キューバのプログレッシヴ・ロック・グループ「ANIMA MUNDI」。96 年結成。作品は六枚。 THE FLOWER KINGS 調の豊麗なシンフォニック・ロック。 2016 年第六作「Insomnia」発表。
Roberto Díaz | electric & acoustic guitars, bass on 2, lead & backing vocals |
Virginia Peraza | keyboards, organ |
Yaroski Corredera | bass |
Carlos Sosa | lead & backing vocals |
Ariel Valdés | drums, bongo, batás |
Osvaldo Vieites | drums |
2008 年発表の第二作「Jagannath Orbit」。
内容は、明朗でオプティミスティックなシンフォニック・ロック。
カラフルなサウンドで親しみやすいテーマをテンポも自在に悠然と綴り、メロディアスな心地よさとタイトなプレイによるスリルを同時に生み出している。
その音楽は、泉に湧き出る清水のようにみずみずしく、初夏の風のように芳しく、寄せては返す大洋のように包容力がある。
このダイナミックかつデリカシーもある作風は、THE FLOWER KINGS や SPOCK'S BEARD、SEBASTIAN HARDIE、YES らの影響を強く受けて作り上げたものだろう。
特に THE FLOWER KINGS からの影響は顕著であり、展開の係り結びはおろかあの独特のユーモラスな表現までも消化し、独自色をつけて再現しようとしている。
曲名やスリーヴのデザインにも意識は顕著だ。
演奏をリードするのは、ほどよくコンプレスされた音色によるメロディアスなプレイが魅力的なギター。
優しげなタッチだがブルーズ・フィーリングにあふれる 70 年代スタイルであり、このギターと芳醇な音色を誇るクラシカルなキーボードとの密なやり取りが本作のパフォーマンスの要である。
本家ほどのテクニカルな安定感はないが、豊かな色彩美とヒューマンで情熱的な表現は負けていない。
2 曲目のようなドラムレスでキーボードが奥深いサウンド・スケープを作り上げるファンタジックな展開は真骨頂だろう。(まんま YES といえなくもないが、その YES の最良の場面に匹敵している)
ひさびさの YES 系ユートピア志向の本格シンフォニック・ロック。
キュートなネオプログレ・タッチも 60 年代風のインドなアクセントも無理なく取り込まれている。
プロデュースはロベルト・ディアス。
ヴォーカルは英語。
甘めの声質の一流プレイヤーである。
「We Are The Light」(17:42)翼をいっぱいに広げて飛翔し続ける爽快感あふれるファンタジー。
9:46 くらいからのバラードは SEBASTIAN HARDIE そのもの。
「The Awaken Dreamer In The Soul Garden Dreams The Flower Planets」(4:39)タイトルがもうそのまま THE FLOWER KINGS な、幻想的で神秘的なインストゥルメンタル。改めて YES の「危機」の影響力の凄みを感じます。
「Toward The Adventure」(6:12)ゴージャスなワルツ。
「There's A Place Not Faraway」(5:12)本家に迫る希望あふれるシンフォニック・ロックの佳作。メロトロン冴える。
「Jagannath Orbit」(11:44)勇ましくアグレッシヴな姿も見せる変幻自在の作品。タイトなロックの魅力。
「Rhythm Of The Spheres」(16:29)カラフルなインストゥルメンタル。
「Sanctuary」(5:20)
(FGBG 4747.AR)
Roberto Díaz | electric & acoustic guitars, backing vocals |
Virginia Peraza | keyboards, backing vocals |
Yaroski Corredera | bass |
Carlos Sosa | vocals |
José Manuel Govin | drums |
2010 年発表の第三作「The Way」。
内容は、きらびやかなサウンドとダイナミックな展開、そしてオールド・ロック風のポップ・テイストが特徴の高品位シンフォニック・ロック。
ライトなブルーズ・テイストのある泣きのギター(ワウの使い方やフレージングなど、かなりロイネ・ストルト(いや、ロビン・トロワーか?)を参照していると思う)、分厚く豊かな音色のキーボード群、パワーと弾力に富むリズム・セクションによる、カラフルでタイト、なおかつ包容力もある演奏である。
THE FLOWER KINGS をほんの少しハードにした感じ(北欧ロック風のユーモアを見せるなど、まんま TFK な箇所もあるが、それはあまり似合っていない)、または SPOCKS BEARD にヨーロッパ大陸風味を加えたような作風(これはフランスの NEMO も同じである)といえば分かりやすかろう。
管弦楽を模すなど、クラシカルなアレンジはみごとに堂に入っているし、 THE BEATLES の衣鉢を正しく継いだポップスらしいひねりのある係り結びも身につけている。
ギターのアドリヴこそなかなか破天荒な冒険心に富む(というかやや怪しい)が、スコアを守ったアンサンブルの安定感、特にテーマを提示する全体演奏の威力と叙情パートにおける色彩感覚はかなりのものだ。
ミドルテンポで堂々と進むのも、コミカルな表情を見せつつテクニカルにたたみかけるのも、ともに得意である。
フルートやアコースティック・ギターによるしっとりと心に刻み込むような演奏ももちろん用意されているし、決めどころで透明感あふれるシンセサイザーとしなやかなギターが声を揃えて歌い上げるシーンには、すれっからしのリスナーでも感動すると思う。
そして、オープニングやエンディング、クライマックスといったキーポイントでの演出が非常にうまいので、否が応でも胸を熱くさせられる。
モダンにして不易な正統シンフォニック・ロックの傑作。
全体に、「ファンタジックで陽性の PINK FLOYD、まろやかな YES」ともいうべき音楽的な説得力があり、PROCOL HARUM と同じ大物感が漂う。
ヴォーカルは英語。
「Time to Understand」(14:00)PROCOL HARUM 風の 60 年代サイケ呪術調がかえって新鮮な神秘系ヘヴィ・シンフォニック・ロック。
「Spring Knocks on the Door of Men」(26:33)後半 TFK に似すぎ。
浄福感あふれるエンディングがいい。
「Flying to the Sun」(9:34)今度はメロトロン・フルート/クワイヤやベースのドライヴするアンサンブルが TFK に似すぎ。終盤でオリジナリティ発揮。
「Cosmic Man」(8:19)タイトルが TFK に似すぎ。
内容は、アメリカン・テイストの正調ネオプログレであり、感動大盛り上がり大会。
(FGBG 4405)
Roberto Díaz | electric & acoustic guitars, percussion, effect, vocals |
Virginia Peraza | keyboards, percussion, effect, vocals |
Yaroski Corredera | bass |
José Manuel Govini | drums |
Emmanuel Pirko-Farrath | vocals |
Aneisy Gómez | clarinet |
ライヴ盤をはさみ、2013 年発表の第四作「The Lamplighter」。
内容は、豊麗なサウンドと重厚にしてメロディアスな筆致が特徴の正調シンフォニック・ロック。
「最初からクライマックス」なアレンジ、というか、冒頭からドラマの大団円を意識させる構成力がみごと。
最大の武器は、じっくりと歌いこめるアンサンブルである。
大きなテンポや調子の変化を交えずとも、しっかりと起伏あるストーリーを語れるところがいい。
やや奇を衒ったようなメロディとヴォーカルの訛りが気になるときもあるが、包容力というかスケールを保ったまま静々と着実に進む力強さ、潔さが勝る。
楽器では、クラリネットの暖かな響きとクラシカルで上品な味わいが非常にいい。(メロトロン・フルートと区別しにくいが、こちらもいい音なので拘ることなかろう)
一方、ギアを上げて勢いよく突っ走る場面が少ないため、ぼんやりとした印象に流れる可能性もある。
ただし、ここで描いているファンタジーは、往年のスタイルの焼き直しだけではなく、IQ のような深刻で現代的な重みのある幻想美になっていると思う。
毎回 70 年代大御所やネオ・プログレッシヴ・ロックからの影響をためらいなく見せているが、本作では、ギターを中心としたブルージーな翳りと優美で愛らしいメロディ・ラインに CAMEL テイストが強く感じられる。
THE FLOWER KINGS、YES はいうに及ばない。
ヴォーカルは英語。
「Suite The Lamplighter」堂々のミドル・テンポで歌い上げる物語。初期の TFK に通じるブルース・フィーリングにあふれる。来世からのお導き感も半端なし。
「On Earth Beneath The Stars」(4:24)
「The Call And Farewell Song 」(6:20)
「Light The Lantern Of Your Heart」(6:09)
「The Human House」(3:57)
「Suite Tales From Endless Star」よりネオ・プログレッシヴ・ロックらしさを出したモダンで硬質な作品。
「The Dream Child Behind The Mask」(9:05)
「The Return - Part I」(3:29)
「Endless Star」(10:38)BANCO ばりのピアノからの邪悪な展開に感激。
「The Return - Part II」(3:24)
「Epilogue」
「His Majesty Love」(6:58)
(AMMUS 005)