland | drums |
Michel Hatzigeorgiou | fender jazz bass |
Fabrizio Cassol | alto sax |
Fabian Fiorini | piano |
David Gilmore | guitars on 1,3,5 |
David Linx | voice on 5 |
Benoit Delbecq | prepared piano & keyboards on 1,3,5,7 |
Usha Rajagopalan | violin on 3,6 |
V.V.Ravi | violin on 3,6 |
C.N.Chandrashekar | violin on 1,3,6 |
Umayalpuram K.Sivaraman | mridamgam on 4,6 |
2001 年発表のアルバム「Invisible Moon」。
内容は、エスニックな要素をアクセントにした変拍子フリー系ジャズロック。
サックス、ピアノらのカルテットにギターと弦楽のゲストという編成である。
本作品の特長の一つが、ギターの活躍が顕著なこと。
このギターの存在がアグレッシヴなジャズロックらしさを強力に演出している。
ほぼ全体で展開を主導するサックスに対して、フリージャズらしくキレのいい「ちょっかい」を出すところも、このグループの作品においては新鮮だ。
弦楽奏が加わった作品では、チェンバー・ロック風の緊張感と禍々しさ、ミステリアスなムードも演出される。
ごりごりで武張ったフリー・ジャズ的展開に控えめにしてファンタジックな趣を与えているピアノもよし。
5 曲目にはヴォーカル入りで北米のレコメン系グループの作品を彷彿させる。
アヴァンギャルドでも重厚な調和感があるヨーロッパ・ジャズとは若干異なる挑戦的な表情があるためだろう。
遠いカンタベリーのこだまも。(ジョン・グリーヴスに似ているか?)
全体を通して音楽の表情には熱を秘めたメランコリーがある。
これは、そもそもジャズやフリー・ジャズにはブルーズや理不尽さへの怒りが基調にあるから自然なことなのか、それとも本作品に特別そういう性質があるのかは、よく分からない。
このグループの作品にしては難解なイメージがなく、聴きやすい部類に入ると思う。
「Worlds Of Possible」(4:13)UNIVERS ZERO っぽい緊張感のあるカッコいい作品。
「Brothers And Games」(8:56)凝縮された即興的展開がフリージャズ的。緩やかで調和のとれたシーンの美しさ。
「Dragon」(11:24)複数のドラマが同時進行するような重厚かつ謎めいた作品。プログレ的。
「The House Of Siva」(2:52)
「Three」(7:16)
「The Wedding」(11:12)中盤からのカンタベリーな展開にどきっとする。インドな弦楽をフィーチュア。
「Mother Of Intuition」(3:39)
(C7-061)
Fabrizio Cassol | alto sax |
Michel Hatzigeorgiou | fender bass |
Stephane Galland | drums |
99 年発表のアルバム「Live At The KAAI 31.3.1993」。
モノラル・ライヴ録音によるフリー・ジャズ。
ゲストなし、三人のみの演奏による明快で強烈なプレゼンスを体に浴びることができる。
音質はブートレッグ並、それゆえに、60 年代末の英国アンダーグラウンド・シーンはこうであったのだろうと思わせる熱気を感じさせる。
初期 KING CRIMSON のインプロヴィゼーション的であり、もしここにファズ・オルガンが入れば、完全に中期 SOFT MACHINE である。
「Aka Moves」(20:42)
「Aka Earth」(23:16)
「Aka Truth」(14:09)
「Rebirth Part 7」(4:25)
「Bruit」(5:31)
「Rebirth Part 8」(6:50)
(C7-039)
Fabrizio Cassol | alto sax |
Fabian Fiorini | keyboards |
Michel Hatzigeorgiou | fender bass |
Stephane Galland | drums |
guest: | |
---|---|
Marc Ducret | guitar |
Eric Legnini | keyboards |
2001 年発表の作品「In Real Time」。
内容は、アルト・サックスのリードによる快調な変拍子ジャズロック、ややジャズ寄り、かつ時に現代音楽寄り。
タイトル曲は、7 部から構成されたバレエのための音楽。
スリーヴから想像するに、ROSAS によるバレエのパフォーマンスと同時にライヴ演奏を行う趣向のようだ。
今回は即興パートが大きく取られており(その意味ではいわゆる「ジャズっぽさ」が強いといってもいい)、サックスは、フリー・ジャズらしい奔放さと時に官能的ですらあるしなやかさをもって自由に駆け回り、ベースとドラムスが音数多く演奏を支えて、シャープなグルーヴを生み出している。
特に、ドラムスは仮借ない打撃でステージを揺るがし続ける。
4 曲目の小品ではコルトレーン風のサックスと爆発的なドラムスによって一瞬にして世界が沸騰する。
キーボードは、アンサンブルでは背景作りに徹して音色の豊かさを支え、ピアノ・ソロ・パートではしっかりと前に出て、高潔なる神秘性や幻想性を演出している。(メロトロン風のストリングスがうっすらとたなびき、思い込みの果ての錯聴?!大丈夫かオレ、と焦るところもある)
溌剌と躍動しながらもタイトに締まった演奏にメロディアスな叙情性も盛り込まれ、攻守、明暗など明快な対比と流れによるドラマティックな展開も感じられる。
(劇伴らしさがあるということか)
それにしても、モダン・ジャズからフリー、現代音楽、ロック、フュージョンなどさまざまなスタイルをじつにきっちりと乗りこなしている。
器用というかみごとな音楽優等生ぶりだ。
もっとも、個人的には、ファズをかけたベースやワイアットやマーシャルをモダナイズしたようなドラムス、パワフルかつリリカルなサックスなど、SOFT MACHINE を思い出すなというほうが無理、というご本人たちには申し訳ない感想を抱いている。
また、正直あまりモダン・ジャズ側に振れてしまうとこちらの集中力が落ちてしまうが、天晴れ、そういう心配がよぎるや否や不気味なユニゾンや強引な変拍子によって目を覚まさせてくれる。
最終曲「I Said I」のみ、1999 年録音であり、マルク・デュクレが客演している。
こちらは、エレクトリック・キーボードも使い、ヒップホップからポスト・ロック、インダストリアル風のイメージも示している。
現代的なジャズロックとしてかなりカッコいい。
傑作。
「In Real Time」
「Part 1 Dirty Play And Chaos Dance」(8:03)
「Part 2 Ursula And The Wind Dance」(6:53)
「Part 3 Alix」(9:45)
「Part 4 Marta And Rosalba」(2:57)
「Part 5 Sleeping Dance」(7:59)
「Part 6 Men's Dance」(6:17)
「Part 7 Sara」(4:48)
「I Said I」(11:13)
(C7-052)
Fabrizio Cassol | alto sax |
Michel Hatzigeorgiou | fender bass |
Stephane Galland | drums |
with: | |
---|---|
Fabian Fiorini | piano |
Magic Matik | flute, voice |
guest: | |
Nelson Veras | guitar on 7,10 |
Robin Eubanks | trombone on 3,4,10 |
2006 年発表のアルバム「Amazir」。
内容は、サックス、エレクトリック・ベース、ドラムスのトリオ編成による現代音楽風ジャズ。
ジャズを基本に、フュージョン、ロックや現代音楽、民族音楽のファクターを取り入れた演奏であり、ユーロジャズらしくどこかシックである。
ピアノとフルートの存在が音楽のスムース化に大きく寄与している。
端的にいって、サックスはジャズ、ドラムスはジャズはもちろん、ロックからヒップホップ風まで多彩。
多彩な表現にインテリジェントな主張が込められているようだ。
往年のフリー・ジャズのような爆発力頼みや、いわゆる現代音楽風の無調/不協和音を固持する狷介なアプローチや、眠気を誘うようなミニマリズムではない。
また、現代音楽そのものではなく、あくまで現代音楽「風」であり、難解さや険しさは、とりあえず感じられない。
(いわゆるレコメンディッド・レコード周辺のアーティストと比べれば、はるかに「敷居」は低い。もっとも「難解さ」は、聴きこむほどに深まるケースも多い)
確かに音数は多く、それぞれの楽器が込み入ったフレーズを矢継ぎ早に繰り出してくるテクニカルな演奏ではある。
それでも、明快なキメのカタルシス、メロディアスなソロなどは、明らかにフュージョン・ミュージック出現以後のものであり、そこをきっかけにしてアクセスしてゆくと、思いのほか聴きやすい。
素直で普遍的な美感があるというべきか、ヒネクレ方がカンタベリー風なのでこちらに免疫があるというべきか、とにかく、技巧に凝った演奏であると同時に明快な歌がある。
絡み合ったアンサンブルのまま突っ走るようなスリリングな演出も利いている。(6 曲目、10 曲目はかなりカッコいい)
曲名にもあるように、サックスのリードする場面ではアフロ・キューバン的な土臭さも漂う。
とはいえ、変拍子、ポリリズムなどのリズム処理や、あたかもソロを同時に取っているようなポリフォニーなど相当難しいことをやっているのは間違いない。(最終曲は、心筋梗塞起こしそうになります)
アンサンブルの解体から即興へ、そして再びアンサンブルへと、シーンの切り替えは流れるようなという表現が相応しく、あまりに鮮やかである。
そして、核となるトリオの音楽が魅力的な上に、周辺部への広がりにも深く豊かな可能性を感じる。
ゲストの数だけ新しい音楽へと広がりそうな演奏なのだ。
フルートやピアノは単なるソリストにとどまらず、アンサンブルを刺激し、発展させている。(冒頭のサックスとフルートのからみが新鮮!)
これは「今のジャズ」というのが、おそらく最も正しい形容なのだろう。
ヴォイス・パフォーマンスもあり。
エルトン・ディーンのいた頃の SOFT MACHINE が好きならば、試してみる価値はあります。
第一印象は、音のきれいなディスク。
「Amazir」(6:22)
「Cuban #1」(7:43)
「Vasco」(10:53)
「Lila」(7:02)
「7 Wheels 0」(8:54)
「Cuban #2 (St Louis La Havana)」(4:51)
「Invisible Horn」(6:56)
「Cuban #3」(8:22)
「Cuban #4」(5:08)
「The Father Remixed」(8:15)
(CYP 0601)
Fabrizio Cassol | alto sax |
Michel Hatzigeorgiou | fender bass |
Stephane Galland | drums |
2012 年発表のアルバム「Unison」。
内容は、一管とリズム・セクションのトリオによる変拍子ジャズロック。
インプロよりも作曲ものが主になっている模様。
奇数複合拍子も多く取り入れられている。
モダンジャズ的なクールネス、ブルーズ・テイストよりも、フォーク・ソングのように純粋な哀感や強い無常感をはらんだモーダルなメロディの印象が強く、その果てに異教/呪術風の神秘性が湧きあがってくる。
これがいわゆる「地中海バルカン」風味というやつだろうか。
パターン化されたコンパクトなリフが中心にあり、アドリヴのスペースが相対的に少ないというのも、この独特の無機性を帯びた感触の理由の一つだろう。
そして、そういう点が 70 年代初頭の英国ロックの特徴である「異質/異物感」と同等に感じられて、結局この作品を「プログレ」としてとらえられるようにしていると思う。
ストレートでクリアーな音色にもかかわらず、黄昏た、ものさびしい感じがいいアルバムです。
演奏のリードはアルト・サックス。
饒舌ながらも、そのつややかなトーンと安定したフレージングでフロントを華麗に飾る。
ベーシストは、堅実かつ俊敏なリフでボトムを支えるばかりか、サックスのアドリヴにもよどみなく追従、下手をすれば追い越すテクニシャン。
ギター不在を補うようなアルペジオのバッキングもあり。
ドラマーも、ヌケのいいリズム・キープに加えて、さりげないフィルと荒ぶる乱れ打ちが非常にカッコいい。
ハイハットを連打しているのに、タムも回っているという千手観音なプレイも。
ペーソスと変拍子など、管楽器と鍵盤楽器の違いはあるが、Lars Hollmer の作風と共通するタッチがある。
変拍子乱れ打ちということで EARTHWORKS のファンにもお薦め。
「Omax1 (Tokyo)」(7:15)
「Michel Is Back」(8:06)
「Stésté」(3:02)
「Istanbul」(8:33)
「Unison」(4:35)
「For Drummers Only」(2:38)
「Mirror」(4:35)
「Fonès」(5:27)
「East Berlin」(5:32)
(CYP 0607)