ロシアのプログレッシヴ・ジャズ・グループ「ALLEGRO(Аллегро)」。78 年結成。 88 年解散。作品は五枚。作風は、サックス、キーボードを中心としたグルーヴィなジャズロック、サウンドはきわめてプログレ寄り。十年遅れで WEATHER REPORTや RTF を追いかける。
Николай Левиновский(Nikolai Levinovsky) | piano, keyboards |
Виктор Епанешников(Viktor Yepaneshnikov) | drums |
Виктор Двоскин(Viktor Dvoskin) | bass |
Владимир Коновальцев(Vladimir Konovaltsev) | tenor & soprano sax |
Юрий Генбачев(Yuri Genbachev) | percussion |
80 年発表の第一作「Контрасты(Contrasts)」。
内容は、サックス、キーボードをフィーチュアしたロマンティックかつテクニカルなジャズロック。
ギターレスであり、管楽器系のサウンドによるなめらかなタッチとあまり目立たないがキレのいいリズム・セクションが特徴的。
へヴィ、ワイルド過ぎずスムース、メロー過ぎずという、西側の 70 年代ジャズロックを総括するような楽曲、演奏である。
モダンジャズ畑の猛者たちの集合体らしく、スタイリッシュな安定感は抜群であり、高級B.G.Mとしても機能する。
エレクトリック・キーボード、とりわけスペイシーなアナログ・シンセサイザーのサウンドがプログレ・ファンには魅惑的である。
WEATHER REPORT、後期 SOFT MACHINE ファンにはお薦め。
全編インストゥルメンタル。
音楽監督は、鍵盤奏者のニコライ・レヴィノフスキー。
「Волжские Напевы(Volga Tunes)」(7:17)
「В Народном Духе(In The Folk Spirit)」(10:45)
「Контрасты (Концертино В 3-х Частях)(Contrasts)」(19:04)
(C 60-14003-4)
Виктор Двоскин(Viktor Dvoskin) | double bass |
Виктор Епанешников(Viktor Yepaneshnikov) | drums |
Юрий Генбачев(Yuri Genbachev) | percussion |
Николай Левиновский(Nikolai Levinovsky) | piano, keyboards |
Сергей Гурбелошвили(Sergei Gurbeloshvili) | sax |
82 年発表の第二作「В Этом Мире(In This World)」。
内容は、比較的ゆったりとした印象のメロディアスなジャズロック。
ソロを大きくフィーチュアした二つの組曲から構成される。
スケール大きいスペクタクルという感じでも、雄渾なる大河ロマンでも、謎めいた幻想曲でもなく、エネルギッシュなモダン・ジャズ・コンボの陽性部分のみを抽出して、自由なセンスでおおらかにまとめたような感じである。
難解さ、険しさは皆無であり、開放的な音はどちらかといえばやはり欧米フュージョンの方を向いている。
巧まざる自然なユーモアやチャイルディッシュな諧謔味は、二ール・アードレイのジャズ・オーケストラやペッカの芸風にも近いと思う。
ポイントを絞ったエレクトリック・キーボードのアクセントがカッコいい。
アコースティック・ピアノとパーカッション、サックスの絡みは、チック・コリアの RETURN TO FOREVER のイメージあり。(B 面の後半のほんのりラテン風の展開や最終部のリズミカルな展開など)
演奏力を前面に出して楽しんでいる感じはライヴ録音に近い。(「ジャズに名盤なし、あるのは名演のみ」というじゃないの)
全編インストゥルメンタル。
「В Этом Мире(In This World)」(22:10)四部構成。
「Легенда(Legend)」(20:53)三部構成。
(C 60—17423-4)
Николай Левиновский(Nikolai Levinovsky) | piano, keyboards |
Виктор Двоскин(Viktor Dvoskin) | bass |
Юрий Генбачев(Yuri Genbachev) | percussion |
Алексей Гагарин(Alexey Gagarin) | percussion |
Алексей Курочкин(Alexey Kurochkin) | syntheizer |
Александр Закарян(Alexander Zakaryan) | tenor sax |
Вячеслав Назаров(Vyacheslav Nazarov) | trombone |
Александр Фишер(Alexander Fisher) | trumpet,flugelhorn |
85 年発表の第三作「 Джаз-Ансамбль Аллегро*(The Golden Mean)」。
内容は、ビッグバンド・ジャズ風のジャズロック。
ユーロ・フュージョン・テイストは後退し、アメリカのメインストリームに近い、エネルギッシュで開放的な音になっている。
ギターレス、ベースはアコースティックである。
管楽器セクションの拡充に伴って、モダン・ジャズよりのクールネスやファンキーさが強調されているが、主としてシャープな 8 ビートとシンセサイザーの存在によって、70 年代を象徴する音楽であるジャズロックらしいテンションとスリル、明朗さも保たれている。
特に、シンセサイザーは卓越した鍵盤奏者にしてサウンド・センス抜群のプレイヤーによる神秘的で美しい演奏を見せる。
これはモダン・ジャズの文脈にはありえなかった展開だ。
切れのいいドラム・ビートとメロウでスリリングなソロ(特にトロンボーンがいい)のコンビネーションも、ジャズだロックだという区分けに関係なく、ポピュラー・ミュージックの真髄に分け入っていると感じる。
甘さも苦味も、ノスタルジーの匂いもコンテンポラリーなヒップさも心地よいビッグバンド・ジャズロックの好作品だ。
THE MIKE GIBBS BAND、NUCLEUS ファンにはお薦め。
「Фантазия Соль Мажор(Fantasy In G Major)」(10:23)
「Композиция На Тему К. Портера(Composition On A Theme Of Cole Porter)」(10:34)
「Концертная Сюита В Трех Частях(Concert Suite In Three Movements)」(20:52)前半はソロをフィーチュアした快調な演奏、ドラム・ソロをブリッジに、中盤は幻想的なキーボード・オーケストレーションによるファンタジーを演出、終章は、再びグルーヴィなテーマを健やかなるソロで彩る華麗な展開へ。一貫して勢いのある名演だ。
(C60 21795 005)