アメリカのドラマー「Terry Bozzio」。 1950 年生れ。マルチ・ジャンルのテクニカル・ドラマーの代表格の一人でカリスマ。 フランク・ザッパのグループ、U.K.、MISSING PERSONS、THE LONELY BEARS などの活動で知られる。
Terry Bozzio | drums |
Tony Levin | basses, stick |
Steve Stevens | guitars |
97 年発表のアルバム「Black Light Syndorme」。
内容は、ジャズ志向も示しつつもモノトーンで無機的なコンテンポラリー・ロック。
スパニッシュ・ギターをよくし、アルペジオなど生音的な表現を指向するギター・プレイヤー、空間的なサウンドを駆使した技巧的なベース・プレイ、多彩すぎるパーカッション、ドラムスによる、テクニカルにしてアグレッシヴ、なおかつ美しい音楽である。
時代の流れに合わせてお仕事では HR/HM をやっているものの、じつは、ジャズやフュージョンがやりたいと思っているミュージシャンは多そうだが、本作のギタリストもそういう人に違いない。
緊迫感を突き破って噴出する凶暴さ、ニヒリスティックで冷たい表情と異様な熱気のアンビバレンス、そして透徹な美意識は、「Larks」時代から 80 年代にかけての KING CRIMSON をややハードロックに寄せたようなスタイルといえばいいだろう。
普通にいって、間違いなく「プログレ」である。
1、2 曲目は、KING CRIMSON へのオマージュとしか思えない。
フリップ卿に倣いつつも芳しいロマンチシズムに満ちたギターもさることながら、音数と技巧があまり関係がないことを証明するような超絶的なロック・ドラムのみごとなこと。
ベース、スティックのせいで、ビル・ブルフォードとのユニット(BRUFORD LEVIN UPPER EXTREMITIES)にも近く感じる。
1 曲目の終盤、ハイ・テンションのアンサンブルに興奮すること請け合い。
3 曲目では前曲で少し紹介されたスパニッシュ・ギターが大きく取り上げられ、フラメンコの響きにパコ・デ・ルシア(あんなにすごくはないが)や RETURN TO FOREVER をイメージさせる展開が続く。
タイトル曲は U.K. の二作目の延長上。レガートなギター・プレイと重量感溢れるアンサンブルがみごと。
5 曲目は、ロックなグルーヴがスタイリッシュに打ち出される秀作。ハイパー・テクニカル・ブギー。
6 曲目は、ラルフ・タウナー風のアコースティック・ギターがリード。
最終曲は、ジャジーなギター・フィーチュアしたへヴィ・ロック。
全曲インストゥルメンタル。
プロデュースはグループとワイン・ディヴィス。
「The Sun Road」(14:37)
「Dark Corners」(8:31)
「Duende」(7:25)
「Black Light Syndorme」(8:45)
「Falling In Circles」(9:07)
「Book Of Hours」(9:38)
「Chaos/Control」(8:49)
(MA-9019-2)
Terry Bozzio | drums |
Tony Levin | basses, stick |
Steve Stevens | guitars |
guest: | |
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Marcus Nand | flamenco guitars on 7 |
2000 年発表のアルバム「Situation Dangerous」。
BOZZIO LEVIN STEVENS の第二作。
内容は、硬軟強いメリハリのある演奏による HM/HR & テクニカル・ジャズロック、ワールド・ミュージック風味添え。
おおザッパにいうと 80 年代 KING CRIMSON がフュージョン寄りになったような作風であり、そこにややアコースティックな音を加えた印象である。
(余談だが、70 年代にも ISLAND レーベルなどのメジャーからレゲエや第三世界の音がディスクになってはいたが、こうしたワールド・ミュージックをメイン・ストリームのロックに取り込んで 80 年代の音の準備をしたのは TALKING HEADS が嚆矢ではなかったか。80 年代 KING CRIMSON にもその影響は強いはず)
意外なほどアコースティック・ギターをフィーチュアした「ペイジとデメオラ好き?」な楽曲が多いが、それらの出来がいい。
エレキギターのプレイにもアコースティック・ギターのデリケートなタッチを生かしていると思う。
パワーコードでザクザクとリフを刻むのにも抵抗はないが、勢いまかせだけでは終わらせない、知的なアーティストとしての矜持がありそうだ。
随所でその格別のフレーズを歌わせるうまさが発揮されている。
特にいいのは、プログレな 6 曲目。
ボジオはガマンのリズム・キーパーに徹している面もあり、作品としては、スティーブンス主導の内容になっていると思う。
全体としては、ショーン・マローンの諸作(GORDIAN KNOT)と同じく「新時代のプログレ」といっていい作品だと思う。
全曲インストゥルメンタル。
プロデュースはグループ。
ジャズロックのファンにもお薦め。
「Dangerous」(6:38)「移民の歌」ばりのけたたましいリフで迫るハードロック。変拍子処理も鮮やか。
「Endless」(10:09)歌心を感じるメロー・チューン。ヴァーサタイルなギター・プレイを巧みに曲想になじませている。オーヴァー・ダビングの成果。クレジットによればチェロはレヴィンの演奏。
「Crash」(5:08)小気味いい変拍子ハードロック。リフはシーケンスとなりやがて CRIMSON 化するが、ブリッジ部のスローパートでは再び ZEPPELIN と化す。
「Spiral」(4:36)アコースティック・ギターによるラテン風の情熱的でロマンティックな作品。
「Melt」(3:37)余白に味のあるアンサンブル。荒々しさと叙情性のクロス・ブレンド。SOFT MACHINE や MAHAVISHNU ORCHESTRA を思わせる名品。
「Tragic」(6:58)ロバート・フリップばりのサステインを効かせたギター・プレイ、千手観音と化すボジオ、マグマのように沸き立つ低音部。トリオの魅力を発揮したドラマティックでミスティックなヘヴィ・ロック。
アコースティックなプロローグとエピローグがあってこそ。
「Tziganne」(4:26)デ・ルシア、ディ・メオラ好き?なスーパー・ギター・デュオ。支えるのはチューンされた超絶パーカッション。
ギターは打楽器であり、パーカッションは旋律楽器である。
「Lost」(6:24)デジタルな音処理も加えたコンテンポラリーなヘヴィ・ジャズロック。
楽曲をドライヴするのは圧巻のドラミング。バランスのいいクルーズ感。本曲もオーヴァーダブの成果を感じる。とにかくカッコいいです。TUNNELS ファンにも。
(MA-9049-2)
Terry Bozzio | drums, percussion |
Gerald Preinfolk | bass clarinet, alto & soprano sax |
Alex Machacek | guitar, guitar synth |
2002 年発表のアルバム「Delete And Roll」。
内容は、スペイシーな音響とフリー・ジャズ的な逞しい即興が特徴的なテクニカル・ジャズロック。
アコースティックなジャズの感覚とインダストリアルなヘヴィ・ロックの感覚がクロスした神秘的かつスリリングな世界であり、未来的なイメージを提示している。
編成はベースレスで低音部をバス・クラリネットが担うという特異なもの。
ギターは、オーソドックスなジャズギターとしての役目も負いつつ、歪み系独特のけたたましさとブレス不要の強みを生かして長尺のフレーズを綴ってゆく。
切れ目のないフレージングはまるで不気味なエネルギーとダイナミクスにドライヴされる機械のようだ。
そして、ギターの切れ目にさりげなくコンティニュイティを補完するのは、ほどよく抑制されたバス・クラリネットのオブリガートである。(もちろんギターとのインタープレイもクール)
幻想的な m7+9 の響きによる浮遊感(アラン・ホールズワースのバッキングに酷似)と肉感的なサックスのプレイが難なくオーヴァーラップし、硬質にして弾力あるドラミングが空間に仕切りを打ち込んでいく。
また、ギター・シンセサイザーを駆使しており、キーボードレスでも音の広がりや色彩感、密度など音響面の手当ては十分である。
ときに SOFT MACHINE と同種のサイケデリックな幻想性も浮かび上がってくる。
ドラムスはリズムの仕切りのみならずギターや管楽器を相手にシビアといっていいほどに鋭すぎるインタープレイも見せる。
また、エキゾチズムがいいアクセントになっている。
クールで無機的な文脈やへヴィ・メタリックなシーンでもバス・クラリネットやアルト・サックスの音が思いのほかフィットするのが今回の発見であった。
アヴァンギャルドなものに抵抗のないプログレ・ファンやリプダルやホールズワースなどのギター・ファンにはお薦め。
音楽として過激ではあるが、スタイリッシュな美感もあるのでフュージョン・ファンにもお薦めできる。
全曲インストゥルメンタル。5 曲目はライヴ録音。6 曲目は快速東欧変拍子フォーク・ダンス。SAMLA に近い。
「Dicht」(8:38)
「Strafe」(8:18)
「Austin Powers」(8:09)
「Invisible」(5:42)
「Aug Um Aug (Live) 」(10:00)
「Bulgarian Folkdance」(3:00)
「I Remember Edison」(8:27)
「S150」(9:01)
「What She Never Heard」(2:22)
(nge 021)