イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「MONTEFELTRO」。二人のユニットにゲストミュージシャンを迎える形で活動する。グループ名はルネサンス期の有名な戦国領主の名前から。
Piergiorgio Ambrosi | piano, keyboards |
Attilio Virgilio | vocals, guitars |
guest: | |
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Giampiero D'Andria | bass |
Pierpaolo Ferroni | drums |
92 年発表のアルバム「Il Tempo Far La Fantasia」。
内容は、IQ と同様に中期 GENESIS をフォローしつつ、YES 的な田園幻想とイタリアらしいクラシカルな趣きを強調したメロディアスなシンフォニック・ロック。
本作品の最大の特徴は、どこまでもデリケートで上品で浮遊感あるファンタジーの趣である。
エレガントなピアノや雅なオルガン、アコースティック・ギターによる繊細な表現には、目を見張るものがある。
そして、このたおやかな叙情性と鮮やかに対比するのが、変化しながらもスピーディに走る場面の華やぎと溌剌とした躍動感である。
変拍子のアンサンブルを陳腐に聴こえさせないだけでも凡百のフォロワーとは異なる水準にいることが分かる。
ヴォーカルは、ややポンプ風ながらも、ジョン・アンダーソンに通じる中性的な声を活かしたオリジナルなスタイルだ。
エレキギターは、もちろん、アタックを弱め、粘っこくレガートなフレージングに徹する。
チェンバロやストリングス/金管系キーボードによるバロック風の味付けもいい。
全体として、金粉をまぶしたような午睡の夢とも現ともつかぬ瞬間を延々と引き伸ばした世界である。
クラシカルでデリケートでなおかつスピード感もあるといえば、メキシコの CAST だが音を詰め込み過ぎていない分、こちらの方が穏やかに聴いていられる。
ただし、ドラムスの音数の多さを分離し切れていない録音技術のせいか、テーマを携えて快調に走る全体演奏でややガチャガチャした感があるのも否めない。
もっとも、このとろけるようににじんだ音が、本作のふわふわとしたファンタジックなムードに寄与している可能性もある。
もう少し音が整理されて輪郭と密度があれば、クラシカルなアクセントがみごとなだけに EZRA WINSTON の作品に優に迫っただろう。
聴きものは冒頭の 22 分の超大作。
ヴィヴァルディがさりげなく散りばめられている。
とにもかくにも P.F.M に学んだ GENESIS 系ネオ・プログレ作品としては出色です。
作曲は、ギタリストのアッティリオ・バージロ。
プロデュースはピエジョルジオ・アンブロージとアッティリオ・バージロ。
ヴォーカルはイタリア語。
「Canto No.1 (Lettera Ad Un Amico Del 1400)」(22:12)10 パートで構成される組曲。序盤と終盤になめらかな動きを見せるも、基本はゆったりと夢見心地のままの 20 分間。不思議と飽きない。
「Il Prescelto」(6:28)冒頭部でクラシックのテーマをコラージュ。メインはやはり溌剌としたメロディアス・チューン。
テンポ/リズム・チェンジをシンセサイザーのまろやかな音色で包み込んで角を落とす手法を駆使する。
もちろん、管弦楽風のキーボード・アレンジもいい。
往年の王道イタリアン・ロックの風格も。三部構成。
「Ceilo Di Carta」(2:44)アコースティック・ギターとキーボード・オーケストレーションによるイタリア田園幻想というべき小品。P.F.M に近いセンス。美しい。
「La Collana Riflettente」(5:24)わりと典型的な快速 7 拍子チューン。イタリア大衆歌謡風のメロディやコンプレッサを効かせたギターの音が特徴的。中盤はまたも美麗なシンセサイザーで夢見がち。
「Nel Labirinto (Il Regreto Del Sole)」(8:23)クラシカルな初期 GENESIS 調の作品。
これまでになく哀愁やポップなタッチをストレートに打ち出すところもあり。
序盤でハープがフィーチュアされる。二部構成。
(FGBG4072.AR)
Attilio Virgilio | vocals, guitars, guitar synth, loops |
Giuseppe Ruggiero | drums |
Filippo Manni | bass, fletless bass, contrabass |
guest: | |
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Corinne Nuvoli | voice on 1 |
Eugenio Colombo | sax in 4 |
2001 年発表のアルバム「Il Pesce Rosso ...」。
キーボーディストが脱退、ドラマー、ベーシストも前作のゲストとは異なる人物であり、新メンバーとしてグループに加入している。
しかし、作曲、プロデュースなど中心的な存在であるギタリストが健在なので、作風にはさほど大きな変化はない。
たおやか、というか弱々しささえあるヴォーカルと透明感あるアコースティック・ギター、そしてふわーっと音を浮かべてゆくようなエレキギターのプレイは変わらずだ。
もっとも、キーボードの音はギター・シンセサイザーによるようで、前作とは大分様子が異なる。
クラシカルで幻想的というテイストはそのままだが、重なり合った音が描くにじんだ模様の美しさがやや減退した。
クラシックのモティーフをすんなりと差しはさむ技も今回はないようだ。
それでも、全体の広がりのある優美な音色は保たれている。
トニー・バンクスの劣化コピーのようなプレイよりはずっといい。
そして、幻想の霞におおわれていたような前作と最も異なるのは、音の輪郭の明晰さである。
ヴォーカルやギターの生むたおやかな叙情性は変わらないが、リズム・セクションに存在感があり、音の分離がいい。
また、サックスの音色も新鮮だ。
これは、プレイヤーの違いとともに録音技術の違いという可能性もある。
こうなると、イコライズされたヴォイスやブレイクビーツ風などモダンなワサビも活きてくる。
確かに垢抜けないところまでも明らかになってしまったものの、そうなるとまた別の味が出てくるところがこのアーティストのセンスなのだろう。
華やかなキーボード・ソロはないが、色合いを微妙に変化させながらキラキラと光るサウンドと緩やかな起伏のある展開などのパフォーマンスは前作を凌ぐ出来ではないだろうか。
聴き流していても印象的なリフレインをきっかけに次第に耳を奪われてしまう、そんなタイプの音です。
P.F.M の柔らかなところだけを抽出した感じ、といえばいいでしょうか。(特に 4 曲目)
ヴォーカルはイタリア語。
(MMP 413)