ドイツのジャズ・ピアニスト「Joachim Kühn」。 強烈なフリージャズを経て 70 年代にはジャズロックの秀作を放つ。
Joachim Kühn | piano, electric piano, alto sax |
Toto Blanke | guitar |
John Lee | bass |
Rolf Kühn | conductor |
Gerry Brown | drums, percussion |
Zbigniew Seifert | electric violin on 2 |
74 年発表のアルバム「Cinemascope」。
内容は、性急でアグレッシヴでロマンティックで情熱にあふれ、サイケでスペイシーでもあるユーロ・ジャズロック。
キューンはフリージャズそのままでアコースティック/エレクトリック・ピアノをガシャガシャに弾き倒す。
ギタリストのスタイルのせいか、ゲーリー・ボイルの ISOTOPE に通じるところもあり。
硬軟いずれの文脈でも、ストリングスがすっといいタイミングで切り込むところにセンスを感じる。
MAHAVISHNU ORCHESTRA よりも、ずっとサイケでアナーキーであり、フリージャズのスピリットをそのまま抱えている。それに、そもそもプログレというムーヴメントを除いてはあまりロックには興味はなさそうだ。
レコーディング・エンジニアはコニー・プランク。
プロデュースは、本人とロルフ・キューン。
「Zoom Part 1」(5:26)
「Zoom Part 2」(3:44)
「One String More」(8:18)
「Vibrator」(2:16)
「Travelling Part 1」(5:10)
「Travelling Part 2」(6:27)
「Success」(5:06)
「Black Tears」(5:16)
(MPS 21 22270-5)
Joachim Kühn | piano, Roland SH 100 synthesizer, Solina String Ensemble |
Terumasa Hino | trumpet |
Philip Catherine | guitar |
John Lee | bass |
Nana Vasconcelos | percussion |
Alphonse Mouzon | drums |
76 年発表のアルバム「Hip Elegy」。
ド派手の、どちらかといえば下品な技巧をヨーロッパ風の硬派なロマンチシズムになじませた奇跡的なジャズロック・アルバムである。
哀愁をまとうギター、鋭過ぎるトランペット、キューンのピアノらが弾力的でイケイケなグルーヴをみごとに乗りこなしている。
キューンはアコースティック、エレクトリックの両方のピアノを使用する。
アコースティック・ピアノのプレイは荒々しく猛るようでいて奥行きが深い。
リズム・セクションは、ムチャな爆発力をいかんなく発揮してこの集団を乗せる暴れ馬を買って出ている。
邦人名トランペッター、テルマサ・ヒノは、多彩なプレイで存在感を鮮烈に示す。
スペイシーで想像力をかきたてるエレクトリック・ジャズの名作である。
「Seven Sacred Pools」(8:38)タイトでファンキー、なおかつスペイシーな傑作フュージョン。ギターとトランペットのユニゾンにストリングスが吹きつけるメロディアスなテーマがいい。クインシー・ジョーンズのような音なのに異常な切迫感がある。
「Travelling Love」(7:50)湧き立つようなリズム・セクションをしたがえてピアノとギターが魅せるロマンティック・チューン。
ここでもトランペットとストリングスによるスペイシーな演出が冴える。名曲。
「Bed Stories」(5:26)幾何学文様のようなテーマとともにスリリングに迫るカッコいいジャズロック。抜群の疾走感あり。カテリンも爆発。
「Hip Elegy In Kingsize」(8:34)ギターとエレクトリック・ピアノが縦横無尽に活躍する後期 SOFT MACHINE または BRAND X 的なジャズロック。カテリンのギターはどこまでも品がいい。
中盤、ヴァスコンセロスのパーカッションがドライヴするアンサンブルが非常にカッコいい。リーのベースも見せ場あり。
「Santa Cruz」(4:50)ピアノとアコースティック・ギターのデュオによるバラード。
「First Frisco」(7:11)トランペットをフィーチュアした ELEVENTH HOUSE そのもののような痛快ジャズロック。
(MPS 06024 9808186)
Joachim Kühn | keyboards |
Philip Catherine | guitars |
John Lee | bass |
Gerald Brown | drums |
guest: | |
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Zbigniew Seifelt | violin |
Curt Cress | drums on 1 |
76 年発表のアルバム「Springfever」。
内容は、やや武骨ながらもスペイシーでロマンティックなジャズロック。
美しいメロディを奏でつつも甘くなり過ぎず、サイケデリックな破天荒さがあり、がっちりと腰の据わった感じがいい。
キューンはリリカルによく歌いながらもテクニカルなプレイをビシバシ決めてくる。
アコースティック・ピアノもフィーチュアされ、その表現力は圧巻である。
センチメンタリズムにあふれ、なおかつ豪腕型というテンタテイナーとして理想的なプレイヤーだ。
一流ジャズ・ミュージシャンの解釈によるロック・インストゥルメンタルといえる内容である。
リズム・セクションは、リー & ブラウンの名コンビ。
名手ザイフェルトのヴァイオリンは 1 曲目から炸裂する。(ゲストドラマーはなんとクルト・クレス!)
プロデュースはキューンとモール・ルーカー。
(WOU 1695)
Joachim Kühn | piano, synthesizer, organ |
Jan Akkerman | guitars |
Ray Gomez | guitars, guitar synthesizer |
Tony Newton | bass, picollo |
Glenn Symmonds | drums, synth drums |
Willie Dee | vocals on 4,5 |
78 年発表のアルバム「Sunshower」。
内容は、吹っ切れたようにロック・ビート(それもエレクトリック・ドラムス使用)をぶちかましたファンキーなハードポップ寄りのフュージョン。
ピアノ版ジェフ・ベックともいうべき 1 曲目、2 曲目のような作品はかなり新鮮であり、文句なくカッコいい。
6 曲目のタイトル曲は、もはやフュージョンではなく DIXIE DREGS 的なインストゥルメンタル・ロックである。
要所でしなやか過ぎるアコースティック・ピアノにプライドは覗かせるも、全体としては、面白ければいいんじゃないの的アプローチで迫っていて、それが意外なまでにうまくいっている。
4 曲目では AOR タッチのヴォーカル・ナンバーにも挑戦している。
ただし、前作と同じく、ピアノ中心にあまりにメローになってしまうと凡庸な感じに陥ってしまう。
そうならないために、通常以上の音数でバキバキ弾き倒しているのかもしれない。
5 曲目もヴォーカルが入るが、ぐっとファンク、ソウルっぽく迫るので良し。
スティーヴィー・ワンダーがヘンクツになってしまったようなシンセサイザー・ソロ。
「Hip Elegy」と比較すると表現が格段にポップになったと思う。
商売上の都合というのもあったかもしれない。
プロデュースはリシャール・デボワ。
「Orange Drive」(3:33)
「O.D.」(4:59)傑作。
「Shoreline」(3:59)
「You're Still On My Mind」(4:18)
「Midnight Dancer」(4:31)
「Short Film For Nicki」(4:16)リリカルなソロ・ピアノ。
「Sunshower」(4:17)オルガンも登場する痛快なるインスト・ロック。
「Preview」(6:30)
(WOU 9193)
Rolf Kühn | clarinet, brass arrangement |
Gerd Dudek | tenor & soprano sax |
Albert Mangelsdorff | trombone |
Joachim Kühn | piano, electric piano |
Philip Catherine | guitars |
Bo Stief | bass |
Daniel Humair | drums |
Kasper Winding | drums |
75 年発表のアルバム「Total Space」。
THE ROLF KÜHN GROUP 名義の作品である。
内容は、フリー・ジャズを引っ張りつつも電化マイルスの影響を多大に盛り込んだサイケデリックなビッグ・バンド・ジャズロック。
キース・ジャレットとジョン・マクラフリンを思わせる、ヨアヒム・キューンとフィリップ・カテリンのアシッドで爆発的なプレイをブラス・セクションの暖かみあるサウンドで中和し、ビッグ・バンド特有のサスペンスフルでゴージャスな響きを生み出している。
ツイン・ドラムスも本家同様の地面を波打たせるような重層ビートを生むためのものだろう。実際成功していると思う。
これだけサイケな音遣いなのに、ロルフ・キューンとリズム・セクションがモダン・ジャズ寄りなところがまた、えもいわれぬ猥雑さをかもし出していていい。
特にロルフのソロは、ノイジーで毛羽立った音が渦巻く中で、そのサウンドとフレージングのなめらかでつややかな質感を誇示している。
SOFT MACHINE に迫るフリーキーで無機的、インダストリアルなムードもある。
硬派なサキソフォニスト、ガッツあるフレージングで要所で目立つベーシストもいい仕事です。
時代の仇花ジャズロックの佳作。
「Uncle Archibald」(6:39)
「Buzz」(5:15)
「Lopes」(7:23)集団インプロヴィゼーション。SOFT MACHINE よりも若干”クラシカルなフリージャズ”寄り。
「Total Space」(7:55)
「Miss Maggie」(8:24)ヒップホップなグルーヴのある佳作。後半ロルフ・キューンの独壇場。
(MPS 06025 2722479)
Rolf Kühn | clarinet, brass & strings arrangement, conductor |
Joachim Kühn | piano, electric piano, Roland synthesizer |
Charlie Mariano | sax |
Philip Catherine | guitars |
Niels-Henning Ørsted Pedersen | bass |
Bruno Castellucci | drums |
Wolfgang Schlüter | timpani, percussion |
Thilo Von Westemhagen | additional keyboards |
Claus-Robert Kruse | additional keyboards |
Herb Geller | additional sax & flute |
78 年発表のアルバム「Symphonic Swampfire」。
THE ROLF KÜHN ORCHESTRA 名義の作品である。
内容は、クラシカルかつメロディアスなビッグ・バンド・フュージョン。
ナベサダ、チャック・マンジョーネ、西海岸の軽快明朗なグルーヴを戦前風のロマンティックなオーケストラ・サウンドと交差させた、優美で上品なものだ。
ピアノ、ギター、サックス、クラリネットらのソロの豊麗でくっきりと明快な響きに耳を奪われる。
安定したグルーヴを提供するリズム・セクションもいい。
「Swampfire. Part 1」(9:23)
「Swampfire. Part 2」(7:31)
「La Canal」(7:04)
「Just Call」(5:41)
「Judy」(6:34)
(MPS 06025 2722120)