ONE SHOT

  フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「ONE SHOT」。99 年結成。 作品はライヴ版を含め六枚。新編成 MAGMA を支えるメンバーによるグループ。最新作は 2023 年発表の「111」。

 One Shot
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Philippe Bussonnet bass
Daniel Jeand'heur drums
James Mac Gaw guitar
Emmanuel Borghi Fender Rhodes, synthesizer

  99 年発表のアルバム「One Shot」。 内容は、重量感のある攻撃的なエレクトリック・ジャズロック。 モダン・ジャズは当然として、MAHAVISHNU ORCHESTRARETURN TO FOREVER、エレクトリック・マイルス、同国のMAGMA らの薫陶を深く受けた 70 年代の第一世代のジャズロック・スタイルの継承者である。 リフとアドリヴという明快な構造、そして毛羽立ったローズ・ピアノや唸るベース、歪んだギターといった典型的な音のおかげで入っていきやすい。 初期の ISOTOPE のような荒削りで酸味のあるサウンドが魅力だ。 サイケデリックな音響と強圧的なリフで迫るスタイルはまさに MAGMA 的、また、ギターのプレイはマクラフリン、キーボードはコリア、ジャレット流というようにネタ元がわりと分かりやすい。 原始的で凶暴なイメージは強いが、徹底して MAGMA 的なものにこだわっているわけではないらしく、へヴィなリフを刻んでのたくる演奏もあるが、オーソドックスなジャズ/フュージョン、カンタベリーに寄ってゆくところもある。 タイトルがいかにもな 1 曲目も MAGMA 風の重装甲で始まるわりには、展開部ではシャープなジャズロックと化す。 3 曲目のようにワイルドなサウンドと軽快で腰の強いファンク・テイストの取り合わせは、ニューヨークのライヴハウスで普通に出会えそうな感じだ。 したがって、SCHLEIGHO のようなジャズ・ジャム・バンドとしてとらえることもできるだろう。 また、干渉縞のように重なり合って連なる変拍子パターンに、80's KING CRIMSON を、荒ぶるディストーション・ギターに 70's KING CRIMSON を連想することもできる。 ギタリストはコンテンポラリーなジャズのプレイもそつなくこなしている。 ドラムスは 8 ビートに切り換わってもジャック・ディジョネットのようにジャジーな感じがある。
   著名グループの影響を真っ向から受けて作り上げた作品ではあるが、演奏がしっかりしているので楽しめる。 ジャズロック・ファンには無条件でお薦め。 ドラマー以外のメンバーは、MAGMA の現役メンバーも兼ねる。 全編インストゥルメンタル。 ライヴ録音の自主制作盤。 2015 年現在、本アルバムはリミックス/リマスターされ「Reforged」というタイトルでリリースされている。

  「M.D.M.」(8:25)
  「Monsieur G.」(4:37)
  「Trente Trois」(5:24)
  「One Shot」(10:10)ダルでブルージーな 8分の 6 拍子ジャズロック。
  「La Main Du Diable」(11:26)MAGMA のようで「Red」も見える佳作。ヒステリックなタッチのせいか。
  「Un Jour Dans L'est」(10:00)メローな面も見せる、というかどうしていいのか分からない感もあり。
  「Riff Fantom」(9:23)リフ一本槍。
  
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 Vendredi 13
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Emmanuel Borghi fender rhodes, synthesizer
James Mac Gaw guitar
Philippe Bussonnet bass
Daniel Jeand'heur drums

  2001 年発表のアルバム「Vendredi 13」。 内容は、変拍子で圧迫する暴力的ヘヴィ・ジャズロック。 MAGMA はもちろん、SOFT MACHINEMAHAVISHNU ORCHESTRA の薫陶を受けた、無情かつ抽象的で攻撃性に満ちたイメージを与えるパフォーマンスである。 ただし、MAGMA のフォロワーとしての音だけではなく、70 年代のグループと同じように、モダン/フリー・ジャズと R&B とファンクとサイケデリック・ロックのいいところ取りをしたジャズロックの芸風である。 フル・ピッキングで神経症的なフレーズをたたみかけるギター、場の位相を司り強引に波打たせるエレクトリック・ピアノ、大型建機の暴走のようなドラミング、舌なめずりが聴こえる狂気と暴虐のベース。 血を吐くモールス信号のような高速ユニゾンは圧巻。 KING CRIMSON を思わせる非人間的な調和感と酷薄な凶暴さあり。 ライヴ録音。エレクトリック・マイルスのファンにお薦め。

  「I Had A Dream part 1」(6:19)ヒップホップ調のリズム感と MAGMA なサウンドによるカッコいい作品。
  「I Had A Dream part 2」(13:56)慄然。
  「Blue Bug」(11:19)初期 LIFETIME 的。ギターがマクラフリン風だからか。
  「No」(9:34)マイルス・ディヴィス風の作品。
  「In A Wild Way」(12:11)やはりマイルス・ディヴィス風の作品。キーボーディストの達者なソロ。ひずんだベース、音の多いドラムスとのやり取りの呼吸もいい。息づまるハイ・テンション。
  「Urm」(10:06)MAGMA の汎宇宙的な感覚が生かされた、イキかけているプログレなジャズロック。シンセサイザーが効果的。
  
(S06)

 Ewaz Vader
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Emmanuel Borghi keyboards
Philippe Bussonnet bass
James Mac Gaw guitar
Daniel Jeand'heur drums

  2006 年発表のアルバム「Ewaz Vader」。 内容は、ヘヴィかつミステリアスな硬派ジャズロック。 重厚なリズム・セクションがドライヴする後期 KING CRIMSON 風ポリリズミック・ジャズロックや最初期 WEATHER REPORT (というか CRIMSON の「Islands」か?)風アンビエント・チューンなど、70 年代クロスオーヴァー・ジャズロック路線を貫く。 強情なまでの反復と、派手さを一切気にかけないモノクロームなサウンドによるゴリゴリのプレイの連続に、尋常ならざる気合を感じる。 ミドルテンポで重戦車のように驀進し続けるスタイルであり、メロディアスなテーマやユニゾン一発といったフュージョン的な安易なカタルシスはまったく求めていない。 激情のままに刃を振りかざすようなエレクトリック・ギターの生むどうしようもない焦燥感、切迫感に、唯一フェンダーローズのコードの響きだけが寄り添い、遠い灯火のようなきらめきで楽曲を導いて路頭に迷わせない。 確立されたスタイルではあるものの、そのうちで、荒ぶる魂の叫びと切ない情感が表裏一体となっていることを巧みに表現できていると思う。 ワイルドでエッジの効いたクロスオーヴァー、ジャズロックのファンは必携。 全編インストゥルメンタル。 4 曲目はコンテンポラリーなセンスの感じられるグランジ/オルタナティヴ・ジャズロック。友人らしきギタリスト(Laurent Imperato)に捧げられている。

  「Ewaz Vader」(10:32)
  「Fat」(15:38)
  「I Had A Dream (part III & IV)」(14:47)
  「Missing Imperator」(13:11)
  
(TRI-06512)


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