イタリアのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「TALE CUE」。 かなりの期待で持って迎えられた(オネエさんがキレいだったのか?)が 91 年にアルバムを一作残しただけで既に解散しているようだ。 ギタリストはプログレ系のユニットで活動しているらしい。
Silvio Masanotti | guitar |
Filippo Oggioni | drums |
Davide Vicchione | bass |
Laura Basla | vocals |
Giovanni Porpora | keyboards |
guest: | |
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Lisa De Renzio | flute on 6 |
91 年発表のアルバム「Voices Beyond My Curtain」。
内容は、暗いメロディとともに陰鬱な表情で歩み寄る、地味ながらも耽美でスタイリッシュなネオ・プログレッシヴ・ロック。
あたかもフランスのグループのような退廃美志向であり、鬱々と突き進む演奏が臨界点を迎えて猛々しく炸裂する。
その系譜に GENESIS、初期 MARILLION を祖先に持ちながら、PULSAR や PINK FLOYD の遺伝子も交わっている。
安定したリズム・セクションがミドル・テンポで支えるアンサンブルには、じわじわと沁みてくる毒薬のような肉感的刺激とうねりがある。
そして、ひとたび弾けると、パンキッシュな荒々しさで音を叩きつけてくる。
遮二無二暴れるかと思えば孤独感に苛まれるように内省的な調子も現れて、その振幅の大きさと激しさに耐え切れずに、すでに狂気に足を踏み入れてしまっているような感じである。
それはあたかもロックの衝動がフィジカルを越えてメンタルにまで突き刺さり、その勢いのまま精神を新たな世界へと放り投げてしまったようだ。
これもまたプログレッシヴ・ロックの根底にあるパワーである。
本アルバムの大きな特徴は、ソーニャ・クリスティナ系統のパンチのあるアルト・ヴォイスを駆使して、デフォルメされた表情を操る女性ヴォーカリストである。
FISH もしくはピーター・ハミルの女性版といってもいい。
シャウトもあるが、どちらかといえば声色も使いながら耽々とささやき、歌い上げる方が似合っているようだ。
英語が母国語でないせいか、歌唱がダグマー・クラウゼ風のコケットな響きに流れることがある。
そうなると、せっかくのドスの利いた迫力に鋭さがなくなってしまう。
スティーヴ・ロザリー風に歌い上げるギターはいかにもネオ・プログレ流だが、リフやバッキングではけっこうけたたましい音を出しており、実はオーソドックスなハードロック・スタイルがベースにあるようだ。
やや怪奇、ゴシック調のフレージングと丹念なピッキングのリフは特徴的だ。
冒頭のようなアコースティック・ギターの誠実なプレイもいい。
また、キーボードのプレイは、バラードにおける淡々としたピアノのプレイとやや頼りなげなシンセサイザーのソロの他は、変拍子のオスティナートとストリングス系の背景音が主である。
透き通るような音は悪くないが、音色にあまり変化がないため、本当に透き通ってしまって印象に残らない。
リズム・セクション含めアンサンブルは、バランスよく安定感もあり、さらに存在感あるヴォーカルがからんでくると音楽のグレードがぐっと上がる気がする。
楽曲のダイナミックなうねりはさほどでないが、こまめな抑揚と色調の変化で物語を堅実に綴っている。
ミドルもしくはスロー・テンポの暗くメランコリックなトーンが全体を包んでいるが、その雰囲気をヴォーカルがきちんとリードしているので取りつきやすい。
反面、強烈な表現がない(ヴォーカリストがスピーディでハードな演出をやや苦手としている可能性もある)ため、脳天をかち割られるような、頭から冷水をぶっかけられるようなインパクトはない。
ヴォーカリストの得意とする表情だけに頼りきりといってもいい。
最終曲のフルートでハッとさせられただけに、もう少し音色にバラエティがあると、さらに楽しめたと思う。
一番がんばれる余地があったのはキーボーディストだろう。
ヴォーカルは英語。
文句も言ったが、10 分を越える作品をちゃんと聴かせるレベルに仕上げているだけでも並みのグループではない。
「The Knell」(14:50)メランコリックで内向的ながらも主張のある正調シンフォニック・ロック。
序奏はアコースティック・ギターによるクラシカルなソロ。
ディレイを使ったギター・リフはこの頃の流行の一つ。
メロディアスなシーンだけでなく、GENESIS の「Knife」を思わせる攻撃的なアンサンブルやストリート風のやけっぱちさのある姐御肌のヴォーカル表現など、音楽としてのメリハリに富んでいる。
「Craven Smiles」(7:07)
「Prisoner Of Cutting Light」(12:30)ミステリアスな表情で疾走する IQ、TWELFTH NIGHT 風の作品。
「Choices」(7:04)
「Flying To Fade」(10:02)
「Pale Light Of The Morning」(11:49)フルートをフィーチュアした作品。序盤のソロが印象的。
(MUSEA FGBG 4030-AR)