Hans Ressen | bass, vocals, flute, acoustic guitar, Moog |
Claus Sarup | drums |
Tommy Hansen | guitars, Moog, backing vocals |
Jens Olesen | piano, organ, Moog |
74 年発表のアルバム「First Salvo」。
内容は、キーボード中心のクラシカルなシンフォニック・ロック。
クラシックのモチーフを軸に展開するキーボードのプレイをフィーチュアし、それを取り巻いてやたらとアタックの強いリズム・セクションが天井に頭をぶつけそうな勢いで跳ね回り、暴れまわる、典型的プログレ・サウンドである。
「The Yes Album」でキース・エマーソンがシンセサイザーを弾いているようなシンフォニック・ロックから、FOCUS、 TRACE 路線の雅なクラシック・ロック、著名作品のダイレクトな翻案など、「クラシカルなプログレ」として安定した作風である。
クラシックの持ち込み方は、FRUUPP に通じる誠実で素朴さにあふれる「洗練はされていないが愛らしい」作法が取られている。(つまり、ベースやドラムスが元気すぎる)
その一方で、他のバンドの作風の持ち込み方はかなり節操がない。
荒っぽいヴォーカルはロックな品のなさを素直に出しており、クラシカルだからといって高尚になり過ぎないようにバランスを取っているようだ。
キーボードは、オルガンとともに、独特な音色で強烈な存在感を示す古きよきムーグ・シンセサイザーを多用している。
オブリガートや間奏部のレゾナンスの効いたフレーズが印象的だ。
聴き込むうちにチープな感じも愛らしさに変わってくるクラシカル・ロックの佳作。
ヴォーカルは英語。プロデュースは、ペル・スタン。
「Happy Band」(2:47)シャフル・ビートでギターとシンセサイザーが元気にかけ合う、クラシカルで勇ましいインストゥルメンタル。
バロック・トランペット風のムーグ、ベーシストが担当するフルートが大活躍。オープニングのベースのトレモロはやっぱりクリス・スクワイアですかね。
運動会の鼓笛隊。
「Iron Duke」(7:53)オルガンの典雅な響きとメロディアスなギターが印象的な FOCUS、いや FRUUPP 風のクラシカル・チューン。
メタリックなシンセサイザーは EL&P の「Toccata」を思わせてまさにプログレらしさ満点だが、この教会音楽風の曲想ならもう少しデリカシーのある音だとよかった。(力の抜けたヴォーカルはほとんど THE NICE である)
「The Blacksmith & The Baker」(3:34)キース・エマーソン風のラグタイム、ホンキートンク・ピアノをフィーチュア。
やはり歌が垢抜けない。
冒頭のパーカッションが示すとおり、どうしても「用心棒ベニー(昔は「詐欺師ベニー」じゃなかったっけ?)」がやりたかったようだ。
「Beast Of Prey」(7:27)YES(「Yours...」ですな) に似すぎ。
ただし、こちらはオルガンのみならずシンセサイザーもあり。それにしてもそのマンマ。
「See The Conqu'ring Hero Comes」(3:09)インストゥルメンタル。
ヘンデルでしたっけ。
表彰式の曲。
アコースティック・ギターも参戦。
「Psalm」(2:43)タイトル通り、シンセサイザー・アンサンブルによる頌歌調のインストゥルメンタル。
いわゆるシンセサイザー・ミュージック以外でのキーボード・プログレの作品では、モノシンセのオーヴァーダブによる作品は珍しい。(ソロ・アルバムでやってくれとメンバーにいわれるのかも)
「Rocking' Edward」(15:05)グリーグの「ペールギュント」組曲の翻案。
オルガン主体の演奏に安定感あり。
傑作。
(2380 026 / PP 115)
Hans Ressen | guitars, bass |
Henning Pedersen | keyboards |
Claus Sarup | drums |
Søren Guldberg | keyboards |
77 年発表のアルバム「Gammel Dansk」。
内容は、デンマーク民謡やクラシック名曲の翻案によるキーボード・オリエンティッド・シンフォニック・ロック。
本家 EL&P ほどの破天荒さやダイナミックさ、迫力はないが、アナログ・シンセサイザーやオルガンの多彩な音色をいかしたアンサンブルで堅実かつ少し蓮っ葉に迫るパフォーマンスは、クラシカルなプログレのファンには響くと思う。
アナログ・シンセサイザーのレゾナンスを強調したフレーズに思わず耳を奪われるのは確かである。
演奏は、シャフル・ビートで優美なテーマを真っ直ぐに歌い上げるスタイルであり、ハードロック志向はない。
したがって、もう一歩踏み外すとスーパー・マーケットで流れている有線放送のようになりそうだが、洗練され切らなさと武骨さが幸いして、ロックのフィールドにとどまっている。
もっとも、BGM になるにはもう少し安定感というか音楽的ななめらかさが要ると思う。
どことなく音痴なキーボード、いや音痴なアンサンブルのせいでそれを作り出せていないのだ。
熱い思いと技量はあるが、その技量に加えてセンスも不足気味ということだろうか。
キーボード・ロックにして豊かなポップス志向を貫いた TRIUMVIRAT、フォークもロックも一線級の KAIPA あたりと比べるとグレードの差がよく分かる。
それでも、エレガントなピアノ、パーカッシヴなハモンド・オルガンやトーキング・フルート、ぶっ飛んだシンセサイザーなど魅力的な音はたくさんある。
キーボード・プログレにしてイージー・リスニングという境地を極めたらおもしろかったであろう。
評判だけが高いマイナーなイタリアものよりは感動は大きいはずだ。
77 年にしてはかなり古めかしい感じがするのは、モチーフがクラシックであることに加えて、ノリやサウンドを NICE や 70 年代初頭の E&LP に忠実に倣っているためだろう。
全曲インストゥルメンタル
プロデュースは、ハンス・レーセン。
「Ole Sad Pa En Knold Og Sang」(3:25)このドラムスは「展覧会の絵」ですかね。ノイジーなシンセサイザーもいい感じだ。
背筋の伸びた気品あるテーマと街場っぽい、ブッカー T のように「こなれすぎた」オルガンのコントラストの妙。
「Juletraeet Med Sin Pynt」(2:58)最もクラシックに寄った KAIPA のようにクラシカルで愛らしいエチュードのような作品。リズミカル。
「Pa Sjolunds Fagre Sletter」(3:58)シャフル・ビート、ヘヴィなオルガン、トーキング・フルートらによるダンサブルなフォーク・ソング。北欧っぽさ強し。
「Dejlig Er Jorden」(3:22)ブルージーなロックビートで奏でるメヌエット。テーマはホィッスル風にトーン調節したオルガンか。
後半、軽妙なノリで踊り捲くるオルガン、ギターもいい。こういう曲は一つ間違えるとバカ当たりする。
「Maskerade」(5:42)序盤のピアノはみごと。ミドル・テンポの大きなノリが奏功した安定感あるクラシカル・ロック。
ノイジーな低音のシンセサイザーは疑問。
「Spurven Sidder Stum Bag Kvist」(3:50)「上を向いて歩こう」に似たギターのテーマによるキュートな作品。全体にギター、ベースをフィーチュア。シンセサイザーのコミカルな間奏がいい感じだ。
「En Rose Sa Jeg Skyde」(4:19)FOCUS に通じるメロディアスなクラシカル・チューン。
ドラムス、普通にやればこんなに芸達者なんですね。
「Som En Rejselysten Flade」(2:47)
「Her Vil Ties Her Vil Bies」(4:11)
「Gammel Dansk」(3:17)
(SLP 496/ PP 125)