フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「ONIRIS」。BARCLAY レーベルからの唯一作で知られる。
Alain Gallet | vocals, percussion | |
Gilles Hinterseber | bass | |
Joël Lebosseb | guitar, vocals | |
Norbert Periaut | guitar, vocals | |
Rémy Hubert | keyboards, vocals | |
Thierry Tual | drums, percussion | |
guest: | ||
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Anne Sophie | laughing | |
Annick Champeau, Edith Richeux, Jacqueline Thibault | voice on 1 | |
Michele Sarna | vocals on 2,4 | |
Bertrand Henry | percussion, flute |
79 年発表のアルバム「 L'Homme - Voilier 」。
内容は、フレンチ・ロックらしい大仰な表情のヴォーカリストがリードする演劇的にしてジャジーなシンフォニック・ロック。
楽曲はめくるめくストーリー展開のある大作が主であり、狂気や陰鬱さをはらみながらもどこまでもロマンティックで、妖艶さを前面に出した作風である。
音による尋常ならざるストーリー・テリングという趣だが、ジャズっぽく洗練されたアンサンブルが飛び出すことで音楽的な緊張感が注入され、「物語」の叙景偏重に陥らず、ロマンとして全体のいいバランスを保っていると思う。(ちなみに、シャンソン風の歌唱とフュージョン風のバッキングの相性はいい。都会的なイメージという共通軸があるせいか)
演奏は、ベース・ラインを強調したしなやかなリズム・セクションがリードし、エレクトリック・キーボードとギターがフュージョン調の小粋で歯切れのいいプレイを放つ、70 年代中後半のテクニックのあるバンドのものである。
最大の特徴であるフランス語ヴォーカリストは、哄笑や憤怒、モノローグもたっぷり交えた狂気じみた一人芝居風のパフォーマンスで堂々と主役を張る。
そのエキセントリックにして洒脱な世界の演出を支え、スリルと神秘を倍増させるのが、フランソワ・ブレアンばりのメカニカルで重量感のあるシンセサイザー・サウンドとナチュラル・ディストーションの効いたメロディアスなギター・プレイである。
特に、細身のトーンのギターによる緩やかなフレージングはデリカシーと攻撃性を矛盾なく鮮烈に表現している。
そして、エレクトリック・ピアノとギター、スキャットによるコーラス、フランジしたベースらによるジャジーな味付けが現代的、都会的な感覚を表現している。
これら器楽が、クライマックスに達したヴォーカリストを軽やかにかつぎ上げて風とともに舞い上がってゆくと、再び新しい別世界からの光が見えてくる。
そういう趣向になっている。
このようなテクニカルな器楽によるジャズロック、フュージョンを軸とした多彩な表現法と圧倒的なヴォーカル・パフォーマンスが、必然的に ATOLL との比較をうながすのだろう。
繰り返し聴くと、ATOLL ばかりか、同国の ANGE や PULSAR に加えて YES や PINK FLOYD には当然親しんでいるし、さらにはマイク・オールドフィールドも経ているように感じられてくる。
さらに、「フランス語ヴォーカル入りのフュージョンはプログレになる」という経験則もできそうな気がしている。
いわゆる「フレンチ・ロック」の妖しく深みあるニュアンスを 100% 満たした作品であり、単発ながら ATOLL にも匹敵する充実度である。
ヴォーカルはフランス語。
プロデュースは、ローラン・チボー。決めどころのベースの音やゲスト人選には MAGMA を経たチボーの尽力があると思う。
邦題は「翼を持った男」。
「Schizologues」(17:12)
「L'Homme-Voilier」(6:37)
「Enferologues」(0:35)
「Le Reve Et Le Quotidien」(10:15)
(BARCLAY 900.583/KING GXH 2017)