ニュージーランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「RAGNAROK」。 74 年結成。作品は二枚。サイケデリックでロマンティックな古きよきオールドウェイブ・ロック。近年ライヴ録音が発表された。
Lea Maalfrid | lead vocals |
Ramon York | guitars, vocals |
Ross Muir | bass |
Mark Jayet | drums |
Andre Jayet | mellotron, moog synthsizer, drums |
75 年発表のアルバム「Ragnarok」。
内容は、サイケデリックな幻想に満ちたオールドウェーヴ・ロック。
まったりとロマンティックな味わいは、ドイツの NOVALIS に近いような気がする。
クレジットでは女性がリード・ヴォーカルになっているが、男性がヴォーカルを取るところも多い。
おそらくこの女性は、楽曲も提供しているが、メンバーというよりはヴォーカル・パートを補強するためのゲストのようだ。(裏ジャケの写真もメンバーとは別になっている)
歌唱のスタイルは、美声型ではなく、どちらかといえば悪声のヴァンプ(妖婦)型の歌姫である。
メロトロンを大々的に使っており、PINK FLOYD や YES(特に B 面) といったキーワードも思い浮かぶ。
さらに、女性ヴォーカルとメロトロンということで個人的に思いついたのは EARTH & FIRE である。
ただし、彼のバンドのような、「陽の毒気」というか、溌剌としたところはなく、もっと薄暗く青白い。
ぼやっと幻想的なところは、フランスの PULSAR や PENTACLE 辺りにも通じる。
共通点は、鳴り響くメロトロンの他にも、男性ヴォーカルとハーモニーが地味な点、意外に鋭いリズム・セクション、激しい変化をせずじんわりと迫るところ、電子音が散りばめられた薄暗い幻想性などだ。
曲調に急激な変化がない代わりに、長いクレシェンドとともに次第に繰り返しが荒々しい調子を帯びてゆくような、着実な力強さがある。
もっとも、悠然とした演奏にそれなりの説得力はあるが、ミドル・テンポばかりで変化がないために単調になっているのも否めない。
サイケデリック・ロックにメロトロンを放り込んだだけといってしまうとあんまりだが、A 面はかなりそれに近いところもある。
それでも B 面へゆくと透明な幻想性や華やいだ展開など新しい感触が現れて、なんとか最後まで聴き通せる。
全体としては、幻想的な雰囲気にあふれた 70 年代ロックといえるだろう。
プロデュースは、アンドレ・ジェイエット。
「Fenris」(5:29)ひねったメロディとはじけるリズム・セクション、鳴りっぱなしのメロトロンの響きが微妙な均衡を見せる面白い作品。フェンリスは北欧神話の「ラグナロク(最終戦争)」で災いをもたらす狼の怪物。
「Butterfly Sky」(4:32)位相系エフェクトと深いエコーをメロトロンにしかけた半覚醒チューン。
「Fire In The Sky」(3:59)メロトロンが取り巻くサビだけで押し捲る作品。
「Rainbow Bridge」(7:05)再び半覚醒状態の弾き語りトリップ・チューン。
「Raga」(6:18)ジャーマン・ロック(AGITATION FREE か?)風のインストゥルメンタル・チューン。佳曲。
「Cavior Queen」(3:39)華々しくギターがほとばしる YES の「Yours Is No Disgrace」風の小品。アルバム全体がゆったりめなだけに目立つ。お姐さんのヴォーカルがやや伝法。
「Dream」(6:57)幻想的なインストゥルメンタル。キーボード(ギター・シンセサイザー?)をフィーチュア。
「Dawning Horn」(4:09)映画のサウンド・トラック風の作品。
(RVLP 1002)
Ramon York | guitars, vocals |
Ross Muir | bass |
Mark Jayet | drums |
Andre Jayet | mellotron, moog synthsizer, drums |
76 年発表のアルバム「Nooks」。
女性ヴォーカリストが脱退し、四人編成となる。
内容は、エレクトリックなエフェクトをうまくあしらったスペーシーでメロディアスなロック。
エレクトリックな効果音や反復などサイケデリック・ロックの残り香も見せるが、サイケ特有の冷ややかな感じはなく、主旋律やヴォーカル・ハーモニーなど、随所に暖かみが感じられる。
YES の影響はあるようで、ポリフォニックで立体的な演奏も見せるが、音は粘っこく丸みがある。
したがって、イージーなロカビリーへの変貌にも驚かない。
パストラルなフォーク・ロック調をシンセサイザーや鋭角的なリズムで変化をつけて展開させてゆくのが得意なようだ。
靄がかかったように茫洋とした独特の雰囲気はキーボードが作っている。
そのキーボード、オルガンはないが、シンセサイザーやメロトロンは多く使われている。
その使い方は、PINK FLOYD 的な叙景のためである。
また、リズム・セクションの腕前が、執拗な反復からドラッギーな展開に進むに連れてより際立ってくる。
シンフォニック・ロック一歩手前のオールドウェーブ英国ロック・スタイルの佳作。
「Five New Years」(4:46)
「Waterfall - Capt. Fagg」(6:14)
「Fourteenth Knock」(4:52)インストゥルメンタル。
「Paths Of Reminiscence」(4:14)
「The Volsung」(5:57)珍しくアコースティックなフォーク調の作品。メロトロンが遠く鳴り響き、英国 SSW 風の強い幻想味あり。後半は、シンセサイザーのプレイとともに中期 GENESIS のようなシャープな演奏になる。
「Semolina」(3:55)前曲と同じくフォーク・テイストの緩やかなバラード。
「Nooks」(7:13)CAMEL を思わせる「甘めなのに技巧的なプレイ」が続くインストゥルメンタル大作。すべてはこの曲のためにあるようだ。中盤の性急な感じがカッコいい。
(Polydor 2390109 / DCI 23194)