イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「IMAGIN' ARIA」。 89 年結成。作品は四枚。 イタリアン・トラッド、クラシックとハードロックの混交という若気の至り的な過激な姿勢と情熱的な演奏が魅力の王道プログレ。 2019 年新譜発表。
Perico Daniele | lead vocals | Peasso Ivan | first guitar |
Milan Gianluca | second guitar | Peasso Andrea | bass |
Biffignandi Fabio | drums |
2006 年発表の第四作「Progetto T.I.'A.」。
内容は、ポスト・ロックを見据えた内省的でアトモスフェリックなプログレッシヴ・ハードロック。
エレクトロニクス系のサウンドにトラッドな、クラシカルな、ノスタルジックなサウンドも多彩に交えて、テクニカルに迫るばかりが能じゃないといわんばかりのスペイシーなギター・ロックを繰り広げる。
PORCUPINE TREE やポーランドの PINK FLOYD 流派についても目配りがあるが、それらと同質の現代的な感性を携えながらも、音楽をより芸術的、古典的に表現している。
メランコリーの翳りに MARILLION やポーランド勢のうつむき気味の青臭さとはやや異なる、OSANNA など往年のイタリアン・ロックに通じるスケールの大きい、真正的な芸術性を感じる。
女の子に声をかけられずにうじうじするのではなく、女の子といたしながらも文明や文化について思いを馳せているようなところがある。
つまり、流行への依拠というよりは、本作では、元々このグループが素地として持ち合わせていた神秘性の演出の利きを強めにしただけなのだ。
それに時代が応じただけだ。
情熱的なベルカントと真っ向対峙するように粘っこいギターのパワーコードが唸りを上げるのも、へヴィなエレクトリック・サウンドとアコースティック・ギターやピアノがクラシックを支点に調和して存在できるのも、このグループの元来の姿である。
ハードロックという呼称が不適切なほど音楽的には知的な内容であり、だからこそ、力強く叩きつけるコードやビートがより一層胸に迫る。
特に、リスナーを一気にひき込む名品である 1 曲目のようなインストゥルメンタル曲での雰囲気の作り方がいい。
MARILLION の英国情趣にあたるものが南欧ではこれなのだ、という気がします。
ポスト・ロック系イタリアン・ロックとしては出色の作品。
アルバムのほぼ半分はインストゥルメンタル。
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Perico Daniele | lead vocals |
Peasso Ivan | electric & classical guitar |
Milan Gianluca | electric & classical guitar |
Peasso Andrea | bass |
Biffignandi Fabio | drums |
guest: | |
---|---|
Borzone Maurizio | violin, viola |
Carpanelli Aldo | pianoforte |
Tarantino Loris | keyboards, pianoforte |
Visentini Barbara | female vocals |
98 年発表の第一作「In Un Altro Quando」。
イタリアン・ネオ・プログレ隆盛期にいくつか見られた「メタル/ハードロック系」のうち、ギター中心のトリッキーな演奏と濃厚すぎるほどに濃厚な歌心でぬきんでたグループのデビュー作である。
クラシック系のサウンドを支えるゲストを迎え、イタリアン・ロックらしいフォーキー(アコースティック・ギター弾き語りは当然!)かつクラシカルなサウンド(弦楽奏から優雅なピアノの爪弾きまで)をハードロックのエンジンでドライヴし、なおかつ大胆なアレンジを惜しみなく導入している。
特徴は、叩き過ぎのドラムスが無理やり駆動するスピーディかつひん曲がったアンサンブル、うなるようにコブシを効かせたオペラ風の歌唱を得意とするこってり濃い目の声色のイタリア語ヴォーカル・パフォーマンスなど。
そして、テクニカルでありながらそれよりもメロディのよさやアンサンブルの豊かな流れにリスナーの意識を向けさせることができている。
リズム、速度、調子のキテレツなまでに目まぐるしい変化と時にユーモラスですらあるリフを、芸術的にアンサンブルとしてまとめ上げる手腕は、70 年代から続くイタリアン・ロックの伝統が生んだものだろう。
そして、典雅なクラシック、穏やかな牧歌調に勢い余った感じのハードロックが交差する作風が個性である。(イタリアン・クラシックとハードロックの間にはさしたる溝はない、たとえば、パガニーニなんてきわめて HM/HR 的ではないか!!)
ロマンティックな三拍子のアンサンブルをへヴィなディストーション・ギターが貫き通すが、ひとたびクラシカルなゲストのヴァイオリンがアンサンブルを支え始めれば、QUELLA VECCHIA LOCANDA を思わせる華麗なる乱調美の世界への扉が開かれる。
全体に若々しい意気込みの感じられる作品である。
それは、ストリングスやメロトロンのようなヴィンテージ・キーボードに頼らないことで凡百の復古バンドのようなステレオ・タイプ化しておらず、練ったアレンジと熱いメロディ、小気味のいい演奏力でストレートに訴えかけているからだろう。
JETHRO TULL や GENESIS に通じる小演劇調もある。
後半は、三部構成、15 分あまりの組曲である。
ヴォーカルはイタリア語。
「Micro Overture」(0:40)
「Arte O Artificio ?」(6:56)
「Un Momento Prima Dell Alba」(7:38)
「Perso In Una Linea」(7:19)
「Amata Realta」(7:54)
「Barbablu」(15:43)
「a) La Gloris Delle Battaglie」
「b) Le Lunghe Notti Di Festa」
「c) I Neri Labirinti Silenti」
(LIZARD 5490032)
Perico Daniele | lead vocals | Peasso Ivan | guitar |
Milan Gianluca | guitar | Peasso Andrea | bass |
Biffignandi Fabio | drums |
99 年発表の第二作「La Tempesta」。
内容は、ヴォーカルとギターを中心にしたカラフルで深みのあるハードロック。
ギターの表現を生かしたリズミカルで小気味のいい演奏とアコースティックで幻想的な響きのバラードが主である。
甲高い声に独特の憂いのあるヴォーカルは変わらず魅力的だ。
前作と比べると分かりやすいクラシカル、シンフォニック・テイストは少ないが、そういうことが気にならないほどに普通に胸にしみる曲ばかりである。
また、ハイトーンのシャウトばかりか哀愁のトラッド調まで LED ZEPPELIN に似過ぎという揶揄もありそうだが、当時は THE WHITE STRIPES のような音もあり、何度目かの ZEPPELIN ブームが巻き起こっていたと思えば、取り沙汰するほどのことではない。
情熱的でいながら荒野に吹きすさぶ乾いた風のようなクールさも兼ね備え、イタリアン・ロックとしての風味はたっぷりある。
6 曲目の大作「La Canzone Del Navigante」は、カッコいいギター・プレイに加えてドラマもある傑作。ジャズっぽさもあり。
収録時間は 40 分少しと短かめ。
(LIZARD 5490152)
Perico Daniele | lead vocals | Peasso Ivan | first guitar |
Milan Gianluca | second guitar | Peasso Andrea | bass |
Biffignandi Fabio | drums | ||
guest: | |||
---|---|---|---|
Aldo Carpanelli | keyboards, piano | Massimo Faletti | flute |
Rinardo Doro | hurdy gurdy | Chacho Marchelli | vocals |
Lorenzo Boiolli | piccolo | Andrea Sibilio | violin, viola |
Michale Moruzzi | narration |
2002 年発表の第三作「Esperia」。
内容は、ツイン・ギターをフィーチュアしたクラシカルなハード・シンフォニック・ロック。
情熱的でしなやかなイタリア語ヴォーカルを中心としたうねりのあるハードロックに、多彩なゲストによるクラシカルなプレイを縦横に編みこんで、ドラマティックに仕立てた傑作である。
ハードな音でも陰鬱、邪悪にならず常に陽気で牧歌的、ダンサブルであり、その結果、全体としてメロディアスでアクセスしやすく感じられる。
ロックなのにエレガントというところが、いかにもイタリアン・ロックらしい。
最大の特徴は、テクニカルな演奏がヴォーカルがリードする曲の展開にしっかりとはまっていていること。
これだけアンサンブルを練りに練っていれば、スウィープを軽やかに決めるモダンなギターによるテクニカルなメロディック・マイナー調も活きるというものだ。
そして、HR/HM 的な音を使いながらもステレオタイプ化せずに、芸術としての刺激を十分にもち、エモーショナルな熱気も若々しく伝えてくる。
ポーランドの名バンド ABRAXAS とよく似ている。
とにもかくにも、インストゥルメンタル小品も交えてひらりひらりと翻るような場面展開の妙は絶品。
キーボードを多用せず(生ピアノはすばらしい)、生楽器(アコースティック・ギター、フルート、ヴァイオリンはもちろん、ハーディガーディ(4 曲目冒頭など)もあり!)によるクラシック・テイストを追求しているのは正解だと思う。
また、三拍子の曲によるスウィングする舞踊調も特徴的だ。
第一作のシンフォニック調が作品ごとに減退とするとする世評とは異なり、クラシカルな音をロックに取り入れた技巧派イタリアン・プログレの王道を進んでいると思う。
ヴォーカルはイタリア語。
楽曲が優れているのに加えて、演奏にバンドとしてのグルーヴや一体感もあるという理想的な作品である。
CITTA FRONTALE の唯一作が好きな方にはお勧め。
(LIZARD CD0024)