ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「PORK PIE」。 ドイツの鍵盤奏者ヤスパー・ヴァンホッフを中心に 74 年結成。 作品は二枚。サイケなユーロ・ジャズロック。
Charlie Mariano | soprano & alto saxes, flutes, bamboo flutes, nadaswaram |
Philip Catherine | electric & acoustic guitars |
Jasper Van't Hof | electric piano, prepared organ, grand piano, celesta |
J.F. Jenny-Clarke | bass |
Aldo Romano | drums |
guest: | |
---|---|
Ivanir "Mandrake" Do Nascimento | conga, pandeiro, tambourine, agogô, bells |
74 年発表のアルバム「Transitory」。
内容は、つんのめるような性急さとサイケデリックな酩酊感が混在した怪しいジャズロック。
ヴァンホッフのキーボードをメイン・ステージとした、「原色の印象派」というかテクニカルでジャジーなジャーマン・ロックというか、そういう世界である。
そこでフロントをつとめるのは管楽器奏者のチャーリー・マリアーノ、そしてギタリストは欧州きっての名手フィリップ・カテリン。
この二人の大陸風ロマンあふれるオーセンティックなプレイを、ヴァンホッフが鍵盤と電気を駆使して変容させて大胆な音響空間を構築し、新しいイメージを作り上げている。
マリアーノは得意の異国笛で無国籍テイストの演出に貢献大。
ヴァンホッフはエレクトリック・ピアノのアドリヴもすごいが、要所に突っ込むメロトロンにしか聴こえないプリペアド・オルガンもすごい。
プロデュースは、アキム・ヘッゲン。録音エンジニアにコニー・プランクの名前がある。
全編インストゥルメンタル。
「Epoch」(7:39)毒々しいエレクトリック・ピアノにサックス、ギターが刺さるアッパーなジャズロック。心拍数上がる。
「Transitory (Part 1)」(4:47)渦を巻くノイズをフルートが切り裂く。スペイシーでほぼジャーマン・ロックな二部作。刺激的です。
「Transitory (Part 2)」(4:07)第二部はソプラノ・サックスをフィーチュア。ヴァンゲリスの作品のような重厚な響きと終盤ではメロトロンにしか聴こえないプリペアド・オルガンが強烈。
「Angel Wings」(5:15)フルートをフィーチュアしたロマンティックかつ鋭利なジャズロック。地獄の釜を静かにかき回すようなリズム・セクションがカッコいい。コワレ気味のカテリンが新鮮。
「Pudu Kkottai」(8:04)バンブー・フルートをフィーチュアした即興からスタート。パーカッションとともに収束していく演奏にゾクゾクする。ほぼ EMBRYO です。気持ちよし。
「Something Wrong」(2:40)MAHAVISHNU ORCHESTRA を髣髴させるリリカルな小品。
「Bassamba (Part 1)」(2:51)アコースティック・ベースをフィーチュア。
「Bassamba (Part 2)」(4:35)本アルバムの水準では「フュージョン」な、開放感ある作品。
「March Of The Oil-Sheikhs」(3:04)奇妙な 3 拍子で繰り広げるぶっ飛んだ即興演奏。プログレです。
(MPS 21 22099-0 / SPV 441082 CD)
Charlie Mariano | soprano & alto saxes, flute, bambo flute, nadaswaram |
Philip Catherine | electric & acoustic guitars, banjo |
Jasper Van't Hof | electric piano, prepared organ, grand piano |
Bo Stief | bass |
John Marshall | drums |
75 年発表のアルバム「The Door Is Open」。
リズム・セクションがメンバー・チェンジ。
新ドラマーは NUCLEUS、SOFT MACHINE のジョン・マーシャルである。
また新ベーシストは、エレクトリック・ベースを使っている。
内容は、アジア風のエキゾティックなスパイスを効かせつつも前作の怪しさは若干抑えた、テクニカルで伸びやかなジャズロック。
豊麗にしてソフィスティケートされた叙情性を秘めたユーロ・ジャズ感覚あふれる作風である。
マリアーノはフリー・ジャズを経たベテラン・プレイヤーらしいしなやかなソロを放っている。
音色とヴィヴラートは繊細にコントロールされ、ブロウの安定感も抜群、逞しい筆致でエモーションあふれる歌をどこまでも雅に歌っている。
インド系管楽器の扱いも軽妙だ。
カテリンも前作以上にソロ・スペースをもらって伸び伸びとしたプレイをしている。
技巧を見せつけながらも音をなめらかにつないでゆくすばらしいスタイルだ。
星を吹き上げるような位相系エフェクト(ストリングス・シンセサイザーではなくプリペアド・オルガンらしいが)による背景演出には、この頃の CAMEL の諸作と同様の淡く切ないファンタジーの趣きがある。
成熟したジャズ・テイストにその若々しいファンタジーとエキゾティックな神秘性が交差するところが、本作品の特徴といえる。
SOFT MACHINE、中期 GONG のファンにお薦め。
プロデュースは、アキム・ヘッゲン。
「Devil Toes」(5:31)気まぐれなソプラノ・サックスのプレイにもかかわらず真っ直ぐで凛とした印象のジャズロック。
テーマ部分の説得力とギターを含むリズム・セクションのおかげでしょう。 ジョン・マーシャルが全開。
「Zana」(7:17)スペイシーなファンタジーを官能性で彩るサックス・ソロ、そしてカテリンの流れるように端正な美音プレイに魅せられる。名曲。
「Telisi Rama」(5:02)インド風のエネルギッシュなジャズロック。アコースティック・ピアノのミスマッチの妙。
「He's Gone」(2:25)フルートとアコースティック・ギターのデュオをフィーチュア。埋め草風ながらも美しい。
「Simul Synchrone」(6:10)「Slightly All The Time」や FOCUS の作品を連想させる、官能的にしてどこかブルーな、秘めたる情熱の感じられる作品。
マリアーノのブロウがコルトレーンを通り過ぎてエルトン・ディーンに聴こえる。
ヨーロッパ大陸ならではの音。
「Avoid The Year Of The Monkey」(9:30)フリーの音響空間でノイズがざわめく、前作の延長上の作品。
マリアーノのソロ作「Helen 12 Trees」でも再演。
「Part 1」(3:50)
「Part 2」(4:50)ミニマルな変拍子バッキングが耳に残る SOFT MACHINE 風のジャズロック。突き進むオルガン、応酬するドラム・フィルがカッコいい。 熱気はひたすら高まる。傑作。
「Fugawy」(0:50)これも SOFT MACHINE を相当に意識したミニマル・ミュージックのエピローグ。
「The Door Is Open」(6:25)フルート、オルガン、ベースらによる神秘的なアンサンブル。
クラシカルなロマンと雅楽的な抽象性が配合されている。
(MPS DC 228 754)
Charlie Mariano | soprano & alto saxes, flute, nadaswaram |
Zbigniew Seifert | violin |
Jan Hammer | acoustic & electric piano, synthesizer |
Jack Bruce | bass |
John Marshall | drums |
Nippy Noya | percussion |
76 年発表のアルバム「Helen 12 Trees」。
管楽器奏者チャーリー・マリアーノのリーダー・アルバム。
ブリティッシュ・ロック、プログレ的にはオールスター参加のアルバムである。
マリアーノのつややかなプレイは当然として、聴き誤りようのないヤン・ハマーのピッチ・ベンドやタイトで華やかなジョン・マーシャルのドラミング、名手ザイフェルトの白刃で空間を切り裂くようなプレイなどジャズロックとしての意匠をほぼ完璧に備えている。
その意匠の基本にあるのは、少年のような心が携えるロマンと大人のユーモアが生み出す「ハッタリと紙一重のけれん味」である。
それはサーカスやカーニヴァルの哀愁とスリルに喩えられるかもしれない。
演奏面では、マリアーノというモダンジャズ、フリージャズの安定感を中心軸に、パワフルで直線的なリズムでステージを支えて前衛的な鍵盤/ヴァイオリンのプレイがフロントで火花を散らすというスタイルが奥深くなおかつ幅広いスリルとロマンを生み出している。
ポップであると同時に芸術的なのだ。
マリアーノの東洋、エキゾティック志向も盛り込まれている。
変拍子リフもあって SOFT MACHINE のファンにはお薦め。
ジャズ・ファンにはゲテモノ扱いされそうだが、プログレ・ファンにはストライクです。
いくつかの曲でフェード・アウトするのだけが残念。
タイトル曲は圧巻のジャズロック。
4 曲目、旧 B 面 1 曲目もエレクトリック・ジャズ、ジャズロックの秀作。
作曲は、一曲を除いてマリアーノ。
プロデュースは、ヨアキム・ベレント。
「Helen Twelvetrees」(4:42)「Wired」そのままのハマーのソロ。
「Parvati's Dance」(7:32)竹笛のようなナダスワラムとヴァイオリンをフィーチュアしたインド風味たっぷりの作品。
「Sleep, My Love」(2:51)ヴァイオリンとフルートのデュオ。
「Thorn Of A White Rose」(4:30)本曲のみヤン・ハマーの作品。
「Neverglade Pixies」(7:10)
「Charlotte」(6:33)ソプラノ・サックスとピアノのデュオ。
「Avoid The Year Of The Monkey」(5:30)
(MPS 0068 182 / SPV 441042 CD)