イタリアのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「MOONGARDEN」。 トニー・バンクスとニック・バレットの共演の如き、緻密かつメローなノスタルジック・サウンドとコンテンポラリーなテクニカル・ロックが融合した新世代の音楽。 2010 年現在、作品は六枚。 現代プログレ・シーンの牽引車の一つ。
Matteo Bertolini | bass, guitar |
Luigi Cavalli Cocchi | drums, assorted percussion |
David Cremoni | acoustic & electric guitars |
Mirko Ravenoldi | vocals, guitars on 17 |
Cristiano Roversi | keyboards, guitars, samples, chapman stick, bass pedal |
Ricardo Tonco | vocals |
2013 年発表の作品「There's Something Very Strange In Her Little Room」。
MOONGARDEN のキーボーディスト、ギタリストによるサブユニットの第二作。
まさか、こちらで新作が現われるとは思わなかった。(録音は 2005 年から少しづつしていたらしい)
完全インストゥルメンタルであることだけが残念だった前作の反省か、ヴォーカリストを起用して、もはや別働隊というべきフル・バンド構成の作品になっている。
そして、「Brainstorm Of Emptyness」での名演が光ったヴォーカリストの復帰に二度目の驚き。
内容は、「The Musical Box」を毎日聴いても決して飽きない人たちによる 90 年代ネオ・プログレッシヴ・ロックへのオマージュ。
つややかなまろ味を帯びたギターと朝露のようにみずみずしくエレガントなピアノ、天界の進軍ラッパのようなミニムーグと色褪せたドレスのドレープのように波打つメロトロン・ストリングス、苦悩に身悶えるヴォーカルらによるメロディアスでロマンティックなシンフォニック・ロックである。
終盤に向けてドラマは厳粛な重みを持ち始め、高揚感や開放感よりは静かなる悲劇という印象が強くなる。
ジャケットからは GENESIS 流の叙情作という連想が湧くが、じつは PINK FLOYD フォロワーであり、ソッチ向きのサイケデリックでタフな演奏も多い。
近年の CAMEL のようなうっすらとした哀愁とブルージーなトーンもある。
思ったほど派手でもコテコテでもないが、しみじみとした味わいはある。
耽美で幻想的な世界にひたりたい方にはお薦め。
アルバムは、十四部から成るタイトル組曲一曲とエクストラ・トラック三曲から構成される。
エクストラ・トラックも、アコースティック・ギターと木管、メロトロン・ストリングスらによるアンソニー・フィリップス風の佳品揃い。
特に三曲目は、トーヤ・ウィルコックスの歌ったトニー・バンクス作品をニュウェーヴ調からオールド GENESIS 風にアレンジした傑作。
正解はこちらかも知れない。
()
Simone Baldini | lead vocals |
Adolfo Bonati | drums, assorted percussion |
David Cremoni | 6 & 12 string acoustic guitar, guitar |
Cristiano Roversi | keyboards, bass |
Cristian Melli | flute |
Giorgio Signoretti | jazz guitar solo on 4 |
94 年発表の第一作「Moonsadness」。
内容は、モダンな HM ギターを用いた GENESIS、CAMEL、EL&P など 70 年代プログレへのオマージュたっぷりのロマンティックなシンフォニック・ロック。
なめらかなキーボード・オスティナート、小刻みで細やかなドラミング、アコースティック・ギターの響きとフルートの調べ、切々と旋律を歌うエレクトリック・ギターなど、メロディアスでファンタジックな GENESIS ワールドをよくなぞっている。
テクニック的にかなりの余裕が感じられるが、それ以上に、隙間なく音で埋め尽くすような作品が昨今多いなか、過剰でない音使いで場面ごとの主役をきっちりと演じさせる姿勢にただならぬセンスを感じる。
1 曲目では王道クローン路線を堂々歩むも、2 曲目の ASIA 的アリーナ・ロック、ハードポップ感覚、ジャジーなアドリヴも盛り込んだ 4 曲目の大胆な展開など、ただのクローン・バンドにとどまらないものをもっている。
リード・ヴォーカリストは、やや訛りはあるものの英語で堂々たる歌唱を見せる実力者。(声質は異なるが節回しはジョン・ウェットン風)
ギタリストは、テクニカルでヘヴィなプレイとともに誠実な歌心にあふれるソロも放つ。
3 曲目では、ヴォーカルもギターもタメの効いたみごとな表現を見せる。
全体として、ネオ・プログレッシヴ・ロックとしては別格といえる充実した作品といえる。
ヴォーカルは英語。
元々デモ作品だったため、最終プロダクション前のような音質であり収録時間も 38 分と短めだが、演奏/楽曲はきわめて優れています。
「Breaking Mirrors」(8:57)HR/HM ギター・リフ入りの GENESIS。
目まぐるしくも必然性ある場面展開の妙。
メロトロン・クワイア風だったり、ソリーナ風だったりするストリングス・シンセサイザー。
竪琴を思わせるアコースティック・ギターの調べ。
終盤、入魂の「むせび泣き」ソロ・ギターが。傑作。
「I Miss You More」(4:06)ちょっと昔の売れ線風シンフォニック・ロック。JADIS にかなり近い。
「Seagulls」(7:50)MARILLION のような陰鬱系バラード。以降ポーランド勢が目指した道である。
「The Girl And The Moonman」(17:14)ネオプログレの典型かつ逸品。
80 年代テイストも微妙に残るメイン・パートと 70 年代プログレど真ん中なインスト・パート。
曲の途中(10 分過ぎ頃)に奇妙なブレイクがある。
今聴くと、ネオプログレらしさ満点でたいへん懐かしいです。
(MMP 244)
David Cremoni | 6 & 12 string acoustic guitar, Pradise guitar, guitar |
Cristiano Roversi | organ, mellotron, piano, Polymoog, synthesizers, bass pedal, bass, thumbing |
Dimitri Sardini | heavy rhythm guitar |
Massimiliano Sorrentini | acoustic drums, wind chimes, woodblocks, assorted percussion |
Riccardo Tonco | vocals interpretation, tambourine |
Marco Olivotto | additional pad on 2, granular noise & viola on 11 |
95 年発表の第二作「Brainstorm Of Emptyness」。
内容は、よく歌うギターとキーボード・オーケストレーションによる耽美派モダン・シンフォニック・ロック。
ポンプ・ロック第二世代であり、喩えてみれば GENESIS と PINK FLOYD を合せて今様ヘヴィネスをブレンドしたようなスタイルの完成度の高い作品だ。
デビュー作での期待を裏切らない内容である。
ヴォーカルは、英語が不自然でない美声の持ち主であり、低音の魅力とネオプロ風があからさまでないところがいい。(ガブリエルというよりはデヴィッド・ボウイに近い)
ブリット・ポップの伝統を感じさせる本格派である。
それにしても、2 曲目冒頭で見せるウォーターズ氏そのもののようなつぶやきスタイルには驚き。
他の曲でも、このヴォーカリストがモダンな曲の表情に大きく貢献している。
そして、ギターはさりげなくもテクニシャンであり、なおかつラティマー/ギルモア風の泣きとサスティンをもしっかりカバーする。
このフォロワー振りには、ニック・バレットもたじたじだろう。
また、GENESIS そのものといべき 12 弦ギターの端正なアルペジオもあり。
しかしながら、彼らのサウンドをもっとも本格的なものにしているのは、重厚にして情感に満ちたキーボード・オーケストレーションだろう。
傑出したソロではなく、背景に静かに鳴り響き、いつしか曲全体の色合いを決めてゆくような存在感のあるプレイであり、音にも昨今なかなか見られない厚みと深みがある。
もちろん、バンクス直系のピアノやシンセサイザーのプレイも交え、メロトロンもきちんと鳴らしている。
いや鳴らしているどころか、鳴りまくり。
70 年代プログレ再構築を超越する本グループのユニークネスは、ヘヴィ・メタル的な凶暴で過激な場面転換である。
スピーディな演奏の生み出すドライヴ感と鋭利なエネルギーの発散は、まさしくコンテンポラリーな味わいといえるだろう。
落ちつきのあるリズムとアンサンブルに徹した老成したプレイが安定感と深い情感を生むなかに、若々しく情熱をたたきつけるプレイがタイムリーに散りばめられてゆく。
叙情的な演奏にうまみがあるだけに、突如湧き上がる攻撃的なプレイにも、すなおに魅せられる。
晩秋の空気を思わせるアコースティックで透明感あるセンチメンタリズムと、エレクトリックでエネルギッシュな才知の迸りが自然に同居する辺りが、いかにも情報処理の巧みな現代のロックだといえる。
英国風の深みがあれば重苦しい音でもかまわない、という方、特に ARENA のファンにはお薦めです。
内容はおそらくファンタジックなトータル・コンセプトもの。
歌詞は英語。
「Sea Memories」(11:26)翳のあるヴォーカル・テーマに GENESIS 風の典雅なキーボードと軽やかにすべってゆくようなギターが加わった、シンフォニック作品。
ヴォーカル・テーマにはポップな味つけも施されており、聴きやすい。
演奏そのものと録音のバランスがよいせいか、ポンプ的な内容が格段によく聴こえる。
「Who's Wrong ?」(9:46)
フィル・コリンズ、ゲイブリエルはもちろん、ロジャー・ウォーターズから 80' ポップ調まで、ヴォーカルの表情がめまぐるしく変化するロマンティックなシンフォニック・ロック。
ピアノ、ストリングス系の音とメロトロンが美しい。
パーカッションを効かせてごぼごぼと低音で渦を巻くハモンド・オルガンもある。
終盤、シンセサイザー・ソロからギター・ソロへの流れは、ポンプの様式に堕する気がしなくもないが、そのプレゼンスは堂々たるものである。
IQ 辺りと同レベルの風格がある。
もっとも、最後のスキャットだけはやり過ぎかも知れないが。
ややパッチワーク風だが、PINK FLOYD と GENESIS をつなぐという珍しい作風の佳作。
PENDRAGON の近作をより大袈裟にデフォルメした感じ。
「Sonya In Search Of The Moon (Part. 1) Silver Tears」(1:26)暗鬱なギターのアルペジオ。
教会風のオルガンが静かに鳴り風がざわめく。
「Gun Child」(8:28)
ヘヴィなギターと跳ね上がるようなリズムによるアグレッシヴなポップ・チューン。
メイン・ヴォーカル・パートの曲調と歌唱スタイルは、完全にニューウェーヴ。
それなのに、メロトロン・クワイアを背負ったシンセサイザー・ソロがみごとなまでに中期 GENESIS なのだ。
中盤、攻撃的なギター・リフにモノローグとメロトロンがオーヴァーラップし、捻れてゆくところが見せ場。
ギシギシとインダストリアルなタッチに、メロトロンの乾いた音とワイルドなオルガンが意外とマッチする。
ラストには、エレアコ・ギターがつぶやくレクイエムによるエピローグが。
目まぐるしく予想を覆しつつ突進するモダン・プログレ。
おもしろい作品です。
「Is He Mommy's Little Monster ?」(3:39)
女性を真似るファルセットによる朗唱。
そして、伴奏はオルゴール。
笑い声、壊れたハーモニウムのような和音の響き。
老いぼれ風の男性低音ヴォーカル。
一転して、伸びやかなテノールによる哀愁のバラード。
シアトリカルなヴォーカル・パフォーマンスによる妖しげなワルツ。
タイトルから「怪奇もの」であることに気がつくと、GOBLIN のイメージも。
「Sonya In Search Of The Moon (Part. 2) Alone In The Nightfield」(3:16)
エレアコギターのアルペジオを伴奏にメロトロン・フルートが哀しげに歌い、やがてストリングスがどこまでも広がってゆく。
悲劇を超えて救済が訪れるようなイメージだ。
「Chrome Heart」(9:29)
「Epitaph」風のトラジックな序章、そして日本のフォークに通じるギターのアルペジオ。
メロトロン・ストリングスとともに演奏は短調と長調を揺れ動き、妖美なヴォーカルを呼び覚ます。
ヘヴィなギターが突如唸りを上げ始めるが、妖しい表情は変わらない。
ギターとシンセサイザーのコンビネーションによるプログレ・メタル風の盛り上がり、ヴォーカルがリードするエキセントリックなパフォーマンスを経て、朗々たるギターとともに一気にしなやかで自信あふれる展開となる。
終盤のメロトロンの響きがいい。
耽美なバラードを基本に大胆に表情を変化させて突き進む怪作である。
スロー・テンポでヴォーカルが歌い込むと貫禄がある。
「Sonya In Search Of The Moon (Part. 3) The Search」(1:54)
遠く微かに光が見えたような、ポジティヴな余韻のあるブリッジ。
「Sherylin's Mistake」(8:45)
弾き語りから幕を開けるも、ためらいなく妖美なプログレ・メタルへと展開する。
アコースティックな音とキーボードをこういう風に入れると、メタルがプログレ・メタルになるらしい。
ギターとシンセサイザーが大活躍。
みんな「Watcher Of The Skies」が好きなのです。
勢いがある傑作。
「Sonya In Search Of The Moon (Part. 4) Moonman Return」(8:13)
Part.3 の余韻を引き継いで、ジャジーでメローなファンタジーへと進む。
高鳴るシンセサイザーとハモンド・オルガンはやがてトニー「Cinema Show」バンクスそのもののように流麗なシンセサイザー・ソロへとつながり、そして、コリンズを思わせる歯切れよいドラムスに現代的なギターが絡んでゆく。
ギターはやがて美しく暖かな調べを紡ぎ出し、メロトロン・ストリングスが祝福の讃歌を歌い上げる。
この後半のインストゥルメンタルが圧巻。
明朗なファンタジー性がみごと。
アルバムのクライマックスたるシンフォニック・チューンである。
「The Losing Dawn」(5:01)深くたゆとうオルガンの響きとピアノの爪弾き、そして、再びロジャー・ウォーターズを思わせるささやき。
(MMP 284)
Emilio Pizzoccoli | drums, percussion, tambarine |
David Cremoni | 6 & 12 string acoustic guitar, guitar |
Cristiano Roversi | electric piano, moog, polymoog, mellotron, bass pedal, analog frequences |
2001 年発表の作品「Submarine Silence」。
MOONGARDEN のキーボーディスト、ギタリストによるサブユニットの作品である。
内容は、中期 GENESIS そのものであり、美しくもはかなく、感傷的だが豊かなシンフォニック・ロック。
星の子を吹き上げるようなストリングス・シンセイサイザー、吟遊詩人の奏でる竪琴のようなアコースティック・ギター、古の機械の昔語りのようなメロトロンの調べ、叫ぶように祈りを歌い上げるギターが、夕凪の茜空に緩やかに響きわたる。
最終曲には「泣くまで止めません」という決意のようなものすら感じられる。
スティーヴ・ハケットの初期ソロ作のファンにはお勧め。
全曲インストゥルメンタル。
けったいなジャケット画は、名匠ポールホワイトヘッド画伯。
バンクス氏がこういうソロ作を出してもいいと思うのですが。
(MMP 419)
Massimiliano Sorrentini | drums, percussion |
David Cremoni | 6 & 12 string acoustic guitar, guitar |
Cristiano Roversi | keyboards, stick, bass |
Luca Palleschi | vocals |
2001 年発表の作品「The Gate Of Omega」。
右の写真は、2010 年発表のリマスター/リストア盤。
英語のヴォーカルによるネオ・プログレッシヴ・ロック後継作品。
サイケデリック調を交えた耽美なタッチ、メロトロンなど、「今風の旧式さ」を取り込んだ本格的なコンテンポラリー・ロックである。
もっとも、ギターやストリングス・シンセサイザーには前作同様プログレ・プロパーらしさがあふれ出ている。出自は隠せないということだろうか。
憂鬱さを象徴するような深いストリングスが全編をおおい、いったんはしなやかで力強いリズムで抗おうとしても、結局は大きな流れにゆっくりと押し流されてゆく。
HM/HR 的な表現は皆無。
90 年代には GENESIS フォロワーというのがたくさんいたが、時代は巡り、本作の作風は間違いなくスティーヴ・ホガース加入後の MARILLION をフォローするものである。(主として、ヴォーカリストの表現法によると思われるが)
もちろん、GENESIS フォロワーの遺伝子もしっかりと残っていて、ギターやハモンド・オルガン、ARP オデッセイ風のシンセサイザーが朗々と歌うところも多いし、まんまなアンサンブルもある。
(現代プログレの元ネタの一つ、PINK FLOYD っぽさは意外なほど感じられない)
つまり、今の MARILLION の幹に昔の GENESIS の枝葉があるような、一風変わった取り合わせの作品なのだ。
多彩な芸風を見せるギタリストも健在。
タイトル作は 17 分を超えるメディテーショナルな大作。
全体に、内向きで薄暗いが澱んではおらず、終末が迫っていることを知りながらも静かにそれを待ち受けているような姿勢が感じられる作風である。
もう一つの大作「Home Sweet Home」では PORCUPINE TREE ばりの暗い青春を月影 GENESIS で吹き飛ばそうとしている。
最終曲「Stars And Tears」は、LOCANDA DELLE FATE など往年のイタリアン・ロックを彷彿させながらポジティヴな余韻も残す好作品。
(DMF CD03)
Luca Palleschi | lead vocals |
Massimiliano Sorrentini | drums, samples |
David Cremoni | 6 & 12 string acoustic guitar, guitar |
Cristiano Roversi | keyboards, stick on 1 |
Mirko Tagliasacchi | bass |
2004 年発表の第四作「ROUNDMIDNIGHT」。前作に続き、RADIOHEAD、MARILLION、PORCUPINE TREE らと共通する、コンテンポラリー・ブリティッシュ・ロックの質感をもつポスト・ロック風ネオ・プログレ。
イコライジングされたメランコリックなヴォーカルを主人公に、メロトロンやアナログ・シンセサイザーもたっぷり使って、狂おしいが爆発し切れないもどかしさを音にしてゆく。
ニヒリスティックなまでに冷ややかなサウンドと切実すぎるメロディ・ラインの絶妙の組み合わせだ。
ロックが激情を叩きつけられなくなって久しいが、この、クライマックスの迎え方を知らずに燃え尽きてゆくような表現には、切なさや空しさが驚くばかりのリアリティをもって込められている。
とはいえ、魂の絶叫というには、本作の表現はきわめてスタイリッシュであり、優れた物真似といわれても仕方がない面もある。
プログレ・ファンには、最近の MARILLION と同じに聴こえるだろう。
ただし、孤独が生む寒々しくとりとめのない幻想、そして理由のない火照りは確実に伝わってくる。
若い頃、あてどなく街を彷徨った記憶があるならば共感できる音だろう。
ギターは、今回も上品にしてプログレ一直線な味わいあるプレイを見せる。
フランコ・ムッシーダやマリオ・ミーロ、IQ のギタリストであるマイク・ホルムズを思わせる堂々たる演奏だ。
このギターの存在が、英国風の物憂げな語り口にエレガントな、イタリアらしいといってもいい豊かな含みをもたらしているような気がする。
ヴォーカルは英語。
5 曲目の冒頭、チェロとオーボエによるクラシカルなアンサンブルに不覚にも涙が出た。
全体に音色や音の周囲の空気について細やかな気配りをした、高級感ある作品である。
「'Round midnight」(7:48)力作。
「Wounded」(7:25)
「Killing The Angel」(4:54)
「Lucifero」(6:37)
「Slowmotion Streets」(5:48)
「Learning To Live Under The Ground」(10:24)耳さわりのいいシンフォニック・ロックの傑作。IQ に迫る。
「Coda: Psychedelic Subway Ride」(1:57)
「Nightmade Concerto」(5:43)
「Oh, By The Way, We're So Many In This City And So Damn Alone」(1:54)
(GALILEO 73655)
Cristiano Roversi | keyboards, loops |
Marco Tafelli | guitars |
Simone Baldini Tosi | vocals |
Mirko Tagliasacchi | bass |
Maurizio Di Tollo | drums |
guest: | |
---|---|
Andy Tillison | vocals on 5 |
2008 年発表の作品「Songs From The Lighthouse」。
内容は、アーシーなオルタナティヴ・ロック/グランジに変拍子とメロトロン、オルガンを加えて昨今ポーランド辺りを中心に流行の PINK FLOYD 風耽美テイストを持ち込んだコンテンポラリー・ロック。
雰囲気作りはもちろん演奏にも安定感があり、バリエーションの広がりと統一感に大御所の作品のような風格がある。
プログレな表現の分かりやすさは前作、前々作以上。
宗祖 GENESIS も巧みに取り込まれていてふと気づくとキーボードのソロに耳をそばだてている自分がいる。
メインストリーム、ポスト・ロック調とオールド・プログレのカッコいい融合具合という点で飛びぬけている印象である。
深い翳りや冷ややかな色彩美は十分に味わえるので、飛び跳ねるような運動性を発揮する曲も入っていればもっとよかった。
また、英米今の流行、元ネタが見えてしまうところがやや苦しいが、逆にいうとそれでもこれだけ聴かせるのだからすごく健闘しているともいえる。
特に、後半に向かうにしたがってこの世界に慣れてきて、じんわりとした感動が迎えてくれる。
思い切り飛ばす冒頭 1 曲目、GSYBE のような轟音ポストロックの 2 曲目は痛快。
3 曲目はエディ・ヴェダーを意識? 入魂のギター・ソロあり。
4 曲目は重苦しさを振り払うようにポジティヴなロック魂をナチュラルに放つアクセント的な作品。ヒップホップ調のリズムが印象的。
空気感を尊重し、メロディアスな表現に頼らない 7 曲目は力作。
その直前のクラシカルなショートブリッジである 6 曲目もいい。
本アルバムのクライマックスは、アンディ・ティリソンがヴォーカルを取るバラードである 5 曲目の終わりごろからこの 7 曲目に向かってだろう。
そして、浄化の果てに未来と希望を見据えるような 8 曲目。
予定調和の極致で笑いを取るつもりか、の 9 曲目。とにかくアナログ・キーボードてんこ盛り。
なかなか巧みな演出である。
アルバム全体を通してメロトロン・ストリングスが惜しげなく使われている。
ヴォーカルは英語。
MARILLION のイメージは新ヴォーカリストのスタイリッシュな歌唱表現から来るものが主だろう。
メンバーほぼ全取っ替え(凄腕ギタリストの不参加はなぜ?)なので、キーボーディスト以外のメンバーの志向にキーボーディストがプログレ・テイストを盛り込むというアルバム製作法なのでは。
スイスのガリレオ・レコードの製作。
「My Darkside」(7:26)
「It's You」(7:04)
「Solaris」(13:00)
「Emotionaut」(3:55)
「That Child」(5:52)ゲスト・ヴォーカルは TANGENT のアンディ・ティリソン。
「Flesh」(2:49)ヴァイオリン、ヴァイブ、ピアノらによる幻想的なインストゥルメンタル小品。
「Dreamlord」(11:30)終盤に泣き叫ぶギターのための長いイントロか。
「Southampton Railroad」(4:11)
「Sonya In Search Of The Moon (Part 5)」(5:47)
「The Lighthouse Song」(9:32)この曲で締めたのでアルバムのイメージが一貫したと思う。
(SPY 452492 CD)