フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「CLEARLIGHT」。 音楽院卒のシリル・ヴェルドーを中心とするプロジェクト。75 年、気鋭のヴァージン・レーベルと契約し、破格のゲスト陣に支えられてデビュー。その後、この第一作のメンバーを中心に同名のプロジェクトが結成された。 作品は四枚。
Cyrille Verdeaux | grand piano, organ, mellotron, synth bass, gong |
Tim Brake | VCS3, percussions |
Steve Hillage | guitar |
Didier Malherbe | tenor sax |
Cristian Boule | guitar |
Gilbert Artman | drums, vibraphone, percussion |
Martin Isaacs | bass |
73 年発表の第一作「Clearlight Symphony」。
アナログ各面に 1 曲という大作構成。
デディエ・マレルブ、スティーヴ・ヒレッジ、ティム・ブレイクら、GONG のメンバーの強力なサポートを得ている。
ジルベル・アールマンは、もちろんあの LARD FREE/URBAN SAX の怪人物。
Part. 1 はリズム・セクションなしで、キーボードとギター、サックスによる分厚い音のうねりで抒情的なイメージを描いてゆく。
各種メロトロン、ピアノ、シンセサイザーらの織り成す色彩感とギターによる独特のスリルが混沌のうちに、みごとなドラマを構成する。
アルバム構成、チャイルディッシュなフレーズや抱擁するように暖かみのある音色、強引なのか自然なのか分からないオムニバス感覚など、キーボード主体の「Tubular Bells」といってもいいだろう。
ギター・プレイもファズを効かせて思いきりマイク・オールドフィールド風である(ヒレッジは、代役風の起用に機嫌を損ねなかったのだろうか)
もっとも、演奏者のスキルが高いせいか、奏者が意識すべき通常の音楽的なプロトコルがあり、本家のような一種病的に閉塞的な感覚の生む際どい魅力はない。
こちらは、もっとずっとシンフォニックなプログレの方に向いている。
Part. 2 はドラムスも導入し、ジャジーな躍動感、疾走感が生まれる。
ここでもマイク・オールドフィールドを思わせるややミニマル・ミュージック風の展開はあるが、ハモンド・オルガンやサックス、ギターによるアドリヴが、ジャズロックというべき高揚感とスリルを生み出している。
ギタリストはクリスチャン・ブールに交代しているが、音色はやはりオールドフィールド風。
中盤のケイオティックな盛り上がりはかなりのもの。
今聴くと、位相系エフェクトがなんともノスタルジックでいい感じだ。
フレンチ・ロックという点では CARPE DIEM の作風が近い。
そして、演奏全編をリードするのは、ヴェルドーによるアコースティック・ピアノである。
場面展開のキーとなる重厚な演奏から過激なアドリヴまで、情感を込めつつも安定したみごとな演奏を見せる。
もっとも、純クラシック畑にしては、わりとタッチがラフな気がしなくもない。
二つ不明な点がある。Part. 1 の中盤辺りで、メロトロン・ストリングスではない弦楽器の音がする。
次の作品からヴァイオリン奏者が加わることから考えて、本作にもノークレジットでヴァイオリンが入っているという想像はできないだろうか。
もう一つは Part. 1、Part. 2 の演奏者のクレジットについて。LP カバーの表記は、おそらく Part ごとの演奏者を意味している。(ヴェルドーの名前がそれぞれに書かれていること、録音スタジオ、スタッフもそれぞれに書かれていることなどからそう類推できる)
しかし、Part. 2 にもサックスの音は聴こえるし、ファズ・ギターも Part.1 のヒレッジに酷似している。
これはどういうことなのだろうか。
プロデュースはシリル・ヴェルドー、ティム・ブレイク。エンジニアにはサイモン・ヘイワースの名前が見える。
(VJD-5024)
Cyrille Verdeaux | grand piano, harpsichord, synth, organ, glockenspiel, mellotoron, gongs, congas | ||
Francois Jeanneau | bubbles synth, flute, soprano sax | Bob Boisadan | electric piano, organ, synth |
Jean-Claude d'Agostini | guitar, 12 string, flute | Christos Stapinopoulos | drums, congas |
Joël Dugrenot | bass, lead vocals | ||
guest: | |||
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David Cross | violin | Gilbert Artman | drums, vibraphone, percussion, maracas |
Cristian Boule | guitar | Amand & Ann | celestial choir |
Brigitte Roy | vocals | Bruno Verdeaux | synth, aquatic congas |
75 年発表の第二作「Forever Blowing Bubbles」。
内容は、前作の長大なシンフォニック路線から、ジャズロック風の作品集へと変化する。
赤ん坊のささやきのような「あぶくを吹き上げる」音を一種の狂言回しにして、ドリーミーなアンサンブルから緊張感あふれるジャズロック(ジョエル・デュグルノの作品)まで、さまざまな演奏が盛り込まれている。
ヴェルドーはメロトロン含めさまざまなキーボードを操るが、やはりピアノを演奏しているときにもっともエネルギーを感じさせる。
ギタリストは、丹念な音の使い方からしてジャズの素養もあるようだが、思いきりマイク・オールドフィールドしてしまう辺りが(本人の意図ではないかもしれない)微笑ましい。
このギターとヴァイオリン、ピアノが一線に並んで走る場面は、かなりカッコいい。
唯一残念なのは、録音のせいもあるだろうが、リズム・セクションにキレが足りないこと。
リズムにメリハリがあれば、ファンタジックな作品とのコントラストもより明確になり、アルバム全体がもっと小気味よくなっただろう。
幻想的にしてダイナミックな作品が並ぶ中、異色なのは 6 曲目。
トラッド、中世音楽風味のある歌ものであり、たおやかな女声(仏語)が現れる。
今回は、フランスのジャズ、クラシック界から多く演奏者の参加を得ている。
フランソワ・ジャニューは、フランス・ジャズ界の大物、ジルベール・アールマンは、LARD FREE、URBAN SAX の鬼才、そしてジョエル・デュグルノは ZAO出身である。
また、存在感を示すデヴィッド・クロスは、いわずと知れた後期 KING CRIMSON の名手だ。
プロデュースはシリル・ヴェルドー、ミック・グロソップ。
(VJD-5025)
Cyrille Verdeaux | grand piano, clavinet, organ, Arp Odyssey synthesizer |
Francois Mandin | Arp Odyssey synthesizer |
Tim Blake | EMS & VCS3 synthesizers |
Yves Chouard | guitars |
Ian Bellamy | vocals |
Didier Lockwood | violin |
Serge Aouzi | drums, percussion |
Joël Dugrenot | bass |
76 年発表の第四作「Les Contes Du Singe Fou」。
内容は、GENESIS の作風に大いに影響を受けたファンタジックなシンフォニック・ロック。
ピアノとヴァイオリンをフィーチュアした、烈しくも幻想美あるクラシカルなアンサンブルを基本に、ジャズロック風のダイナミックな躍動感を交えている。
さらにそこにピーター・ガブリエルばりの個性派ヴォーカリストが加わり、物語風の展開となる。
ピアノのスタイルは、やや大仰ながらも安っぽさはなく、キース・エマーソンに通じる「奔放」という表現が似合う。
このピアノのオスティナートとロックウッドの荒々しいヴァイオリンが火花を散らすところも見所だ。
プロデュースはダン・シャピロ。
(C8M-003)