フィンランドのギタリスト「Jukka Tolonen」。 TASAVALLAN PRESIDENTTI、WIGWAM との活動をへてソロヘ。 ブルージーなジャズロックにクラシック風味も交じるユニークな作風。 ギターはワウワウが得意技。 キーボードもよくする。 2004 年 LOVE RECORDS より初期二作品が再発中。
Jukka Tolonen | guitars, lesley guitar, piano, lesley piano, spinet |
Pekka Pohjola | bass |
Reno Laine | roger's drums,drums |
Pekka Poyry | soprano & alto sax |
Heikki Virtanen | bass |
Ronnie Ostenberg | drums |
Jukka Gustavson | organ |
71 年発表の第一作「Tolonen!」。
ブルーズ・フィーリングとクラシカルなセンス、フォーク風の素朴な哀感が交差する、インストゥルメンタル・アルバムの傑作。
タイトルから読み取れる通り、豊かなイマジネーションの活動を感じさせるファンタジックな作風である。
内容は、ギター中心というよりは多彩な音によるアンサンブルをトローネンの作曲力でまとめあげた自由闊達なもの。
若々しく性急でブルージーなジャズロックを基調にクラシカルなピアノ、チェンバロやフォーク風の枯れた旋律を配した、どちらかといえば叙情的な楽曲が主だろう。
ジャジーなテクニックをロックらしい骨っぽさと荒々しさが支えるトローネンのギターに象徴されるように、洗練というよりは生きのよさとノリ、そしてセンチメンタルで物憂げな表情が特徴だ。
若さの象徴のような気まぐれさがとてもいい方向に働いているともいえるだろう。
トローネンは泥臭いジャズ・ギターからへヴィなハードロック・ギター、巧みなアコースティック・ギター、果ては鮮やかなピアノまで多才ぶりを発揮する。
エレキ・ギターはワウ・ワウを使うのが得意技だ。
またアコースティック・ギターを用い、ペッカ・ポイリを擁して ECM のテリエ・リプダルの向こうを張るような思弁的インストゥルメンタル・ナンバーも披露している。
ペッカ・ポーヨラを含む WIGWAM、TASAVALLAN PRESIDENTTI のメンバーが総動員でサポート。
最終曲はライヴ録音のヘヴィ・チューンでありメンバー的にもサウンド的にもほとんど WIGWAM。
初期ペッカ・ポーヨラのソロ作品にも通じる天真爛漫な傑作である。
「Elements Earth Fire Water Air」(8:04)
「Ramblin」(9:02)
「Mountains」(6:36)
「Wanderland」(5:03)
「Last Night」(3:25)
(LRCD 47)
Jukka Tolonen | guitars, mini-moog tabla, piano |
Pekka Poyry | soprano & alto sax, flute |
Paroni Paakkunainen | flute |
Jussi Aalto | trombone |
Heikki Virtanen | strings bass, bass |
Esko Rosnell | percussion, drums |
Erik Dannholm | flute |
Erkki Koskimo | trombone |
Reino Laine | drums |
73 年発表の第二作「Summer Games」。
前作よりも グルーヴィな印象の強まったプロっぽい作品だ。
演奏はラフなようできわめて安定しており、全体の印象はファンタジックでメロディアス。
冷房の効いたラウンジ然としたなかに、骨っぽくシニカルな表情も見せるジャズロックである。
ペッカ・ポイリのフルートをフィーチュアしたイージー・リスニング風の作品や、アコースティック・ギターを用いたエキゾチックなナンバーなど、音楽的なバックグラウンドの広さを感じさせるところが多い。
たくましく奔放な演奏力を楽曲に巧みに適用し、楽想をきちんと伝えることのできている作品といえるだろう。
ギタリストとしても作曲家としても傑物である。
今回はトロンボーンの音が演奏に厚みを生んでおり、存在感あり。
またエレクトリックなイメージがあまりないだけに、ムーグのアクセントも非常に効果的だ。
タイトル曲はトーレ・ヨハンソンら北欧ポップの原点とも思われるノスタルジックで素敵なナンバー。
収録時間がやや短いのが残念。
「Wedding Song」(4:48)
「A Warm Trip With Taija」(8:43)
「Impressions Of India」(5:23)
「Thinking Of You In The Moonshine」(6:25)
「Summer Games」(5:22)
「See You(Missing My Crazy Baby)」(3:36)
(LRCD 91)
Jukka Tolonen | guitars, piano |
Heikki Virtanen | bass |
Esko Rosnell | percussion, drums |
Essa Kotilainen | moog, clavinet, accordion |
Pekka Poyry | soprano & alto sax, flute |
Seppo Paakkunainen | baritone sax |
74 年発表の第三作「The Hook」。
内容は、ギター、ピアノとなめらかな管楽器をフィーチュアしたメロディアスでファンタジックなジャズロック。
キレのいい変拍子リフの上で楽しげな演奏が自由闊達に繰り広げられる。
ムーグ・シンセサイザーを大胆に使うところも特徴だろう。
よくこなれたイージー・リスニングのようでいて、意外なほど素朴な表情を見せたり、時に強圧的なテクニックで押し切ったり、この個性的な作風は第一作から変わらない。
そして、エレクトリックな音も多いが、不思議とアコースティックなタッチがある。
これは、メロディ・ラインにフォーキーな親しみやすさがあるせいだろう。
また、ピアノとギターで音楽的な人格が変わるところが、本作では、より洗練された形で現れている。3 曲目のピアノが非常に美しい。
個人的には、ピアノとバリトン・サックスがいい。(ペッカ・ポイリのアルトも決して悪くない、どころかかなりカッコいいが、バリトンの独特の存在感にヤられました)
センス、器用さ、テクニック、どれをとっても、ECM からアルバムが出ていてなんら不思議のない作家だ思います。
そうならなかったのは、テリエ・リプダルよりもさらにロック好き、R&B 好きなのでしょう。
それから、時おり、Frank Zappa のビッグバンドもののような暖かくもキレのある姿も見せます。
クラブ御用達の名曲「Aurora Borealis」収録。
2 曲目「Starfish」は、1974 年のヘルシンキ・フェスティバルへの寄贈曲。
全曲インストゥルメンタル。
プログレッシヴにして楽しいアルバムです。
「Aurora Borealis」(12:53)ブルージーなのにユーモラスで子どもっぽいという北欧ロックならではの名作。
管楽器、ピアノ、アナログ・シンセサイザー、ギターそれぞれに見せ場はあるが、全編カッコいいのはシュアーでタイトなドラムス。
最後はトローネンのジャジーなギター・アドリヴが炸裂する。オクターヴ奏法もみごと。
「Starfish」(6:13)ブラス・セクションをフィーチュアした変拍子ビッグ・バンド・ジャズロック。
スリリングにして暖かく包容力あるアンサンブル。
Zappa 入ってます。
この作品のみ、テナー・サックス、トランペット、トロンボーンをゲストで迎えて、ソロをフィーチュアしている。
「The Sea」(8:18)ピアノをフィーチュアしたクールでロマンティックな名品。フルート、サックスがしっかりとピアノに寄り添う。S.A.S の「夏をあきらめて」のようです。
「The Hook」(8:32)バリトン・サックス、アコースティック・ギター、アコーディオンが活躍するイケイケなジャズロック。北欧らしいユーモアもたっぷり。微妙な不協和音の響きなどペッカの作風に近い。ワウギターのアドリヴあたりからはサイケデリックな世界も広がる。ドラミングはかなり現代的だと思う。
(LRCD 113)
Jukka Tolonen | guitars, piano |
Pekka Poyry | soprano & alto sax, flute |
Sakari Kukko | soprano sax, flute on 4 |
Essa Kotilainen | organ, clavinet, synthesizer |
Heikki Virtanen | bass |
Pekka Pohjola | bass on 4 |
Esko Rosnell | percussion, drums |
75 年発表のアルバム「Hysterica」。
ギターを主役にしたヘヴィなサウンドのジャズロック・アルバムであり、トローネンのワウギター・アドリヴを堪能できる。
豪快、痛快、爽快な作品だ。
上品ぶらないというか、子どものような無垢でひたむきな熱気とキラキラ感がたまらない。
いわゆる「フュージョン」のように取り繕ったところがまったくないのだ。
4 曲目、朋友ペッカ・ポーヨラがゲスト参加し、まるで音の粒粒を操っているかのように、キレのあるベースを聞かせる。
全曲インストゥルメンタル。
「Jimi」(9:26)グルーヴィなリズム・セクションの上でへヴィなブルーズ・ギターのアドリヴが延々繰り広げられる。
垂れ流しではないストイックな雰囲気がいい。
特に終盤のトリオの緊張感がたまらない。
ドラムス(次第にオカズが多彩になってゆく)、ベース(ギターのオブリガートがカッコいい!)もさりげなく超絶。
タイトルはもちろんジミ・ヘンドリクスでしょう。
「Django」(2:31)
なめらかなジプシー・ギターとハモンド・オルガンをフィーチュアした軽快なクラブ向け小品。
タイトルはもちろんジャンゴ・ラインハルトでしょう。
「Hysterica」(6:29)アッパーで挑発的なジャズロック。刑事アクションドラマの OP 向き。
ジャジーでイケイケな管楽器とジェフ・ベック風のギター。痛快なグルーヴ感とユーモア。ムーグのソロもぶっ飛んでます。
「Tiger」(6:58)変拍子ジャズ・ビッグバンド。サスペンスフルなテーマがいい。
ヘンリー・マンシーニとか好きなんじゃないですか。ギターはコンプレッサを効かせたアラビア風。フルートもいい感じだ。
「Silva The Cat」(4:46)フルートとギターによるクールでアブストラクトなジャズロック。
レゾナンスを効かせたシンセサイザーは猫の鳴き声を模写している?
ラウンジ風味とサイケ、テクノ調が微妙にブレンドしている。
「Windermere Avenue」(7:15)
青春な作品。
夕陽の海岸、水平線で翳になったヨット、緩やかな潮騒、風になびく髪。
胸に迫るものあり。
(LRCD 149)
Jukka Tolonen | guitars, acoustic guitar on 3, piano on 4,7 |
Christer Eklund | soprano sax on 5,6, alto sax on 1, tenor sax on 2 |
Iikka Hanski | bass, string bass on 7 |
Bill Carson | drums, gongas, percussion, vocals on 7 |
Esa Kotilainen | moog on 1,2,5,6,7, organ on 1,5,7, solo on 6 |
Coste Apetrea | guitar, 12 string acoustic guitar on 7, solo on 6 |
Mans Groundstroem | bass on 4 |
77 年発表の第五作「A Passenger to Paramaribo」。
ファンキーなジャズロックを中心にポップな音のつまった好作品である。
泥臭さのない軽やかなサウンドが特徴だ。
ギターは、得意のワウを用いたややブルージーなスタイル。
ジャズというよりはロックに近しいプレイであり、ナチュラル・トーンでもメローに流れすぎないエッジがある。
メロディに交じるトラッド風味も独特だ。
そして、ソロはもちろん、バッキングのコード・プレイがじつにいい。
また、ギターの他にキーボードやサックスもたっぷりフィーチュアされている。
さりげなく使われるオルガンやムーグもいい。
サックスが加わった、ファンキーにして品のある語り口は、オランダの SOLUTION などにも通じるかもしれない。
曲は、決してゴリゴリにハードではなく、むしろポップ。
77 年当時ではやや古めかしかったかもしれないが、それ故に今古びて聴こえない。
すべてのプレイヤーが楽しげなプレイを聴かせてくれるが、特にドラムスがみごと。
1 曲目は、ファンキーでいわゆるジャズロック調だが、ハードではなく、あくまでスリムでソフトなタッチである。
3 曲目は、ロマンティックで愛らしいナイロン・ギター・デュオ小品。
トレモロやアルペジオを用いた丹念な演奏だ。
4 曲目は、KEBNEKAJSE や RAGNAROK にも通じる哀愁歌謡曲風インストもの。加山雄三、VENTURES といってもいい。
5 曲目は、爽やかなソプラノ・サックスをフィーチュアしたユーロ・ジャズロック。饒舌にからみつくカントリー調ギターとシンフォニックなキーボード。
後半はなぜか一転して、コテコテのブルーズ・ロックに変貌。
6 曲目も、メロディアスなサックスとシンセサイザーのテーマがリードする軽めのファンキー・チューン。
SAMLA のコステ・アペトレアが狂言回しになって華やかなソロ合戦が続く。
7 曲目はカントリー・ギターがカッコいいアメリカンなヴォーカル・チューン。
ウッドベースとピアノがいい音だ。
アーシーなカントリー・ポップ調からソウル調へ、そしてふと気づけば小気味よいインストである。
プロデュースはクリスタ・エクランド。
雑談。
CREAM がジャズからインプロヴィゼーションを持ち込んで脳天気なロックンロールに緊張感をもたらしたが、ロックの計り知れないバカっぽさがジャズを呑み込んでしまい、結局さらにバカっぽいフュージョンができあがった、そんな感じがする。
「A Passanger To Paramaribo」(5:34)
「Punks!」(6:26)
「Tanja」(2:58)
「Phantastes」(4:35)
「Air Rock」(5:58)
「"Dimitri"」(6:19)
「What Went Wrong?」(8:25)
(LRCD 231)