フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「POTEMKINE」。グービン兄弟を中心としたグループ。71 年結成。82 年解散。作品はグループで三枚、ジャン・ピエル・グラセのグループ VERTO で二枚。 MAHAVISHNU ORCHESTRA、初期 WEATHER REPORT、MAGMA、カンタベリーの影響色濃いやや B 級ジャズロック。
Dominique Dubuisson | bass, vocals |
Charles Goubin | guitars, vocals |
Michel Goubin | keyboards, vocals |
Philippe Goubin | percussion, drums |
Xavier Vidal | voilin |
76 年発表のアルバム「Foetus」。
内容は、エレクトリック・ヴァイオリン、ファズを効かせたギターをフィーチュアした RETURN TO FOREVER 影響下のジャズロック。
ヴァイオリンとギターにユニゾンによるテーマをジャジーなエレクトリック・ピアノで彩り、手数の多いドラムスが支えてゆくスタイルである。
ヴァイオリンを入れたジャズロックであるが、MAHAVISHNU ORCHESTRA のような攻撃性や爆発力よりも、リリカルでメローな表現が印象的。
決してバカテクではないし、ARTI+MESTIERI のように垢抜けた音色もない。
それでも、適度な緊張感を保ちつつファルセットのスキャットによるロマンティックな表現も散りばめる作風にセンスを感じる。
各パートの丁寧なソロともったりしながらも丹念にまとめてゆく演奏もいい。
ヴァイオリニストは技巧よりも感性が先行するタイプのようであり、デヴィッド・クロスを思わせる瞬間も。
全体に、リフやテーマ、アンサンブルにはかなりのセンスを感じさせる。
プロダクションもシンプル(スタジオ・ライヴ風に聴こえるところもある)だが、この歌心ある作風のおかげでなかなか魅力ある作品となっている。
カンタベリー、ジャズロック・ファンにはとりあえずお薦め。
「Foetus」(6:18)スキャットがリードするサイケデリックなイメージの作品。毛羽立ったエレクトリック・ピアノのソロが印象的。70 年代初期風。
「Zed」(5:14)ISOTOPE をよりリリカルにしたような作品。
シンプルなテーマとソロの対比で進む構成だが、聴かせどころを心得た好作品である。
ヴァイオリンのピチカートが琴のようでおもしろい。
「Nuit Sur Le Golan 」(2:19)ヴォイスとパーカッション類による効果音。終盤でヴァイオリンとエレピが立ち上がると、意外や、KING CRIMSON の即興に通じるものも。すぐに終わっちゃうけど。
「Ballade」(6:17)ヴァイオリンとスキャットをフィーチュアしたバラードが捻じれてゆく、微妙な味わいのジャズロック。
中盤のエレピのソロは緩め。ヴァイオリンは技巧的なソロを見せようとしてかなり背伸びしている。しかし、それが予想外のスリルを生んでいていい。
最後のギターのソロもかなり緩い。
「Hymne」(2:00)タイトルとは裏腹にくだけた印象の作品。
ハードロック風のリフのせいか。
「Loolitt」(3:05)高揚しながらタイトなリズムで進むハード・ジャズロック。
「Cedille」(5:56)珠玉。ラベルやフォーレの作品に通じる世界である。アコースティック・ギターとピアノのデュオ。
「Laure」(4:32)ギター、キーボードのワイルドなタッチとメローなスキャット、ヴァイオリンが織り成すロマンティックな好作品。テクニックを越えたセンスを感じさせる。
「Cycles」(2:17)ギター、ピアノによる 8 分の 10 拍子のリフレインが導く、小気味のいいジャズロック小品。
(TAPIOCA TP10008)
Charles Goubin | guitars, piano, vocals |
Phillippe Goubin | drums, percussion, piano |
Doudou Dubuisson | bass |
guest: | |
---|---|
Michel Goubin | piano, vocals on 4 |
76 年発表のアルバム「Triton」。
中世音楽の禁じ手、悪魔の和音「トライトン」を題名とした第二作。
編成は、トリオにゲストを迎える形になっている。
内容は、MAGMA や KING CRISON と同じくストラビンスキーやヴァレーズなど近現代クラシックの和声を
取り入れたインストゥルメンタル主体のジャズロック。
前作と比べると格段と Zeuhl と呼ばれる MAGMA 系サウンドへ接近しており、MAGMA をややジャズ/フュージョン寄りにしたといってもいいサウンドである。
特に、強烈なベンディングやヴィブラートを使う重量感あるベース、ピアノと打楽器の存在感が強いところは明らかに MAGMA と共通する。
ピアノをエレクトリックからアコースティックに切り換えたこともサウンドの変化に大きく寄与している。
ヴィブラートに特徴のあるベース、シンバル中心に多彩な表現をもつドラムス、モダン・クラシック調を一身に体現するピアノ、悲鳴のようなロング・トーン・ギターらによるアンサンブルをファルセットのスキャットがまとめ、多彩な速度・調子の変化をつけながら、どこまでもミステリアスな表現を繰り広げてゆく。
ただ、暗黒にして邪悪ではあるが、知的なきらめきとメロディアスななめらかさもあり、おどろおどろしさのわりには聴きやすい。
先達のような狂気じみた爆発力やパラノイアックな緻密さは感じられない。
それは表現力の甘さに起因するのかもしれないし、分りやすい雰囲気作りがうまいのかもしれない。
「Asyle」(7:25)
「Crepuscula」(4:57)
「Loolit II」(8:29)ISOTOPE プラス MAGMA。
第一作の作品の続編でしょうか。
「Liberserim Urb Et Chant De Viamor」(3:59)
「Eiram」(13:34)
(Soleil Zeuhl 04)
Charles Goubin | guitars, piano, bells, vocals |
Michel Goubin | Fender Rhodes, grand piano, moog, vocals |
Phillippe Goubin | drums, percussion, piano |
Doudou Dubuisson | bass, vocals |
guest: | |
---|---|
Christian Rouge | kakou, darboukass on 3,6 |
Jean-Jacques Ganghofer | bells from Aveyron, Chinese clock on 3,6 |
78 年発表のアルバム「Nicolas II」。
サウンド、作曲ともに一気にグレード・アップし、英米のグループに匹敵するジャズロックへと変化した。
野性味を残したまま洗練された演奏が RETURN TO FOREVER やカンタベリー一派にダイレクトにつながるイメージを与える。
また、ミステリアスな空気が BRAND X を思わせるところもある。
ジャズロックのスタイルを追いかけてやや節操なく変遷を重ねたグループが、ようやく最高の境地へ到達したといえるだろう。
エレクトリック・キーボードが圧倒的に増え、このキーボードとギターのインタープレイが演奏の中心となっている。
筆致はダイナミックでワイルド、なおかつ流麗であり、ギターの歪みやエフェクトが絶妙なバランスを保っている。
典型的なスタイルだけに技量そのものをメジャー・グループと比較されると分が悪くなってしまうが、楽曲そのものの魅力は、いささかも引け目はないと断言できる。
ナチュラルなジャズ/ファンキー・テイストにファンタジーの魔法を振りかけたフレンチ・ジャズロックを代表する一枚でしょう。
もっとも、フレンチ・ジャズロック特有のバーバリックかつパラノイアックな雰囲気はさほどでなく、素直にグルーヴィな演奏です。
「Tango Panache」(6:18)ほのかにスパニッシュ・テイストもある、吹っ切れたように痛快な作品。「Spain」入ってます。
「Raspoutine」(5:56)切れのいいリフ主体のタイトな演奏。
「Theme Pour Un Swing Imaginaire」(5:37)跳ねるリズムのファンキー・チューン。MAGMA 風のベースが目を引く。ギターのハードロック趣味が気になるが、余裕のある演奏だ。LARSEN-FEITON BAND を思い出した。
「Air De Famille」(3:19)ロマンティックな中にけだるさが漂うアーバン・フュージョン。
「Ode De Mars」(5:23)
「Aux Images」(2:41)ピアノ、ムーグによる CAMEL 風のファンタジックな小品。
「Amphitheatre Magique」(6:45)変拍子のリフによる怪しい緊張感のあるへヴィ・チューン。佳作。
(Soleil Zeuhl 05)