ベルギーのプログレッシヴ・ロック・グループ「BANZAI」。唯一作は YES 風のテクニカルなシンフォニック・ロックの名品。
Peter Torfs | keyboards, vocals |
John Mc O | guitars, vocals |
Ludwig Kemat | percussion, marimba, vibe, metalophone, alto saxophone |
Evert Verhees | bass, bass pedal, acoustic guitar, piano, vocals |
Erry Foix | drums, percussion |
75 年発表のアルバム「Hora Nata」。
内容は、演劇風というよりは退廃系グラム・ロックを思わせるジャケット写真とは裏腹に、ジャジーでテクニカルでポップなシンフォニック・ロックである。
クラシカルなオルガン/ピアノ、ベース・ラインをとらずギターとハーモニーを構成するベース、ブルーズ・スケールに長居せずどちらかといえばジャズ風のギター、徹底して音数勝負のドラムス、ハイトーンのヴォーカルらによって構成される。
そして、パーカッションがドラムスを補強して演奏に独特の小気味よさを付け加えている。
当然ながら、インスト・パートの割合は非常に高く、そして充実している。
小刻みで音数の多いドラムスとともに楽器同士が前のめりで突き進む演奏を得意とし、また、ベネルクス系らしくスウィートなテーマを必ず用意している。
いざ泣きのギターとともにスローテンポになれば、その哀愁のメロディをじっくりと歌いこむこともできる。
このコントラストが非常にいい。
また、ギター/ベースのリフとともにスタッカート気味で走るトゥッティは、テクニカルでスリリング、時にコミカルな表情も見せる。
いわば、YES に FOCUS の上品な甘みが加わった感じである。
エディ・オーフォードの代わりにジョージ・マーティンが YES をプロデュースしたらこんな感じだろうか。(戯言)
また、バンドの楽器以外に、ストリングス・セクションとブラス・セクションが、ぜいたくなアクセントとして機能している。
弦楽の響きでヴォーカル・ハーモニーが支えられるところでは、英国ロック的な貫禄も現れる。
立体的で角張ったアンサンブルは確かに YES 似、勢い一発のノリで突進するジャジーで人懐こい演奏パートは、オランダの FINCH とも共通する。
このままアドリヴ部分を拡張すると MAHAVISHNU ORCHESTRA にも迫りそうだが、そうならずにカッコいい作曲部分を幾重にも用意しているところでシンフォニック・ロック側での位置をキープしている。
また、繊細なコーラスは YES よりも DRUID に似ているかもしれない。
PSEUDONYM の CD は、シングル曲のボーナス・トラック 6 曲付き。シングルでは、プログレ風味のアレンジも交ざるものの、よりこなれたキャッチーなポップス(10CC かな)を演奏している。バラードもいい。
「You Always Like An Entree」(2:13)インストゥルメンタル。
「Try」(7:44)
「Obelisk」(11:06)組曲。インストゥルメンタル。
「Hattrick」(7:32)痛快なインストゥルメンタル。ノリノリのアドリヴ大会。
「Three Magicians (Part 1)」(12:13)
(DELTA DG-10,001 / CDP 1026)