ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「ELECTRA」。69 年結成。旧東ドイツの名グループの一つ。現役だそうです。
Bernd Aust | ld, flute, clarinet, sax, vocals |
Gisbert Koreng | guitars, vocals |
Peter Ludewig | drums, percussion, vocals |
Wolfgang Riedel | bass, drums, vocals |
Manuel Von Senden | vocals, keyboards, percussion |
Rainer Uebel | keyboards |
75 年発表の第二作「Electro-Adoptionen」。
内容は、タイトル通りクラシック作品のロック・バンドでの再現。
ハモンド・オルガン、フルートを主役に、ベース、ドラムスが地響きを上げる 70 年代初期らしいへヴィなサウンドで、バロックやロマン派、近現代クラシック作品の翻案を行っている。
THE NICE や BEGGARS OPERA、東欧の COLLEIGUM MUSICUM と共通する表現方法だ。
この手法を採用した表現としてはやや後発ではあるが、楽曲ごとに異なった表情を明快に打ち出してメリハリを生んでおり、音楽的にはかなり成功していると思う。
特徴は、キース・エマーソンやマリアン・ヴァルガに匹敵する抜群の機動性で駆け回るオルガン、そして荒々しいプレイも見せるフルートの存在。
シンセサイザーをフィーチュアするところでは、思い切り EL&P 風の展開も。
また、ギターもうねりを効かせたフレージングでオルガンを支えるばかりか、自身も積極的に前に出て主旋律をリードしている。
ギターとドラムスによる「バンド」なノリとキーボード、フルートによる擬クラシック調がこれだけうまくかみ合った作品も珍しいだろう。
迫力、ノリ、キレのよさ、重厚さと軽妙さのバランス、選曲など、クラシックのロック翻案作品としては出色のできである。
PELL MELL のファンにもお薦め。
全編インストゥルメンタル。
CD は 2000 年の 2in1。
「Borodin Suite」(13:15)ボロディン作。交響曲、オペラからの翻案作であり、ドラムス・ソロも交えた痛快な大作。
「Bach '75」(6:31)バッハ作「ブランデンブルグ協奏曲第二番」より。
ハードに攻めるプロローグがカッコいい。
オルガン、ギター、フルート、ベースによるポリフォニックな動きに、違和感どころか新たな輝きが出てくるあたり、原曲の懐の深さを感じる。
お約束のシャフル・ビートによるブルージーな展開も堂に入っている。
「Säbeltanz」(6:07)ハチャトゥリアン作「剣の舞い」より。
精力的で野蛮な楽想がハードでグラマラスなニュアンスの演奏解釈にぴったり合っていて秀逸。ベースもフィーチュア。安定感は EL&P を越える。
「Prelude Cis-moll Op. 3 Nr. 2」(4:43)ラフマニノフ作。
一転してオルガン、フルートらによる即興風の展開も交えてサイケデリックな幻想性、無常感を強調している。
ムーグ・シンセサイザーが大活躍。
「In Der Halle Des Bergkönigs」(3:29)グリーグ作「ペールギュント 山の魔王の宮殿にて」より。
デフォルメされた不気味さの演出がおもしろい。
それにしてもプログレ向けに作曲されたとしか思えないほど「合って」いる。
「展覧会の絵」の影響は強そうだ。
「Türkicher Marsch」(3:40)モーツァルト作「ピアノソナタ第 11 番第三楽章」より。有名な「トルコ行進曲」です。フルートによる本編ピアノ・ソナタを序奏に一気にへヴィな展開へと突入する。
(Amiga 8 55 501 / 8021-2)
Bernd Aust | ld, flute, soprano & alto sax, keyboards, vocals |
Gisbert Koreng | guitars, vocals |
Peter Ludewig | drums, percussion, vocals |
Wolfgang Riedel | bass, vocals |
Manuel Von Senden | vocals, keyboards, percussion |
Rainer Uebel | keyboards, percussion, vocals |
guest: | |
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Stefan Trepte | vocals on 6 |
Peter Sandkaulen | guitars on 9,10 |
79 年発表の第三作「3」。
内容は、コーラスをフィーチュアし、オルガンやフルートによるクラシカルな表現をちりばめたメロディアスで心温まるオールドウェーブ・シンフォニック・ロック。
ロックなヘヴィさ、躍動感とクラシカルな厳かさ、品のよさを巧みに交差させた、英米メインストリームとそん色ない(三、四年ほど遅れている感もあるが)ポップ感覚が充実している。
多声のハーモニーなど次作ほどではないが「賛美歌ロック」という表現が似合う場面も多い。
アコースティック・ギターがかき鳴らされるフォーク風の作品はいかにもドイツ・ロックらしい品のいい、素朴な響きに満ちている。
また、ハードロック風の泣きのバラードも得意だ。
ギターがリードするへヴィな演奏は、「クラシカルなハードロック」の代表格である URIAH HEEP 的だ。
クラシカルな文脈でのアナログ・シンセサイザーの活かし方が大胆かつ効果的であり、耳を惹きつけるアクセントになっている。
6 曲目の大作は思わせぶりなクラシカル・へヴィ・シンフォニック・ロックであり、中盤ではジャズ・コンボに変貌する。
強いていえば、躍動感やダイナミズムが YES に通じ、そこにさらにクラシカルな味わいを加味した作風である。
ドイツらしいシンフォニック・ロックとして、いやクラシカルなプログレとして出色の作品だと思う。
EDEN とも共通する作風です。
ヴォーカルはドイツ語。
「Alter, Alter, Dankeschön」(4:13)アッパーな賛美歌ロック。クラシカルで俊敏なオルガンがカッコいい。
「Frau Im Spiegelglas」(3:18)鍵盤パーカッション、アコースティック・ギターを活かしたクラシカルなフォーク・ソング。
後半現れるハーモニウム風のシンセサイザーもいい。淳朴。
「Gott Morpheus」(4:15)ヘヴィさとクラシカルなタッチがロマンを共通項に絶妙のブレンド具合を見せる、本アルバムを象徴するような傑作。
ベースの音はチェンバロの低音部のようだ。
「Einmal Ich, Einmal Du, Einmal Er」(3:30)フルートをフィーチュアしたクラシカルなバラード。弦楽奏、ピアノ、ヴォカリーズも加わって一層古風なロマンの世界へ。そこへヘヴィなリズムとギター、シンセサイザーが押し寄せる。まさにプログレの醍醐味を象徴する作品だ。
「Beschreibung Eines Zimmers」(5:10)
「Tritt Ein In Den Dom」(10:14)
「Der Grüne Esel (Nach Einer Fabel Christian Fürchtegott Gellert, 1715-1769)」(3:55)
「Manchmal」(6:54)
「Bemühe Dich」(3:18)CD ボーナス・トラック。
「Wenn Du Mich Fraast」(3:40)CD ボーナス・トラック。
「Ich Halt An Die Zeit」(5:55)CD ボーナス・トラック。
(Amiga 8 55 762 / 8020-2)
Bernd Aust | ld, flute, clarinet, sax, vocals |
Gisbert Koreng | guitars, vocals |
Peter Ludewig | drums, percussion, vocals |
Wolfgang Riedel | bass, drums, vocals |
Manuel Von Senden | vocals, keyboards, percussion |
Rainer Uebel | keyboards |
80 年発表の第四作「Die Sixtinische Madonna」。
内容は、キーボードと混声合唱をフィーチュアしたメロディアスな賛美歌ロック。
クラシカルではあるが明るくキャッチー(時にグラムっぽい品のなさも交える)であり、2 曲目のようなバラードにおける甘さや哀愁も含めて、ハードポップや後のアリーナ・ロックにすぐ展開しそうな内容である。
特徴は、クラシカルなフレーズを奏でオーケストラを模する多彩なキーボード・サウンドとフルート、サックスといった管楽器によるなめらかでジャジーなタッチ。
クラシック風といっても格式ばらず、東欧のグループによくあることだが、ロックンロールの娯楽性を素直に取り入れている。
この作風は、「シバリ」の強い、なかなかやりたいことをやらせてもらえない国のミュージシャン独特の反動なのかもしれない。
そういうもどかしさのエネルギーが機会を得てストレートに爆発しているような気がする。
そのせいか、英国のグループがオリジナリティの追求の過程で変質させたロックンロールを、素朴な形のままで持ち続けている。
そして、ミュージシャンに元々クラシックの素養があるせいか、クラシックとそのイージーなロックビートが拍子抜けするほどあっさりとナチュラルに結びついている。
英国ロックがその取り込みと消化についてあれこれ芸術的に煩悶したのとは対照的だ。
もちろん、すでに時代は 80 年代、長髪オルガン・ロックの時代はすでに終わっていて、欧米の音楽シーンを席巻したシンセサイザー・サウンドと華美流麗なスタイルがすでに入ってきていたというのもあるだろう。
東欧にはわれわれが想像していたよりははるかに早く欧米文化が入ってきていたようだし、民衆の吸収力の質は隔離されていたかどうかとはあまり関係がないようだ。
ドイツ語らしきヴォーカル、コーラスと賛美歌調から思い出したのが、EDEN、そして隣国の EELA CRAIG である。
タイトルとジャケットから推測するに、冒頭の大曲の主題はラファエロの「システィナのマドンナ」にまつわるもののようだ。
ちなみにマドンナとは、「聖母マリア」のことであり、英国のストリップ・ティーズ風の歌手のことではない。
CD は 2000 年の 2in1。
LP では第一曲の第三部が B 面 1 曲目となっていた。
「Die Sixtinische Madonna」(25:49)冒頭、歓声と拍手が入るのでライヴ録音らしい。
「Der Maler」
「Das Bild」
「Der Betrachter」
「Scheidungstag」(6:37)
「Jahrmarkt」(3:22)ビックリするほどパンチのある小気味のいいギター・ロック。
「Erinnerung」(4:24)
(Amiga 8 55 802 / 8021-2)