THE NIGHT WATCH / THE WATCH

  イタリアのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「THE NIGHT WATCH」。 93 年 MARILLIONGENESISKING CRIMSON のコピーを行なっていたシモネ・ロセッティとベースのアントニオ・モーリを中心に結成。 2010 年現在、作品は六枚。 第二作からグループ名を THE WATCH に改めている。 現代最強のオールド GENESIS クローン。 最新作は 2017 年発表の「Seven」。

 Tracks From The Alps
 
Simone Rossetti vocals, mellotron, synthsizer, flute
Giorgio Gabriel guitars
Mattia Rossetti bass, bass pedal
Valerio De Vittorio keyboards, organ, synthesizer
Marco Fabbri drums, percussion

  2014 年発表の第七作「Tracks From The Alps」。 内容は、安定の GENESIS クローンであり、そのクローン度合いが大きくグレードアップしている。 現代的でタイトな演奏はそのままに、R&B やフォークといったベースにあたる部分もしっかりとこなすことで、本家と同じ路線での音楽的進化を遂げている。 つまり、楽曲の語り口は力強くも引き締まりあくまでなめらか、ぐいぐいと押してくる曲調が主ながらも演奏の安定感は抜群である。 アコースティック・ギターのさざめき、メロトロン・クワイヤの斉唱、しなやかで粘りつくギターの調べ、キコキコしたオルガンの響き、そして秘術でガブリエルの生霊を憑依させたロセッティの圧巻のヴォーカル・プレゼンス。 ベース・ペダルの音が妙だが慣れればどうってことはない。 本家ほどには痺れるほどに美しいメロディや大脳皮質に刻み込まれるような奇天烈なフレーズはないが、多彩な音を丹念に綴ってさまざまなアクセントを散らしつつ緩急自在に動き回る演奏が最後まで楽しませてくれる。 いろいろな音があるが、分厚く詰め込むのではなく、薄くデリケートな彩をつけるのがたいへんにうまい。 叙情的な場面だけではなく、エネルギッシュな演奏においても、そのデリケートなタッチを活かして肌理の細かい描写をしている。 このなんともいえぬスリルは、エンタテインメントとして遊園地の非常に優れた見学系アトラクションや精緻なジオラマの鉄道模型に通じるものである。 5 曲目は GENESIS のカヴァー。 今回も収録時間は 40 分を切っており、「GENESIS の発掘 LP」、あるいは「ガブリエルが抜けなかった並行宇宙における GENESIS の新譜」と見做すのが正しいようだ。 なにせ、いわゆる「ネオ・プログレ」っぽさは微塵もないのだから。 ヴォーカルは英語。

  「A.T.L.A.S.」(7:06)
  「Devil's Bridge」(6:12)
  「The Cheating Mountain」(5:08)
  「On Your Own」(3:42)
  「Going Out To Get You」(3:36)
  「Once In A Lifetime」(4:20)
  「The Last Mile」(7:30)

(PKR 0020)

 twilight
 
Simone Rossetti vocals
Antonio Mauri bass
Francesco Zago guitars, programming
Giovanni Alessi keyboards
Diego Donadio vocals

  97 年発表のデビュー・アルバム「twilight」。 内容は、GENESISKING CRIMSON の影響を強く受けたネオ・プログレらしいシンフォニック・ロック。 ヘヴィだがするするとすべるよう歌うギター、ストリングス系を主に背景を淡く彩るキーボード、そして表情豊かなヴォーカルなどを手駒に、ヘヴィなナンバーから叙情的な小品まで多様性を誇る作品。 第一印象は「劇的」。 プレイには安定感があり、音量/音質の変化も巧みである。 イタリア的なものよりも、初期 MARILLION をフォローするネオ・プログレの様式を感じさせる。 他のネオ・プログレのバンドと異なるのは、KING CRIMSON を思わせる重量感あるダークな演奏もあること。 ヴォーカルは英語でピーター・ガブリエルに酷似。 PICK UP/LIZARD レーベル。

  「My Ivory Soul」(8:40) ヘヴィなインストとシアトリカルなヴォーカルをフィーチュアした MARILLION 風のナンバー。 重量感たっぷりの演奏と表情・声色を駆使する悲壮なヴォーカルの取り合わせは、CRIMSONGENESIS の中間とも HR/HM とネオ・プログレの中間とも取れる。 ナーバスでややヒステリックなギターは、ハケットよりはフリップ。 また、ヴォリューム、ダイナミクスの幅も大きく、演出はひたすら劇的である。 特に空ろな静寂へと落ち込むシーンが印象的だ。 ストリングス調のメロトロンも使われている。 歌詞は内省的。

  「The Theme」(1:30)クラシック・ギターとアコースティック・ギターのニ重奏。 ソフトなメロディとアルペジオによるクラシカルなデュオだ。 バックを静かにそめあげるシンセサイザーは、宇宙を感じさせる。 エンディングは、なぜかカモメの鳴き声と潮騒である。 おもわず一息だ。

  「The Fisherman」(8:41)オープニングは、叙情的なピアノ伴奏とハケット風のギター、そしてガブリエル風ヴォーカルなど、完全に GENESIS ワールド。 しかし、リズムが入ってからのシンセサイザー、ギターとヴォーカルによるハードなサウンドは、ぐっと現代的である。 激情と虚無を揺れるヴォーカル・パートには、優れたドラマがあり、そして、あたかも別の曲のような後半のインスト・パートでは、静寂を彩るシンセサイザー、アコースティック・ギターと破壊的なアンサンブルとの対比が見事。 シンセサイザーは地味な音色だが、強弱の振幅が大きい曲の中では、とても効果的だ。

  「Tomorrow Happened」(9:47)核の脅威をテーマにしたストーリー仕立ての大作。 うなりをあげるベースと叩きまくるドラムスが攻撃的なリズムを作り出し、カラフルなシンセサイザーとメロディックなギターがストーリーを支えて行く。 ヴォーカルは、幾通りかの役を声色も使って表情豊かに歌い上げており、このドラマの主役である。 短い周期で静と動を激しく行き交う前半は、動の部分のバッキングがとても激しくスリリング。 多彩でストレートな音色のギターのフレージングとシンセサイザーの無機的な響きの使い方もうまい。 Siegfrid のモノローグで始まる後半は、オープニングの情感ある雰囲気がすばらしい。 ハードなアンサンブルとピアノを使った引きの部分を組み合わせつつ、クライマックスに向けて駆け上って行く。 ドラマチックだ。 前後半ともに、ギター/シンセサイザー、ドラム/ベースによるハードなインストゥルメンタルが冴えており、ヴォーカルとの絡みも迫力満点である。

  「The Black Cage」(8:43)全体に静かな落ちつきと繊細さを感じさせる歌もの。 演奏は、ヴォーカルを支えることを一義にしており、他の曲のように凄まじいダイナミクスはない。 エモーショナルなヴォーカルとバッキングががっちりと手を組んで進む、重厚で正統的なシンフォニック・ロックといえるだろう。 メロトロンの音はシンセサイザーだろうか。 ピアノも美しい。 エンディングに向けて盛り上がる演奏が、やがてギターへと収斂してゆく様子はかなり感動的だ。

  「A Game with Shifting Mirror」(8:02)ヘヴィ・メタリックで破壊的なインスト・ナンバー。 変拍子や攻撃的なフレーズ、ビジーなユニゾン、急激なブレイクなどを駆使した、あたかも嵐が吹き荒れるようなけたたましい演奏である。 極端な静と動が交代しめまぐるしく展開してゆく。 前半ギター・リフがリードする場面では、様々な音が絡み合ってゆき、重みと迫力はまさに KING CRIMSON。 中盤、ミステリアスな演奏が次第にシンフォニックな様相を見せはじめるところも美しい。 だがそれも、アグレッシヴな演奏に取って代わられ、息つく暇もない。 そして最後の過激なユニゾン。 オルガンやギターのコンビネーションは、胸のすくカッコよさだ。 音量の変化も大きく、終わりそうで終わらない悪夢のような曲だ。 トリッキーな変化にも富む。 特筆すべきはドラムだろうか。

  「Flower of Innocence」(3:50)静かでメランコリックな小品。 存在感のあるクラシック・ギターによる、突き抜けるような色調をもつメロディが美しい。 フルートとの重奏は美しくも沈痛である。 無邪気な子供時代の裏で何かが失われてゆくというテーマも重い。


  ドラマチックな曲展開が印象的な作品。 このドラマ性は、パワフルかつ重厚なアンサンブルとシアトリカルなヴォーカルの組み合わせによって生まれる。 英国ネオ・プログレの影響は大きいのだろうが、緩急/音量の変化、頻繁な曲調の変化などに、イタリア独特のしつこさというべきオリジナリティを感じる。 リズム・セクションのうまさとミドル・テンポを主とした重みのある曲調は、不遇の 80 年代を経て花開いたネオ・プログレッシヴ・ロックの成長の証である。 6 曲目のインスト・ナンバーの大作などは象徴的だ。 スタイルの基本は、ヘヴィでテクニカルなものであることがよく分かる。 また、厚さのあるメロディアスなアンサンブルとアコースティックな音によるパートのコントラストを用いた展開は、きわめて堂に入っている。 GENESIS 風のドラマ性に加えて KING CRIMSON のダイナミクスを持ちあわせたスーパーな作品といえるだろう。 しかしながら、製作の中心となっているお化粧ヴォーカリストのスタンスは、完全に CITIZEN CAIN とおなじようなので、ガブリエルが脱退しなかったら GENESIS は今頃どういう音楽になっただろうということを道を歩きながら考えるくらい、GENESIS が好きな方にしかお薦めできません。
(LIZARD CD5490072)

 Ghost
 
Simone Rossetti vocals, flute
Marco Schembri bass
Simone Stucchi programming
Roberto Leoni drums, percussion
Valerio Vado guitars
Gabriele Manzini keyboards

  2001 年発表の第二作「Ghost」。 ヴォーカリスト以外、メンバーが全員交代。 GENESIS、初期 MARILLION 風味はさらに強まり、そこへ現代のロックらしい自然なヘヴィネスを交えている。 ポンプというよりは、「正統 GENESIS リヴァイヴァル」という称号で呼ぶべきだろう。 轟々たるメロトロン、暗鬱に高鳴るオルガン、アタックよりもサスティンを活かしたギターなどが蹴っつまづきそうな変拍子で弾け、奇怪な和声によるハーモニーでミステリアスな危うさをもつ世界をみごとに描き出している。 リード・ヴォーカリストは、往年のピーター・ゲイブリエルそのものな歌唱に加えて、フルートも奏でる。 切々と訴えかける表情にはすでに風格すらあり、単なる「なり切り」では済まされない存在感がある。 そして、minor の泣き泣きパートだけではなく、major の愛らしいところやコミカルなところも、きちんと演じ分けている。 元祖 GENESIS と比べると、貧血を起こしそうなほど印象的な旋律やプレイは見当たらないが、これだけ雰囲気ができあがっているのだから、アレンジは相当研究しているに違いない。 ドラマの流れはきわめて自然である。 (ただしややワンパターン。コード進行にとらわれすぎていて、大胆さを欠くようだ。また、リズムの切れはさすがに本家に及ばず) IQ と比べるとねじくれたような暗さと陰湿さがある。 かなりの出来にもかかわらずなぜか地味であり、なかなか印象に残りにくいところが弱点。 ちょっとくらいハッタリがあってもいいと思うが、あえてそうしないところにプライドがありそうだ。 ヴォーカルは英語。 プロデュースは Programming 担当のシモーヌ・ステュッチ。

  「DNAlien」(8:36)冒頭から OLD GENESIS 節炸裂。オルガンとメロトロンの轟きに気が遠くなる。

  「The Ghost And The Teenager」(8:38) アコースティック・ピアノが美しく病的なバラード。

  「Heroes」(9:27) GENESIS ではなく初期 MARILLION な作品。 どうやら GS か 一部 HM のような訴えかけ調が強すぎると、知性が感じられずに、GENESIS に聴こえない模様。

  「Moving Red」(6:34)

  「Riding The Elephant」(3:38)

  「...And The Winner Is...」(10:11)

(LIZARD CD0022)

 Vacuum
 
Simone Rossetti vocals, flute, dtambou, atmospheres
Marco Schembri bass, guitars
Roberto Leoni drums, percussion
Ettore Satati guitars, bass pedal
Sergio Taglioni piano, mellotron, organ, moogs, synthesizers

  2004 年発表の第三作「Vacuum」。 ギタリスト、キーボーディストはメンバー交代。 クラシック GENESIS スタイル継承を基本に、同時代的なサウンドや表現も盛り込んでいる。 器楽を中心に、前作よりも作品の表情に幅が出たようだ。 たとえば、小気味よさや弾力性など。 音とパターンは毎度おなじみだが、作風の向きが若干違うといえばいいだろうか。 怪しい語り部調の歌と怪奇幻想がベッタリと続くという感じはなく、的確な演出が施されてメリハリができている。 キレのいい目まぐるしい器楽に耳を奪われることも多い。 (GENESIS 風の演奏をする P.F.M に通じる、というややこしい連想も) オルガンのほとばしりやギターの咆哮とともに風を巻いて走る姿がじつに決まっている。 また、製作面も充実している。 個人的には、4 曲目「Shining Bald Heads」がお気に入り。 6 曲目「Goddess」は、コンパクトながら 25 年にわたるポンプ・ロックの収穫として満足のゆくものである。 表題作は、グロテスク趣味(パノラマ島奇譚か、ドクターモローの島か)が微妙なマイナー感を伴いながらも、正統的なプログレッシヴ、シンフォニック・ロックとしての力強さを見せる不思議な作品。ハードロック風の表現やサイケデリックな音響なども大胆に取り入れた展開は、あたかも、本家が 75 年以降に歩んだかもしれない別の歴史を現実のものとしているかのようだ。 ヴォーカルの力量とバンドの演奏力がバランスして音楽全体の調和が取れた傑作アルバムといえるだろう。 ヴォーカルは英語。 プロデュースは、シモーヌ・ステュッチ。

  「Hills
  「Damage Mode
  「Wonderland
  「Shining Bald Heads
  「Out Of The Land
  「Goddess
  「Deeper Still
  「The Vacuum

(LIZARD CD0035)

 Primitive
 
Simone Rossetti vocals, moog, mellotron, solina synth, flute
Ettore Satati guitars, bass pedal
Roberto Leoni drums, percussion
Marco Schembri bass, guitars
Fabio Mancini organs, pianos, synth, mellotron
guest:
Sergio Taglioni arrangement, piano, analog & digital orchestrations, moog solo on 7

  2007 年発表の第四作「Primitive」。 内容については、初期 GENESIS そのもの、ヴォーカル含め演奏があり得ないことにほとんど同じ、という以外あまりいうことはありません。 ヴィンテージ・キーボード類があまりに普通に使われており、本家ならここにこういう音があるなというところに、ずばりそういう音がある。 ナリキリ度という点では今までの作品の中で一番なのは間違いない。 そして、バラード系が主のパフォーマンスが非常に安定している。
   ただし、安定感はワンパターンとほぼ同義であり、最大限に振り切っても本家の芸風の範囲内なので予想外の展開というのがほとんどない。 個人的にはクローン完璧度だけを期待しているわけではないので、独自性でそういう面を見せてくれても全然かまわない。 たとえば、前作で見せたハードロック風味はけっこう新鮮だった。 4 曲目はなんとかそういう揺らぎを見せてくれる佳作。
   6 曲目は、「The Battle Of Epping Forest」を思わせる堂々たる物語調シンフォニック・ロック。(ただし APR シンセサイザーではなくオルガンとメロトロン) 最終曲は、浄福と慈愛の響きがまるでキューブリックの映画のエンディングのようにアイロニカルに胸を打つ美しい作品。 歌詞が本家の変態文学系に倣えばほぼ完璧である。 そして、最終曲は LE ORME のように豊かなイマジネーションとロマンチシズムを打ち出した「イタリアン・ロック」としての傑作。デジタル・オーケストラが効果的に使われている。 この作品は、本アルバムではゲストになっている前任キーボーディストの寄与が大きいようだ。
  ヴォーカルは英語。 かそけきメロトロンが古の夢を描きます。


  「Sound Of Sirens」(8:00)
  「The Border」(4:15)
  「Two Paces To The Rear」(9:08)
  「When I Was A Tree」(6:00)
  「Another Life」(6:10)
  「Berlin, 1936」(8:55)
  「Soaring On」(4:37)

(LIZARD CD0051)

 Planet Earth?
 
Simone Rossetti vocals, flute, moog, mellotron
Giorgio Gabriel guitars
Gugliermo Mariotti bass, bass pedal, guitars
Valerio De Vittorio piano, hammond organ, mellotron, synthesizer, vocals
Marco Fabbri drums, percussion, vocals
guest:
John Hackett flute on 6

  2010 年発表の第五作「Planet Earth?」。 もはや『"ガブリエル GENESIS" のお蔵入り発掘モノ』といっていい内容である。 各パートの音質はもとより、全体の音のテクスチャまでがマンマである。 演奏には非常に安定感があり、サウンドもきわめて自然で響きがいい。 そして、こうなると、楽曲の出来が目立ってしまうのが辛いところである。 急務は「The Fountain Of Salmacis」に迫るような名曲を作り上げることだろう。 (それは、どす黒く澱む世界に一筋きらめく光明を描けるかどうかということだ。 どんなに病んだ心でも暗黒を彷徨うだけということはあり得ない。 病んだ心がひと時とらえる幽かな光明を描いてこそ大人のリアルがある。 逆に暗黒に沈み込むだけではただのスタイルから離れられない) また、似ている似ていないばかりで話を進めるのは気が引けるが、本家の特徴である性急さのあまり「傾いで」しまうところや素っ頓狂なところはない。 (リズム・セクションの主張が本家ほどではないためか。本家はリズム・セクションが異常だった) そして、あえてどちらかといえば、たゆとうような幻想性よりも「Watcher Of The Skies」や「Knife」にあった攻撃的な面をより巧みに継承していると思う。 ただしその唯一の例外は、ジョン・ハケット参加の 6 曲目。 繊細で幻想的な傑作であり、「そういう面」はこの曲一点に集中した感じもある。
   オブリガートやバッキングでふわっと浮かび上がるメロトロンや角ばったハモンド・オルガンのオスティナートはあえて控えめにしているようだが、それでも十分。 そして、電気の蒸気を吹き上げるシンセサイザーのアクセントが本家との差別化である。
  本作では、看板リード・ヴォーカリスト、ロセッティ氏以外のメンバーを全取替えした様子なので、ひょっとすると、この集団はグループというよりは、GENESIS クローン養成所、つまり『虎の穴』に近いのかもしれない。 また、毎回 CD の収録時間が 45 分程度なのは、意識的に LP 時代をシミュレートしているのだろうか。そこまでやるか!?!
  ヴォーカルは英語。ロセッティ氏、いかにもイタリアンらしい悪オヤジですが、道化師のコスチュームも似合いそうですね。

  「Welcome To Your Life」 (6:11)
  「Something Wrong」 (7:41)
  「Earth」 (5:52)
  「All The Lights In Town」 (8:15)
  「The World Inside」 (5:58)力作。自然なポップ・テイストがいい。
  「New Normal」 (3:41)ジョン・ハケットのフルートをフィーチュアした叙情小品。光ります。
  「Tourist Trap」 (7:23)

(LIZARD)

 Timeless
 
Giorgio Gabriel guitars
Guglielmo Mariotti bass, bass pedal, guitars, vocals
Simone Rossetti vocals, mellotron, synthesizer, flute
Valerio De Vittorio piano, electric piano, organ, Mellotron, synthesizer, vocals
Marco Fabbri drums, percussion
guest:
John Hackett flute on 6

  2011 年発表の第六作「Timeless」。 内容は、これまで以上にオールド GENESIS の換骨奪胎。 本家の有名曲を解剖するようにして取り出したフレーズを素材にさまざまな応用を見せて楽曲を組み立てている。 マンマなところがあるおかげで分かりやすい。 抒情性、躍動感、偏執性、精緻な手作り感などなど本家の属性をそのまま取り入れた楽曲ばかり。 破裂しそうなアンサンブルが潮を引くように消えてゆくとアコースティック・ギターのアルペジオがささやき始めてフルートが悲しい歌を歌いだす。 この何度も噛み締めた音風景。 これをツギハギというか高級パッチワークというか。 盗用を訴えられて逃れる常套手段はマッド天野のような「パロディ」だったが、ここではそれは「オマージュ」になるのだろう。 などと余計なことを言う前にこれだけ安心して耳を傾けられる作品を生み出す力を賞賛すべきだろう。 アルバムのタイトルからして本家を称えているような気がする。 細かいことを言うとエレクトリック・ギターの音色をもうちょっとだけ似せてほしかった、笑。 ヴォーカルは英語。本アルバムは第三作、第四作でキーボーディストを務めたセルジオ・タグリアーニの思い出に捧げられている。

  「The Watch」(1:47)
  「Thunder Has Spoken」(4:49)
  「One Day」(4:10)
  「In The Wilderness」(4:05)
  「Soaring On」(4:23)
  「Let Us Now Make Love」(4:39)
  「Scene Of The Crime」(5:13)
  「End Of The Road」(6:21)
  「Exit」(0:58)
  「Stagnation」(8:34)ボーナス・トラック。2010 年のライヴより。GENESIS の秀逸なるカヴァー。

(PickUp PKR 0019)


  close