アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「FINNEUS GAUGE」。 ECHOLYN 解体後の 97 年にクリス・バッツビーを中心にフィラデルフィアにて結成。 ECHOLYN 、SPOCK'S BEARD と同系のテクニカル・ロック。 作品は二枚。 ECHOLYN 再結成で自然消滅。 ギタリスト、スコット・マッギルはソロで大活躍。
Scott McGill | guitar, micro jammer |
Jonn Buzby | drums, backing vocals |
Chris Eike | basses |
Laura Martin | lead and backing vocals |
Chris Buzby | keyboards, backing vocals |
97 年発表のアルバム「More And More」。
内容は、けだるい女性ヴォーカル(コントラルト)をフィーチュアしたジャジーなテクニカル・ロック。
シャープな変則リズムでドライヴされるスピーディで小気味のいい演奏だが、アメリカン・ロックらしいテンションの高さとエネルギー、乾いたカントリー・テイストに加えて、薄暗く幻想的なムードがある。
そして、退廃とまではいかないがどこか虚無的なクールネス。
それらが特徴だろう。
また、ECHOLYN と同様な無情になり切れない若くナイーヴなロマンチシズムもある。
サウンド的には、エレクトリック・キーボードやギターを駆使しているにもかかわらず、アコースティックな感触があるところも特徴である。
アンサンブルの核となるのはキーボード・プレイ。
ピアノによるジェントルでクラシカルな表現は全体のグレードを引き上げている。
そして、GENTLE GIANT 直系の入り組んだフレーズをシンセサイザーで押し込むのに加えて、なめらかなオブリガートでさりげなくヴォーカルを支え、アンサンブルに道をつけるスタイルも ECHOLYN のときとまったく変わらない。
また、ジャジーなエレクトリック・ピアノのプレイも洒脱に決めている。
ギターはソロになるとアラン・ホールズワースによく似た爆発的なレガート・プレイを放ち、リスナーを圧倒する役割を負う。(他の楽器を無視しているふしもあり、少しウルサイ)
ギターとキーボードの相互作用で一気に BRUFORD、ヤン・ハマー、 NATHAN MAHL ばりのテクニカル・フュージョンへと流れ込むこともある。
さらに、ほぼ全体で女声リード・ヴォーカルに男声ハーモニーが付き随い、これが ECHOLYN に酷似。(バツビーの声があるので当然といえば当然)
斜に構えながらもキレのいい演奏とコケットな女声ヴォーカルのコンビネーションやこんがらがったまま突進するようなアンサンブルに、カンタベリーの血を感じることもできる。
(ダイアログ風のところなど、カンタベリーの祖先である フランク・ザッパにも通じている)
6 曲目「Press The Flesh」はエンタテインメントに無限のエネルギーを注いで惜しまないメリケン・スタイルがまぶしい佳曲。
垢抜け切らないヴォーカルとシンプルなプロダクションという若干の負い目はあるものの、個性的なプレイヤーによるブッ飛んだ演奏力を活かしてタイトにまとめた作品であり、現代のプログレの地平を開拓した作品の一つである。
COWBOY JUNKIES のようなオルタナティヴ・ロックに抵抗のない方にはお薦め。
そう、フュージョン風のオルタナ、といってもいい作風なのだ。
「More Wants More」(7:34)
「King Of The Chord Change」(5:40)
「Press The Flesh」(7:43)
「Desire」(4:45)ジャジーな歌もの。地味だが傑作。
「Doogins (The Evil Spawn)」(5:16)ギター、牙を剥く。オルガン、立ち向かう。テクニカル・フュージョン風。
「Customer Service」(5:32)
「A Mess Of Finesse」(5:58)
「Sidewalk Sale」(3:52)
「Calling Card」(8:34)
「Salvation」(6:18)弾けた佳作。次の作品への布石。音の定位が変化するのは意図的なもの?
「Abandon」(3:46)
「Finding The Strength」(6:58)
(TRAIN TB79601)
Scott McGill | guitars |
Jonn Buzby | drums, backing vocals |
Chris Eike | bass |
Laura Martin | lead and backing vocals |
Chris Buzby | keyboards, backing vocals |
99 年発表のアルバム「One Inch Of The Fall」。
ヴォーカルの割合が上がるも、メロディと和声、展開のヒネクレ度が飛躍的に上がる。
ややイタコ風のヴォーカル表現のみならず、ギターのバッキングやキーボードのアドリヴにも大胆なアプローチがある。
前作が各プレイヤーの優れた技量の合計レベルにあったとするならば、今作はその合計を越えて個性的な一体となった音楽を提示できている。
技巧は音楽にとけ込み、一部ではカンタベリーを通り過ぎてレコメンディッド・レコード系の現代音楽ロックに突っ込んだ感もあり。
そこでは、THINKING PLAGUE をもう少しジャジーなプログレ側に寄せたような演奏を見せている。
ジャズや R&B といった明快な標識を消し去ることで音楽のとらえやすさをも失う危険があるが、それは承知の上で音楽的な冒険に飛び込んだのだろう。
もちろん、前作とつながるジャジーで安定感のある作風も確保されているが、過激で敏捷な運動性と逸脱感の印象が上回る。
はっちゃけるときの勢い、小気味よさやゆったりとたゆとう瞬間のマジカルな響きなど、フィジカルなカタルシスも申し分無し。
マッギルの手癖ギターさえ気にならなければ、かなり楽しめる。
(前述した安定感のある歌ものほど、マッギルのギターが予定調和を吹き飛ばすように音を爆発させるのがおもしろい。それにしてもギター・ソロだけ聴いていると彼のソロ作とまったく区別がつかない)
リズムマシン風の人力ドラミングの迫力もすごい。
野心的力作だと思う。
余計なおせっかいですが、レーベルも CYCLOPS より CUNEIFORM の方が似合う気がします。
一作目の作品 3 曲のライヴ・ヴァージョンがボーナス・トラックとして収録されている。
「Open Up The Fog Lines」(5:03)
「In A Different Hour」(5:33)
「One Inch Of The Fall」(8:38)
「Blogee's Lament」(6:34)
「Unsinkable You」(5:51)
「State Of The Art」(7:14)
「Early Sun」(5:19)
「Golden Pretzel」(6:24)
以下ボーナス・トラック。(ライヴ録音)
「More Wants More」(7:15)
「A Mess Of Finesse」(5:44)
「Press The Flesh」(7:14)
(CYCL 077)