カナダ、ケベックのプログレッシヴ・ロック・グループ「HARMONIUM」。 72 年結成。78 年解散。作品はライヴ盤を合わせて四枚。
Serge Fiori | guitars, recorder, mandolin, zither, symbals, bass drum, voice |
Michel Normandeau | guitars, dulcimer, accordion, voice |
Louis Valois | bass, electric piano, voice |
Pierre Daigneault | flute, piccolo, soprano sax, clarinet, bass clarinet |
Serge Locat | grand piano, electric piano, mellotron, synthesizer |
75 年発表の第二作「Si On Avait Beson D'une Cinquieme Saison」。
内容は、管楽器をフィーチュアしたややジャジーな叙情派フォーク・ロック。
フランス語による濃厚な美声弾き語りをファルセットのコーラスが取り巻き、クラリネットやフルート、キーボードが穏やかながらも多彩な音色で彩る。
デリケートなニュアンスをもつフルートと木管の音、したたるようなエレクトリック・ピアノ、そして幽玄なるメロトロンの調べなど、魅力的な音が満載だ。
弾き語りフォークを基本に、ポップス、ジャズ、カントリー、ディキシーランド・ジャズなどを交え、田舎の酒場の楽団調のにぎやかさから都会風のアンニュイまで、作品の表情は幅広い。
したがって、フォークとはいってもトラッド的な枯れたイメージとは異なる、シャンソン風の垢抜けた雰囲気がある。
同じような編成の MARK-ALMOND を、カラフルなファンタジー路線にしたような作風といえばいいかもしれない。
クラシカルではないが、メロトロンとともに悠然と盛り上がってゆく場面もある。(3 曲目は圧巻!)
ドラムレスの編成だが、アコースティック・ギター、エレクトリック・ベースらによるリズカルな演奏が逞しいビート感を生み出しており、躍動感は欠いていない。
ふわりとした感触の音とは裏腹にぐいぐいと進んでゆく場面もある。
プログレとして語られるのは、メロトロンの存在ばかりではなく、メランンコリーを通奏低音にきわめて多彩な音楽性をまとめ上げた作風に依るところが大きいだろう。
美しく妖しいスリーヴと音のイメージが、かなり近いのではないだろうか。
70 年代に日本のフォークになじんだ世代には聴きやすいでしょう。
掛け値なしに「切なく美しい」という表現が似合う作品です。
「Vert」(5:33) ジャジーなシャンソンとフォーク、サイケデリック・ロックをブレンドしたユニークな作品。
フランス語ヴォーカルの厚ぼったい響きが印象的。フルートをフィーチュアしている。
スイスの CIRCUS に似た作風である。フォークと共通する音を使いながらも、ジャジーなシティ・ポップスのニュアンスがあるところがユニークだ。交錯する管楽器のアンサンブルによるサイケデリックな効果もおもしろい。代表曲。
「Dixie」(3:26) にぎにぎしいディキシーランド調フォークソング小品。
「Depuis L'Automne」(10:28) 汲めども尽きぬメロトロンの泉によってシンフォニックに高まるフォークソング。本作品のメロトロンは屈指の出来。
「En Pleine Face」(4:15) GENESIS や STRAWBS を思わせる美しくもポップなフォーク。馬鹿正直な古楽、トラッド調とは異なる微妙な「粋さ」や「娑婆っ気」こそが魅力である。
名曲。
「Histoires Sans Paroles」(17:12) あまりに哀しく美しく、そして幻想的な名品。フルートの調べは身悶えるほどに切なく、メロトロンは哀しい思い出をかきたてて止まない。
クラシカルというよりは、自由にイメージを遊ばせたら、たまたまクラシック調になったといった感の中盤がおもしろい。
(833 990-2)
Louis Valois | bass | Denis Farmer | drums | Neil Chotem | piano, synthesizer, celeste, conductor |
Robert Stanley | guitars | Serge Fiori | guitars, chorus | Serge Locat | Mellotron, organ, pipe organ, piano, synthesizer |
Louis Valois | organ, piano | Monique Fauteux | lead vocals | Denis Farmer | percussion |
Louis Charbonneau | percussion | Michel Normandeau | acoustic guitar | Libert Subirana | alto sax |
Estelle Ste-Croix | chorus | Monique Fauteux | chorus | Pierre Bertrand | chorus |
Richard Séguin | chorus | Denis Farmer | conga | Michel Lachance | tambourine |
Anthony Chotem | classical guitar | Libert Subirana | bass clarinet | Denis Farmer | celeste |
Jack Cantor | cello | Libert Subirana | clarinet | Dorothy E. Masella | harp |
Libert Subirana | flute | Libert Subirana | flute | Jeanne Baxtresse | flute |
Peter Bowman | oboe | Calvin Sieb | violin | ||
76 年発表のアルバム「L'Heptade」。
内容は弾き語りのアコースティックなサウンド質感を生かし、ポップセンスにも磨きをかけたメロディアスなクラシカル・ロック。
管弦楽のフル・サポートを得たタイトなアンサンブルとシャンソン風の小粋でムーディなメロディ・ラインとのコンビネーションがフルに生かされている。
基調は 70 年代中盤のソフトロック・サウンドだが、フュージョンっぽさよりもより時代を遡ったボサ・ノヴァ(フルートやパーカッションがいい!)やモダン・ジャズのテイストがある。
(ありていに言えば、初期の RETURN TO FOREVER に触発されたユーロ・ジャズロックと同系統である)
アンニュイかつエスプリが効いている、またはガキ臭くなくオトナっぽいといえばいいだろうか、いずれにしても成熟したイメージだ。
そこにアナログ・シンセサイザーがメタリックなファンタジー色を加味するからおもしろい。
楽曲は緩急硬軟自在、絶妙の呼吸で描くドラマティックなものが多い。
軽快なパートでは CAMEL に通じるナチュラルなオプティミズムとノンシャランさが感じられる。
歴史ある旧大陸からの直系らしくラヴ・ソングに付与された格調の高さとその与える普遍的なイメージは汎米ポピュラー・ミュージックを超えている。
ヴォーカルはフランス語。プロデュースはミシェル・ラシャンス。
オリジナル LP、CD ともに二枚組。長期にわたるベストセラー。
「Prologue」(4:20)オーケストラによる序曲。
「Comme Un Fou」(7:50)
「Sommeil Sans Rêves」(1:25)
「Chanson Noire」(8:12)
「I. Le Bien, Le Mal」
「II. Pour Une Blanche Cérémonie」
「L'appel / Le Premier Ciel / Sur Une Corde Raide」(11:21)キレのいいテーマとタイトなアンサンブル。プログレらしさあふれる傑作。
「L'exil」(12:54)
「Le Corridor / Les Premières Lumières」(8:10)最初期 RTF に PINK FLOYD が交じったような幻想的な佳作。エンディングの弦楽奏には虚を突かれた。
「Lumières De Vie」(14:11)管弦楽、ピアノが取り巻くモダン・クラシカルかつジャジーなシャンソン。スペイシーで美しい。
エレガントで幻想的なソロ・ピアノをギターがしっかりと受け止めてゆったりと波打つようにメロディアスなアンサンブルが幕を引く。
明るめの余韻がいい。
フランス語の vie ってのは意味が深いですね。
「I. Lumière De Nuit」
「II. Eclipse」
「III. Lumière De Jour」
「IV. Lumière De Vie」
「Prélude D'amour / Comme Un Sage」(14:03)映画音楽を思わせる美しいイントロダクションに導かれる作品。
ヴォーカル・パートはシャンソンというよりも弾き語りフォークのニュアンスが強い。リズムが入ってからのバンドの切れ味もいい。クールさはフランス語の MARK ALMOND か。終盤の繰り返しがいい。
「Epilogue」(2:52)
(CBS-88234 / G2K 90348)
Libert Subirana | flute, sax, clarinet, vocals |
Serge Locat | piano, organ, Mellotron, synthesizer |
Monique Fauteux | piano, Rhodes, vocals |
Robert Stanley | guitar |
Serge Fiori | guitars, acoustic guitar, vocals |
Dennis Farmer | drums |
Louis Valois | bass, Taurus, vocals |
80 年発表のライヴ・アルバム「Le Tournee」。
第三作「L'Heptade」をほぼ再現している。
やや耽美でファンタジックなフォーク・ロック、シャンソン・ロックという作風の趣は変わらずも、ギターが強めにリズムを取りリズム・セクションがしっかりと音を出すというライヴならではのロックなグルーヴが強調されている。
そして、メロディアスなヴォーカル・ハーモニーをバンドらしいノリで支えてシンセサイザーがキラキラとアクセントすると、その開放感、清涼感と濃い情念の陰影のアンビバレントな魅力は、70 年代後半の日本の「ニューミュージック」のグループのようになる。
ただ、サックスが前面に出てもジャズ、フュージョンというニュアンスにならず、70 年代初頭の英国ロック(たとえば McDONALD & GILES や MARK-ALMOND のような)のようなフォークとジャズ、クラシックなどのミクスチャーの味わいがある。
もちろんフルートやメロトロンが現れれば、もう間違いなく英国プログレの世界が広がる。
各パートの見せ場があるのもライヴならではだ。
ヴォーカルはフランス語。CD 二枚組。
韓国盤 CD はアンオフィシャル・リリースのようだ。
「Introduction」(1:30)
「Comme Un Fou」(6:41)
「Chanson Noire」(8:35)
「Le Premier Ciel」(20:18)
「L'Exil」(11:33)
「Le Corridor」(4:16)
「Lumière De Vie」
「Lumière De Vie (1ère Partie) 」(4:31)
「Lumière De Vie (2ème Partie) 」(13:21)
「Comme Un Sage」(14:55)
(PFC2 80045 / M2U-1004)