ブラジルのプログレッシヴ・ロック・グループ「AETHER」。 74 年結成の大ベテラン。作品は二枚。 2012 年の MUSEA によるラヴクラフトをテーマにした編集盤には参加しているので、解散していない模様。
Vinicius Brazil | acoustic & electric & synth guitars |
Alberto Curi | keyboards, vocals |
Fernando Carvalbo | electric & synth bass |
Brandon Ramos | drums |
guest: | |
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Eduardo Campos | piano solo & organ on 13 |
Glauco Fernandes | violin solo on 12, 14 |
99 年発表の第一作「Visions」。
内容は、ブルーズ・フィーリングをニューエイジ・ミュージックにうまくとかし込み、これ以上やったらロックではなくなるぎりぎりのところまで透明感となよやかさを強調した、メロディアスなシンフォニック・ロック。
歪み/コーラス系によるサスティンを活かしたほんのりブルージーなギターと透明感あるキーボード・サウンドを軸に、明快な緩急をつけたアンサンブルを操る。
要は、70 年代中盤の CAMEL に YES のアンビエント・ミュージック志向をブレンドしてまったりとさせたような音だ。
ドラムスのキレは先達と比べるべくもないが、メランコリーとファンタジーの幸せな狭間に咲いた可憐な花であり、癒しや安息を目指す音が真面目に真っ直ぐ紡がれてゆく。
器用ではないが誠実な演奏なのだ。
音が組み上がった全体の感じは、THE FLOWER KINGS のロイネ・ストルトの表現に近いような気もする。
オプティミズムやユートピア志向など同年代の縁だろうか。
初々しさ、誠実さなど時とともに色褪せてゆくものを、力まずに繋ぎとめてゆくために、これからもこういう音に耳を傾けてゆきたいです。
甘ったるいだけではなく、敏捷で力強い動きもあります。
後半の組曲は、キーボードの雄大かつ奥深いサウンドによる交響曲風のタッチが印象的。
リゲティの「レクイエム」も使われているところなど、「2001 年宇宙の旅」を意識した壮大なドラマがあるようだ。
ヴォーカルもあるが、インストゥルメンタルが主。
SAGRADO のキーボーディスト、エレクトリック・ヴァイオリンの名手グラウコ・フェルナンデスがゲスト参加。
「Millenium」(3:39)
「Autumn」(4:15)
「Whales」(5:30)
「A New Bright Day」(5:11)CAMEL に似過ぎのジャジーな歌ものロック。
「Trindade Island」(3:37)
「Kings & Knights」(4:47)雄大なジャズロックの秀作。
「November」(3:02)
「Altenburg Suite」
「The Arrival At The Castle」(1:24)
「Voices From The Past」(1:29)
「The Birth Of A Morning」(0:59)
「The Sun On The Tower」(2:54)
「The Lake」(4:55)
「Essense Of Freedom」(5:40)
「The Woods」(3:45)
「The Ocean」(2:27)
(RSLN 067)
Vinicius Brazil | guitars |
Alberto Curi | keyboards |
Fernando Carvalbo | bass |
Mario Leme | drums, percussion |
2002 年発表の第二作「Inner Voyages Between Our Shadows」。
メロディアスなギターを中心とした清冽なシンフォニック・ロック。
初めは 10 年位前のオランダや英国のメロディアス・ロック路線的な音という印象を持たれるかもしれないが、聴き進むに連れ、爽やかなサウンドとそこから生まれる知的な気品、さらには安定感ある演奏のおかげで、ぐんぐんイメージがよくなってゆく。
楽曲は自然な語り口でとうとうと流れてゆき、展開には急激な変化はなく、緊張/弛緩といった対比もさほどでない。
基本的に、メロディにのせて、ゆったりミドルテンポで物語を綴ってゆくタイプである。
10 分以上の大作が並ぶにもかかわらず中だるみを感じさせない(ちょっと感じるか?)のは、安定した演奏プラス練りこまれた語り口のおかげだろう。
もっとも、アルバム構成には意外なまでに手が行き届いている。
序盤に涼しげなインストゥルメンタルを繰り広げて、全体の印象を決めて、その後はアンディ・ラティマーを思い出さざるを得ない男性的なヴォーカルも盛り込みつつ、次第にクラシカルなタッチも強めてゆき、ドラマを作ってゆく。
涼感を存分に活かしたメロディアス・ロックという点では、かつての JADIS にも近い感じである。
ジャケットの写真から判断して、メンバーはそれなりのベテランらしい。
70 年代後半からのフュージョン・ブームを通過していると、こういった爽やかなサウンドがごく自然に出てくるようだ。
そういうグループは多い。
もちろん、ラテン圏特有というのも確かだろう。
主役のギターは、徹底して泣きのロング・トーンで迫る。
エフェクトがやや古めかしく、歌い方もポーランド の ABRAXAS を思わせる演歌っぽい調子である。
それが不思議と悪くないのは、メランコリックではあってもブルージーではないため、そして全体のサウンドが爽やかなせいだろう。
キーボードは、当然のごとく透明感あふれるバッキングとクラシカルなソロを披露。
ギターとのフロント・ラインの切り替えも自然である。
大作をなめらかかつ必要十分な起伏をもって流れてゆけるのは、このギターとキーボードの絶妙の配分のおかげでもある。
また、リズムは、この手のグループにしては、出過ぎず引っ込み過ぎずのバランスがいい。
男性的なヴォイスと叙景的でファンタジック、ゆったりと落ちついたサウンドの質は似ていても、THE FLOWER KINGS ほどはテクニカルなアンサンブルや込み入った音作りにはなっていない。
どちらかといえば、初期の MARILLION のようなハイセンスなネオ・プログレという感じであり、そういったグループの共通祖先の一つである CAMEL をイメージしてもらうとちょうどいいはず。
最終曲は定番「禿山の一夜」。EL&P から、GENESIS、YES、KING CRIMSON も顔をのぞかせるプログレ娯楽大作。
とはいっても、アメリカのグループの作品のように血糖値過剰のハリウッド映画的な面はなく、生真面目に素朴に丹念に物語は綴られる。
だから、幸福感あふれるエンディングがいい余韻を残してくれる。
「Prayer For A New Meeting」(14:00)
「The Gate」(9:15)
「Forgiveness」(11:36)
「Scenes Of Wondering Beyond」(12:06)
「babel Tower」(7:26)
「A Night On Bald Mountain」(19:29)
(RSLN 068)