イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「LOCOMOTIVE」。66 年結成。70 年解散。作品は一枚。
Mick Hincks | bass, backing vocals, lead vocals on B3 |
Bob Lamb | drums, percussion |
Norman Haines | harpsichord, organ, mellotron, piano, lead vocals |
Bill Madge | tenor sax |
Chris Mercer | tenor sax |
Dick Heckstall-Smith | tenor sax |
Lyn Dobson | tenor sax |
Henry Lowther | trumpet |
Mick Taylor | trumpet |
69 年発表のアルバム「We Are Everything You See」。
内容は、管弦楽をフィーチュアしたサイケデリックな、しかしメロディアスなオルガン・ロック。
ポップス、ブルース・ロック、サイケデリック・ロック、ブラス・ロック、クラシックなどなどがごちゃ混ぜになったこの時代らしい音である。
特にブラス・セクションの存在感が強く、曲調を支配している。
ソウルフルなヴォーカリストを筆頭にワイルドなサウンドにもかかわらず、全体としては、デリケートでほのかな哀愁を湛えた音楽になっている。
これは、管弦の和声の響きと感傷的なメロディ・ライン、ハーモニーそして多彩な音でシーンのサポートに徹するオルガンのためだろう。
曲の展開/流れも細やかな工夫があり激しいといっていいほど変化に富んでいる。
ビート・グループの流れにあるポップ職人(ここでは、リーダー格のノーマン・ヘインズである)が器楽やハーモニーを重視したアレンジに力を費やして、THE BEATLES の音楽センスを 70 年代に持ち越すことに成功した例だろう。
こなれたメロディ・ラインは一流である。
ただし、そこにどうしようもないヒネクレが幾分あったのだ。
それは、5 曲目を筆頭に、普通なようでいて一筋縄ではいかない作品が多いことからも分かる。
アルバム B 面後半の組曲風のアレンジをうまく全体にいきわたらせられれば、もっと名盤として評価されたと思う。
旺盛な雑食主義をセンスあるメロディとウィットと品格あるアレンジでまとめた英国ロックの佳品。
CRESSIDA や BRAINCHILD 辺りが好きな方へは絶対のお勧め。
オルガンの音がデイヴ・スチュアートの EGG に似ていると気づくと、ヒネリの連続のような本作の曲調も理由なくうなずけてしまう。
プロデュースはガス・ダッジョン。
パーロフォン・レーベル。
「Overture」弦楽による序曲。映画音楽のようなワクワク感あり。
「Mr.Armageddon」PROCOL HARUM や RAREBIRD と同質の王道ヒット曲の風格漂うシンフォニックな傑作。転調、管弦のオブリガートが印象的。
「Now Is The End - The End Is When」哀愁のオルガン・ロックにモダン・ジャズ的スリルを文字通り突っ込んだ大胆な作品。
「Lay Me Down Gently」
「Nobody Asked You To Come」無調のメロディやリズム・チェンジが初期 SOFT MACHINE を思わせる奇妙な味わいの作品。オルガン、ハープシコードの響きがいい。
「You Must Be Joking」ニューロックの力作。ファルセットのコーラス、空を切るトランペット・ソロ。
「A Day In Shining Armour」一転してブルージーなビート・ロック。前曲もそうだったが、後一歩でハードロックの夜明けが見えたはず。
「The Loves Of Augustus Abbey - Part One」クラシカルなオルガンが付き従う小品。ここからの展開がクライマックス。
「Rain」気品のあるオルガン・ロック。ヴィブラフォンが密やかなアクセントとなり、雄大な管弦楽に抱かれて風を巻くように走る。
「The Loves Of Augustus Abbey - Part Two」ハープシコードが伴奏するフォーキーな作品。ティンパニも轟く。
「Coming Down /Love Song For The Dead Che」 西海岸サイケの THE UNITED STATES OF AMERICA の作品のカヴァー。ハーモニーを活かしたメローなサイケデリック・チューンである。中盤にリリカルなフルートをフィーチュア。
「The Loves Of Augustus Abbey - Part Three」クレイジーなヴォーカルとともにパート 1 のオルガンをリプライズする終曲。
「Times Of Light And Darkness」エピローグ風の元気なブラス・ロック。
以下ボーナス・トラック。シングル曲。
「Mr.Armageddon (Mono Single Version)」
「There's Got To Be Away」
「I'm Never Gonna Let You Go」カヴァー。
「You Must Be Joking (Mono Single Version)」
「Movin Down The Line」ヘインズ脱退後のシングル。
「Roll Over Mary」ヘインズ脱退後のシングル。
(PCS 7093 / ECLCD 1006)
Andy Hughes | bass |
Jimmy Skidmore | drums |
Norman Haines | organ, piano, vocals |
Neil Clarke | guitar |
Andy Hughes | acoustic guitar on 5 |
71 年発表のアルバム「Den Of Iniquity」。
LOCOMOTIVE 解散後に製作されたヘインズのソロ・アルバム。
内容は、60 年代の味わいを残しつつもハードロックっぽさも押し出したブリティッシュ・ロック。
リフでドライヴするへヴィな作品、オルガンを大きくフィーチュアしたエレジー、アコースティック・ギター弾き語り、アーシーなスワンプ風の作品など、いろいろな曲がある。
この八方破れなのに徹底してセンチメンタルな作風は、クセ声のリード・ヴォーカルさえ嫌いにならなければ、典型的な英国アングラ・ロックとして楽しめるだろう。
B 面の大作ではクラーク氏のギターが大きくフィーチュアされるも、飛びぬけた個性がないためにアドリヴの長さばかりが目立つ。
ハモンド・オルガンに加えてブラス・セクションもあれば、もっと音楽的な広がりがあったのでは。
プロデュースはトニー・ホール。ジャケット・アートは白戸三平ですかね。(もちろん冗談です)
タイトルは「不正の巣窟」という意味深なもの。
「Den Of Iniquity」(4:34)ハモンド・オルガンが唸りを上げるブルージーなへヴィ・チューン。
ヴォーカルの声質は、なぜかマイケル・スタイプに似る。
曲の背骨はうねるベース・ラインであり、バッキングにはエレクトリック・ピアノも。
ワウ・ギターもオルガンに負けじと存在感をアピールする。
「Finding My Way Home」(3:25)アメリカンなようで感傷から抜けきらないビート・ロック。
凹まないように無理やりがんばる、うるさめのリズム・セクションも悪くない。
「Everything You See (Mr. Armageddon)」(4:35)LOCOMOTIVE のアルバムにも収録された作品の別アレンジ・ヴァージョン。開放感とメランコリーがない交ぜになって、独特のきらめきのある作品。
「When I Come Down」(3:53)鉈でぶっ叩くようなビートとパワー・コードのリフがドライヴする初期型ハードロック。
「Bourgeois」(2:59)ボブ・ディランばりのアコースティック・ギター弾き語り。
「Rabbits」(13:03)長大なハードロック・ジャム。
「Sonata (For Singing Pig)」
「Joint Effort」
「Skidpatch」
「Miracle」
「Life Is So Unkind」(7:37)オルガン、エレクトリック・ピアノによるジャジーな幻想曲。
「Moonlight Mazurka」
「Echoes Of The Future」
(PCS 7130)