フランスのプログレッシブ・ロック・グループ「TIEMKO」。 86 年結成。 96 年解散。 作品は四枚。 サウンドは変拍子を強調したパーカッシヴなエレクトリック・チェンバー・ロック。 MINIMUM VITAL らとともに初期 MUSEA を支え、90 年代のプログレ復権を準備した重要グループ。 2004 年未発表音源を集めた CD 発表。 YouTube で映像を見ることができますが、完全におバカさんです。
Jean-Jacques Toussaint | keyboards, bass |
Remy Chauvidan | guitars |
Eric Delaunay | drums, vocals |
guest: | |
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Benoit Mejean | baryton |
Bevinda | soprano |
Marie Grenon | vocals |
Francois Verly | drums |
88 年発表の第一作「Espace Fini」。
内容は、変則リズムを強調したスペイシーかつきらびやかなエレクトリック・チェンバー・ロック。
演奏は、大音量のエレクトリック・ドラムス、きわめてキーボード的なサウンドに加工されたギター、多彩なキーボードらによるけたたましくもクラシカルなものだ。
衝撃的にして大仰、なおかつ華麗という、未来志向の音楽である。
なお、98 年の再発盤は、デゥロニのモチーフを発展させた新録二作品を含む追悼盤となっている。
「Chant Transylvain Du Sud-Ouest Tyrolien」(0:22)
ヨーデル風のユーモラスな詠唱。緊張をほぐすためのアルバム・オープナーだろうか。
「Elephant de Siberie」(5:22)
攻撃的なビートをエレクトリック・サウンドで絢爛に彩る強圧的ヘヴィ・チューン。
きらびやかでメロディアスな音と攻撃的で強引な感じが交じり合っている。
この圧迫感は、打楽器の強い主張によるものだ。
初めは、ピアノやギターによるシンフォニックな調子とパワフルな打楽器のコントラストが曲を作っているが、次第に、ギターやキーボードもパーカッシヴな演奏へと移ってゆき、仕舞いには、すべてが爆発的な勢いで何もかもなぎ倒す勢いで迫ってくる。
もっとも、リズミカルといえなくもないので、最後までポップで跳ねるような調子はある。
体重が重すぎるだけだ。
「T.87」(4:38)
シンセサイザーによるリズミカルなリフをバックにヘヴィかつメロディアスなギターが活躍する、ややジャズロック調の作品。
ファンキーでジャジーな面が顔を出している。
もっとも、アクセントをずらした反復フレーズなども顔を出すので、単なるファンキー・チューンではない。
ギターはいわゆるところの弾き捲くりです。
エレクトリック・ドラムスも駆使するドラムスの主張はここでも強力。
きらびやかな音によるダンサブルで躍動的なアンサンブルは、古典的な舞踏音楽の現代的な解釈という姿勢でも、MINIMUM VITAL と共通する。
「Contrastes」(7:30)
きらびやかなギターのリードによるシンフォニック・チューン。
序盤は、いわゆるフュージョンにありがちなメロディアスな展開である。
ところが、ドラムスをきっかけとする 5 拍子シーケンスの突っ込みが嵐のように吹き荒れて、すべてが吹き飛んでしまう。
中盤、リズムレスのパートでは、轟々たるギターとキーボードによる、きわめてメランコリック、クラシカルな(フォーレあたりをイメージした)アンサンブルとなる。
低音ピアノがトリガーを引く攻撃的な変拍子シーケンスは、随所に盛り込まれて、曲調をぐいっと折り曲げる。
ギターはその変転にめげず、激しく戦い、付き随い、華麗に舞い踊る。
とにかく変拍子トウッティのパワーはすさまじい。
曲名は、メロディアスなテーマとこの激しい変拍子トゥッティの対比をいっているのではないだろうか。
終盤は、ギターのリードと打楽器の突込みによるメロディアスな展開へと回帰。
今となっては懐かしい、80 年代プログレらしいフュージョンとシンフォニックの中間地点である。
「Bulgarian Dance」(4:40)
キーボードが主役の比較的ストレートな(十分変という話もありますが)エレクトリック・チェンバー・ロック。
全編で現れる 8 分の 7 拍子による激しくも多彩なリフに「Tarkus」が甦る。
アコースティック・ピアノをデフォルメしたような重量感あるシンセサイザーが特徴的だ。
後半、ギターがすさまじいアドリヴで飛びこんできて、やがて、華やかなテーマでキーボードと合流する。
「Attentat」(3:34)
エキゾティックかつ、けたたましいチェンバー・ロックンロール。
序盤は、テクノなヴォコーダ風シンセサイザーやモーニング娘の名曲を思い出してしまうアラベスクなテーマにびっくりするが、80 年代らしいといえばそのとおりだ。
ポリリズミックなブリッジから、3 連によるノリのいい演奏が一瞬現れるも、8 分の 4 拍子を押しつぶすような野蛮なトゥッティが荒々しいギターとともに強引に突き刺さる。
なんというか、けたたましさは今までで一番ではないだろうか。
リスナーがノることを拒絶しているような作品である。
「Espace Fini」(7:35)
きわめて重厚かつ正統的なエレクトリック・チェンバー・ロック。
PRESENT や ART ZOYD 辺りにも通じる、怪奇で暗黒な作風であり、本アルバムでは、異色といってもいいだろう。
ストリングス・シンセサイザーによる厳かな響きが、狂おしいギターと魔界のエンジンのような打楽器によって、無残にも変容してゆく。
ただし、演奏は明快、というか、前曲までのようなリスニングの呼吸を破壊するような作風ではない。
ストリングスの音の説得力や、打楽器の多用、ギターによるテーマ演奏など、ある程度抑制が効いているのか、自然に流れてゆく。
なかなかオーセンティックな内容である。
CD のみ収録の新作 1 曲目「Requiem」(5:40)
管弦楽(キーボードかもしれない)、デジタル・シンセサイザー、パーカッション、混声合唱を用いた、クラシカルなシンフォニック・チューン。
特徴は、打楽器によるビートの強調と行進曲風の勇ましいアレンジ。
後半では、木管楽器と女声合唱による不気味なブリッジもあり。
金管楽器やシンセサイザーの音で繰り返される 7 拍子のテーマは、ドゥロニによるモチーフ。
ギタリストのショーヴィアン作。
ドラムスはフランソワ・ベルリ。
CD のみ収録の新作 2 曲目「Post-scriptum」(4:41)
かわいらしいテーマを軸に 5/7 拍子を多用し、めまぐるしく変化するチェンバー・ロック。
アコースティック・ピアノ、ヴァイブ、木管管楽器を模したシンセサイザーらによる、神経に障る丹念なアンサンブルである。
ユーモラスなタッチに非現実感を浮かび上がらせ、独特のシニシズムをほじくりだすような音楽だ。
変化しつつ繰り返されるテーマは、ドゥロニによるモチーフ。
キーボーディストのトゥーサン作。トゥーサンはベースも担当。
タイトルとおり、ドゥロニからの最後の追伸である。
ドラムスはフランソワ・ベルリ。
(MUSEA FGBG 4248.AR)
Jean-Jacques Toussaint | synthesizer, piano, contra-bass |
Remy Chauvidan | acoustic & electric guitars |
Eric Delaunay | vibraphone, drums, bongo |
90 年発表の第二作「Ocean」。
内容は、きらびやかなサウンドが特徴的なエレクトリック・チェンバー・ロック。
邪悪な変拍子アンサンブル、ジャズロック、クラシカルなシンフォニック調が交じり合った、きわめて珍しいタイプの音である。
演奏は、パーカッシヴにして絢爛な色彩美を誇るシンセサイザー、挑戦的な打楽器類、ジャジーなギターから構成され、徹底してリズムを強調しながら、劇的な展開を繰り広げる。
最大の特徴は、変拍子と無調的なパターンの生む緊張感と凶悪にして屈折した表情が、華やかなサウンドとみごとなまでの対比をなすことだろう。
明るくねじくれた音楽であり、とにかく一筋縄ではない。
作風そのものは前作の延長上ながらも、音色のバリエーションはより豊かになり、それと同時にシリアスな重量感も増している。
深刻な展開の中に散りばめるメロディアスな瞬間と遊びも効果的だ。
攻め立てるときの勢いには、XLS のようなハードコア風のニュアンスもある。
それでいて、3 曲目ではエレアコ・ギター、ホイッスル風のシンセサイザーを使用してフュージョン・タッチの演奏も見せる。
かなり個性的な音楽だ。
タイトル・ナンバーは 20 分余りの大作である。
各曲も鑑賞予定。
おそらく最高傑作。
「Episode」(6:02)性急な変拍子アンサンブルに衝撃的なシンセサイザーが切り込み、遠慮会釈のないドラムスが挑んでくる。
緊張感あふれる序曲。
「Hypercontraste」(5:30)エレクトリックなチェンバー・ロック。断片的なギターのリフレイン、反対に強引に押し流すようなギターの調べ。
ヴァイブがフィーチュアされるが、主役はちょこまかと動き回るギターか。
突如ジャズ・コンボへ変身するなど、流れは常にリスナーを裏切る。
「Bonbon tres sucre 」(7:39)ギター中心のフュージョン・タッチの力作。
序盤、不協和音を多用した現代音楽風のアコースティック・ギターがカッコいい。中盤からは「変なパット・メセニー」になる。
「Vodka frappee」(6:51)ギターとチェンバロ、オルガン風のエレクトリック・キーボードが挑発しあうアンサンブル。
断続的なフレージングが追い立てるようなイメージを抱かせる。
圧迫感ある演奏だ。
「Ocean」(21:55)スペイシーにして重厚極まる大作。いわゆる「演奏」にこだわらない音響系のアプローチも見せる。
硬派な攻めの切れも、高雅な叙情性も、ともに備えた傑作。
(MUSEA FGBG 4013.AR)
Jean-Jacques Toussaint | synthesizer |
Remy Chauvidan | acoustic & electric guitars, keyboards |
Eric Delaunay | vibraphone, drums, xylophone |
92 年発表の第三作「Parade」。
内容は、変拍子を多用した、パーカッシヴかつエレクトリックなインストゥルメンタル・ロック。
シンセサイザー、パーカッション、ギター、それぞれが輝くような音を放ち、そびえ立つガラスの構築物のような音楽をつくりあげている。
モチーフがクラシカルなだけにアコースティックな演奏もあるが、主となるのはリズムを重視したきらびやかにして険しいアンサンブルだろう。
絢爛たるイメージの源は、光沢ある質感をもつシンセサイザー・サウンドと、ヘヴィ・ディストーションによるうねるようなサスティンをもつギター・サウンドである。
ドラムスは全拍打撃を得意とする強引極まる進行役であり、かつ、ヴァイブや木琴で軽妙なアクセントをつけることにも長けている。
刻々と変化する奇妙なリズムとともに眩く輝く音が整列すると、そこには怪しいメロディが息づきはじめるが、そのメロディはいわゆる口ずさめるような「歌」では決してない。
あくまで躍動する音の連続(シーケンス)であり、むしろ人間的な抑揚とは離れた人工的なものである。
逆にそれだけ非人間的ながらも、リズムには電気的なシーケンスではなく骨太な人力ドラムスが用いられている。
この辺も興味深い。
ともあれ、類のないユニークなエレクトリック・サウンドであり、チェンバー・ロックの新形態である。
80 年代以降のデジタル・シンセサイザーによるクリアーな音色を素材に、EL&P 的なキーボード・ロックのダイナミズム、チェンバー・ロックの深淵をのぞくような緊迫感、後期 GONG のような硬質なサウンドを合体した傑作。
タイトルに象徴されるように、どの作品も明快なリズムによる自己主張がある。
全編インストゥルメンタル。
各曲も鑑賞予定。
「Le Retour du Hero」(3:37)デジタルなタッチのシンセサイザーがバックを固めギターがリードするなめらかな演奏に、切り刻むような変拍子トゥッティを持ち込んだアップ・テンポの骨折ナンバー。
流れを一時停止するミニマル調の変拍子反復が特徴的。
「Parade」(5:46)
ヴィブラフォンが美しいエリック・サティ風の変拍子作品。
ヴァイブ、管楽器風のシンセサイザーによるテーマが秀逸。
このユーモラスなテーマやヴァイブの音がおチャラけた雰囲気を演出しつつも、うねるギターときらめくシンセサイザーが雄大な流れを成してゆく。
フィンランドの鬼才、ペッカ・ポーヨラの作品にも通じる傑作だ。
このグループの作品にしては、意地悪さがない、素直な内容である。
「Copie Blanche」(5:42)
波乱含みのスリルが細分されて精緻な変拍子(7+6 拍子)のモザイクを成し、やがてシンフォニックな広がりを生んでゆく作品。
ギターによる大きな波のようなうねりをキーボード、ヴァイブのミニマルなリフレインが切り刻み、ギターはそれに抗うように、強引に翼を広げ荒々しく舞い上がる。
力強くたたみかけるだけではなく、一歩引いて「Watcher Of The Skies」のように力をため込むようなシーンもある。
終盤、我慢できなくなったギターが伸び伸びとしたアドリヴで走る。
変拍子パターンとメロディアスなギターのコントラストは、このグループの作風の基本である。
全体に、プログレらしいスケール感と緊迫感がある好作品である。
「Spirale」(5:56)シンセサイザー・シーケンスを使ったファンタジックなエレクトロニカ。
序盤は、1 拍を 5 連符シーケンスで区切った 4 拍子である。
ギターと深みあるストリングス系の音による空間的な演奏が次第に優勢となる。
中盤は、1 拍を 6 連符シーケンスで区切った 4 拍子である。
雄大なイメージの演奏が、いつしか教会の鐘の音にオーヴァーラップしてゆく。
ドラムレス。
「Good Bye Mister Prog.」(4:49)ギター主導のオムニバス風ヘヴィ・ロック。
いつになくベースのプレイが目立つ。
リズムとともに曲調は大胆に変化する。
軽妙だったり叙情的だったり、かなり分裂気味である
深刻なあまり笑い出してしまう様子を模したようであり、このグループの特徴である人を食ったような意地の悪さがよく出ている。
そもそもタイトルが意地悪である。
「Vaine」(3:28)ややギトギト気味のサウンドながらも、ジャジーなフュージョン・タッチの小品。
ギターはさりげないオクターヴ奏法でジャジーに迫り、アーミングでサーフっぽい音を出す。
「Taille One」(3:41)
キーボード・オーケストレーションによる無調風、やや中華っぽいテーマのテクノポップ・アンサンブル。
YELLOW MAGIC ORCHESTRA のようです。
特徴的な澱んだ重苦しさもあり。
ドラムレス。
「Moment」(1:13)クラシック・ギターとストリングスによる上品なデュオ。厳かというべきか。パット・メセニー風。
「Hymne」(7:29) THE ENID を思わせるストリングス・シンセサイザーが迸る荘厳なるオーケストラ作品。
重厚なストリングスによるオープニングから、EL&P の「Tarkus」直系のパーカッシヴなアンサンブルへとなだれ込む。
攻撃的なばかりでなく、叙情的な表現も巧みに盛り込まれている。
一貫して独特の躍動感を維持しつつ、厳かな悲劇のイメージを提示する大傑作。
(MUSEA FGBG 4057.AR)
Jean-Jacques Toussaint | keyboards, bass, vocals |
Remy Chauvidan | guitars, synthesizer |
Eric Delaunay | drums, vocals |
95 年の最終作「Clone」。
内容は、きらびやかなエレクトリック・サウンドと強圧的な変拍子アンサンブルが特徴の「未来志向」チェンバー・ロック。
イージーなロックンロール、エレポップな表層を密度とテンションの高い器楽で支える、一種独特のユーモア感覚にあふれる作品である。
ギターはヘヴィな歪み系トーンを用いたメロディアスなプレイを得意とし、キーボードはノイズ/音響的アプローチが主、そしてドラムスはジャズ的でありながら過激な打撃技を連発する。
その演奏には、ロックのダイナミズムや攻撃性、ナンセンスさとともに、無調や変拍子といった現代音楽的な面がある。
華美なサウンドとは対照的に曲調は深刻、時として邪悪ですらあり、圧迫感、緊張感とともにシニカルな逸脱感も備えている。
荒っぽく喩えると、エレクトリックな UNIVERS ZERO だろう。
インターミッション風に放り込まれたヴォーカル曲による表情の変化が本作の特徴だが、それでもなお真骨頂は、そそり立つような音響と企みに満ちたインストゥルメンタルだろう。
ジャケットのイラストから連想される「未来の機械仕掛けの鼓笛隊」というイメージもある。
ヴォーカルはフランス語。
1 曲目「Double Face」(6:48)
圧迫感のある変拍子(7 + 6.5)リフ、アクセントの強いビート、華麗にして金属的なサウンドが強烈な印象を残すエレクトリック・チェンバー・ロック。
きらびやかな音で大上段に振りかぶるにもかかわらず、テーマは無機的な断片のようであり、全体として不安定に傾いだイメージがある。
ダンサブルなビート感のためにインダストリアル風にはあまり聴こえず、また、テクノの無機性ともやや異なるクラシカルな邪悪さや幻想性がある。
明快に構築された展開とアンチ・ポップス風のフレーズなど、やはりプログレと呼ぶのが相応しいようだ。
中間部の初め、素っ頓狂なファンファーレ風のギターとマーチング・ドラムスのやりとり辺りから、次第に捻じれてゆくとこがカッコいい。
インストゥルメンタル。
ドゥロニ作。
2 曲目「Decadanse」(5:36)軽妙なデジタル・シンセがドライヴするテクノポップのパロディのような怪しい歌もの。
バリトンのヴォーカルはフランス語独特の腫れぼったいモノローグ調であり、サビのメロディ・ラインはそれとは対照的にエロティックに躍動する。
ギターは小気味いいコード・カッティングからオブリガートまで、多彩にしてツボを心得たプレイを披露する。
終盤はかなり全体に力が入り、シンフォニックかつハードなグルーヴも出てくる。
それでもどこか退廃的で胡散臭い。
トゥーサン作。
3 曲目「Venus Dancing」(1:12)
キーボード・シーケンス、スティール・ドラムス、パーカッションによるニューエイジ風のエキゾチックな小品。
インストゥルメンタル。
トゥーサン/ドゥロニ作。
4 曲目「Atlas"t"」(5:02)
ギターがリードするやや険しくエキゾティックなシンフォニック・チューン。
華麗なサウンドと強圧的なリズムは 1 曲目と共通するが、ここではギターが主役を張っていて、深刻ながらもメロディアスで明快なところが多い。
展開も比較的ストレートである。
ギターは中近東風のテーマを中心にエキゾティックなメロディのフレーズを独特のヘヴィな歪みトーンで決めてゆく。
シンセサイザーはストリングス系によるバッキングに徹する。
終盤、変拍子アンサンブルで一気に UNIVERS ZERO 風のラスト・スパートをかける。
全体としては、明るい音になのに独特の閉塞感があり、ペッカや A TRIGGERING MYTH の作風に通じている。
インストゥルメンタル。
ショーヴィアン作。
5 曲目「Inadequation」(2:35)
スタンダード風のリズミカルなジャズ・ヴォーカルもの。
じつに気持よさそうに歌っているが、小粋というにはあまりに汗(オヤジ)臭い。
間奏は 4 ビートによる軽やかなジャズ・ピアノとランニング・ベース、そしてオクターヴを決めるジャズ・ギター。
ドゥロニ作。
6 曲目「Venus Dancing」(0:53)
せせらぎのようなパーカッションとスペイシーなシンセサイザー・ドラムスによるファンタジックな小品。
トゥーサン/ドゥロニ作。
7 曲目「Clone」(12:46)
キーボードを中心にノイズやエフェクトを駆使した映画音楽風の大作。
映像といっても抽象画のようなイメージを喚起する内容である。
いくつかのテーマを巡るアンサンブルが断片的に浮かび上がるも、どちらかといえば、メロディや和声よりも音響(特にパーカッション系)そのものを突きつけるような内容だ。
デジタリーで重苦しいサウンドから ART ZOYD の作風への連想も。
中盤までは、音響やシーケンス・パターンに焦点を当てた展開だが、ギターが主導権を取る辺りからは流れるように音楽的な展開となってゆく。
8 分 30 秒過ぎ辺りからのメロディアスなアンサンブルは感動的。
フリージャズも経て、終盤は堂々たるアンサンブルへ。
トゥーサン作。
8 曲目「Rock And Roll Alice」(3:29)
変拍子エレポップ風ロックンロール。
80 年代なサビ、イージーゴーイングなギター・オブリガートなどヤケクソ気味のニューウェーヴである。
シンセサイザーの変拍子リフに救いが。
トゥーサン作。
9 曲目「Venus Dancing」(1:20)
パーカッションとパーカッション系シンセサイザーによるエキゾティックな小品。
密林の秘儀。
トゥーサン/ドゥロニ作。
10 曲目「Apocalypse」(2:28)
マンガっぽいコミカルさとシリアスな器楽が不思議な結合を見せる歌もの。
力みかえるヴォーカルとコーラス、切迫したリズムによるロックンロールである。
ドゥロニ作。
11 曲目「L'eternite Comme Si Vous Y Etiez」(1:55)
シンセサイザー、オルガンとパーカッションによるリズミカルでミステリアスな小品。
不気味に迫り来るストリングス系電子音と叩きつける大粒の雨のようなビート。
異界の密林のイメージである。
トゥーサン/ドゥロニ作。
12 曲目「Desamour」(4:41)
ジャジーなテクノ・ポップ。
デジタル・ビートとジャズ風の音遣いのコンビネーションが新鮮。
自由闊達なギター・プレイが、険しく、重くなりがちな展開に薫風を吹かせる。
ドラムス含め見せ場あり。
トゥーサン作。
13 曲目「L'eternite Comme Si Vous y Etiez」(1:15)
11 曲目をやや暗く厳かにしたような作品。キーボードの中心はメロトロン・クワイヤ?
トゥーサン/ドゥロニ作。
14 曲目「In Memoriam」(16:05)
奔放で遊び心にあふれ、気まぐれ、なおかつ神秘的な、作風の集大成的オムニバス作品。
妖怪や精霊の跋扈する遊園地をイメージさせる。
THE ENID ばりの正調クラシック風ロマンチシズムやヴォードヴィル調のユーモラスな音も散りばめて進む。
感情移入をやんわり拒否するような無調の旋律の組み立て方がじつにうまい。
変拍子アンサンブルにも執拗にこだわっている。
エンディングは、決然としたマーチング・スネア。
ショーヴィアン/トゥーサン/ドゥロニ作。
(MUSEA FGBG 4156.AR)
Eric Delaunay | drums, percussion | ||||
Jean-Pascal Boffo | guitars, keyboards, sequencer | ||||
Gilles Coppin | keyboards, sequencer, vocals | ||||
Jean-Philippe Brun | viola on 1,5, violin on 7,8 | Remy Chauvidan | guitars, e-bow on 1,6, vocals on 6 | Frédéric Sold | orchestration on 2 |
Hervé Rouyer | snare on 2, drums on 4 | Christophe Dagorn | bass on 3 | Philippe DiFaostino | drums, percussion on 3,5,7 |
Jean Pierre Mallet | guitars on 3,8 | Gautier Laurent | contrabass on 4 | Caroline Crozat | voclas on 4 |
Lise Goasdoué | cello on 5 | Christophe Rodier | clarinet, bass clarinet on 5 | Pascal Dechanzal | contrabass on 5 |
Jean-Marc Goujon | flute on 5 | Frédéric Rey | oboe on 5 | Géraldine Le Cocq | vocals on 7 |
97 年発表のアルバム「Deboco」。
TIEMKO のエリック・ドロウニ、HALLOWEEN のジャイルズ・コピン、ジャン・パスカル・ボフォらによるユニットの作品。
一人が提示した主題にしたがった作品を集めた内容である。
ベースやヴォイス、管弦楽器は適宜ゲストを迎えている。
内容は、ビートとエレクトリック・サウンドを取り入れたチェンバー・ミュージックであり、まさしく TIEMKO、HALLOWEEN、ジャン・パスカル・ボフォの作風のブレンドかつエッセンスの抽出である。
シリアスなニューミュージック、純クラシック調のアンサンブル、捻じ曲がった管弦楽、エキゾティックなバラード、デカダンでグラマラスなジャズロックなど、きらびやかにして暗黒、美旋律にして強迫的な魔界のフュージョンである。
明確な抑揚と音の分離、そしてデジタルでクリアー、鋭角的な輪郭のある音色は MUSEA サウンドの象徴といえるだろう。
大雑把にいって、コピン氏の作風はクラシック、室内楽寄りであり、ドロウニ氏の作風はアヴァンギャルドでニューウェーヴ風のマイク・オールドフィールド。ボフォ氏はもちろんお花畑ニューエイジ風 GENESIS。
名盤。
「D95」(6:34)ドロウニ作。三人の共演はこの作品だけ。
「Le Retour De Dark Fader」(5:19) ボフォ作。
「Trapezistes」(5:19)コピン作。
「Shakti」(5:27)ボフォ作。
「Procession」(5:27)コピン作。
「Zero Chrono」(2:32)ドロウニ作。
「Araignee」(4:47)コピン作。
「Allo Wind」(6:13)ドロウニ作。
「Sole Clipping」(4:34)ボフォ作。
(FGBG 4218.AR)