イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「TIME」。 マーゲッツ兄弟による SPONTANEOUS COMBUSTION の後継グループ。作品は一枚。 解散後、ベーシストはグレッグ・レイクのグループへ、ドラマーは ENGLAND に加入。
Triss Margetts | bass, vocals |
Jode Leigh | drums, vocals |
Alec Johnson | guitar, vocals |
Gary Margetts | guitar, keyboards, vocals |
75 年発表のアルバム「Time」。
内容は、けたたましく粘っこいギターと中性的なハイトーン・ヴォイスが特徴的な鋭角的なサウンドのプログレッシヴなハードロック。
ハードロックの直線性と野性味と華美さに YES 風の緊張感と立体感を加味したミステリアスな作風である。
視界が揺らぐような音の嵐を独特の審美センスで貫くあたり、CLEAR BLUE SKY や T2 といったマイナーながらも独自路線を開拓した英国ロックと同じ流れに位置する傑物といえる。
また、かみつくように性急なプレイとナチュラル・トーンのヒリヒリしたタッチは、北欧ロックの TRETTIO ARIGA KRIGET や北米の YES フォロワーと共通する。
数多くの渦が勝手に巻くようなギター・ハーモ二ーとトレモロを駆使したフル・ピッキングのフレージング、高音を駆使した強引なフレージングでギターに迫ってはたまに追い越すベース、音数/音種ともに多過ぎるドラミング、急激なリズムとテンポの変化が特徴だ。
短いフレーズの応酬と切り返しがリズム・チェンジとともに重層的かつ急速に繰り返され、とにかく目が回るほど忙しない。
キーボード不足を補うヴィブラフォンもカッコいい。
リフやテーマはキャッチーなハードロックからきているが、一貫して性急であり、忙しなくもつれる二つのギターと刻み捲くるドラムスが生むヒステリックな調子のせいで、けたたましさを超えて全体が呪術的な妖しさを帯びてくる。
その妖しさは神話世界のイメージに通じるものであり、白磁や大理石のような清潔感と底なしの暗黒が表裏一体となったようなパラノイアックで一種非人間的なものである。
メロディアスなテーマもヴォーカル・ハーモニーが複雑なのでより一層錯綜した感じを強める方向に寄与している。
ギター・プレイについては、ブルーズ・ロックに端を発するいわゆる「ギター・ソロ」はほとんどなく、あっても激しいテンポ・チェンジなど錯綜するアンサンブルの中でペンタトニック・スケールがそれと聴こえない。
むしろ、和音を巧みに使ったフレージングでバッキングとアドリヴの区別ができないプレイを得意としている。
キーボードがほとんどないギター中心のプログレッシヴ・ロックとして孤高の位置を占める作品である。
本作品はドイツで発表されている。プロデュースは、コニー・プランク。
製作はラフだが、作風と合っているので問題なし。
パラノイアックなモノクロのモダンアート風ジャケットも音に合っている。
「Shady Lady」(4:25)作風を代表する作品。
「Turn Around」(6:30)急転回を繰り広げる屈折し捲くった力作。
「Violence」(3:20)
「Yesterday, Today, Tomorrow」(4:25)
「Dragonfly」(8:09)
「Liar」(2:53)唯一わりと普通にキャッチーなグラム気味のハードロック。
「Hideout」(1:25)
「Steal Away」(5:05)
(BUK 17 22536-4)